「とにかく、奴を倒すのが先だ!」
「結局これかよ!」
初めに突っ込んできたのはデスローグ。その巨大な左手の爪から、火球を連発してくる。対するセーレは宙へと逃亡、両手から光弾を発射し、互いに火球と光弾を撃ち落とし合う機動戦へと突入した。
小惑星を盾にしたり、相手の背後を取ったりしながら、二つの軌跡を描き高速でぶつかり合う。
(……一撃で仕留める!)
デスローグとの撃ち合いの中、エネルギーを溜め始めるセーレ。狙うは火球を放った後のインターバル、そこをピンポイントで射抜くつもりだ。爆炎の中、次弾発射のためエネルギーを溜めているデスローグ、動きを予測しその軌道上に狙いを定めた。
しかし、そう簡単にはいかない。
「オラァ!」
「ちっ!」
いつの間にかセーレの頭上をとっていたヴィラニアスが、無数の光線を発射したのだ。咄嗟に構えを解除しバリアを貼る。幸い直撃はしなかったが、攻撃の圧に耐えきれずに落下、小惑星の一つに激突した。
(まだだ、他の連中も……!)
すぐさま起き上がりあたりを警戒。その瞬間──ナニカ冷たいものが首筋に触れた。
「!」
身をかがめその場で体勢を低くした瞬間、先ほどまでセーレの首のあった空間を、白銀の刃が貫いていた。
もし一瞬でも反応が遅れていたら、今頃セーレの首は吹き飛んでいただろう。そう考えるとゾッとした。
「あっ、バレた?」
刃の持ち主は、氷結のグロッケン。おどけたような声を上げたが、すぐさま二撃目を打ち込んでくる。
胴体を狙った一突を体を捻って回避し、その腕を押さえつける。そして腕部に一発入れて剣を払うと、距離をとって腹部に蹴りを一発入れ込む。
「デスシウムスラッシュ!」
グロッケンが怯んでいる間に右手でデスシウムスラッシュを生成、一気に接近すると、首元にゼロ距離で押し付ける。
「セイッヤァ!」
「ちょっ!」
しばらく火花を飛び散らせた直後、爆発を起こし粒子状に分解されたデスシウムスラッシュ。互いに距離を取る二人だったが、爆煙が晴れる直前で、セーレはグロッケンの顔面に向けてドロップキックをお見舞いした。
「うわぁぁぁあ!」
勢いよく彼方に吹き飛ばされるグロッケン。しかしそののことを気にしている暇もなく、次なる攻撃がセーレを襲う。
「ギャアアア!」
「次は私たちだ!」
グロッケンと入れ替わるように向かってくるタイラント、そしてジャタール。まずはタイラントの振り上げた腕による攻撃。頭部めがけてのそれを、両手をクロスして防御。ガラ空きになった腹部へ蹴りを入れ込む。続けて追撃を試みるが、横から割り込んだジャタールの腕がそれを
防いだ。
さらにもう片方の腕が、セーレに迫る。
腕を振り上げ防御、体へと届く前に受け止めることに成功する。だがジャタールはそれを見ると、不敵な笑みを見せた。
「ギョホホホホ、引っかかったな!」
「……なに?」
「知っているか?
我らヒッポリト星人のブロンズ化能力を!」
瞬間、突如セーレは体の異変を感じ取った。
「……体が…重く……!」
ジャタールに触れられた部分が、黒味がかった石像のように変化していた。まだ変わっているのは手首あたりまでだが、少しずつ侵食は腕の方まで迫ってきている。
「ギョホホホホ!」
「ちっ!」
ジャタールから距離を取り、再び上空へと逃亡。しかしジャタールとの接触を断ち、どれだけ距離を取ろうとも体の石化は止まらない。このまま放置したままにすれば、全身が石になるのにそれほど多くの時間は掛からないだろう。
(一か八か、体の中から打ち破るか……?)
