ある日、ヒシミラクルがトレセン学園を歩いていると最近話題の三姉妹がなにやら楽しそうにやり取りしているのが見えた。
「ねえシュヴァち〜♪久しぶりに3人でデートしようよ~私もお姉ちゃんもさみしいよ〜」
「シュヴァル? 私はあなたの気持ちを尊重したいけれど3人で過ごす時間もないとママやパパにも心配をかけてしまうわ…それはあなたも望んでないでしょ?」
「うう……ふたりとも離してよぉ……」
楽しそうなのは二人だけだった。次女のシュヴァルグランは困り果てた顔で前後の姉妹から離れようとしている。
(ちらっ)
そして偶然にも、ヒシミラクルとシュヴァルグランの目があってしまった。気弱な後輩の縋る目線を直視して、普通の良心があるヒシミラクルは無視することができなかった。
「こらっ、そこのお二人ステイ!!」
勇気を出して、少し離れるよう注意しようとするヒシミラクル。姉妹たちの名前を呼ぼうとしたのだが。
「ヴ……ヴィ……えーと……」
「あれれ? もしかして……」
「まだ私達の名前を覚えてくださらないのかしら……?」
(だって、なんだか二人はつい最近トレセン学園に来たばかりな感じがするし…!)
呼ばれた姉妹はヒシミラクルの意図を汲み取ったのか一旦シュヴァルグランから離れてくれた。端でほっとするシュヴァルグラン。
「それはほら、三姉妹ともすごくお綺麗なものですから」
「あら、そこはおわかりいただけているのね」
不服そうにしていたヴィルシーナは機嫌を直してくれたが、ヴィブロスはにやにやしてヒシミラクルを見始めた。
「そうだお姉ちゃん、代わりにヒシミー先輩で〜ヒシミー先輩と遊ばない?」
「今『で』って言ったよね!?」
「まあそれは素敵ねヴィブロス」
「それじゃあ早速……『箱の中身は何かしらゲ〜ム』♪」
「どこで知ったのそんなセレブと程遠い遊び……」
すっかり付き合わされる雰囲気だが、最早断れる状態ではない。箱の中身のものを手の感触だけで当てるゲームでこの二人ならそう変なものを入れるのこともないだろうと覚悟を決めるヒシミラクル。
「違いのわかるウマ娘目指して、頑張っていってね〜♪」
「ちょっと待って変な高級品とか入れたりしないよね!? 壊れない?」
「心配しなくとも、余興でお金を取るようなことはしませんよ」
カツンッ
「えっなにこれ固い……板?」
慎重に触っていくとなにやら薄いプレートのようなものだった。表面をなぞるように触っていくと。聞き慣れたウマ娘の音声が響く。
【はりきっていこーーーーー!!!】
「わかったサポカじゃないこれ!? キタちゃんのSSR!」
「あら残念!」
「違うの!?」
「正解はRの普通のキタちでした〜♪」
「わかるわけないじゃん!!」
箱の中身を見せられたが、確かに制服姿のキタサンブラックのカードだった。手触りで判断できないと抗議するヒシミラクル。
「あら、デジタル先輩は一撫でで判別していましたよ?」
「デジタルちゃん、恐ろしい子……! だけど普通の私にもわかりそうなやつでお願いします!!」
「じゃあ今度は〜もっと簡単なやつにするね♪」
いつの間にか次の用意を済ませていたヴィブロス。いきなりの難問に心理的なハードルが上がった状態でニ問目に挑むヒシミラクル。
「なんだろこれ、円い…器?プラスチックの……甘い匂いもする」
ぬちゃあっ。ベトッ。
「ぎゃーーーーー!! わかったこれ、はちみードリンク! 多分濃いめ固め!!」
「おお〜今度は大正解!」
「わかりやすいけど最悪だよ!? 素手で触りたくない飲み物ナンバーワンだよ!?」
手についたはちみーを舐め、ハンカチで拭くヒシミラクル。
「だけどヴィブロス? 食べ物を遊びに使うのは良くないわ」
「ゴメンなさいお姉ちゃん…ヒシミー先輩ならはちみー手につけて食べててもくまさんみたいで似合うと思って…」
「誰がプーさんですか」
「さあ…これで最終問題にしましょう」
「まだあるの!?」
ヒシミラクルがはちみーを拭いている間に用意された最終問題。恐る恐る箱に手を入れようとするヒシミラクルだったが。
「いや〜今日もウマ娘ちゃん達が尊い…もうすぐジェンティルドンナさんもお越しになる噂もありますし……」
そこに、たまたまアグネスデジタルが通りかかった。そしてデジタルが見たものは箱の中に下から顔を突っ込まされて死んだ魚の眼をしたシュヴァルグランとその箱の中に手を突っ込もうとするヒシミラクルの姿。
「先輩!! ヒシミラクル先輩、ステイッ!!!」