ヒシミラクルはわからない   作:じゅぺっと

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ミラクルとミラクルはズッ友だよ

 全国興行。レースで結果を残したウマ娘達が各地で握手会やサイン会をしたり、世代や適性を超えたエキシビションレースをするイベントである。

 しかし、全国興行は行ってトレセンに帰ってくれば終わりではない。

 

「うえ〜んレポートが終わらないよ〜ミラクルちゃん助けて〜」

「あまり難しく考えなくていいと思うよ。ミラクルは、あったかい人だから」

 

 ヒシミラクルとケイエスミラクルは、カフェテリアで全国興行の感想レポートを書いていた。ケイエスミラクルはとっくに書き終えているのだが、ヒシミラクルが一向に進まないため付き合ってくれているのだった。

 

「札幌まで行ってエキシビションレースで惨敗しました、をいい感じに書くなんて私には何書いていいかわかんないよ〜」

「あはは……今回のエキシビション、距離も短いしおれ以外もスプリンターだったからね」

「ファインちゃんがオススメしてくれた札幌ラーメンに釣られたばかりにこんなことに……」

 

 全国興行で行きたい場所をトレーナーに聞かれて、札幌と答えてしまったのが運の尽き。

 寒い、短い、速いのヒシミラクルが苦手なものが三拍子揃ったレースで最後尾を必死に走る羽目になってしまった。

 

「あっー! ミラクルみっーけ!!」

 

 頭を抱えて真っ白なレポート用紙を眺めるヒシミラクルの耳に、ものすごく元気な声が飛び込んできた。ヒシミラクルが自分の名前を呼ばれたかと思って振り返ると、そこにはギャルウマ娘のダイタクヘリオスがいた。

 

「ヘリオス、今日も元気だね。どうしたの?」

「さっきヒッシー姐さんがいちごゼリー作ってたんだけど一緒につまみ食いしにいかん? てかするっきゃないっしょ!」

「それまだ液体なんじゃ……?」

 

 レポートで頭が疲れているときにヘリオスの元気すぎる声が頭に響く。

 ヘリオスもヒシミラクルに気づいたのか屈託のない笑顔で声をかけてきた。

 

「およ? こっちのミラクルもいんじゃん! せっかくだから一緒にいこ? いちごゼリーは、一期一会だし!」

「ミラクルさんは全国興行のレポートの途中だから……おれも一緒に行ったし完成まで手伝ってるんだ」

「うう、ミラクルちゃんの優しさに応えられない自分が辛い……」

 

 相変わらずレポートは真っ白のままだ。申し訳無さでいっぱいになるヒシミラクル。

 しかしヘリオスはそんなの関係なしにいつも通り笑っていた。

 

「てかなに? お互いにミラクルって呼んでんの!? バリ仲良しじゃん!」

「ま〜ミラクルって名前私たちの他にいないしね。シンパシーみたいな?」

「おれも、ミラクルさんって呼ぶのがしっくりくるかな……」

「ズッ友〜〜〜! じゃあそんな二人のためにウチも手伝っちゃる! 全国興行っしょ? 行った先で感じたデータや映像じゃわからない、ミラクルだけが感じたことを書けばおけまる水産なんよ!!」

 

 なんか勢いよく隣に座られた。近くで意外とキリッとした顔でヘリオスがヒシミラクルに助言をする。

 

「思い出してみ? 札幌レース上に降り立って最初に感じたことは?」

「……寒い、速い、無理」

 

 思い出して、プールに放り込まれる直前のような冷たい目になるヒシミラクル。

 その言葉にヘリオスは勢いよくヒシミラクルのレポート用紙に文字を書き始めた。

 

「それだ!! 札幌寒すぎやばたにえんの無理茶漬けっと!!」

「代筆はありなのかな……でも、不思議とあの時の寒さを思い出す気がするよ」

 

 ミラクル2人で札幌レース場に降り立ったことを思い出す。まだ冬ではないとはいえ、札幌は流石に体に響く寒さだった。

 

「そうだ……なんか思い出してきた気がする。今なら書けそう……かも!」

「さすがヘリオスだ……おれも一緒に思い出してみるよ」

「よーし、このまま一気にバイブス上げてこーぜー!! レース場についてそっから?」

「えっと、そうだ一緒の控室に入ったデュランダルちゃんが暖炉前から動かなくなってて……でもパドックに出た瞬間騎士の顔になってて立派だったな〜」

「おれもルビーと同じ控え室だったけど、ルビーもちょっとだけ控え室から出るのが遅かったね。バクシンオーはいつもどおりだったけど」

「お嬢も一緒だったん!? うらやま! そんでそんで?」

 

 さすがギャルというだけあって、ヘリオスは相手の話を引き出すのが上手かった。

 ミラクル2人がレース場での思い出を語り終える頃には、まとまった量のレポートが出来ていた。

 

「ありがとうミラクルちゃん、ヘリオスちゃん……! これでトレーナーさんにも迷惑かけずに済むよ〜」

 

 レポートもあまり溜め込みすぎると管理するトレーナーの負担が増える。なのでなんとか期限までに終わらせることが出来て安心するヒシミラクルに、ヘリオスとケイエスミラクルはそれぞれの仕草で笑う。

 

「いいってことよ! ミラクルの友達はウチの友達! つまりミラクルも友達っしょ! じゃあいちごゼリーいこー!」

「そうだね、もう完成しててもおかしくないし……せっかくだからルビーも呼んでみようか」

「Foooooo!! お嬢キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

「私も、トレーナーさんのところに提出したらすぐ行くね〜ほんとにありがと〜」

 

 ヘリオス今日イチの大声に驚きつつも、レポートをトレーナーの下に提出することが出来たヒシミラクル。

 しかし、ヒシミラクルは忘れていた。

 そのレポートはヘリオスによって代筆され、全てギャル語で書かれていることを。

 

 

 

「ちゃんと期日までにレポートを出してるな。えらいぞヒシミラクル……ってなんだこりゃ!?」

 

 

 等とレポートを読んだヒシミラクルトレーナーが驚愕し、ギャル語の解読のために奔走する羽目になったのはまた別の話。

 

 




全国興行で最後尾を必死に走るミラ子がめっちゃかわいい。
今日からの新シナリオ楽しみですね。
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