このまま戦闘を続行するのは困難だ。余計な事を考えている暇もない。多少のダメージを覚悟で、石化を解くのもやむを得ないだろうが………
「余計な事を考えている場合か?」
しかしやはり、その程度の猶予を与えるほど彼らも優しくはなかった。
石化した部分で攻撃を受け流すが、それでも体の至るところにいくつかの光線が命中する。バランスを崩しそのまま落下、衝撃で腕が小惑星の一部に食い込んだ。
「まずい……腕が!」
セーレの石化は、既に二の腕あたりまで進んでいた。必死にエネルギーを貯めるが既に内部まで侵食は始まっているようで、どれだけ力を込めようともびくともしない。
おまけに石の体積が増えたことで動きが鈍くなっている。腕を引き抜こうとしても駄目だ。深い部分まで入り込んでおり、セーレからも拳が見えなくなっている。
「よーし、追い詰めたぞ」
「ギョホホホホ!これも私の手柄………」
「石になる前にぶっ潰そうぜ!」
「◾️◾️◾️◾️!」
「ギャアアア!」
セーレの前に姿を現した四人と一匹。皆、勝利を確信したような余裕な笑みを隠さなかった。
しかしそれも無理はないだろう。
客観的に見てもセーレにとっては圧倒的な不利な状況。本人もそれは理解していた。
(エネルギーもロクに操作出来ない上に、体力の消耗も激しい。実力的に考えても、あちら側が圧倒的に有利だ。だがあと二つ、俺だけが持っているアドバンテージがある。しかし………アレを使うのは……)
「さて、言い残したい事はないか?」
右手にエネルギーを溜めながら、ヴィラニアスがセーレに問いかける。そう、これこそが一つ目のアドバンテージ、彼らのセーレに対する認識の甘さだ。
彼らはセーレと自分たちの実力差を正確に把握している。それ故か、先ほどまでの戦闘でも幾分か手を抜いたような言動をしていた。そこに慢心が生まれる。この隙を突けば、僅かではあるが可能性はある。
しかし問題は、もう一つのソレをどうするか否か。
(下手をすれば自爆、たとえ成功したとしても大きなダメージは免れない………いや、やるしかない…………よな!)
「そうだな、遺言ねぇ〜。悪いが何も言うことはない。なぜなら、俺はここで死ぬつもりはないからだ」
「そうか……ならばここで、死ね!」
放たれた光弾がセーレに迫る。威力重視で調整された光弾は今までにない大きさであり、とても避けられそうにない。
この場にいる全員がセーレの死を、そして彼ら五人の勝利を確信していた。たった一人、当事者の一人であるセーレを除いて。
そして激突の瞬前、黒い閃光が宙を走った。
「なんだ……?」
不可解な現象に疑問を抱くヴィラニアス。すぐさま確認しようとしたが、立ち昇った煙幕によりセーレの姿はまったく見えない。
そして数秒の時が経ち、煙幕が完全に晴れた時、煙の向こう側が姿を現した。
「あっ倒した倒した!」
「いや待て……あれは、何だ?」
そこには一つの石像が刺さっていた。地深くに刺さった黒味がかったソレは、真ん中あたりで不自然な角度で曲がっている。まるで、
「─────驚いた?」
「⁉︎」
不意に後ろから聞こえた声に、思わず振り向く。するとそこには、先ほど倒されたはずのセーレが立っていた。一瞬幻術の類いかと疑ったが、それはない。
先ほどと同じ容姿、声、そしてその体の内から感じられる光のエネルギー。どこを取っても先ほどのセーレと同じだった……たった一点の差異を除いて。
「貴様……その腕は、一体⁉︎」
「結構危なかったよ、アレは」
体の大部分に変化は見られない。たった一つの違いあるとすれば、その右腕。先ほどブロンズ化されていたはずのその腕は、
「激突する瞬間に内部にエネルギーを溜め、ブロンズ化していた腕との境目で暴発させた、といったところか?」
「流石自分の能力のことだ。全部合ってるよ」
「しかし体力の消耗も激しいだろう、再生が間に合うかな?」
ジャタールの言った通り先ほどからセーレの腕の断絶面からは、漆黒の粒子と光の粒子が絶え間なく溢れ出している。普通の者ならばかなりの痛手だ。しかし今のセーレからは、その事を気にしている様子は見えない。むしろ、謎の余裕さえ醸し出していた。
「俺の体は特別製でね。こんなことも出来るんだ、よっ!」
セーレの体から溢れ出した漆黒の閃光が、肩周りに纏わり付いた。そして徐々に腕の形を形成、その体を再生し始めた。
外から見れば不気味な光景に見えるだろうが、当の本人はそんな事を気にしている暇はなかった。
(久しぶりにやったけど………キツイな)
無論先ほどまでの態度はブラフ。こちらの弱みを見せないためのハッタリだ。
(動揺は誘えた。ならばあとは……!)
