俺はリクのお兄ちゃんだぞ!   作:傘葉

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父と子と

 

怪獣墓場を後にして数ヶ月、セーレとスライはある宇宙のある要塞へと足を運んでいた。

 

「珍しいね。父さんの方から連絡が来るなんて」

「戦争の準備もひと段落したころでしょうし、何か別のお考えがあるのでしょう」

 

 ベリアル軍の本拠地となっているこの宙域では無数のレギオノイドが警戒に当たっている。二人の姿を捉えた鉄人形達は、事前にプログラムされている情報に乗っ取り道を開けていく。

 

 要塞の壁面へと到達し、手をかざした。

 

 すると接触点を中心とするように円形の入り口が生成され、二人が横並びになっても難なく通り抜けられる抜け道が開通した。

 

 要塞内はベリアルの意向によりほとんど無人だ。昔はダークネスファイブのメンバーのための部屋などもあったらしいが、スライ一人になった今、主のいないその部屋も存在意義のないただの無意味な空間となっている。

 そんな物寂しさ溢れる領内をどれだけ進もうとも、人っ子一人合わないどころか気配すら感じられない。目に入ってくるのはデブリを掻き集めて出来た継ぎ接ぎの壁と、そこに埋め込まれた禍々しい色をしたエネルギーケーブルだけだ。

 

 しばらくが経った頃、進行方向に灯りが見えた。スピードを落とし、ゆっくりとその中へと入っていく。辿り着いた先にあったのはただ広いだけで何も無い空間、そしてその中央に一人の戦士がいた。

 

 玉座に腰を深く掛けており、その右手には究極の召喚機『ギガバトルナイザー』が握られている。上空より降下するセーレ達の姿を捉えたこの部屋の主は、ゆっくりと顔を上げた。

 

 地に立ち、彼と向かい合ったセーレの目が交差した。

 

「久しいな、我が息子よ」

「お久しぶりです父さん」

 

 セーレと類似した血液のような赤と漆黒のボディーカラー、マグマ色をして吊り上がった目、その禍々しい姿は、見た者に悪魔を連想させる風貌だった。彼の名は、

 

「ベリアル陛下、ただいま帰還いたしました」

「ご苦労だったなスライ」

 

 ベリアルは手に持つギガバトルナイザーを玉座に立て掛けると、ゆっくりと立ち上がった。

 

「随分と見違えたな」

 

 ベリアルが首を回し肩を鳴らすと、それを合図にしたかのように、スライがその場から退いた。

 

 そして次の瞬間には、ベリアルの爪先がセーレの眼前へと迫っていた。

 

「タァッ!」

 

 咄嗟に腕を払い、もう片方の腕で一発。しかし難なくと手の平で受け止められる。腕を挟み、二対の瞳が交差した。

 

「なるほど……強くなったなぁ。それでこそ俺の息子だ」

「まだまだ、こんなもんじゃないですよっ!」

 

 事前にスライに聞かされていた父からの洗礼。予想はしていたが、それを上回るほどに強烈だ。

 

 言葉は不要。だとするならば、

 

 

 互いに腕を引き距離を取る。そして瞬間、沈黙が広がった。

 

 お互いに相手の出方を窺っているのだ。それぞれに、セーレはベリアルの本気を見たことがないから、ベリアルはセーレの成長を測り切れていないから。行動は一緒だが、そこに至るまでの思考は異なっている。だが互いに、警戒を怠っていないのは、事実であった。そしてこの膠着も、寸刻で終わりを迎えた。

 

「シャアッ!」

 

 

 先手を取ったのはセーレ。足元のデブリ製の床に亀裂が入る勢いで、前方に大きく跳躍。勢いそのままに片足蹴りを放った。対するベリアルは左右の腕を交差させると、胸元でそれを受け止め押し返した。

 

 押し出されたセーレは空中で一回転すると、地面へ向かい滑空しながら両腕を胸の前で重ねた。

 

「ハァッ!」

 

 そして着地の瞬間、水平方向に腕を広げ光の刃を解き放った。『レッキングリッパー』セーレが一ヶ月の間に編み出した技の一つだ。

 

 赤黒色のプラズマを纏った光刃はベリアルの足元に吸い込まれるように命中、黒煙と共に粉塵を巻き上げた。

 

 ベリアルに命中はしなかったが、セーレの狙いはあくまでも牽制の為だった。次なる一撃を放つため、両腕を組みなおす。しかし先ほどの攻撃をもろともせず、煙の向こうから黒い影が迫っていた。

 

「ヘアッ!」

 

 構えを解き身を屈めると、ベリアルの腕がセーレの背中を掠り、先ほどまで胴体のあった空間に拳をぶつけていた。すぐさま足払いで態勢を崩そうと試みるも、軽々と跳躍され避けられる。ベリアルはセーレに、戦闘のペースを渡すつもりはないようだ。

 だが、今彼は空中を飛んでいる。そこで回避運動を取るのは難しいだろう。

 

