リビルドワールド 孤独に非   作:たっぷり

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とても遅れましたが出ました。

書籍最新刊(Ⅷ下)読みました。
web版でも二次創作でも、最新刊になっても、シジマさんがおいたわしやしてて、私はニッコリしました。


・第二十四話 遺跡に触れる者

 

 倉庫内に配置されていた機械系モンスターを無事撃破したオルトは改めて遺物収集を始めた。

 

「おお……、おおー……。(はし)から(はし)まで、上から下まで視界の中が遺物で埋まってる……」

 

 倉庫内部は天井も高く、奥の壁までもかなりの距離がある。そして部屋の中には無数の棚が狂いなく設置されており、その棚には旧世界の遺物が数え切れない量が置かれていた。

 オルトは顔を右へ左へと動かしながら内部を探索していた。その顔に映る表情は、普段のオルトからは想像出来ないほどに緩んでいた。

 ファナはそのオルトを呆れたように見つつも、オルトの視界に映る遺物の中から高額で売れる物を選別していた。

 

『その顔は流石にみっともないですよ、オルト。……こちら側の遺物なら大きさに対し高い売却額が期待出来るでしょう』

 

 見上げる程に高い棚に丁寧に保管されている数々の遺物の中から目的の場所まで移動する。

 

「ふーむ、幾つか駄目になってる物もあるな。……なんでだ?」

 

 オルトが自身の情報収集機器で棚の最上段までの遺物を軽く確認すると、外装どころか内部の商品すらも破損しており、到底値が付けられるとは思えない物も並べられていた。

 

『遺物の品質保持機能が切れていたのでしょうね。塵に還っていない分まだマシな状態ですが』

「そんな塵になる一歩手前の状態の遺物でも回収したのか? もう商品としての価値は残ってないだろ?」

『だからと勝手に廃棄すればそれこそ問題に発展します。最低限製造企業へ連絡し、卸し先へ確認を入れる必要が有ります。まあ、既にどちらも機能していない可能性が高いのですが、そうなっていない時点で察しは付きますね……』

「……そういうもんか」

 

 オルトはどこか寂しさを思わせるファナの発言を聞いて何か言いたく思う。しかし掛ける言葉が思い付くことは無かった。

 

 

 オルトは幾つかの遺物を見繕ってもらいながらリュックサックに詰め込んでいく。以前ヨノズカ駅遺跡内で収集したような機械部品のような物は少なく、直ぐに無くなってしまった(ため)現在はファナが勧めてきた日用品の(たぐ)いを詰め込んでいた。

 主に衣服に関して収集していたオルトは手に持った遺物に内部の商品情報を拡張現実として表示する機能が有った(ため)男性用女性用で博打をする必要が無くなっていた。

 

「基本的に欲しいのは肌着なんだよなー。都市の衣服店で購入しても耐久力に乏しいし」

 

 しかし、棚に置かれている衣服の多くはシャツや上着であり強化服の下に着るには向かない物ばかりだった。勿論それらが戦闘用に制作されている訳では無いことはオルトも理解しているが、それでも戦闘時に発生する肉体と強化服の僅かなズレによって起きる摩擦に耐えられる物が無料で手に入るならばと期待してしまうのだった。

 だが戦闘用に作られていないだけであり、旧世界製の衣服には変わりなく、その頑丈さは安物の防護服を優に凌駕する耐久性能を誇っている。オルトが以前ファナから贈呈して貰った衣服などはソレが顕著に表れており、最初に使用していた強化服と比べれば防御性能に限れば、贈呈品の衣類の方が高い。

 かと言って無限に供給された訳では無い。

 当時のオルトが着替えた物や、換金用の遺物などを含め、強化服も着ていない生身のオルトが長時間運搬出来る量、オルトが自身を守ることが可能になるようにとファナが調整した結果、頭部を守るためにフード付きの上着や丈の調整幅の広いズボンが主になり、下着の(たぐ)いは殆ど包まれることは無かった。

 

『布地の量で言えば女性用の下着の方が換金効率が良いですよ?』

 

 ファナが置かれている遺物を指差し、ついでとばかりにそれを着用した姿へ変わる。魅力的で蠱惑的なファナの容姿を妖しく彩り、その全てをオルトに余すことなく見せつける様にポーズを取る。

 それを見れる者が意図しているいないに関わらず、その様は過不足なくオルトの視界の一部を占有し、その場に実体がないことを理解しているオルトにも女体特有の柔らかさが触れずとも判るほどあでやかに映る。