「セイヤッ!」
脚にエネルギーを溜め、地を蹴った。先ほどの動揺が広がっている彼らには、反応するまでに一瞬のラグが生まれる。
そんな中でセーレが狙ったのは、
「まずはお前だ……ジャタール!」
「ぐうっ!」
ジャカールを蹴り上げ、宙へと放り出す。しかしジャタールもすぐさま腕をクロスにし、防御の体勢をとる。
「ハァアアアー!」
しかしその程度の防御は気にしないとばかりに、ジャタールへとラッシュを叩き込むセーレ。拳が激突するたびに、込められたエネルギーが黒き閃光となって宙へと広がっていく。
十数秒に渡る猛攻に、ジャタールもペースを呑まれてゆく。そしてセーレはそんな中、あえてラッシュを止めた。そして放たれるペースをずらしての一撃。
エネルギーを溜めた一撃により、ジャタールの体は大きく彼方に吹き飛ばされる。背後に広がっていた無数の小型のデブリにぶつかり、大きな一つの小惑星にめり込んだ。
完全にペースはセーレのものだ。しかし当の本人は、ある疑問を抱いていた。
(今の感覚……さっきまでとは何かが違う………一体?)
先ほどの拳に込められた力の違和感。明らかに今までに使っていた力とは、違うナニカとなっていた。
(エネルギーのチャージ………だが何が……いや、そう言うことなのか?)
「まだだぁ!」
「っ!」
小惑星から起き上がったジャタールはセーレの姿を捉えるや否や、すぐさま一直線に向かってきた。
(ものは試しだ。もう一度………!)
先ほどの感覚を思い出し、もう一度拳に力を入れる。意識するのは拳に込める力、そして衝突の際にその上から流すもう一つの力。
「セイヤッ!」
ジャタールを迎え撃つために放った拳は見事頭部に命中、そのまま真っ逆さまに落ちていく。どうやらセーレの考察は当たったようだ。
(あらかじめ溜めていたエネルギーに、もう一つのエネルギーをぶつけてインパクトを起こす。そしてそのインパクトで発生したエネルギーを発散……これなら!)
ジャタールの落ちた地に降り立ったセーレの前に、ジャタールを庇うようにして他のメンバーが前へ出る。
対するセーレは、構えを取った。
イメージするのは父────ベリアルの構え。
今まではただの真似でしかなかった。だがしかし、今の彼は違う。
光と闇など関係なく、その両方を内包して放つ輝き。両極に位置するからこそ、無意識のうちに敬遠していた方法。互いを排するのではなく互いを完全に混ざり合わせる。
闇と光の調和。それが今、新たな可能性を見せる。
「はあぁぁぁぁ!」
咆哮が空気を震わせた。地が割れ、体の周りに広がった漆黒の稲妻が、無数の瓦礫を空中に浮かび上がらせる。
首を回しながら両手を広げ、力を込める。
腰を低く構え手首を十時に組む。両手を合わせたことでエネルギーがスパーク、衝撃が発生する瞬間にさらにエネルギーを押し込んだ。
全てを無に帰す破砕の一撃、その名は………
初見時にレッキングバーストをレッドキングバーストと間違えた思い出
・レッキングバースト
ウルトラマンジードの必殺技
この世界ではセーレが編み出したものが、ジードの遺伝子情報に組み込まれたという設定に
・セーレ
最初の実験体クローンとしてあらゆる試験を行うために作られたため、耐久力並びに回復能力が非常に優れている
闇と光の両方の力を持ってはいるが、両方を使い分けることが出来るというわけではなく、その両方の力を同時に使うことでようやく人並みの力を出せる
・ダークネスファイブ
油断と慢心があったが、最初から本気を出せていたら覚醒される前にセーレを倒せていた
感想・評価お待ちしています