 セーレは右手を振り上げると、円形状にエネルギーを生成。真っ直ぐにベリアル目掛けて放り投げた。

 

『八つ裂き光輪』ウルトラマンの数ある技の内の一つである切断技、その派生技だ。本家よろしく大抵の物質なら真っ二つに切り裂くことが可能となっている。先ほどのレッキングリッパーに比べ攻撃範囲は狭いが、その分一撃一撃の威力は高くなっており精密射撃も可能となっている。

 

 セーレが発射したそれが、ベリアルの顔前へと迫る。だが命中する寸前、ベリアルは両手でそれを挟み込むと、地面に向かって投げ捨てた。落とされた光輪は粉々に破壊され、その場で光の粒子となり消え失せた。

 

 そして危なげなく地面へと降り立ったベリアルへと、セーレの拳が降り注ぐ。一撃一撃にエネルギーが上乗せされ、威力は先ほどの蹴りに比べても重い。だがそのどれもが、ベリアルに決まる事は一度としてない。

 

 腕や肘で上手いようにいなされ、逆に腹部へ蹴りを決められた。

 

「クッ……!」

「そんなものかぁ!」

 

 膝を着きそうになったセーレの頭を乱暴に掴み、無理矢理立ち上がらせると、床に向かって放り投げた。

 

 セーレは床に激突する寸前、片腕を伸ばして支柱にすると体を捻って一回転。ベリアルに体を向けた状態で着地すると、両手を合わせその指先を向けた。

 

「レッキングストーム!」

 

 雷撃を纏った旋風がベリアルを襲う。しかし、数メートルほど後退したのみで大きなダメージを受けた様子は無い。

 

「だったら……!」

 

 両腕の向きを変えレッキングストームを床や壁、或いは天井に激突させた。巨大な両手剣を振るうような手捌きで、次々に瓦礫を量産していく。

 

 そして、破壊された天井の一部が、大きな纏まりとしてベリアル向かって落下していった。

 

 自身の頭上に現れた影に、ふと顔を上げたベリアル。

 

 その瞬間、セーレは大きく腕を広げた。

 

 

「レッキングバースト!」

 

 

 黒い稲妻を纏った光線は、頭上から落ちてきた瓦礫と同時にベリアルに直撃。この大部屋一面に黒煙を舞い上げた。

 

「やった……か…?」

 

 父の姿が見えなくなり、セーレは構えを解く。

 

 手応えはあった。直撃の瞬間もその目で見た。だが、

 

(違和感……あの人がこの程度で……)

 

 それが敗北へのノイズとなった。

 

「甘いな」

 

「⁉︎」

 

 横から来た衝撃に体が押された。上下が何度も反転しながら、大広間の床を転がっていく。目の焦点が回復し、すぐさま体を起こそうとしたとき、

 

「お前の負けだ」

 

 セーレの目の前には、父の右腕が立ち塞がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「各部復元状態良好、エネルギー回復率も安定。我ながらいい出来だ、とでも言うべきかな」

 

 

 回復カプセルに入ったセーレの姿を見ながら、表情筋が死んだように顔に無表情を貼り付けた一人の男が呟いた。

 

 先ほどのベリアルとの戦闘で意識を失ったセーレは、彼の元へと運び込まれた。幸いベリアルが手心を加えたのか、エネルギー消耗と多少の浅い傷のみに被害は抑えられていた。

 

一通りの異常がないことをチェックした彼は、続いて別のモニターへと目を移す。

 

「遺伝子情報を抽出、解析……複製開始」

 

 そこに映っていたのは、先ほどセーレの体から取り出したベリアル遺伝子の一部。スライとの修行旅で鍛え上げられたその力は、生まれたばかりの頃の彼からは考えられないほどに進化していた。

 

「素晴らしい……流石はベリアル様の御力だ」

 

 セーレの戦闘データを閲覧する彼の目は、怪しげに煌めいていた。しかしその中に映っているのは、セーレ本人ではない。

 

「この力を使えば、アレを完成出来る。待っていてくださいベリアル様」

 

 先ほどまでの無表情は何処へ、大きく口を歪ませると男は笑い声を響かせた。

 

「これを使えば、もっとあなた様のお役に立てる……しかし」

 

 またもや表情は一変、怒りに満ちた顔を窺わせた。

 

「その為にはお前が邪魔だ……!」

 

 続けて彼の前には、ある一体の巨人が現れた。セーレともベリアルとも違う闇の巨人、彼が作り上げようてしている二つ目の命。

 

「セーレェ……私はお前を倒してみせる……!」




ちなみに新しい弟はリクではないです

・セーレ
レッキング系統の技を開発し、現状フィジカル面では宇宙警備隊の通常隊員程度の実力はある

・ベリアル
セーレとの戦闘ではかなり手を抜いていたが、それでもなんだかんだ楽しんでいた

・かわいそうな人
実質セーレのママ
ただしかなりのコンプレックスを抱いている模様

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