複数の中小企業合同で行う輸送車両の護衛依頼の休日を利用した、オルトを加えた徒党の合同訓練は徒党側にもオルト側にも有意義な結果を残した。オルトが訓練ならば対人戦闘を数多く行いたいという要望を快く徒党側が受け入れ、徒党に所属しているハンター達をランダムに選出し、選ばれた者達を即興の部隊としながら、オルトとの模擬戦を行わせた。
人選は相性やハンター歴等を完全に無視したもので、徒党側のハンター達としては、今日初めて組んだ相手との即興で、徒党が何故か優遇している余所のハンターと模擬戦を行うというものだった。
オルトの大まかな情報は前日に知らされており、大半の者は高性能な装備に身を包んだだけの低ランクハンターという、ハンターサイト等の一見したオルトへの評価は訓練が開始された瞬間に砕かれた。
選出された複数人でゆっくり詰めて行き、逃げ場を無くして囲んで叩くという当初の戦術はオルトが開始と同時に訓練場を疾走し、各個撃破へと動き、その挙動、射撃の精度、そして自分達の戦術が上手く嵌まった際の対応力の高さに、低ランクの者達は蹂躙され、同程度のランクの者達は翻弄され、高ランクの者達も対処に焦る事態となった。
笑っていた同ランクのハンター達は全く笑えない状況になり、高ランクのハンター達も複数人選出されたとしても油断していれば速攻で負けかねない実力を持つ相手との本気を出して行う模擬戦へと変わっていた。自分達の休憩中に、オルトの対戦相手に選ばれた場合、誰と組んでもオルトを倒せるように戦闘技術の解析、その対応方法を年上年下ランクの上下関係なく交流、模索しながら徐々に対策を練っていった。
数度の模擬戦を終えれば、オルトと同程度もしくは以下のハンターからしてみれば、オルトに勝てば相応の自信を得られる。より高ランクのハンターからすると、確かな実力が有ろうと結局はハンターランクがたった26のハンターに負ければ、勝った者達に後日笑われかねない上、興味本位で訓練施設に足を運び、模擬戦を見に来た企業の職員や徒党の事務員からの評価も悪くなる為、負けるわけにはいかなかった。自分がいつも通り動けても選出された他の者達が失態を犯せば不利な状況へと変わる。そんな事態にならずに済むように自身の経験や知識から多くの事を教えることになった。
それでもオルトの位置取りや射撃の精度、不利から脱する為の状況判断能力や咄嗟の危機回避能力は徐々に洗練されていき、高ランクのハンターのみの人選の時も圧勝することは出来なくなっていき、数的有利を持っているはずの徒党側の勝率は徐々に減少していった。
そして訓練時間の終了時刻が迫ったタイミングでクモンズが仕組んだことにより、同じ依頼に携わっている若手ハンター同士での、オルトと姉妹達の模擬戦で合同訓練は終了することになった。
クモンズの予想としてはオルトとの模擬戦に姉妹が勝てば徒党側の予定通り箔が付く。負けたとしても内容によっては。
だがその読みはオルトの全力によって叩き潰されることになった。
オルトとの食事を終え、徒党の居住施設に戻っていた姉妹は寝る準備を済ませ、オルトとの模擬戦を何度も見返していた。オルトの速度が速い為スロー再生にしながらだ。
専用の装置を借り、立体映像で戦う3人を第三者の視点から見ながら、どのような挙動をオルトが取っていたのかの確認をしていた。
開始と同時にオルトが今までの模擬戦で見せなかった速度で駆け、姉妹達との距離を強化服の身体能力を十全に活かした速力で詰めて行った。明らかに隠密、索敵、死角からの狙撃という選択肢を奪うための挙動だ。ルインが言った通り数的有利を姉妹が持っている。だからこそ、その優位性を帳消しにする立ち回りを採った。
何度も見返すことでオルトの挙動の意味を理解する。
「……ここ。ここですね。私が本当に、僅かに遅れた瞬間に私の方向へ駆け始めました」
「この隙を生むために銃を向けたってこと? 確かにオルトの銃の威力や連射速度は他の模擬戦で分かっていたけど、警戒していた私達が回避するだろうからってそれすらもブラフに使ったってこと?」
「いえ、最初に銃を向けた段階で勝てればそこで終わりに。でも、セレスを倒している間に私に攻撃されることを考慮して、でしょう。私を倒すのを選択した後の経路も見事です。セレスの銃では破壊するまでに時間の掛かる瓦礫で射線を切り、数秒だけですが確実に私と1対1の状況に持ち込めるようにしてますね」
スロー再生と一時停止を繰り返しながら自分達の負ける場面を見ていた。
銃の性能も強化服の性能も段違い。それでも戦術立案は使用者にしか出来ない判断だ。何時如何動くのか、刻一刻と変わる戦場で如何に早く判断を下せるか。それは着用者が行う事だ。
第一、勝つと宣言した時にはオルトの装備や戦闘能力を知っていた。勝率など皆無の戦力差では決してない。姉妹の銃でも頭部を撃ち抜けば倒せるし、胴体部分でも数発当てれば貫ける設定の威力を持つ弾薬だった。だからこそオルトは運悪く当たる可能性すら警戒し、そもそも撃たせないという選択を採った。
翻弄し各個撃破。自分の攻撃に対して反応もさせない、対応策を考える間隙すら与えないという行動を押し付け模擬戦を終えた。
「私達の銃でも当たれば無傷じゃ済まない。……だから実戦用の本気、か」
「実戦だと被弾したら動きも鈍りますからね。回復薬を使えば治る怪我だったとしても治るまでには時間が掛かりますし」
「まず撃たせない。自分から果敢に攻撃して相手が攻撃する機会をそもそも奪うって、随分強引な奴。それまでの模擬戦じゃ一切見せなかったのに」
「確かにそれまではこちら側の行動への対応って感じでしたね。私が本気で来て欲しいと頼んだから……、でしょうか」
「……さあね。でも私達相手にそれをしてくれるだけの何らかの理由があっただけ、とか」
姉妹がオルトとの食事を終えて徒党に帰還して最初に行ったことは、姉妹へオルトの勧誘を指示していた幹部への報告だ。
訓練終了時のオルトの態度により、姉妹が勧誘すればと思い、高い店の個室も徒党の名前で予約を取っていた。敢え無く断られてしまったが、姉妹とオルトの関係は良好な物になった上、先日まで気が逸っていたセレスの印象が模擬戦以降、随分と変わっていた。多くのハンターを見てきた経験から良い変化だろうと思い、成果は有ったとして経理を黙らせることにその幹部は決めた。長時間連続して模擬戦を繰り返したオルトの消費した消耗品の数は相当の量になっており、高い回復薬も数個購入することになっていたが、有能なハンターが更に成長したという事実により問題は自分の権限で消すことにした。
2人が報告を終えて居住施設へ戻る途中、廊下にはFARBEの営業が来ており、事務員へオルトの模擬戦を宣伝材料にしながら当社製品を勧めていた。少なくともオルトの戦績は悪い物ばかりではない。明確な格上達相手にも何度か勝利を収め、最後の模擬戦に至っては施設に居た大半の者を唖然とさせていた。文字通り生きる広告塔の役割をオルトは意図しない形で果たしていた。
「企業の人に言われたから私達に本気を出した……ですか。可能性は無くも無いですが、それならもっと上のランクの人との模擬戦の時にすれば良いですよね?」
「そうなのよねー。私達も若手内で上位ってだけで徒党全体から見れば上の下が良いところだし。本当に分からないわ。依頼中も結構態度悪くしちゃってたし、そうしてくれる程好かれる要素なんてないと思うけど」
「……見た目を気に入られたとか! セレスは可愛いですから!」
「……無いわね。食事に誘ったら、真面な服が無いからって強化服着て来るような奴よ?」
最後の最後で本気を出し、姉妹との模擬戦を行ってくれた不思議な少年の意図を2人で考えるが適当な答えが浮かぶことは無かった。
流石に眠らなくては明日に響くと考え立体映像も部屋の明かりも消し明日に備える。
機会さえ有ればまたゆっくり歓談でもしたいと考えながらセレスは眠りに就く。夢の中にいる自分は緩慢に過ぎる時間の中で、オルトとの戦闘を自由に楽しんでいた。負けても、負けても、何度負けたとしても立ち上がり銃を握って、前に立つ紅い瞳の少年に向かって駆け出した。
輸送車両の護衛は順調そのものだ。周辺から襲って来るモンスターの群れの対処も問題無く済み、局所的に色無しの霧が発生した場合でも、依頼にやる気を取り戻したクモンズやファナのサポートにより性能を向上させた情報収集機器を使用しているオルトが先んじてモンスターの対処を行っている。
雨天時は運行を止め、泊まっている都市で臨時休日としている。
東部の雨には濃い色無しの霧の成分が含まれているとされており、雨が降るとその地域の色無しの霧の濃度が上昇する。その状態での運航はモンスターの接近に気付かず接近を許す上、銃の狙撃精度が落ち有効射程も短くなる。不利な状況下での運航を行う必要は無い。
オルトは泊まっている都市の下位区画にあるハンター向けの店に訪れ、消費した弾薬やエネルギーパック等の消耗品を購入していた。依頼開始時の立て替えコードの上限額は既に超えているが、FARBE側からその上限を増やしたという連絡を貰った為、オルトの懐へのダメージは皆無だ。
