ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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 ヒシミラクルです。私はトレセン学園のふつ〜のウマ娘。
 周りはすごく頑張りやで変わったウマ娘たちが多いけど、すごく良い人ばかりで……そんな中、ウソつきですぐ人を裏切るウマ娘がいるんです!


ウソツキ! ノーリーズンちゃん

 トレセン学園の昼休み。ヒシミラクルはノーリーズンと一緒に食堂にやってきた。

 昼休み開始から時間が経っており、食堂には沢山のウマ娘達で賑わっている。

 

「お腹すいた〜。私はともかくノーリーズンちゃんはもっと早くこれたのに、付き合わせてごめんね」

「なぁに、ワシとミラ子の仲ではないか! お主に怪我がなくてよかったぞ」

 

 午前のトレーニングはしばらく前に終わったのだが、ミラクルは終わり際にぬかるみで盛大に転んで泥だらけになってしまった。ノーリーズンが念の為怪我がないか確認しつつ、着替えて手や顔を洗っていたらかなり遅くなってしまったのだ。

 

「しかし今日はいちごパフェ無料の日じゃったからのう。この時間だと売り切れてしまったかもしれぬな」

「ええっホントに!? ついてないな〜」

 

 ミラクルは食堂のメニューを確認すると、無料どころか今日のメニューにパフェなんてなかった。

 

「……ってウソツキー! いちごパフェないじゃん!」

「にゃっはっは! 相変わらず愛い反応をするのう〜。しかしスイートポテトはあるぞ。じゃがいもが余りまくったせいで大安売りだそうじゃ」

「あ、いいねそれ! 最近ちょっと寒くなってきたし、あったかいスイートポテト美味しそう〜」

 

 大富食祭で作られる作物は育つのも早くて美味しい。しかしたまに余りすぎることがあり管理しきれない分は食堂で提供されることも度々あった。

 そんなわけで少し遅めの昼食とおやつのスイートポテトをお盆に乗せて空いている席を探し始めた時、あるウマ娘の声が響いた。

 

「ゴルシさん!? あなた私のスイートポテトを全部食べましたわね!?」

「し、知らねーってマックちゃん! ほらポテチの香りがする練り消しやるからさ」

「いりません! 香りでお腹は膨れませんわ!」

「落ち着きなよマックイーン、今減量中でしょ? むしろ食べてもらえてよかったじゃん」

 

 メジロマックイーン、ゴールドシップ、トウカイテイオー。トレセンの誰もが知る有名ウマ娘たちだ。

 

「そういう問題ではありません! あれは、私のトレーナーさんが作ってくださった減量中スイーツで……私にとってはこの辛い減量を耐えるために必要不可欠なものなのです! 今日という今日は許しませんわよゴルシさん!」

「いや、ホントにアタシじゃねーんだって! ゴルシちゃんはマックちゃんのスイーツにはなんもしてねぇ! ただうどんをところてんにすり替えただけだ!」

「そ、それはそれで何やってるのさ……マックイーンも、スイーツポテト3つくらいまた作ってもらえるでしょ? 周りも見てるしこの辺にしとこうよ」

 

 ゴルシがマックイーンにいたずらをして怒られているのをテイオーが眺めている。トレセン学園の日常風景だ。

 

「ゴルシちゃんは相変わらずだね〜。さ、ごはんごはん」

「待てミラ子よ。少し気にならぬか? 今のやり取り……ウソの気配がしたぞ」

「え、そう? じゃあ私もついていこうかな。さっきついてきてもらったし」

 

 ノーリーズンがお盆をおいて楽しそうに近づいていくのを見て、ミラクルもそれに習った。

 

「やぁやぁ皆の衆、ここは一つワシに話を聞かせてくれんか? 本当の犯人に心当たりがあっての

う」

「あなたは……確かノーリーズンさんでしたわね」

「頼むよZUN〜ゴルシちゃんの冤罪を晴らしてくれよ〜ゴルシちゃんの日頃の行いを信じてくれよ〜」

「うどんをところてんをすり替えといてそれはムリでしょ……」

 

 無関係の他人が話しかけてきてマックイーンも少し落ち着きを取り戻したようで、状況を説明してくれた。

 

「うどんとスイートポテトをここに運んできたとき、おばあさまから電話がかかってきて……ここでは騒がしいので、5分ほど席を離れたのです。そうしたらトレーナーさんのスイートポテトが全部なくなっていたのですわ! 許せませんわ!」

「で、マックイーンのお盆にゴルシが近づいてたのをちょっと遠くの席に座ってたボクが見たってわけ」

「ゴルシちゃんはスイートポテトにはなんもさわってねーぞ!」

 