 

「ん? いや、ちょっ、待て!? 大事な部分以外が殆ど隠れてないんだけど!? 角度によっては着てないぐらいには露出が酷い! それを遺物だからってカオルに渡す俺の心情も加味してから考慮してくれ! そもそも換金するなら着る必要がないだろ!?」

『換金してしまえば見ることも叶いませんからね。開封すればその分価値も下がりますし。私が着れば一切の損はありません。どうでしょうか?』

「…………ふん」

 

 最初に交わした約束とはいえオルトがトライフワーデンに持ち込む衣類系の遺物の大半が女性用だ。

 オルト自身、使用する予定など皆無であることとカオルに渡せば高く買い取ってもらえる卸し先をオルトが態々探さずに済む上、エルが私服として欲した物があった場合、優先的にカオル自身が買い取れるという利点が被っているからではある。当然ながらカオルが購入するというのは一つの終着点ではあるが、卸し先に流れ着く前に一度は鑑定作業が挟まり、店員としてエルもそれに参加する可能性も捨てきれなかった。

 

『いままで持ち込んだ遺物の中に、それに該当する衣服が無いことを祈りますか? 恐らく可能性は低いですが』

 

 過去に運び入れた衣類系の遺物には拡張現実表示機能が壊れている物も多く、その中に無いと断言出来る気はしなかった。

 結局オルトでは反論を思い付けない上、ファナの言葉道理、量に対しての単価は実際に高額の部類の為都合が良い。

 こういうものほど拡張現実表示機能が切れていてくれれば、などと無駄な要望を頭の片隅で反芻させながら、ファナの揶揄(からか)うような笑顔を無視しつつ黙々とリュックサックを膨らませていく。

 

 

 オルトがバイクに積み込めるだけ積み込んだことで倉庫から周囲を確認しながら出る。室内は未だ警備機械の残骸が残っているだけで敵性存在は確認出来なかった。

 

「後は帰るだけなんだけど、地上まで結構な距離が有るんだよな」

 

 情報収集機器やバイクの索敵機器で取得した地形情報を、情報収集機器の機能の一部である自動マップ生成機能を利用して作られた遺跡の入口から現在地点までの地形情報を表示し、その入り組んだ道のりを億劫に感じ、何気なく呟いたオルトに返答するかのように視界の端に佇むファナが指を真上へと向けていた。

 オルトは何かが上で起きているのではないかと警戒しつつ見上げると、天井部分がゆっくりと開いていき、遺跡内部を照らす光源以外が発する光が差し込んでくる。

 

「……マジか」

 

 ただし、その開閉方法は上下左右への引き戸でもなければ、遺跡内外へ戸が開くものでもない。オルトからすれば天井だった物が、その場の床だった物が突如消失するかのように開いた(ため)、その上に山の様に積まれていたビルを構成していたであろう大小様々な瓦礫が地下の遺跡内部へ落下して来た。

 

「おいおい……」

 

 オルトは即座に両手に銃を握ると、情報収集機器の索敵範囲を調整して自身の周辺へと落下する軌道の瓦礫に照準を合わせて撃ち砕いていく。

 オルトの身長の数倍はあろう瓦礫が砕かれ、その体積と質量を激減させ、その代わりに落下物の総数を増加させ、それらすらもオルトは落下地点が自身から離れていくように、そもそも直撃しても完全に無害になるよう狙いを定めて敢えて貫通力を落とす為に射出速度や回転数を調整していた。

 ある程度瓦礫を排除したオルトは銃を下ろす。数秒の後、大きな衝突音を室内で反響させながらオルトから大分離れた位置に巨大な瓦礫が床に墜落する。しかし、運悪く落下した際の角度の所為でオルトの方へと跳ね返る。

 溜め息を吐きつつも体感時間の操作を行っていたオルトからしてみれば、弾速よりも遥かに遅いただただ巨大なだけの物体が近付いてくるだけでしかない。

 軽く宙へ跳び出し、眼前に迫る大質量へと強化服の身体能力を十全に利用して蹴り付ける。瓦礫はその瞬間にオルトの方向へ向いていた運動量は完全に更新され、広い室内を数度跳ねてから隣接する通路の一つを塞ぐように壁に激突し、その動きを完全に停止させた。

 オルトは蹴り足が瓦礫へと叩き込まれる瞬間、脚の足場確保機能を用いて衝突範囲を強引に広げた。本来ならその破壊力を狭い範囲に叩きこめば、幾ら旧世界製の建築物とはいえ、倒壊し長年雨風に晒され続け劣化した現在では砕け散る以外なかったが、点ではなく面での衝撃へと変えたことで威力が分散し、ヒビを入れられながらも原型を保つに終わった。

