ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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キタサンVSジャーニー!マジカルブラックの名を懸けて!

 

 

「ダメです……いくらジャーニーさんの頼みでもこれだけは譲れません!!」

(あれ、今の声キタちゃん?)

 

 いつものようにプールトレーニングから逃げだし、校舎裏に隠れようとしたヒシミラクルの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「キタさん、なにも譲渡して欲しいわけではありません。ただ明日1日、ほんのひと時貸していただきたいだけなのです」

「それでも……これはスイープさんから託された大事なものなんです!」

 

 キタサンにしては珍しく棘のある声だった。思わず足を止めて、影から様子を伺うミラクル。

 言葉通り、ジャーニーとキタサンが向かい合っている。手を差し出すジャーニーに対して、キタサンは何かを渡すまいと手を後ろに組んで隠していた。

 

「さすがあのスイープさんが信頼するだけあって、意思も固いようだ。ですが……私がこうして頼んでいるのも、スイープさんの提案なのですよ?」

「えっ……?」

 

 さあっ、と青ざめるキタサン。だが、まっすぐにジャーニーを見据えてハッキリと言葉を返す。

 

「確かにジャーニーさんはとても賢くて、優しくて。スイープさんにも私よりずっと信頼されてるかもしれません……けど、私にも……譲れない、渡せない夢があるんです!!」

「仕方ありませんね。夢見がちな後輩に、先輩として少し『しつけ』をしてあげましょうか」

 

 スッとジャーニーの目が細まる。その雰囲気にミラクルは覚えがあった。

 

(あの目……トレーナーさんがプールに入らない私を見る目だ。残酷な目だ……かわいそうだけど1時間後には水の底に沈んでいるのねって感じの!)

 

 一触即発の空気を感じ、黙っているわけにもいかずミラクルは飛び出した。

 

「待って! ケンカは……」

「魔法少女マジカルブラックの称号は渡せません! いくらジャーニーさんが黒くても! スイープさんにもらったこのマジカルステッキに誓ったんです!」

 

 後ろ手に隠していた魔法のステッキをジャーニーに堂々と突きつけるキタサン。

 

「……え? マジカルステッキ?」

「うわぁ! ミラクルさんいつからそこに!?」

「おやミラクルさん、奇遇ですね。見ていたのなら少し誤解を解くのを手伝っていただけませんか?」

 

 対するジャーニーはミラクルが隠れているのがわかっていたかのように落ち着いて提案してきた。

 

「えっと……ジャーニーさんは何でこのおもちゃを貸してもらおうとしてたの?」

「おもちゃじゃなくてマジカルステッキです!」

「ご存知の通り、スイープさんは魔女としての研鑽を怠らない方です。いつもはキタさんが魔法少女として併走しているのですが……キタさんは明日模擬レースで付き合えない。そうですね?」

「その通りです……けど……」

「というわけで、私がその代役を頼まれたのですよ。もちろん、明日だけです」

 

 要するに、スイープの魔法少女ごっこにいつも付き合っているキタサンが明日は忙しいので、ジャーニーがキタサンの代わりを押し付けられたのだとミラクルは解釈した。

 とはいえ、キタサンがここまで頑ななのには相応の理由があるのだろうとミラクルは尋ねてみる。

 

「そっかぁ。でもキタちゃんにとってそのステッキは大事なものなんだね?」

「はい……私、スイープさんと仲良くなりたくて、一生懸命魔法少女のことを勉強したり口上を考えたりして……やっとマジカルブラックとして認めてもらったんです。そのときにこのステッキをもらって……だから、渡したくなくて……」

「キタちゃん……」

 

 ミラクルにとってはただの子供向けおもちゃ。魔法少女ものやプリファイシリーズも幼い頃は好きだったな、くらいのもの。

 しかし、キタサンやスイープにとっては真剣な努力と信頼の証のようなものなのだと理解できた。

 そしてジャーニーは相変わらず優しい表情を浮かべて諭すように言った。

 

「キタさんのお気持ちはよくわかりました。それではぽっと出の私にやすやすと渡したくないのも当然でしょう」

「ごめんなさい……」

「ではこうしましょう。私が魔法少女としての口上を述べますので、私にそのステッキを持つ資格があるかキタさん自身に判断してもらうというのは?」

「ジャーニーさんが……魔法少女の口上を……!?」

 

 自分の耳を疑ったミラクル。そりゃあジャーニーだって自分たちと同じ女の子には違いないとはいえ、ここまでイメージに合わないトレセン生徒もそういないだろう。

 