 テイオーもゴルシも、近くで自分の食事をしていた様子はない。少し離れた席からマックの席に近づいてきたのだろう。

 ノーリーズンはゆっくりと頷いて話を聞き終えた。

 

「相わかった。マックイーン殿、犯人はゴルシではないと思うぞ」

「では誰だと言うんですの!? まさかテイオー、あなたが……」

「そ、そんなわけないジャン! ボクはゴルシがなにかしてたから近づいてきただけで……」

「大変だねみんな」

 

 ただの付き添いであるミラクルはのんびりお茶を飲んでいた。そこでノーリーズンはニヤリと悪い顔をして、ミラクルの肩を軽く叩いた。

 

「犯人はお主じゃろうミラ子〜? どうりで食堂に来た時一度見失ったはずじゃ」

「えっーー!? そ、そんなわけないじゃん!!」

 

 突然犯人にされてお茶を噴き出すミラクル。マックイーンの食べ物の恨みに燃える瞳がミラクルを向いた。

 ゴルシは訝しむ目でノーリーズンに聞く。

 

「つってもよぉズン、何か根拠はあんのかよ?」

「もちろんあるとも。……ミラ子の胸ポケット、妙に膨らんでいると思っておってな」

 

 ノーリーズンがミラクルの胸ポケットに手を突っ込む、突然くすぐったい感じがしてミラクルの尻尾がブルブル震えた。

 

「ひゃん!? ど、どこ触ってるのノーリーズンちゃん?」

「恥じらうフリをしても無駄じゃぞ〜? ほれ、この銀紙を見るがいい!」

 

 ノーリーズンがミラクルの胸ポケットから取り出したのは、食べかすのついた銀紙だった。じゃがいもと、甘い香りもする。

 

「え、ウソ!? なんで……」

「ミラ子、お主はマックイーンのスイートポテトから特別な匂いを感じ思わず食べてしまったのじゃ! このスイートポテトの銀紙が証拠よ! 二人とも、ミラ子に見覚えはないか?」

「んーゴルシちゃんは気づかなかったけどまぁミラコーは大人しいしな!」

「あっ、そう言えばボク通りすがるのを見たかも……」

「ヒシミラクルさん……よくもやってくれましたわね!?」

「あわわ……ご、ご勘弁を〜〜〜」

 

 頬を膨らませて詰め寄るマックイーン。その剣幕に怯えて助けを求めるミラクル。

 ノーリーズンは手を堂々と突き出し、ミラクルに目配せした。

 

「……よし! もう良いぞミラ子。本当のことを話して」

「実は私、お昼前にぬかるみで転んで、着替えと手洗いに時間がかかっただけなんです……」

「ワシがずっと付き添っておったからな、間違いない」

「ちょ、ちょっと待ってよ! じゃあ胸ポケットの銀紙はナンなのさ!」

 

 テイオーがミラクルの言い分を否定する。ミラクルにも正直わからないのだが、ノーリーズンはおもむろに自分のポケットからさっき買ったスイートポテトを取り出し、口に放り込んだ。

 

「うむ、さすが理事長殿が推奨したじゃがいもで作ったスイートポテト。まこと美味じゃのう」

 

 食べ終わった銀紙を、何食わぬ顔でミラクルの胸ポケットに入れた。

 ゴルシは察して、わざとキリッとした顔を作って説明する。

 

「ハハーン、さてはミラコーの胸ポケットから取り出すフリして自分の手に握ってた銀紙を出しやがったな?」

「じゃあミラクルは犯人じゃないってコト? 人騒がせだなぁもう」

「だがマヌケは見つかったようだぜ? なぁテイオー……お前なんでミラコーを見たなんてウソついたんだ?」

 

 ギクッ! という音が聞こえてきそうなほどはっきりテイオーが硬直した。

 マックイーンが、ゆっくりと振り返ってテイオーを凝視する。正直とても怖い。

 

「テイオー、あなたまさか……」

「ち、違うモンね! ミラコーを見たっていうのは、勘違いだよ! 多分他の白いウマ娘と間違えちゃったんだって! ハヤヒデとかさ」

「ほうほう、ではマックイーン殿。そのスイートポテトはいくつ用意してあったのじゃ?」

「3つですわ……トレーナーさんが用意してくださった低カロリーなじゃがいもと砂糖無しで作ったスイートポテト、あれが最後だったのです! 珍しいじゃがいもで今度作れるのはいつになるか……」

 

 よっぽどお気に入りかつ珍しいスイートポテトらしい。マックイーンがここまで取り乱すのも納得だった。

 

「テイオー殿、お主は最初言っておったのう?