訪れた店は下位区画でその都市内で高ランクのハンターを客層としており、最初オルトを見た時はハンターオフィスに掲載されているオルトのランクを確認したのか、顔を顰めたがオルトの装備を見てから態度を少し改め、オルトが注文した品を聞くと困惑していた。明らかにそのランクで入手可能な金額ではないからだが、立て替えコードを添えて購入処理を行うと何の障害も無く通った為、現在は在庫を駐車場に出して貰っている最中だ。
『今日も特に問題らしい問題は無かったな。良かった』
『モンスターの襲撃も単独もしくは複数のチームで対処可能なものばかり。オルトだけで対処可能な上、訓練に使える量が来てくれるのは喜ばしい事ですね』
『だな。おかげで移動中の車上からの射撃の精度が結構上がった。……ただ前よりも任される群れの規模大きくなってないか?』
『事実大きくなっています。オルトが徒党との合同訓練を終えてからですね。随分買われるようになったようで私は嬉しいですよ?』
『……はあ。そのおかげで討伐数は上位に入ることになったしな。輸送車両に被害は無し。モンスターの討伐数で報酬額は上がるんだ。終わった後良かったって笑えるように注意して今後も臨むか』
オルトの索敵能力や狙撃の精度、戦闘能力の高さに合わせ、護衛部隊のリーダーであるクモンズと輸送車両の運行責任者が警戒担当範囲を広げた為、オルトが対処するモンスターの数はその分増えていた。
モンスターの討伐数を独り占めすれば他のハンターに悪い意味で目を付けられるが、それが上からの指示ならば多少の納得が得られる。責任も指示を出す者が負うので問題は無い。
ただ、オルトの警戒範囲にオルト単独では時間が掛かりそうな量のモンスターが近付いてきた場合に、姉妹が援護に来る頻度が高くなっているような気がしていた。
ファナに理由などを聞いても、特に気にすることは無く、若手ハンターの実績を増やそうとしているだけと聞き納得した。徒党は名前を大きくする為に多くの有能なハンターを募集しているが、同時に育成も行っているからだ。ハンターオフィスの掲載情報で有能だと証明できればその価値は大きい。
ファナとの雑談中に消耗品を車の荷台に乗せ、店を後にした。
グレイはオルトが依頼で都市を離れてから数度ヨノズカ駅遺跡へと赴いていた。
輸送車両をFARBEからレンタルしてから最初に収めた遺物の量が量だった為、次の遺物収集に出るのは数日後になってしまったが、その日の遺物収集も問題無く終えられた。はずだった。
最後の最後にアキラ達がヨノズカ駅遺跡を発見したこと、そして自分がそこで遺物収集をしているという事がバレてしまったのだ。
そのことをオルトに相談すると、大した問題でもないと言われグレイは酷く安堵した。その後もヨノズカ駅遺跡への経路を考えながら、汎用討伐も受けて偽装工作を行っていた。少々危険を冒して東の名前の無い小さな遺跡へと立ち入ったが、新装備の性能のおかげで多少の怪我を負ったが無事遺跡探索を終えることが出来た。
そして今日もヨノズカ駅遺跡へ遺物収集に出掛けている。いつもとは違い深夜にだ。
輸送車両の迷彩機能を使用しながら荒野を駆けている。モンスターの近くを通っても視認されることなく、無防備な頭部を精確に狙撃して問題無く処理した。
グレイはクガマヤマ都市周辺のモンスター程度ならば、揺れる車上からであっても問題無く対処できる実力を身に着けていた。その為最近の悩みは大分贅沢なものになっていた。
(そろそろ倉庫の中が遺物で埋まるのよね。でもまた遺物を売りに持っていくと尾けてくるハンター増えそうだしなあ。カオルさんの店を介してFARBEに遺物を買い取ってもらえる様になったのは良かったわ。何度も企業の施設まで行くのは疲れるもの)
グレイの家の倉庫にはオルトに所有権のある遺物が大量に積まれている。グレイの遺物になった物はFARBEに何度か持っていったが、何度も通うには骨だった為、トライフワーデンを介して貰えるように頼むと快諾して貰えた。
FARBEはオルトという有能なハンターを大きな宣伝効果のあるハンターとして使うつもりだった。その為、多少の損を被るとしてもグレイの装備は本人の予算を大きく上回る総額を企業の計らいにより予算内に無理矢理収めた。オルトが装備更新で他社製品に選ぶことが無いように。その程度の扱いだった。しかしそれは最初だけだ。
現在オルトは他都市で功績を稼いでいる。
そしてグレイは輸送車両を条件付きでFARBEからレンタルした数日後、宣言通り遺物を大量に持ち込んできたのだ。更には汎用討伐では大量のモンスターを討伐しており、クガマヤマ都市の少々東にある名前の付いていない遺跡からも遺物を持ち帰り、その内部のマップも含めてFARBEへ渡している。
オルトはオルトで、グレイはグレイで有能なハンターなのだとFARBEは認識を改めていた。その為、新装備購入時の契約事項の制限は大分緩和され、自分1人だけで遺跡探索で結果を残せる事実により、グレイは自身のハンターとしての自信を取り戻していた。
(いっそのこと倉庫だけ借りるとか? ……無いわね。そろそろオルトが帰ってくる頃だし倉庫を借りる分は流石に無駄になりそう。オルトの家に入ってもいいか聞いてみようかな。そうしたら倉庫の遺物を移すことも、……ん?)
ヨノズカ駅遺跡へ接近した所で車両の索敵機器に前方から車が近付いて来ている反応が表示される。グレイが、この時間帯に荒野に居る訳有りのハンターと遭った事に自分の運の無さを呪いながら、その車両が特に何をするでもなく過ぎ去ってくれないかと願った。しかしその車両の持ち主はグレイに用があるのか、グレイの前方で行き止まりをするかのように停車し、情報端末に短距離汎用通信が届いた。
情報端末から聞こえた声の主はアキラだった。
シェリルに頼みヨノズカ駅遺跡の遺物収集をシェリルの部下達に任せ、アキラは地上で周囲を索敵していた。準備期間が少なく、偽装工作があまり出来なかったとシェリルは言っていたが、アキラには思いつかない手を幾つも打っていたことで今回の遺物収集に多少の安心を得ていた。
クガマヤマ都市を深夜の内に出発し、暗闇に紛れて荒野を走った。車両やアルファの索敵範囲に他のハンターの反応はない。附けられてはいないだろうと判断しヨノズカ駅遺跡での遺物収集を開始した。
アキラが安物の照明を一度遺跡の中に設置し、その光源の届く範囲までの店舗を徒党の子供達に漁らせ、収集作業を代行して貰う。
何をするのか知らされず連れてこられた者達は、モンスターは居ないとアキラが言ったが信じ切る事は出来ず、遺跡の内部へ足を踏み入れる者が出なかった為、当初の計画は破綻した。そう思っていたところに、ナーシャとその親友のルシアという少女2人が先陣を切り遺跡へ足を踏み入れた。それを見ていた他の子供達も恐る恐るその2人の後に続いた。
子供達も遺跡の内部にモンスターが居ないという事を知ると一安心したが、あまり頼りにならない照明と先が4階建ての建物に相当する階段を、帰りは遺物という重りを持って上がらなければならないという苦労を重ねていた。
強化服を着用していても進んでやりたいとは思わない重労働を、シェリルの部下達は生身で必死に頑張っている。
アキラは子供達が遺跡から持ち帰ってくる遺物がトレーラーの荷台に積まれていき、ゆっくりとだが荷台の
『やっぱり人手が多いと遺物を集める速度も速いな。一番良いのは俺が離れている間に車が襲われることがないって事だ』
アルファがアキラの横で笑う。
『心配性ね。否定はしないけど、あまり気にし過ぎていたら1人で遺物収集なんて出来なくなるわよ?』
『分かってるよ。でも用心するに越したことはないだろ?』
アキラの車両程度ならば迷彩シートをかぶせる程度で隠せるが、流石にトレーラーはその大きさで目立つ。
それではモンスターに襲われ廃車になるかもしれないし、遺物を偶然通りかかったハンターに盗まれるかもしれない。
少なくともアキラのハンター稼業からはその確率を稀だと一蹴するには運が悪すぎた。
そしてアキラのその印象をより強くする様に索敵機器に反応が現れる。
『アキラ。車が1台。近付いて来ているわ』
『了解だ』
アキラが荷台の方へ大きな声を出す。
「シェリル! 車が近付いてくる! 気を付けてくれ!」
「分かりました!」
荷台に遺物を詰め込む指示を出していたシェリルは作業を中断すると、早速遺跡の存在を隠す偽装を始めた。
アキラが車両を走らせながら反応のある方向へ向かっている。アルファのサポートにより視認した車両にアキラは見覚えがあった。
『ん? あれって』
『あれは先日グレイが使っていた輸送車両ね』
『そうだよな。という事はグレイも遺物収集に来たのか。運が悪いな』
『あの車両は長期間のレンタル品って言ってたから乗ってるのは別人かもね。早くしないとこっちに来るわよ?』
『おっと。そうだな』
アキラは見覚えのある車両を見て1人の顔が浮かんだが、他人が乗っている可能性もあることを考慮し、事前に用意していた定型文を短距離汎用通信で繋いだ相手に伝える。
「こっちの護衛対象が車両トラブルでこの先で停車している。悪いが道を譲ってくれ」
アキラが連絡を入れると、前方を走る輸送車両は少しずつ速度を落とし停車した。アキラが問題無く済みそうだと思った瞬間、輸送車両から短距離汎用通信が届く。
「そう? それなら、その護衛対象を車両ごと牽引してあげるわ。安心して良いわよ? アキラ」