 

 

 少々のアクシデントはあったが難無く片付いたと感じたオルトは自身の危機意識が少しずつズレていってるような気がしたが、適した解決策も思いつかず、そもそもの原因の一端は自分でもある為、溜息を漏らす以外になかった。

 そんなオルトを見て相も変わらずファナは微笑(ほほえ)むばかりだった。

 

『では遺物収集を続けましょうか。地上に置いてきた車も近場へと走らせているので安心して下さい』

 

 オルトは少なからず安堵を覚えたが、同時にこれから重力に喧嘩を売った遺物の運搬を繰り返す自身を想像し、ゲンナリしていく自分もまた存在している事に気が付いていた。

 

(事前に注意喚起ぐらいしてくれって言っても無駄かな。今回は基本的に俺だけの力で対応して、無理なら適宜ファナのサポートの比率を上げるって話だったしな。……この倉庫の位置情報は例外としても、既に3回はサポートを受けたんだよな……)

 

 結局は未だにファナに頼る現状に変化がないことに僅かに気落ちする。それでも、いちいちモンスターとの戦闘を繰り返しながら遺跡の内部を行き来する必要性が無くなったことで、取り敢えず今回の遺物収集はこれ以上予想外の面倒事も無く終わるだろうと予感した。

 

 

 地上までの直通ルートが開いたことで格段に効率が向上した(ため)、オルトの車の荷台には()いている場所の方が少なくなっていた。

 積み荷が半分を超えた辺りでオルトがバイクの車輪には優秀な接地維持機能が備わっているのだから、遠隔操作で地上まで登らせて補助アームで遺物のつまったリュックサックを交換すれば良いことに気付いた。

 そこからは地上では大量の遺物が入ったリュックサックの山が独りでに出来ていくという傍から見れば宝の山が形成されていき、車両の荷台にギリギリ入り切る量まで収集したオルトは、バイクと共に壁面を悠々自適に歩いていた。

 

「なあ、ファナ。最初に遺物を運ぶ時からバイクだけ登らせれば良いことに気付いてたんじゃないか?」

『それに1人で気付くこともハンターとしての実力の内ですよ』

「……分かったよ」

 

 オルトは楽しげに微笑んでいるファナの発言を正論だと、今の発言はただの甘えだと割り切って文句を取り()めると、そのままバイクの遠隔操作を続けながら1人早めに地上まで出ると、目の前にあるリュックサックの山を車内へと積み込み始めた。

 オルトが最後にバイクごと遺物を車内に積み込んだ事で、周囲は再度瓦礫が散乱し、穴の開いている廃ビルの一室へと戻った。

 

「……で、この穴はどうするんだ? 開けたままだと流石に他のハンターに見つかるよな」

『こうします』

 

 ファナがそう言い放った後、オルトが通っていた穴はその端からゆっくりと鈍い色の金属が()びていき、数秒後には一切の隙間もなく塞がった。光量の強かった地下遺跡から漏れ出ていた光も完全に途絶え、オルトの強化服の情報収集機器で軽く探っても、この下に大きな空間が広がっている事までは掴めない。

 

「これでこの遺跡がバレたとしても、大半の奴等は空の倉庫を物色することになるのか。モンスターとやり合いながら……」

 

 自分が一度通った道程を思い返しながら、オルトはその徒労にしか終わらないであろう遺跡探索を想像して苦笑した。

 

『少なくともオルトにそんな心配はありませんね。何せ私が付いていますので』

「ああ。いつも感謝しっぱなしだよ。……そろそろ帰ろうか。空模様が怪しくなってきたしな」

 

 オルトが空を見上げると徐々に非常に厚い雨雲が近付いて来ていた。

 最近の天気予報を気にしていたオルトはギリギリだったと内心安堵しながら車を走らせた。遺跡からある程度離れた時点で急激に雨量が多くなっていき、オルトの車輪の後を、そして過合成スネークの痕跡を消していく。

 荒野(こうや)はゆっくりといつもの風景へと戻っていく。

 

 

 豪雨の中、一度クガマヤマ都市の西側まで回り道をしてから帰還したオルトは、車両から積み荷を自宅の倉庫へと降ろした。

 一通り確認し終えたオルトの機嫌は非常に良かった。

 