「意外に思われるかもしれませんが、スイープさんやカワカミさんとはレースでもそれ以外でも付き合いが多いので……自然と、それなりの知識は身についているんですよ」

「スイープさんの隣で魔法少女になるなら、それなりじゃ認められません! やって見せてください!」

「では、ステッキを貸していただけますか?」

「わかりました。一度だけですよ!」

「え、ほんとにやるの……?」

 

 なんだか変なところに居合わせてしまった。そんな感想を抱くミラクルをよそにジャーニーの手にマジカルステッキが渡る。

 ジャーニーは軽く深呼吸をする、ミラクルとキタサンも緊張につばを飲んだ。

 

「漆黒の嵐に立ち向かう夢の魔法少女……マジカルブラック!!」

 

 ジャーニーはまるでウィニングライブ本番さながらにキレッキレの踊りと高らかな声でなんの躊躇いもなく言い切った。

 

 

(ダメだ。今笑ったら、殺される……!)

 

 

 背丈だけならスイープよりも小さく、振り付けもサマになっているのに全く普段のイメージに合わない。

 しかしそれを口に出せば確実にけじめ案件なので表情を無にするのに必死になるミラクルをよそに……キタサンはわなわなと震えていた。

 

「すごい……今の振り付け、プリファイシリーズ第7作目の第5魔法少女のやつとそっくりです!」

「そーなの!?」

「やはり、ご存知でしたか。一目でわかるとは、先程の言葉通り大変勉強されたのですね」

「はい! プリファイとは思えないくらい黒いオーラのある変身だったので、印象にも残っていて……」

「わかりますよ、私も好きですから……せっかくなのでこの機会に真似てみたのですが、いかがでしたか?」

「ジャーニーさんが魔法少女にそこまで真剣に向き合っているなんて思いもしませんでした……わかりました。スイープさんも認めているならこのステッキ、お貸しします!」

「よかった……ありがとうございます」

 

 話はうまくまとまったようだ。今度プリファイについて語りましょうね! なんて和気あいあいとしている2人を見て、安心するミラクル。

 

「ミラクルさんも、お付き合いいただきありがとうございました。私一人では、誤解を解くのは難しそうでしたから」

「ご迷惑をおかけしました……今度、お詫びさせてください!」

「あっいえそんな……むしろ、2人の意外な一面が知れてよかったよ? プリファイ、懐かしくなっちゃったし私も今度見てみようかな」

 

 突然お礼を言われて、あたふたしながら素直な感想を口にするミラクル。

 キタサンやジャーニー、そして中心にいるスイープの魔法少女に対する真剣な気持ちを見ると心動かされる物があるのは本当だった。

 そう、魔法を信じておもちゃのステッキを振っていた昔を思い出すような……

 

「探したぞ、ミラクル」

「げぇ! トレーナーさん!!」

「早くプールに戻るぞ! ミラクルは最後にはやるウマ娘だって信じてるからな!」

「やだっー! そうだキタちゃん、ジャーニーさん、鬼トレーナーさんから逃げる魔法を教えてください!」

 

 しかし2人は申し訳なさそうな目で、プールの底に沈む運命にあるミラクルを見た。

 

「トレーニングから逃げる魔法は、スイープさんでもまだ習得できないらしくて……」

「スイープさんのようにその場で時間稼ぎでもしてみては?」

「ジャーニーさん、さっきはありがとう! キタさんもいつもトレーニング付き合ってくれて助かる、それじゃあ!」

「さっきはありがとうって何!? ジャーニーさん、まさか私がここにいることをトレーナーさんに……!」

「それではミラクルさん、良きプールトレーニングを」

 

 ジャーニーの笑みが一瞬鋭くなり、言葉を封殺されるミラクル。

 そんなこんなで、いつも通りプールに放り込まれるのだった。

 そして夜、ジャーニーとオルフェは寮室でいつものお茶の時間をしていた。

 

「姉上。スイープの遊びに付き合うそうだな」

「せっかくお誘い頂いたんだ。キタさんにも理解してもらえたようで助かったよ。カワカミさんやスイープさんと違って、普段は交流しない相手だからね」

「そうか。……姉上が満足しているなら良い」

「大丈夫だよ、オル。ありがとう」

 

 ジャーニーの机の上には、キタサンから託されたマジカルステッキとプリファイのDVDがある。

 DVDのケースは、手入れされているが年季の入ったものだ。

 

「プリファイ語りができる相手がこんなにできるなんて……スイープさんには感謝しないといけないな」

 

 




引換券でドリジャ育成したんですがドリジャはプリファイシリーズ素で好きだったりするのかなと思いました。スイープカワカミと混ざってプリ語りしてるところとか見てみたい。
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