アキラの嘘に乗るようにグレイが陽気に答える。
「……やっぱりグレイか」
「そうよ。アキラがどこで遺物収集をどんな風に行っても構わないけれど、私の行動を制限する理由にはならないんじゃない?」
グレイの方が正しいという事をアキラも分かっている。先にヨノズカ駅遺跡を発見して遺物収集を行っていたのはオルトで、個人的に依頼を受けたグレイだ。邪魔する道理は見当たらない。
「悪かった。確かにそっちと敵対するつもりは無いってだけで、協力を取り付けてる訳でもないもんな。ただ、こっちと距離を取ってもらえると助かる」
「……今どんなことをやってるのか教えて貰ってもいい? 内容次第でだけど協力できるかもしれないわ。勿論私の取り分はしっかり貰うけどね」
グレイの提案を聞いたアキラは悩み始めた。
グレイの持っている情報や、物資を使用すれば遺物の収集効率は上がる。現在収集している者達は遺物の正確な価値を計るのも難しいスラム街の子供達だ。持ち帰ってくる物の中には二束三文の価値しかない遺物も多く入っているだろう。
アキラにはその判断を下すのは難しすぎた。そのアキラを見ていたアルファが助け船を出す。
『協力する場合の彼女の要求について詳細も聞かずに決めるのは難しいんじゃないかしら?』
『確かにそうだな』
アルファの言葉にアキラが納得する。
「そっちと協力する場合のグレイの要求は何だ?」
アキラの訝しげな声にグレイは少し思案し答える。
「そうね。一つ、そちら側と協力するのだから収集した遺物を私の輸送車両にも詰め込む事。ただし、悪戯に安物ばかり乗せないでね。二つ、私が地下に潜っている間、私の車両をアキラが守る事。これには積まれていく遺物や荷台にある消耗品も含まれるわ。三つ、私の所有物が破損した場合は賠償請求するわ。その対象がアキラなのか、後ろに居る子達なのかはそちらで決めて。四つ、地下に私がいる間地上で誰かが近付いて来ても私の存在を明かさない事。以上の四つを守ってくれるのなら、私が地下に下りて比較的高価な遺物を選出するわ。これでもここの遺物については詳しいもの。ついでに何らかの異常事態が起きた際、そちらの人員を逃がすぐらいはするし、アキラの援護もするわ。どうかしら?」
グレイの提案をアキラが思案する。
一つ目に関しては当然と言える。ハンターも慈善事業じゃない。稼ぎを増やさなければ落ちぶれていく。更に価値を知っている者相手に安物を押し付ければ相手が怒り狂う可能性もある。そしてグレイの装備はアキラの物よりも高性能だ。シェリル達を守りながらでは間違いなく負ける。
二つ目は先程までアキラが行っていたことだ。継続すればいいだけなので問題は無い。
三つ目に関してはシェリルに言えば問題は無い筈だ。凄腕のハンターの物資を破壊して楽しむ自殺志願者が出ないようにすればいいだけだ。
四つ目の意味についてアキラには分からなかったが、アキラは大して気に留めることは無かった。しかしグレイにとってはこの条件が一番重要だ。自分の車があるにも拘らず、本人が見当たらない。そして、先日噂になったばかりだ。噂自体はカオルから笑い半分で聞かされたことだが、この状況と合わせて蒸し返されればヨノズカ駅遺跡の存在までもがバレるかもしれない。
アキラは自分の収集出来る遺物の価値が上がり収集効率も上がるのなら飲んでも良いと考え、一応アルファにも相談する。
『俺はこの提案受けても良いと思うけどアルファはどうだ? あの階段をグレイが使ってた台車で遺物を運べば効率は上がると思うけど』
『私も良いと思うわ。でもシェリルにはなんて言うの?』
『……ヨノズカ駅遺跡の事を知っている強いハンターが協力してくれるって言えばシェリルの部下達も悪戯に敵対しないだろう。……多分」
『そう。それならいいんじゃない?』
『決まりだな』
グレイの提案を聞いてからアキラが思案し、纏めてからアルファと念話で相談した為、結構な時間が過ぎていき、グレイがダメだったかと今日の遺物収集を諦めて引き返そうとしたところでアキラが返答する。
「その条件を飲むよ」
「そう。それならよろしくね、アキラ」
アキラが車を反転させ、遺跡の入口まで戻っていく。
グレイはそのアキラの後を付いて行った。
アキラがアルファに頼み、グレイと協力することになった旨をメッセージで先に伝える。シェリルはその意味を理解すると、アキラ以外の車が近付いてくる光景に慌てている部下達に、アキラの知人の協力者が来るだけだと伝え、落ち着かせる。アキラ達が戻ってくるまでに部下達が落ち着いたことに安堵していると、車からアキラとグレイが下りてくる。その光景を見たシェリルは内心焦ることになった。
シェリルの視線の先ではアキラに色々と聞いているだけの、シェリルから見れば歓談をしている2人が映っていたからだ。
シェリルとグレイが自己紹介を終わらせる。
お互いの顔色はあまり良くないが、シェリルはそれを持ち前の技量で何とか隠している。今騒げば部下達の統率が取れなくなる上、アキラからの信用も失ってしまう。先日の件も響き、シェリルの精神にはヒビが入っていた。
グレイはアキラから聞いたことに驚いていた。目の前にいる少女は一見するとどこかの富裕層のお嬢様の様に見える。そして今はスラム街の徒党のボスも担っているという。
ただ、グレイとしては同じように着飾れば、オルトがもっと注目してくれるだろうかという考えの方が強かった。
シェリルが礼儀正しくお辞儀をする。アキラのように急に爆発する危険物のようには感じなくとも、アキラが明確に自分よりも強いという相手を怒らせる訳にはいかなかった。
「アキラから協力するに当たっての条件等お聞きしました。我々も微力を尽くさせていただきます」
シェリルの口調、仕草は下位区画でならどこかの令嬢と見間違われることが出来る程演技に長けている。そしてそれはグレイにもある程度通用した。
「え、ええ。よろしくね?」
グレイは遺跡内部へ入る準備を整え、アキラに再度合図をすると階下まで駆け下りていった。
遺跡の出入口に着く前にアキラの情報収集機器と連携させていたグレイは、先日エレナがあちこちに撃ち込んだ情報取集機能と送受信機能を持った小型端末から送られる遺跡内部の情報をある程度掴んでいたからだ。
アキラが拡張視界の表示からグレイが階下に着いたことを知る。
シェリルがおずおずとアキラに近づいてくる。
「アキラ。先程の彼女ですが、大丈夫なんでしょうか?」
様々な意味合いの籠った大丈夫について聞くが、アキラにそこまでの意図を汲み取れるだけの対人技能は無く、ハンターとしての、武力的な答えのみになる。
「まあ大丈夫だと思う。無闇矢鱈に被害を出すような奴じゃないはずだ。少なくともこっちから何かしない限り大丈夫だ」
「そうですか。分かりました。部下達に失礼の無いようにと伝えておきます」
アキラの返答で自分達に被害を出す者でないことに安堵するが、シェリルの危惧していることはアキラとグレイの関係性だ。その様子を見た部下達のシェリルへの反応だ。
アキラとシェリルは恋人であるという前提条件で、シェリルが徒党のボス。アキラはシェリルの後ろ盾をしているといった建前を皆が信じているから成り立っている。シェリルの部下だけではなく、スラム街の住人でそれなりの生活水準を得ている者達の一般常識として広めている。
その前提が崩れればシェリルの徒党内での権力は失われる。統率力の主軸はアキラという武力で構成されているからだ。それが失われれば、徒党は瓦解する。
そして徒党が無くなればシェリルという利用価値は無くなる。価値の無い者をアキラが助けてくれるとはシェリルは思えなかった。
少しの綻びも見逃さない。シェリルが徒党を大きくし、アキラの稼ぎに追いつき、自身の価値を示すことだけだ。そうでなければアキラに見捨てられ、シェリルを形作る物が崩れ消えるだけだ。
解決策を考えていると遺跡の入口から台車が上がってくる。その速度を考えれば、シェリルの部下達が階段を上り下りするよりも効率的だった。地上組が台車の遺物をトレーラーと輸送車両に積み込んでいく。
ヨノズカ駅遺跡の内部へと降りてきたグレイは小型端末から送られてくる情報を基に店舗の状態や陳列棚に置かれている遺物の状態を調べ、シェリルの部下に指示を出していく。
グレイの予想通り収集する遺物は無差別に選ばれており、既に中身が零れて軽くなっている何かの薬品などもリュックサックに詰めようとしていた。
(まあ遺物に普段から触れていないならそんなものよね。私もここ最近から審美眼が磨かれてきた感じがするわ。……やっぱりオルトに会った時からかしら? ハンターとしてもう一度って、皆と分かれてオルトに救われて、訓練を密に行うようになって、遺跡探索の技術も戦闘技術も磨いて、今ではこんなに良い装備を手に入れた。……でもまだ足りないわね。夢もあるし、オルトへ何か返したいし)
グレイが昔の自分を見ているようで懐かしんでいる。強化服も無く、重い対モンスター用の銃と、替えの弾薬や遺物の入ったリュックサックを背負って都市まで必死に戻っていた頃だ。
今の自分を見たらきっと驚愕して動けなくなるだろうと考えながらシェリルの部下達へ指示を、地上と地下の往復を行っている台車の位置と積み荷の把握をしていた。
