ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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トレセン学園流円卓会議

秋の聖蹄祭。今年も各クラスごとに出し物を決めて準備を進めていた。

 その一環でヒシミラクル、ファインモーション、シンボリクリスエス、デュランダルの4人は会議室に向かっていた。

 

「出し物のためとはいえ会議室なんて緊張するな〜オトナになった気分っていうか。あ、私書紀やるね」

「エアグルーヴとルドルフが企画承認のために来てくれるんだって♪」

「二人は━━予定より少し、遅れると」

「今年も面白くなりそうですからね……是非会長さんにも承認を頂かねば」

 

 会議室に着くと、丸い机とそれを取り囲む椅子が並んでいた。

 いわゆる円卓だが、それを見て顔が輝いたのはデュランダル。

 

「これは、円卓……! 騎士として、完璧な所作で会議を守らなくては!!」

(あ、スイッチ入っちゃった)

 

 デュランダルは普段は普通……とまでは言わないが常識的で礼儀正しい方だ。しかし何かの拍子に騎士スイッチが入るとちょっとこだわりが強くなることをミラクル達は把握していた。

 

「さぁミラクルさん、クリスエス卿、ファイン殿下。どうぞこちらにおかけください」

「うん、デュランダルちゃんありがと〜」

「Thank you.━━卿?」

「待ちなさい、騎士デュランダル」

 

 ミラクルとクリスエスが勧められるがまま椅子に座ろうとしたとき、ファインが待ったをかけた。その声には、普段の天真爛漫なお姫様ではなく女王の威厳のようなものがある。

 ファインはデュランダルが勧めた椅子の場所を手のひらで指す。入り口から遠い奥の席。

 

「そこは……上座ではなくて?」

「上座!?」

「カニ━━座?」

(上座ってなんだっけ?)

 

 驚くデュランダルに対し、上座がわからないクリスエスとミラクル。

 ファインは2人に目配せしてから上座について説明を始めた。

 

「会議においては入口から最も遠い席が上座……すなわち学園たちの長であるルドルフの席。完璧な所作というならそこまで気をつけるべきではないかしら?」

 

 ファインは他人にマナーを強要などしない。しかし、騎士を志すデュランダルに対しては礼儀や気品を教えるためこういう態度をとることもあった。

 しかしデュランダルは納得いかないようにファインに物申した。

 

「バカな……全員が平等であるための円卓では!?」

「でも現代の日本にはそういうマナーがある。TPOは大事だと思わないかしら?」

「そ、その通りです……」

「Japanese Manor━━勉強に、なった。では改めて……この辺りか」

「あっ、お待ち下さい。クリスエス卿!」

 

 クリスエスが感心したように、席を入り口近くに移動して座り直そうとする。

 しかし今度はデュランダルが待ったをかけた。

 

「……ルドルフ会長を王とするなら、王より先に座るのは無礼なのでは……? トレーナー殿が、この前そのように」

「そうだね、皆で何かするときに立場の上の者から先に始めることは多いよ♪」

「大人同士のやりとりだと謎マナー多いよね〜。トレーナーさんも会議は疲れるって言ってたよ」

「ふむ……そういえば、私のトレーナーも━━」

 

 思い当たることがあるのか、クリスエスが自分のトレーナーとの記憶を反芻するように言葉を出した。

 

「金属制の名刺入れは良くないと━━言っていた」

「名刺入れ関係ないでしょ!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまったミラクル。

 トレセン学園にどんなに高貴なウマ娘が多いと言っても学生は学生。名刺入れなんて持っているウマ娘はいないはずだ。

 しかしクリスエスは至極真剣に、言葉を選んで語りだした。

 

「reason.落とした時━━大きな音を、立ててしまうから。らしい」

「確かに携帯電話の電源を切るなど、会議で余計な音を立てないことは大事だね」

「な、なるほど……?」

 

 ファインが促すように理屈を説明してくれたのでわからなくもないミラクル。デュランダルも真剣な面持ちで聞いていた。

 クリスエスは、デュランダルの腰回りを見て言った。

 

「その理屈でいくと……デュランダルの剣も、Bad Manor━━ではないか?」

「そ、そんな……!? 騎士の誇りであるこの剣そのものが、マナー違反になってしまうなんて……!」

「今までずっと剣持ってたの!?」

 

 それぞれショックを受けるデュランダルとミラクル。デュランダルがレース場で剣を持ち出すことがあるのは知っているが、今も持ってるとは思わなかった。

 

「でもさ、落として大きな音を立てなければいいんじゃない? デュランダルちゃんなら剣の扱いは慣れてるでしょ」

「そ、そうです! この剣は我が写身、もう一振りの池の聖剣! あわや取り落とすことなど!」

「しかし……ルドルフが会議中に。もし渾身のjoke━━を口にしたら?」

「ないよ!! えっあるの!? ないよね!?」

「そんな……騎士として円卓会議に臨みたいのに、この剣を手放さければいけないなんて……!」

 

 あの頭脳明晰にして綱紀粛正なルドルフが会議中にジョークを言うところなど、ミラクルには想像し難い。しかしクリスエスはルドルフをよく知っているため真面目に心配していた。

 デュランダルは自分の剣に今生の別れでも告げるかのように戦慄いており、てんやわんやである。

 

「落ち着きなさい皆。……会議の前に伝えたいことがあるの、聞いてくださる?」

 

 そこで改めてファインが手を挙げて発言する。よほど大事なマナーを口にするのかと3人が緊張して殿下の言葉に耳を傾けた。

 

「私とルドルフ、王が2人でバイキング〜。なんちゃって♪」

「「「ずこっーー━!!!」」」

 

 緊張感0のファインのジョークに、派手にずっこける3人。

 

「ふふっ、マナーも大事だけれど……一番は緊張せず落ち着いて会議をすることだからね♪ ルドルフの真似をしてみたけど、どうかしら?」

 

 ファインは心底楽しそうに笑っていた。ちょっと恥ずかしさもあるのか、頬が赤らんでいる。

 マナーを気にするあまりパニックになりかけたデュランダルを見て、その呼吸を乱すため咄嗟にジョークを言ったのだろう。

 

「王が、2人……2人で、倍━━VIKING.理解した」

「騎士道に心を囚われるあまり会議への集中を欠くところでした……ご鞭撻感謝します、ファインさん」

「うんうん。私たち学生なんだし、会議でもゆるっとゴーだよ」

 

 ファインの思わぬジョークで和やかになり、普通に座って待つことにした4人。

 しかしわちゃわちゃしている間にルドルフとエアグルーヴは会議室に来て、会話を聞いていた。

 

「王が2人でバイキング、か……。私も今度、オルフェーヴルと一緒に話すときに言ってみようかな」

「おやめください会長。彼女きっと怒りますよ」

 




ウマ娘デュランダルに円卓の騎士パロをしてほしくて書きました。02世代のわちゃわちゃ好きです。
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