「これでシェリルの遺物販売店に卸す遺物の補充も何とかなったな」

 

 オルトはアーミーマメストラ討伐時にグレイに依頼して収集して貰った遺物をカツラギの店へと小出しにだが売っていた。

 オルトが使用している回復薬を取り扱っている店舗が未だに少なく、FARBE経由でも余り入ってこない(ため)、予備も揃えておこうと仕方なくカツラギから購入していたからだ。

 結果としてアーミーマメストラ討伐自体は予想外の事態に陥ることなく終了した(ため)、予備も含めた回復薬の量は十二分であり、暫くは戦闘中に受ける負傷の治療で予算不足に喘ぐことはない。

 

「ハンターオフィスと提携してない個人営業の店舗も便利といえば便利なんだけど……、如何せんカツラギや他の商売人たちの営業も五月蠅い時があるんだよな……」

 

 個人で動くハンターが何度も状態の良い遺物を持ち込み、高額の回復薬のみを購入していくのをカツラギの連れて来ていた商売人たちは見ており、その相手は一見ただの子供のハンターという事もあり、取り入る、上手く行くならば騙して情報を奪い取り旨い汁を啜れるだけ啜ろうとする者も居る。

 使用しているバイクは勿論の事、着用している強化服などの装備の金額もそこらのハンターとは桁が違う。その(ため)、商談を纏め装備品等のお得意様になった場合、購入している装備の製造企業との伝手まで付いてくる。装備品は基本的にトライフワーデンでの購入に限っているオルトが相手でなければ垂涎物のカモになった可能性もある。

 流石にカツラギはオルトとの付き合いもそこそこあり、性格も知っている(ため)、深くは探ろうとはせずに日常会話中、それとなく聞いてくる程度しかしてこない。自分が呼び出した鑑定人たちもオルトの機嫌を致命的に悪化させない為にも顔を合わせることはせずに、カツラギの移動店舗であるトレーラーの運転席から、遺物の査定を行っている荷台を情報収集機器で監視させるだけに留めていた。

 オルトは、万が一大きな厄介事を引き起こした場合その対象を殺そうと決めた上で、話し掛けてくる商売人たちをリストアップしており、後々シェリルにでも情報提供すれば上手く利用するだろうと考えている。

 

『私としては彼らがどうなったところで関係無いので構いませんが、それを火種にオルトが厄介事を作ることは避けてくださいね?』

「分かってるよ。あいつらも結局は売り上げを伸ばしたいだけだろうし、いくら俺が子供だからってハンターランク30越えのハンターを敵に回すような馬鹿は……混じってないだろ。多分」

 

 オルトはこれ以上は考えても無駄だと判断して思考を切り上げるとK2R複合銃や強化服をそれぞれの格納棚に仕舞い込み、不快感をもたらす汗や雨を流そうと風呂へと向かった。

 深夜から始めた遺跡探索を無事終えた時刻は既に夕暮れを過ぎていた。

 

 

 荒野(こうや)に点在する遺跡の探索やそれに内包されるあらゆる事象は、荒野(こうや)を駆けるハンターや都市内部で一生を終える人々の生命を即座に奪う事が可能だ。

 有機物無機物を問わないモンスターの群れとの戦闘、遺物収集時にはそれらとの不意の遭遇を常に警戒しつつ行わなければならず、自覚無自覚に限らず遺跡探索後のハンターの肉体と精神には多大の負荷が掛かっている。

 それは当然ファナという理外の存在によって異常な程高性能な補助を常に受けているオルトであっても例外ではなく、その上今回の遺跡探索ではファナのサポートを極力受けずに完遂することを目的の一つに据えており、普段であれば感じていない不必要なまでの緊張感によって知らず知らずの内に無自覚の疲労感を多分に溜め込んでいた。

 理由としてはありふれた物であり、過合成スネークが通過した箇所の地形情報を持ち帰るだけに満足せず、遺跡内に散見された倉庫に収められていた遺物の集積場や、その場に配備されていたビッグウォーカーの同系機と思われる機械系モンスターとの戦闘等々はオルトのみで対処した事で結果として戦闘が長引いたことも要因の一つだった。

 追跡されている可能性も考慮に入れ、豪雨の中結構な遠回りでクガマヤマ都市へ帰還し、自宅の倉庫へと収集した遺物を収め、明確な安全圏を確保したと判断した事で完全に緊張が解け、貯め込んでいた疲労が一気に押しよせて来た。