そこへ1人の子供が話しかけてきた。グレイより背が少し高いぐらいの子供だった。
「な、なあ」
「……どうしたの? 口よりも手を動かした方が良いと思うけど?」
仕事中だという事も含め、それを邪魔する可能性に対してグレイが視線を厳しいものへと変える。話しかけてきた子供は少し後退するがそれでも口を開いた。
「え、えっと。そのだな? あんたが本当のアキラさんの恋人なんじゃないかって」
グレイの顔に少しの困惑が浮かぶ。
「はあ? アキラとはただの友達よ。なんでそんな考えが出てくるの?」
「アキラさんとボスの様子を見てるとそんな気がしてさ。……実際どうなんだ?」
グレイが周りを見るとその考えに同調する者が複数いることを察し、同時にアキラとシェリルの関係性についても気付いてしまった。
(ああ、そういう事ね。アキラが徒党内でそっけない対応を取るからシェリルは本命ではなく、本命を隠すためのデコイの可能性を感じてるって訳か。多分本人の希望的観測も入ってるわね。シェリルは綺麗だったものね……さて、と)
グレイが返答を決めたところに1人の少女が飛び込んでくる。少女の名前はナーシャだ。既に一度明確にアキラに許しを得てはいるが、以前アキラに対してスリを働いてしまった親友のルシアを守る為に、危険地帯である遺跡の内部での収集班へと自ら加わった。そしてボスであるシェリルからの印象を少しでも上げる為にルシアも参加していた。
「す、すいません! 今直ぐ黙らせますから」
ナーシャが子供を何とか押さえようとするが、体格差もあり振り払われてしまった。
「邪魔すんなよ! アキラさんに赦して貰ったからってスリをしたってことには変わらねえだろ!」
「それでも、もうルシアは……」
グレイは何故か口喧嘩に発展し始めた2人を見て軽く溜め息を吐く。恐らく自分が温和に介入してもその蟠りは燻り続けるだけだろうと思い、かつての日の自分とその状態を生み出した少年を真似ることにする。
グレイが手を叩き2人の注目を、2人を見ていた者達の視線を集め、その表情を酷く冷徹なものへと変え、まずはナーシャへの対処をする。
「そっちの女の子。名前は?」
急に雰囲気が変わったグレイを見てナーシャは震えながら答える。
「な、ナーシャです」
「そう、ナーシャ。私が話をするから下がって貰える?」
グレイの言葉にナーシャが頷きゆっくり下がっていく。
グレイの両目が話しかけてきた子供の方へと向く。
「さっきの質問の答えだけどね、仮にあなたの言うことが正解だったとするとどうなの?」
子供が少し気を取り直して答える。
「そりゃ……」
グレイには端から子供の答えを聞く気などない。K2R複合銃の銃口を子供へと向けている。
「私がアキラやシェリルと交わした条件にはあなた達も守るってものがあるけど詳細は違うのよ。シェリルの部下を守る。それであなたは何者? シェリルの徒党から離反するの? 謀反を起こすの? どちらにせよ敵対的な非護衛対象を生かしておく理由は私にはないの。……最後に聞いてあげる。あなたは何者?」
グレイの指が引き金に掛かる。銃口を向けられた子供は動けず、それ以外の者達はその巻き添えを喰らわない為に離れている。
子供が足を震わせながらも恐る恐る答える。
「お、俺はシェリルの部下です……」
グレイがその言葉と子供の表情を見る。グレイは嘘を見抜く技術など持ち合わせていないが、もう敵対はしないだろうと思い銃を下ろした。
「そう。それなら護衛対象ね。ただあなたにはここは厳しいと思うから地上班の方に加わった方が良いわ。そっちの方がきっと安全よ?」
「……は、はい」
顔を恐怖で歪ませている子供がゆっくりと階段の方へと歩いていく。グレイの言葉の意味を理解したからだろう。
グレイが顔を和らげ周りの者達を見る。
「さ、遺物収集を続けましょうか。それとナーシャ。遺跡の中では静かにした方が良いわよ? 今モンスターが居ないからって、何時までもなんてことは無いからね」
「わ、分かりました」
グレイは急遽発生した厄介事を片付けた。片付け方のおかげかその後のシェリルの部下達はグレイの指示をちゃんと聞いて遺物の収集作業を続けていた。
地下の様子をある程度知れるアキラから何があったのか聞かれたが、内容が面倒事の種だった為に誤魔化した。アキラがもっとあからさまにシェリルとの関係をアピールすれば、今回の厄介事は避けられたのにと考えながらも口にはしなかった。
今は協力者だ。自分から面倒事を作りに行く必要は無い。
遺物収集を連続で行っていれば疲労も溜まる。アキラからの報告ではあと4割で車両の荷台が埋まるとのことで、休憩に何人か回しながら指示を続けている。貧弱な明かりの中正常な精神を保ち続けることに慣れているグレイは問題無いが、スラム街の子供には堪えるのだろう。遺跡の中で休んでも疲労の取れない者達を地上へ送り、地上班から補充を繰り返していた。
グレイが比較的綺麗な遺物ばかり残っている店舗を発見し、全部収集するように指示を出す。グレイは休憩ついでに他の店舗の様子を確認しようとしていると、休憩中のナーシャを発見した。
ナーシャの言っていた内容を思い返せば無謀なものだが、周囲の反応からすると事実なのだろうと少し興味があり聞くことにした。
「ナーシャ。休憩中だけどちょっといいかしら?」
先程の冷たい目つきではないが、敵対すれば迷いなく自分達を殺すだろう人物に話しかけられ、ナーシャの顔は引き攣っていた。
「はい。何でしょうか」
「さっきスリがどうとかアキラがどうとか言ってたわよね? あれってどういう意味?」
グレイがそう質問するとナーシャの隣で休憩を取っていた少女が身体を震わせる。
ナーシャがその少女を宥めながら答える。
「えっと。この子、ルシアって言うんですけど、少し前にアキラさんの財布をスッてしまって。それで一度殺されそうになって。でももう赦して貰えたんです。それじゃあまだ駄目ですか?」
「ああ、責めてる訳じゃないの。私も昔似たようなことやらかして死にかけたことがあったなあって思ってね」
「似たような?」
「……あるハンターを襲って稼ごうって話に乗っちゃって、途中で私は降りたんだけど他の皆は返り討ちに。私だけ敵対しなかったからって見逃されて、それからは真面目にハンターっていうものを目指そうって反省して今は精進しているの。そっちのルシアだっけ? 生きているなら悪いことはもうやめて真面目に仕事を熟せばいいと思うわ。少なくともアキラが一介赦したんでしょう? なら二回目が無いようにすればいいだけよ」
グレイの言葉にルシアが顔を上げる。
「……はい」
「うん」
グレイが聞きたいことを聞き終えると店舗の内部の確認作業へと戻る。
判断基準や感性でアキラに対しオルトは好感を持っていることをグレイは知っている。モンスターの都市襲撃の際にアキラと初めて会った時のオルトの表情は、他の人間に向けるそれではなかった。
その表情をグレイも偶に見ることがある。自分に向けていた時もあった。
そんなオルトの感性を理解したい。その感性を得られはしないだろうが、1人の友達として、異性として理解者でありたいとグレイは心の底から願っていた。
昼を過ぎた頃グレイの情報端末にアキラから連絡が入った。
「グレイ。車が2台近付いてきてる。注意してくれ」
「了解。どこら辺で止めるか教えて貰える?」
「ああ。送ったぞ。……なんでそんなこと聞くんだ?」
「穏便に済ませてね?」
「……努力するよ」
グレイはアキラとの通話が切れると、収集作業中のシェリルの部下達を集めて待機を指示した。台車も階段を登り始めようとしていた為下ろして待機状態へと移行させた。
グレイはアキラから貰った座標の近くへと急いだ。地上への階段を幾つか見つけたが、角度的に離れていっては意味が無い。ある程度近くなくてはアキラの情報収集機器から情報が送られてこないからだ。
オルトから貰ったマップから逆算して一つの階段に当たりを付けて登っていく。
既にアキラが設置した照明とは距離が離れすぎたが、グレイの情報収集機器は問題無く明かりの無い世界を映し出すことが出来た。購入時には使いこなせず出来ない芸当だったが、訓練と実戦を重ね、問題無く扱うことが出来ていた。
グレイの眼前に階段を埋める瓦礫があった。その先からは光も漏れておらず、内部から何かが出ないと見つかることは無いだろうとグレイに思わせる。
ギリギリ範囲内に入れた為アキラの情報収集機器から情報が共有される。
(荒野仕様のバスに大型のトレーラーか。……仲介業者を通した集団遺物収集か。エルが偶に愚痴っているけど、あれって基本的に借金持ちのハンターを使ってるって話よね。今アキラが話してる3人のうち最低2人はそれ関連ね)
グレイは話が拗れ、敵対が確定した瞬間に瓦礫を蹴り上げアキラの援護に入る為に集中していた。
結果として杞憂に終わり、バスとトレーラーは引き返していった。
アキラから終わったことを連絡して貰いシェリルの部下達の元へ戻る。
(とりあえず一安心ね。でも輸送車両を見られたのは不味い気がするな。長時間動かなかったら疑われそうだし、取り敢えず作業スピード上げて貰おうかな)
グレイは自分の都合で悪いとは思ったが、アキラ達にも益のある話だからとシェリルの部下達に作業を速めるように頼むと、一も二もなく従って貰えた為安堵した。