『スイートポテト3つくらいまた作ってもらえばいい』と! マックイーン殿は全部食べられたとしか言っておらぬのに何故3つと知っておった?」

「そ、それは……見えたんだよ! マックイーンのお盆に3つ乗ってるのが!」

 

 ノーリーズンがどんどん青ざめるテイオーを追及する。テイオーも必死に言葉で抵抗するが、動揺しているのはバレバレだった。

 

「テイオー殿、お主はレースも勉強も天才じゃが、ウソは苦手なようじゃのう? ……テイオー殿の席はここから遠く離れている。お盆に乗っているものの細かい数など見えるはずがない!」

「ほ、ホントに見えたんだってばぁ〜」

 

 地団駄を踏みそうな勢いで否定するテイオー。しかし、マックイーンの怒りと目は誤魔化せなかった。

 

「ゴルシさん、やっておしまいなさい」

「マックちゃんのご命令だ。へっへっへ、天井のシミを数えてる間に終わらせるから大人しくしてなお嬢ちゃん」

「イヤー! やめてええええええええ!!」

 

 ゴルシがテイオーの制服のポケットをまさぐる。ほどなくしてスイートポテトの銀紙と思しきものが3つ出てきた。

 

「テイオー……言い残すことはありまして?」

「ち、違う……これはそう! ノーリーズンと同じで、自分で買ったやつなんだよ! 3つ分! マックイーンのとは関係ないモンニ!」

 

 涙目で最後の抵抗を試みるテイオーに、ノーリーズンは笑顔で肩をポンと叩いた。

 

「それは疑って悪かった……いやぁ絶品じゃったのう、苺入りのスイートポテト。大富食祭さまさまじゃ」

「そうそう! さ、さわやかな酸味がきいてたよね! 話が分かるぅ〜……う?」

 

 ノーリーズンがそっとスイートポテトの売り場を指差す。

 そこには『大富食祭にんじんとじゃがいものスイートポテト』と書かれていて。

 苺は、全く入っていない。

 

「おっと苺と人参を勘違いしてもうた! いやぁ失敬失敬! で、さわやかな酸味がなんじゃって?」

「こ、このっ……ウソツキィ〜〜〜〜!!」

「ウソつきはあなたの方ですわ!! さぁ、理由を言いなさいテイオー!!」

 

 テイオーは観念したのか、涙をこぼしながらマックイーンに頭を下げた。

 

「マックイーン、減量中って言ってたのに我慢できなくてスイートポテトを3つも注文したと思って……大豊食祭のじゃがいもって栄養はすごいけど、カロリーも高いからさ。ここはボクが食べてあげようと思ったら、特別なものだって言われて、ボク怖くなって……ご、ごめん……そんなつもりじゃなかったんだよぉぉぉぉぉ!!」

 

 減量中の友人への思いやりと悪戯心による行動だったらしい。

 泣いて謝るテイオーに毒気を抜かれたのか、マックイーンはため息をついた。 

 

「はぁ、あの追い詰められっぷりを見ていたら怒る気もなくなりましたわ……一応、ゴルシさんもテイオーさんも私の減量を気遣ってのようですし……」

「ゴルシちゃん謹製ところてんマグナムはカロリーゼロで食べ応えばっちりだかんな! ソース焼きそばの味がするところてんを見せてやんぜ!」

「だからといって勝手にすり替えないでくださいまし! テイオーさん、こうなったらあなたも私の減量に付き合ってもらいますからね! 当分スイーツ食べるの禁止ですわ!」

「ええっ、そんなぁ〜」

 

 すっかりいつもの調子に戻ったマックイーン達に、傍観していたミラクルは安心した。

 

「にゃあはっはっは! これにて一件落着じゃのう!」

「うんうん、やっぱりみんないい人ばっかりだよね。……私を犯人扱いした誰かさんを除いて」

 

 ミラクルはノーリーズンからちょっと距離を取ってそっぽを向いた。

 突然犯人扱いされたのは打ち合わせでもなんでもなくノーリーズンの思いつきにもので本当にびっくりしたのである。

 

「おお、すまんすまん! ああするしかテイオー殿のウソを暴く方法が思いつかんでの〜。しかし、ミラ子もワシのウソはわかっておったじゃろ?」

「そりゃー、長い付き合いだもん。わかりますともあれくらい」

 

 ノーリーズンが相手の虚をついたり動揺を引き出すためにミラクルを裏切るのはよくあることだ。よくあってほしくはないがノーリーズンがそういうウマ娘だと理解しているし、その上で友達をやっている。

 

「では、明日のデザートはワシの奢りじゃ! 唐辛子アイスが出るらしいぞ!」

「ほうほう唐辛子アイス……ってそんなデザートがあるわけないでしょ! ウソツキー!」

「にゃーはっはっは!」

 

 




ゴクオーくんを大人になってから知ったんですけどめちゃくちゃ面白かったです。
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