 その(ため)、広い浴室の内、半分以上の面積を有している浴槽にたっぷりと張られた湯に身体(からだ)を沈め、全身に蓄積され続けていた疲労を根こそぎ取り尽し、明日の活力を得んとしていた。

 そしていつものように一緒に入浴しているファナが、一仕事終えた後の至福の時間であるはずの入浴時のオルトの表情がいつもより固いことを見抜いていた。

 

『オルト。何か困りごとが有るのでしたら共有して頂ければ最大限力になれますよ?』

「あー……、あれだよ。今回の遺跡の地形情報をどうしようかなって思ってさ」

『と、言いますと?』

 

 要領のえないオルトの発言にファナが首を傾げる。

 ファナの視点から今回の遺跡探索を評価するならば、要改善部分も散見されているが、それはファナの要求するハンターとしての技量の高さ故であって、ただ遺物収集を行い装備を更新することを目的とした資金調達の一環として見れば致命的に悪い部分は存在していなかったからだ。

 だからこそファナは敢えて言い返すこともオルトを慰めるような言葉も発することなく続きの言葉を促した。

 

「今回の遺跡探索って俺の自力で行けたのは精々があの駅のホームまでだろ? 実際俺が確認出来たのはあのトンネルの先に何かしらのモンスターが配置されてるだろうって事ぐらいだしな。で、そんな奴がどうやって遺物の集積場を見つけたんだって怪しまれかねないからな」

 

 実際、オルトが時間を掛ければユウセツ駅遺跡内の探索及び内部の地図情報の収集も可能ではある。しかし、それは必要な時間を駆使し遺跡の状態が変化しなかった場合の話だ。

 唐突にトンネルの閉鎖されていたはずの隔壁が開き、その奥からクガマヤマ都市周辺では発見されないような場違いな程に強力なモンスターが出現する可能性も無い訳では無い。アキラやドランカムが遭遇したヨノズカ駅遺跡での騒動であり、オルトの頭上から降ってきたアーミーマメストラなどがそのような事故の一例に当たる。賞金首という制度が廃れず未だに機能していることがそれを証明している。

 その(ため)、オルトは基本的にユウセツ駅遺跡内での探索は出来る限り早く終える予定ではあったのだ。

 だが欲が出た。といえば簡単に済む事であっても、ファナが管理人格との交渉を行い、今のオルトであれば問題無く配備されている警備機械を倒すことが可能だと言外に言われれば、引くという選択肢は基本的に外れる。

 それに手付かずの遺物がごまんとあるのを黙って見逃がすのはオルトに依頼を出しているファナに対しても不誠実だ。オルトの装備は(いず)れファナの指定する遺跡を攻略する為の足掛かりでしかない。その為のサポートであり、その契約を反故にする予定はオルトにはない。

 僅かな危険に対しても意識的に撤退という選択肢を外すことはしないように心掛けていようが、機械的に事柄を進められるほどオルトの精神性は合理のみで構成されていない。

 そしてそれは今回の件にも関わってくる。

 

「アキラに遺跡の情報を全部開示するのは構わないんだけど、悲しいことに前科があるんだよな……」

『彼も流石に今回のような勝ちの目が皆無な相手にまで挑みに行く相手ではないと思いますが』

 

 アキラの装備を過合成スネークが破壊する前の状態へと戻したとしても、今回オルトが戦った警備機械にはそもそもの有効打が一切存在していない。

 オルトの様にミサイルポッドを開かせ、そこへCWH対物突撃銃の専用弾を撃ち込めば可能性はある。しかし、専用弾を喰らったとしても外装に傷が付くことは無い。ならば警備機械はただ全身に点在している機関砲を撃ち続けるか、その質量で以て押し潰せばよい。

 態々弱点を晒してくれるほど旧世界の技術は甘くはない。

 それでもオルトの懸念は別の方向へと向いていた。

 

「AAHだと弾が通らないからってキャノンインセクトの砲弾を蹴り付けに行くような奴だぞ?」

『……』

「報酬額が上がるかもわからないような口約束で過合成スネークに触れるぐらい近付きに行く奴なんだけど?」

『…………』

「頼むから笑顔のまま固まらないでくれっ!?」

 

 ファナがオルトの視界の中で微笑(ほほえ)みだけを残して口を閉ざす。それ程までに擁護のしようがない相手であることをオルトは再確認した。

 

「…………………まあ、次いつ会えるのかも分からないし、どこかで会えた時のあいつの装備とか考慮に入れてどの程度渡すかの目途だけでもつけておけば良いか」

 