アキラはグレイから地上の様子や輸送車両の荷台の
アキラとしては何故それを聞くのかなど、気になる質問もあったが遂に荷台が遺物で埋まり切った。アキラが次の遺物で埋まると教えていた為、グレイや他の子供達も最後の遺物を乗せた台車と共に地上まで上がってきていた。
グレイとアキラはそれぞれの車両の荷台を確認していた。
「うーん壮観! やっぱり大量の遺物を持ち帰れる時の気分は最高ね!」
「同感だ!」
大抵のハンターが見る夢の一つ。グレイはもう何度か経験したことはあるが、それでも大量の遺物を持ちかえる時の高揚感は何物にも劣らない。
グレイは人手と隠蔽を、アキラ達は遺物の質と効率化を計れたことで両者ともに益が出た。
明確な達成感を味わえるのは遺物の価値を知っている者達だけだ。遺物が高価だとしても、それがどの程度の価値になるのか推し量れなければ、高揚に不安が混じる。それでは共感までいくことは出来ない。
帰る前に遺物収集中に発生した一つ面倒事の種をグレイが少しは解消しようとするが、いつの間にかアキラの隣に来ていたシェリルに対し、アキラが感謝を伝えるとその顔に喜色を浮かべてアキラの車の方へと歩いて行った。要らぬ心配だったと思いながらも、アキラが視線を直ぐ遺物に戻した為心配事は尽きていないと判断した。しかし、首を突っ込んでも変に拗れる気がした為グレイは思考を打ち切った。
アキラはグレイが自分を見ていたことに気付いた。
「どうした?」
「別に何でもないわ。まあ強いて言うなら協力してくれてありがとうって事ぐらいかしら。助かったわ」
「そうか? 俺も助かったから問題ない」
「それなら良かったわ。もし次機会があったら一緒にやりましょ?」
「良いのか?」
「ええ。下の階層まで案内出来るわよ」
「おお! ならその時は頼んだ」
アキラと遺物収集について他愛無い話を広げながらもシェリル達の撤収準備が済むのを待っていた。
後は都市へと帰り、換金すれば大金を手に入れられる。そう思いグレイが運転席に乗ると、情報収集機器が近付いてくる反応を捉えた。アキラの方も捉えた様子で反応の方向を見ていた。
(ここで輸送車両を運転して帰ると顔を覚えられるわね。隠れられそうな場所はっと)
グレイが対応を考えているとアキラが、近付いて来ている反応の方向へ車を走らせていく。シェリル達の隠蔽を邪魔しないように近くにあった廃墟のビルへとゆっくり身を隠した。
早く動けば動くほど索敵機器に引っかかり易くなる為、シェリルも含めグレイの緩慢過ぎる行動に疑問を募らせたが、シェリルはグレイとの協力関係はまだ続いていると判断し、部下達にそのことを口に出すことを禁止した。
流石に距離が離れすぎてアキラとの連携は切れているが、地上に出ている分遺跡の施設という情報遮断物質で囲まれていない。問題無くアキラが対応している相手を確認出来た。
(さっきの奴らよね。何の用かしら。輸送車両に手を出したら……、まあ、自業自得よね。せめてアキラが穏便に済ませてくれることを祈っておきましょ)
グレイが状況の変遷を観察し続ける。アキラが戦闘を開始すれば援護に入れるように、自分の所有物に手を出す者が居れば排除出来るように。遺物はグレイの物であり、オルトから託された依頼の納品物でもある。それを強奪する者は自分を貶める者だ。遠慮する必要などない。敵は人だろうがモンスターだろうが変わらない。姿に差があることなど日常茶飯事の事柄だ。
アキラが先程の男達3人と会話していると思ったら、武装解除させ2人だけを連れてシェリル達の近くまで戻ってきた。
シェリルと挨拶をしてから男達が何かを話しているが、遠く離れているグレイには内容は分からない。
片方の男がグレイの隠れ潜んでいる廃墟のビルを見る。
(バレた!? ……いや。私の居る階層を見てない。このビルを見ているだけね。ただ、……多分ヨノズカ駅遺跡はもう駄目でしょうね。明らかにこの周辺を疑ってる。人を集めて掘り返せば出入口なんか沢山見つかるわ)
グレイは懸念を深めるが、悲観はしない。バレる時はバレる。その時が来る前に大量の遺物を回収してある。
オルトから既に遺跡の大まかな座標がバレた場合の対処法を話しておいたグレイは極めて冷静にアキラ達の様子を窺っていた。油断も焦燥も諦念も、今は不必要だ。
グレイは、アキラ達と分かれ遠回りをしてからクガマヤマ都市まで帰還した。帰路の途中グレイの輸送車両を視認可能な距離に近付いたハンター達から向けられた視線にグレイは気付いていた。グレイの装備、ひいては情報収集機器の性能がそこらのハンターの使用している装備とは値段も含め文字通り桁が違う。グレイの方が先にハンター達の存在を把握していた。
グレイの選んだ帰路はクガマヤマ都市よりも東側へ一度向かい、廃墟のビルで構成された名無しの遺跡を経由してから都市へと真っ直ぐ帰還する経路だ。有象無象のハンターではクガマヤマ都市から東へと行く行為自体が自殺行為だ。多少なりとも偽装出来るだろう、と。少なくとも無意味ではないと考えていた。
グレイがオルトへと通話要求を送ると問題無く応答される。いつも通りのオルトの声が情報端末から聞こえてくる。
オルトから依頼を受けている。その報酬として設定されている収集した遺物の半分、オルトと相談し、グレイの所有物となった遺物を既に何度か買取りに出している為、報酬を受け取っていると言っても過言ではない。
依頼を反故にしない為に報告義務を先ずは終わらせておくべきだろうと、アキラ達と行った遺物収集及びそれに関連した事柄の大まかな流れ等を話す。
一通り報告を聞いたオルトからの質問に可能な限り正確な答えを返していった。
「そういう訳であの出入口周辺はもうバレている。若しくは未発見の遺跡だと確定はしてないけど、遺物が大量に残ってる場所であるって疑念は持たれたかな」
「なるほどな。運が悪かったと言うべきか今日までバレなかったのが幸運だったと言うべきか分からないな」
「本当、どっちなのかしらね。アキラと協力出来たおかげで浅い階層の遺物も収集も行えた。深い階層の収集は流石に強化服も補助骨格も着用してない人だと無理でしょうからね」
「うーん。まあ、幸運だった、で良いんじゃないか?」
「どうして?」
「今日来た奴らにグレイは顔を見られたわけじゃない。遺物収集をしていたのはあくまでもアキラとアキラの関係者のみだ。その借金持ちのハンター達が後を附けるのはアキラ達になるだろうけど、それはアキラが軽率な行動を取った結果だ。俺達が悩む必要性は無いな」
グレイが今日見た男達の様子を思い返す。一度目はアキラに対し進路を変更する為に金を出せと言っていたという。二度目にはその態度を出すことなく、アキラに武装解除を促されながらも従いシェリル達のトレーラーを牽引し、都市まで護衛するから一つの依頼として受けさせてくれと言ってきた。
だが二度目の際シェリルと話していた人物は元から良識を持っていそうなハンターで、アキラに金を要求したハンターは終始会話に加わることはせず周囲の状態へ注意を向けていた。
グレイの勘と経験が、シェリル達の護送等はただの口実で、本命は地下への出入口があるかもしれない座標の特定と周囲の風景からの正確な位置情報を得ることだろうと言っていた。
「アキラ達にはあの出入口がバレたかもしれないって話しておいたけど、その隠蔽方法が中々派手だったわ」
「近くにあった廃墟のビルを使って出入口周辺を埋めたんだっけ? 周囲に他のハンターが居なくて助かったな」
「全くだわ」
男達が帰り、十分距離が離れてからグレイはアキラ達と合流した。
グレイの感じていた危険性をアキラも薄っすらと感じており、理由と対処法をシェリルも交えて練っている途中にアキラが廃墟のビルを見てから少し思案すると、他の者達に離れるようにと指示を出した。
アキラは他の者達が被害の及ばない距離まで離れたと判断すると、CWH対物突撃銃の専用弾をビルへと数発撃ち込み、出入口のある方向へ倒れるように強烈な蹴りを入れ、倒壊させた。
今出来る対処は済んだとして、そこでアキラ達とは別々に都市へと帰還することになった。
「遺物を俺の家に運ぶってのは構わない。むしろ都市に帰った時に苦労が無くて済むが、任せてしまっても良いのか?」
「依頼の範疇ってことで処理させてもらうわ。任せて」
「分かった。任せるよ」
オルトがそう言うと、グレイの情報端末にオルトの家の鍵の解除コードが送られてくる。これを使えばオルトの家の車庫、倉庫に入ることが可能になる。オルトは2階以降の鍵はまた別のコードを使用しているので上がることは出来ない。
グレイはその解除コードを見ながら頬を綻ばせていた。声も少しばかり上擦ったものになったが、オルトは機嫌が良いなら問題は無いと考え指摘することは無かった。
「グレイは今後のハンター稼業はどうするんだ?」
「取り敢えず今ある遺物を買取りに出してからまた偽装工作かな。輸送車両を囮に東側の遺跡に行ったりとか長距離走りながら汎用討伐して、途中に長時間の休憩を挟めば誤魔化し程度にはなるかなって」
「成程ね」
グレイも遺物収集の指針自体はオルトのメモに頼っているが、それ以外、ヨノズカ駅遺跡外の事態に関しては基本的にグレイが自分で思考し行動に移し、グレイを附けていたハンター達は無事騙され利用され数日を徒労に費やしていた。実際に偽装は成功していた。
今回の事態は不運に不運が重なった結果だ。ついでに言うならアキラが功を焦った、若しくは心配事の削減を行えるだけの資金や人脈、装備が無かったからだ。
グレイを他者の失態で責めるのであれば、メモの内容に遺跡の存在に感付いた者を容赦無く殺害し口封じに努めるように記載しておけばいい。しかしそれでは危険だからとクガマヤマ都市に居るハンターを全滅させない限りその危険性は消えることはない。そんな殺人鬼になるつもりはオルトにはない。また、貴重な友達をそうするつもりもない。
遺物収集は無事終了した。それだけだろうと感じながらオルトも安堵し、グレイは達成感を得ていた。
グレイはオルトからの依頼の大部分が終わりそうだからと、禁止されていた事項に触れる。
「そういえば遺跡の最深部には行かない事って記載されていたけどあれはどうして?」
「……それか。そうだな、もう話しても良いかな」
「もう? 前はどうして駄目だったの?」
「危険だからだ」
オルトの言葉にグレイの顔が真剣なものに一変する。ヨノズカ駅遺跡の内部は日の光すら無く、内部に設置されている照明すら機能を喪失、ないしエネルギー不足で使用不可の状態になっていた。
照明すら使用出来ない状態であるならば、同じようにエネルギーが不足し施設防衛用の機械系モンスターも動作できない状態である可能性すらある。それならばその機械系モンスターすらも安全に旧世界の遺物として収集対象に含む事も可能だが、オルトからグレイは施設への無闇な破壊行動は禁止されていた為、店舗内の警備用機械の保存場所を探す行為自体を止めていた。
それと同程度、若しくはそれ以上に危険な情報だからオルトはグレイに伏せていたのだろうと確信する。
「危険な情報だからこそ渡さなかった。あの遺跡の状態を掴み切っていない時期のグレイに期待感を煽る様な情報は流石に渡せなかった。危険性を理解していながら依頼を出し、その上で情報を伏せた事については謝罪する」
「いいよそれは。それだけの情報ってだけでしょ? 私もあの遺跡に初めて入った時は高揚感で危険を無視して先走りそうだったもの。そんな私を心配して伏せていたのなら逆に感謝させて」
「ありがとう」
「うん! それでどんな内容?」
「そうだな。前提知識として、グレイは駅って知ってるか?」
「駅ね……。旧世界の施設ってことぐらいかしら。ヨノズカ駅遺跡ってことはあの遺跡も駅なのよね?」
「駅ってのは主な機能は多くの人や物資を運ぶ車両の停車場だ。だから多くの人が旧世界が機能していた間利用していたはずなんだ」
「へー物知りなのね。でも私が入った店舗にはそれに関連するような遺物は無かったような気がするけど」
「人や物資を大量に安全に届けられるんだ。人の集まる場所には店が出来るだろ? 主な機能は停車場ってだけで、それ以外の開いたスペースにはその車両を利用する人を対象にした店舗が多く構えられていたってことだ」
「うん。それがどう繋がるの?」
「つまりはグレイに頼んだ収集範囲は飽く迄施設に付いてきた付属品程度の扱いだ。店舗を構えるなら、警備等の防衛は各々ご自由にってな。今は主な機能が停止しているからその店舗も防衛機能を扱えない。でも機能が回復したら?」
「……ちょっと待って。あの遺跡って生きてるの?」
遺跡にも生死という概念を当て嵌めることが可能だ。生命を持っていなくとも機能が完全に損壊し、充分なエネルギーを与えたとしても動かない状態になった場合死んだとみなすことが出来る。そして、その機能を別の制御装置へと付け替えることで再び稼働することもまた可能だ。
「それは分からない。死んでいて、もうエネルギーを充分に供給しても稼働しないかもしれない。でもただ休眠状態に入っているだけなら? それが起きた時俺達を客だと認めてくれると思うか?」
「思わないけど。だったら客を相手にする訳じゃないなら機能を回復する必要は無いんじゃない?」
「施設内に不法侵入した挙句、店舗の商品を盗んでいく奴らへの対処なんて昔から決まってるけどな」
「まあ確かに」
「それに機能を回復させないかの検証をする気もない。モンスターだったら駄目だとか、俺達だから駄目だとか、旧世界の人達だったら問題ないとかそんな損しかなさそうな賭けをやる気もないし、やらせる気もない」
「……うん、ありがとう」
「こちらこそだ」
賭けは得られる利益が有るから行う。得られる利益が大きいほどに支払う対価も増加していくが、オルトの話では最下層にあるかもしれない利益に手を伸ばせば施設全体が敵になる。仮に入手出来たとして、では地上へはどうやって帰還するのかという問題が浮上する。高ランクハンターならばその状態であっても遺物を保護しながらでも帰還することが可能だが、グレイはそこまで己惚れるには自身を高く見積もっておらず、自分よりも強いハンターのオルトが危険だから行かないと言うのであれば、選択肢の中から排除するのは容易であった。
「後はそうだな。遺跡の中にはモンスターの反応は無かっただろ?」
「ええ。何度行っても影も形もね」
「駅ならどこかに繋がってるはずなんだ。施設を通過する車両の中継地点ってだけだからな」
「ってことは車両の通路は閉じてる可能性がある?」
「そういう事だ。全部可能性の話でしかないし、機能が回復したらってのも、もしかしたらってだけで確実にそうなる訳じゃない。機能が回復したからといって、その閉まっているだろう隔壁が開く保証もない」
「……そしてそれらが起こらないと決定している訳でもない。そういう事ね?」
「正解だ。自分の行く場所がどんな目的を持った施設なのかってだけで危険性の方向性は決まってくる。警備装置や防衛装置がどのくらいの性能を保持しているのか。でも全部って訳じゃない。想定外の事態が起こる可能性も間違いなく孕んでる。知識や経験から来る推測は武器だけど、それは自分の中にある常識ってだけで、旧世界の物ではないし数秒後の事態に絶対に対応可能な代物って訳でもない。前提知識なんかは頭の片隅に置いておけば良いってだけの話」
オルトはファナという旧世界の都市を管理している存在から多くの知識を得ている。更に目覚めた際に保持していた知識との擦り合わせによりそれらの理解を深め、遺跡探索に活かそうとしている。
ファナは最初自分に好感を持つだけの知識を与える予定だったが、オルトの難点は文字の読み書きが出来ないという点だけであり、数学や化学等の答えの定めることが可能な分野については、見た目に不釣り合いなほどに理解力が高かった。
歴史や社会学等の分野も幾らかの規則性を掴むと教えていない内容についても理解を示し、どの範囲まで理解可能なのかを広げた結果、旧世界の施設や文化の話にも発展し授業の内容はどんどん濃い物へと徐々に変化していった。
「色々知ってるのね。是非ともあやからせて貰うわ」
グレイはオルトから聞いた情報を使えば、更に安全な遺跡探索が行えるだろうと考え、今後はそういった知識にも触れていこうと決心した。
そして2人はヨノズカ駅遺跡について話題を戻す。
「オルトは今後あの遺跡はどうなると思う?」
「俺は現場に居る訳じゃないから何とも言えないが、既に漏れている。そうでなくとも少なくないハンターが大規模な遺物収集の準備を進ませてるだろうなって思う。話題性はばっちりだからな。ある程度座標を絞り切れれば手間だとしても瓦礫を退けるだろうし」
「大規模ね。さっきの話が全部重なった場合は凄いことになりそうね。先に入った人達に負けないように奥へ奥へって進むハンターも出るだろうし」
「それが起こるのは早くて数日後かなー。俺達やアキラ達みたいに内部の情報を正確に掴んでる訳じゃないだろうから相応に準備に時間が掛かるはずだ」
「数日後か。それじゃあオルトと一緒に収集しに行けそうにないわね。ざんねん」
「まあ、何らかの形で機会は出来るさ」
「それならその時はよろしくね?」
「こちらこそ」
オルト達はその後も歓談をし、夜も更けてきたという時間帯に通話を終えた。
グレイはオルトからの信頼に答えられたのだと感じながら湯船へと身を浸からせる。
グレイの身体はスラム街から出て食生活も改善され、最近はオルトに倣って少々高い回復薬を使用している。その為肌のシミや古傷は消え去り、しっとりとした触り心地を持っていた。
湯に疲労を溶かしながらオルトとの会話の内容や今日の出来事を振り返っていた。
(明日は遺物をオルトの家に運び入れるとして、残った遺物はどうしようかしら。もうFARBEへ遺物を持っていく制限も無くなったのよね。随分早く制限を外せたのはモンスター討伐や遺跡探索もあるけど大部分は遺物収集の成果でしょうね)
ヨノズカ駅遺跡で収集出来た遺物はオルトがグレイに依頼を出したから手に入った物だ。そして装備やそれに付随する遺跡探索の安全性も言ってしまえばオルトのおかげで入手できた。しかしグレイはその幸運を手放すことなく、悲観することなく戦闘技術の向上へ、索敵技術の向上へと繋げた。
以前から精度の高い狙撃を得意としていたが、近中距離での戦闘技術や不意の遭遇への対処の速さを得ることが出来た。
自分の全てがオルトだけで構成している訳ではないと考え自信を持つ。確固たる自己を持ち、更に強くなるために。
(アキラ達はあの借金持ちハンターに付け狙われるでしょうね。まあ、アキラは強いから心配ないわね)
アキラと最初に出会った際の出来事を思い出す。
自分の狙撃で出来た敵の弱点をバイクで走りながらAAH突撃銃で撃ち抜き撃破した。敵の砲撃の間を高速で駆け抜け砲弾を優先的に狙い、機械系モンスターを動く的へと変えていった。最後に出てきた巨大な機械系モンスターに至っては銃を使わず敵の砲弾を銃身へ蹴り入れ誘爆させていた。
グレイにはそんな芸当が出来るとは思えない。高性能な情報収集機器を使って弾道を読んで着弾点から離れるのは可能だろうが、砲弾を蹴るのは誘爆の危険性が高く出来たものじゃない。せいぜいが高性能な銃を購入し高威力の弾丸を撃ち込むくらいだ。
今のアキラはその時よりも高性能な装備で身を包んでいる。
グレイが仮に敵対したとしても、高性能な装備が勝たせてくれるだけで、装備が同じ場合は勝てる気はしない。長距離の狙撃であれば可能性があるだろうという程度だ。
(私はどうしようかしら。……そういえばそろそろ追加で買っても問題は無いわね)
グレイは情報端末で再度口座を確認する。
先日買取りに出した遺物の換金も終わり、グレイの懐は現在非常に潤っている。
グレイは情報端末を操作し、顔に笑みを浮かべながらその日は就寝した。
グレイは数日後トライフワーデンへ来ていた。
目の前には大きな銃が置かれており、グレイが何とか手に入れたK2R複合銃の未改造品とはその全長に大きな差があった。
「こいつがグレイに注文されていた銃だ。そっちの未改造品と違って有効射程の長さを主に連射速度の上昇もされている。反動がその分強かったが、拡張部品を組み込むことで抑えられている」
「やっぱり大きいですね」
「元がそこそこの大きさを持ってるからな。グレイが狙撃の精度と距離を伸ばしたいって要望に合った商品になってる。荒野で是非試してくれ」
グレイは追加で購入した補助アームを強化服に取り付け狙撃特化に改造したK2R複合銃を持たせる。グレイの身長と同じ程の全長を持っており、並の強化服ならば持つ事すら出来ないだろうと思わせる大型の銃だ。
FARBEとの契約での利点を十分に利用し、拡張部品やオプション品の値段は銃本体の値段に収まっている。
照準器もオプション品を取り付けており、情報収集機器とも連動させてある。強化服と同社の製品である為にその相乗効果は高い。
グレイが銃の感触を確かめているとエルがその光景に息を漏らす。
「グレイちゃん。使い勝手はどう?」
グレイが銃を構えてから収める。再度構えて感想を述べる。
「やっぱり取り回しはし難くなるわね。その分近距離での威力はGRD対物突撃銃とは比にならないだろうし、狙撃の性能も試してからじゃないと言えないけど問題ないと思うわ」
「オルトはその辺嫌って、取り回しを重視した上で連射速度と威力向上の拡張部品を選んでいたからな」
「私はそもそも選ぶ余地はありませんでしたけどね」
「それが今や自分で購入できる上に大して懐は寒くならないんだから随分と成長したもんだ」
カオルはグレイが装備を手に入れて短期間で大量の遺物をFARBEに持ち込んだことを知っている。グレイに飲ませた制限を外す際に交渉をするのはカオルに一任されていたからだ。
カオルは最初オルトとの契約が完了した為に、用済みとなったグレイとの契約破棄に連絡をされたと思っていたが、FARBE側から提示された追加の条件はグレイへの好条件ばかりだった。それに目を通したカオルはグレイが自分の価値をFARBEへ認めさせる何かをしたのだろうと直ぐに気づいた。そしてグレイの消耗品の購入量から遺物収集であることを推測し、自分の店の客が企業に認められたことを内心喜びながら再交渉へと臨んでいた。
「オルト君といえばもう依頼の期間は終わってるよね?」
「ええ。先日終了したって連絡が来たわ。その時にいた都市が結構離れているから数日掛かるって言ってたわ」
グレイが何事も無いように答えるとエルがニヤリと笑みを浮かべる。
「へー、グレイちゃんには伝えてるんだー。そっかそっかー」
エルに言われたことでグレイが顔を赤らめ目を逸らし、もごもごと言い返しているが、エルがその様子に比例するように機嫌を良くしていく。
カオルはその様子を楽しそうに眺めていたが、他の客が来店した為、息を吐きエルを窘める。
「エル。あまりうちの客をいじらないように」
「はーい。グレイちゃん。オルト君が帰ってきたらまた一緒に食事でも行こうね!」
「そうね。依頼中何があったのかとか聞きたいものね」
グレイは新しい銃を背負い店を出た。
グレイは久しぶりに自分の車に乗り荒野へ出ていた。荒野の舗装されていない地面から伝わる振動を少々不快に感じながらも、レンタルしている輸送車両に積まれている制御装置の性能が高いだけだと割り切り運転を続けている。
グレイはオルトに言われたことをきっかけに噂や遺跡の構造等の話を集める為に情報収集を行っていたが、その途中に未発見の遺跡の話を聞いた。
現在未発見の遺跡があると思われている地点にはドランカムの部隊がその場所を占領しているという話だった。そしてドランカムほど大きな徒党が動くのならばと荒野へ飛び出すハンターの数も多くなっていた。
(初めて遺跡の情報収集なんてやったけど本当に難しいわね。遺跡があるとか本当は無いとか、モンスターが全くいないとか強力なモンスターが住んでいるとか、もう色々と情報が錯綜し過ぎって感じ。……少し遠回りしてヨノズカ駅遺跡に向かってるけど、近くを通っていくハンター達は真っ直ぐ向かっていってるわね)
グレイが都市を出てからヨノズカ駅遺跡へと遠回りしながら向かっている途中に、大勢のハンターを乗せたバスやチームで動いているハンター達がヨノズカ駅遺跡のある場所へと真っ直ぐ車を走らせていた。
その直線状には碌な遺跡など近くにはない。よって彼らが向かっている場所はヨノズカ駅遺跡だという事が直ぐに理解できてしまった。
(やっぱりもう遺跡の存在はバレているわね。流石に行くかどうか迷うなー。他のハンターと殺し合ってまで欲しい訳じゃないし。うーん、どうしようかしら)
車上で近付いてくるモンスターの頭部を撃ち抜き、たった一発で生物系モンスターの生命力の根源を破壊し絶命させる。銃の性能に満足しながらもその顔は顰めた表情を浮かべている。
グレイは周囲にモンスターの量が多いと感じながらも徐々にヨノズカ駅遺跡へと近付いていった。
グレイが車を停車させる。場所はヨノズカ駅遺跡をギリギリ視認可能な高台だ。
グレイが情報収集機器の望遠機能を使用しながらアキラが使用していた出入口の周辺を見る。近くにはドランカムの若手ハンターが布陣しており複数の重機を操縦し瓦礫の撤去を行っていた。
そしてそこから少し離れた位置にはハンターを多く乗せているだろう荒野仕様のバスが複数台確認出来た。彼らは遺跡の情報を手に入れはしたが、信用し切れずドランカムに出遅れ、出入口のある場所をドランカムに占領さてしまい手出しが出来なくなってしまった者達だ。
暫く眺めているとその者達のリーダーであろう男達が情報端末を取り出し誰かと順に連絡を取っていた。その後彼らのチームがそれぞれ数人ずつ、占領されている場所から離れながら何らかの機器を蒔いている。
(何かしらあれ。情報収集機能付きの小型端末とか? 荒野で使う必要性なんて無いでしょうに)
上から確認可能なグレイはそのある程度を把握可能だが、瓦礫を撤去している重機や荒野を走る車両が巻き上げる粉塵が情報収集機器の収集精度を下げ、現場にいるハンター達が把握するには困難な状況だ。
少しして周囲から大量のモンスターの反応がグレイの車の索敵機器に表示される。
そのモンスターが向かっている方向はヨノズカ駅遺跡の出入口がある方向だった。
グレイが顔をモンスターの反応の方向へ向け情報収集機器の望遠機能で視認する。その瞬間グレイの顔に緊張が走った。
近付いて来ているそのモンスターの群れは異常な量が接近してきており、他の場所からの反応を合わせると出入口付近を中心にした雑な円を形作っていた。
(……違った! あれは敵寄せ機か! あんなに大量に、しかも周囲を囲むように使うなんて何考えてるの!? ここら辺のモンスターだって決して弱い訳じゃない。囲まれれば対処なんて出来ないでしょ!?)
グレイは心の中で男達へ悪態を吐きながら車を一気に反転させ加速させていく。速度を出したことで、情報収集能力に長けた者には、遠目に観察していた自分の存在がバレた可能性もあるが知った事ではない。
まだモンスターの囲みは緩い。その間に、モンスターの群れの層が厚くなり、モンスター達が密度を増す前に多少の危険を承知で強行突破を選んだ。
(邪魔!)
グレイは前方に捉えたモンスターの先頭を走る個体の頭部に目掛けて狙撃特化型のK2R複合銃の照準を合わせた。情報収集機器が把握した荒野の地面の凹凸から発生する車両の揺れを感じ取りながら適切に調整し、揺れを感じない一瞬に引き金を引く。
銃口から放出された弾丸がグレイが想像していた弾道を描きながらモンスターの頭部に着弾しその内部含め弾けさせ、後続のモンスターにも甚大な被害を与えた。
(さっすが1挺1億オーラムの銃に価格の異様に高い強化弾薬ね。良い威力だわ。それじゃあ助からせて貰うからね!)
グレイは新しい銃の威力に意気を上げながら連射に近い狙撃を続ける。車が通れる隙間を作れればいい為狙うべきは通りたい場所のモンスターの排除だ。ある程度間引いたと判断すると、未改造のK2R複合銃も取り出しある程度の狙いをつけて乱射する。
モンスターの狙いはグレイではない。横を通っていくモンスターに気を配りながらもグレイの車へと接近してくる前方から迫るモンスターに銃撃を繰り返す。悍ましい程の量のモンスターに対し、過剰な装弾数を誇る拡張弾倉を利用した連射で対処する。
倒れていくモンスターの死骸に乗り上げ、非常に荒い運転を行う車の自動操縦機能に嫌気がさしながら自身の技量が許す限り精確に且つ迅速に生き残れる道を切り開いていく。
両手の銃での銃撃と偶に飛んでくるモンスターを蹴り飛ばしながらも、何とかグレイはモンスターの層を突破した。そのまま全速力で車を走らせ、モンスターの群れから大きく距離を取る。後ろから追撃なぞしたら注意がグレイの方を向く可能性があった為それを選択することは無かった。
自分を無視して遠ざかっていくモンスターの群れの後姿を確認し、窮地を脱したのだと判断し大きく息を吐き出す。
(こんなことなら輸送車両で来れば良かったわ。あっちの方が防御性能も加速力も高いのに。はあ、今日はついてないわね。……まあ彼らほどじゃないけれど)
グレイの耳にはヨノズカ駅遺跡の方角から大量の悲鳴と銃撃音が届いていた。情報端末を見れば救援要請も届いていたが流石に数が多すぎると考え通知を切った。
暫くすると徐々にその喧騒も静かになっていく。出入口に布陣していたドランカムのハンターや他のハンターがモンスターから逃げる為に遺跡の中へ潜って行ったのだ。
モンスターもそのハンター達を狙って遺跡の内部へと進んでいった。出入口の横幅縦幅の限界まで利用して所狭しと入っていったモンスターの総量をグレイは考えたくなかった。
地上が徐々に静かになっていく。出入り口付近に陣取っていたドランカムの若手ハンターが先に遺跡の中へ。続くようにモンスターが出入口へと足を踏み入れた。
周囲を囲んでいたバスに乗っていたハンター達は大半が大量のモンスターの物量に圧され車両から追い出され餌食となっていた。
内部に侵入したモンスター達が遺跡の階段を登ったのか別の場所の出入口が出現し、これ幸いにと地上に出てきたモンスターを倒したハンター達がそこへ無理矢理進んでいく。そしてそのハンター達を追って地上にいたモンスターが遺跡の内部へと侵入していった。
既にモンスターの居ない安全且つ上等な遺物が数多く残っている遺跡は無い。大量のモンスターが侵入し、ハンター達が狂乱し敵味方の判別が難しい暗闇の中で戦闘する必要のある危険な遺跡へと変貌している。
(これもう遺物収集とか言ってる余裕は無さそうだなー。取り敢えず未発見の遺跡って扱いは出来ないわね。階段だけじゃなく縦穴まで出てきたし内部はもう大混乱でしょうね)
暫くグレイは待機することで遺跡内部の変遷を見守った。多くのハンターが入っていったことで今更入るメリットは今のグレイにはない。その為危険性を考慮すれば入らないことは賢明だった。
たまに地上にハンターが出てくるが、その後すぐに出てくる機械系のモンスターや一部を機械化しているモンスターと交戦し、運の良い者は直ぐに勝利し他のモンスターに襲われることなく都市へと走って帰ることが出来た。だが大半の者達は交戦した後息絶えている。
(この周辺にあんなモンスターって居たかしら? それに機械系モンスターが出てきたってことはオルトの推測は正しかったって事よね。さっきの生物系モンスターは駅の通路を通ってここまで来たって事? さっきのハンターの装備も決して悪い物じゃなかった。それでも苦戦を強いられて囲まれて負けた。結構な難易度の場所と繋がってるわね)
グレイは地上に出てくるモンスターの強さや種類の把握に努めていた。地上から完全にモンスターが居なくなった頃を見計らって出入口付近を索敵していた。右も左もモンスターかハンターの死体だらけだ。重機や車両も大破しており修理業者に見せれば買い直しを勧められるだろう状態をしており、モンスターの攻撃の威力を物語っている。
ある程度索敵が終わり周辺の地図を作り終えたところに近付いてくる車両の反応が有った。その車両に目を向け望遠機能を利用すると見知った顔が映り込んだ。
運転席にエレナが助手席にサラが、そして後部座席にアキラが座っていた。
アキラ達と遭遇したグレイは軽く挨拶を終え状況を大まかに説明していた。
「……そういう訳で遺跡の内部はあまり安全とは言えないと思います」
グレイの話を聞いていたエレナが顔を顰めている。状況が悪ければ遺物収集を諦める予定でもある。だがグレイは地下に下りていない為地下の状況がそこまで悪い状態でないのなら。言ってしまえば地下に逃げ込んだハンターが同じく侵入していったモンスターを殲滅済の可能性もある。
それならば安全に遺物収集を行える。せっかくの手付かずの遺跡を多少の危険性で手放すという選択肢をエレナは取りたくなかった。
アキラが自分達を信用して明かしてくれた情報をたった一回潜っただけで諦めるには心情的な部分で嫌だった。
「そう。……アキラは1人でここに来ていたとしたらどうする?」
だからこそエレナはその判断を許容できる状態になるように本人が断ればそれに従ったのだという言い訳が出来る状態に持っていくことにした。勿論アキラが行くのなら迷うことなく自分達も入る。アキラ1人残して自分達だけ帰るなんてこともしない。エレナは恩人へ借りを返せないままという状況もまた許すことは出来なかった。
「俺1人だけだった場合ですか? そうですね……、折角ここまで来たんだから、まあ、入ってみますね」
アキラの答えを聞いたエレナ達が顔を見合わせる。
エレナ達はアキラの答えに嬉しそうな、それでも微妙に苦笑しながら遺跡へと潜ることを決めた。
アキラが何かを思い出したようにグレイを見る。
「そういえば前に、次は一緒に遺物収集しようって言ったけどどうする?」
「え!? そんなこと約束してたの?」
サラが過剰に反応してアキラに笑顔で問い詰め、アキラはじりじりと後退していた。
グレイがそう言えばしていたと思い出し、エレナ達やアキラもいれば安全性は確保できるだろうと了承しようとした時、グレイの情報端末に通知が入る。
通知を切っていたグレイはその通知を聞いて顔を笑顔に染めながら情報端末を見ると、オルトからメッセージが入っていた。
その内容を読んだグレイが顔を困惑させるが、緊急の用事の可能性を考慮し優先することにする。
「ごめんねアキラ。急用が入ったの。その遺跡探索には付き合えないけど、代わりにこれをあげるわ」
グレイは情報端末を操作しヨノズカ駅遺跡内部のマップをアキラへと送信した。
それを確認したアキラが顔を驚愕に染める。アキラがまだ踏み込んだことのない階層までの範囲が明確に記載されているからだ。
「い、良いのか? こんなの貰って」
「良いわ。地下の様子はすっかり変わってる可能性があるから参考程度にしかならない。もしそれが凄く役に立ったなら何かで返してくれれば良いから。でも他の人に言っちゃ駄目よ? ……それじゃあ気を付けてね?」
「ああ、分かった」
グレイが車に乗りヨノズカ駅遺跡から離れていく。その方向にはクガマヤマ都市は無い。
エレナがアキラが貰ったマップを確認し同じように顔を驚きに満たした。グレイが居れば少なくとも高価な遺物が残っていそうな場所までの道案内を頼めたかもしれないが、今は広範囲の情報が載っているマップを頼りに進むことを決めヨノズカ駅遺跡へと足を踏み入れていった。
グレイが車を走らせながら胸を躍らせていた。
オルトから来たメッセージは至極単純な内容だった。
(自分の移動経路の乗った地図と迎えに来てくれってどうしたのかしら?)
オルトは伝えることが単純な場合本当にたった一文を送るだけで終わらせることもある。それらに緊急性があったことなどないが、荒野にいるという状況を加味して考えるとその状況も考慮に入る。
ヨノズカ駅遺跡へ集まっていったためか、モンスターの居なくなった荒野を走っていると前方から1台の荒野仕様の大型バイクが走ってきた。
(あの人もヨノズカ駅遺跡に行くのかな? ……違う! あれ、オルトだわ!)
遠目からでは確認できなかった強化服なども、近付くにつれ望遠機能により視認可能になる。バイクに取り付けてあるK2R複合銃も含め、クガマヤマ都市では使用している人物は殆どいない。その二つがバイクを運転している人物がオルトだと証明している。
グレイが短距離通信をオルトへと飛ばす。
「オルト! 久しぶりね。いきなり連絡が来てびっくりしたけど、今度はどんな用事なの?」
「……」
「……オルト?」
数度呼びかけてもオルトの返事は帰ってこなかった。
徐々にグレイの顔に不安が表れていく。
(……どうしたの?)
グレイが真剣な表情でバイクの運転者を再度確認する。先程よりも近付いている分その人物を認識し易くなっていた。
間違いなく運転者はオルトだった。だがその顔は、両目は虚ろを映しているだけだ。
今更ながらグレイが気付くが、バイクの速度も車両という割に非常にゆっくりとしたものだった。
グレイの車が近付いたことで設定されていた通りに自動追従機能に切り替わりグレイの車の後にオルトのバイクが止まった。そしてゆっくりとオルトの身体は糸が切れたようにバイクから力無く落ちた。
「オルト!」
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