 アキラを理由に頭を悩ませる必要性を徐々に感じなくなったオルトは適当な着地点を見つけてから後ろ倒しにした。

 その後もファナと次のハンター稼業について詰めて行けば、いつの間にか夜は更けていた。

 今日も変わらずオルトが現状に頭を悩ませ、ファナがその問題解決の一助を担っていた。片や眉を顰め、片や微笑(ほほえ)みを崩すことなく、その表情に差異はあれど、焦りはお互い感じていなかった。

 

 

 深夜、既に不法侵入者も強盗犯も居なくなり(ようや)く静けさを取り戻すことが出来たユウセツ駅遺跡内部では、未だに真昼のような、その上で一切煩わしさを感じさせない自然過ぎる程の光量で以て施設内部を照らしていた。

 オルトが破壊した機械系モンスターの群れの残骸も、地上へと続く階段を埋め尽くしていた瓦礫も遺跡の中に転がっていた景観を損なうだけの物は悉くが回収され、人の往来の少なくなる深夜帯である今、遺跡全体の清掃が為されていた。

 清掃用に製造された機械系モンスターの一体が壁面の掃除を行っていると、一部分を躱すように、次の位置へと移動して清掃を再開した。

 ぽつりと磨き残しの様に残された壁面は幾ら旧世界の基準で作られているとしても、清掃済みの場所と比較すればその汚れ具合は明白だ。

 そして数分後、清掃用の機械群がその通路から姿を消した時、その通路全体に指示が下る。

 すると壁面が等間隔に多数浮かび上がってくる。

 今まで針すら通さぬほどに境界線も埋め、通路の一部として融合していた機械系モンスターの群れが姿を現した。

 その集団は列を成して通路を進んでいく。その道程は非常に静かであった。それはまるでオルトが通過中の時の様に。

 そして当然の様に到着した先は、この遺跡の倉庫全体の遺物の集積場として利用されている場所の大広間だった。

 その場で機械系モンスターの群れはそれぞれが別々の形へと変形して徐々にその総数を減らし、逆にその体積と質量を増加させていく。最終的にその全長は30メートルを優に超え、全身の至る所に大型の機関砲を取り付けた凶悪な姿となった機械系モンスターが一体だけとなる。

 そして駆動部分等の可動確認の為に、銃身や関節部が僅かに揺れたかと思うと完全に停止し、その姿が輪郭ごと消失する。

 その場には一見何も残ってなどいなかった。オルトが倒した警備機械の残骸も、天井を開けたことによって遺跡内部に混入した瓦礫の山も、そしてその大型の機械系モンスターの再構成の過程を確認していた2人の美女の姿も。

 片方の美女は用は済んだとばかりに身を(ひるがえ)しその場を後にした。非常に緻密に計算されつくしたその美貌を、緋色に輝く長髪、その非常に美しいツヤのある髪の根から先までを、身に纏うドレスの裾と同じようにたなびかせて。

 

 

 乗降場のある最下層の駅のホーム。そこから顔を左右に振ればトンネルの両端が確認可能になっていた。オルトが警戒していた方向の逆側、隔壁の降りていたはずの場所には埃一つ残らず清掃の行き届いた通路があるだけだった。

 

『契約の履行を確認した。……次だ。早く。奴等よりも先に……』

 

 その言葉はログとして残すこともせずに音にすら変換されることなくただただ呟かれた。




・投稿主はよく音声読み上げを利用しているので『荒野』などの読みが変になるものには見つけ次第ルビを振ったりしているのですが、他にも振った方が良い場所とかありますか?変に凝った漢字(単純に読めない)とかも可

・実はここにエルとのお出かけ中にグレイ、ユミナの2人組に遭遇会挟んで、話の途中ユミナに「自分はチームの足を引っ張ているのか」等の質問をさせ、オルトに「才能無いんじゃね?(俺と一緒じゃん)」とか「人生経験の密度が違う」とか言わせたりする予定でした。尚、文才

 グレイとユミナの接点isどこ?という方はグレイとドランカム間での過合成スネーク討伐の報酬に関しての再交渉の席に、ユミナも同席したと考えてください。実際グレイ(に雇われていたオルト)の助力で安全に討伐まで持っていけましたからね。それらを無碍にするような性格はしてないと作者は思います。

・作者の(勝手に)想定する主要キャラの戦闘に関しての才能を数字に起こす(ノーバフ)
カツヤ(95~100)  ルイン(90)  アイリ、グレイ(75)  
アキラ(55~65)  ユミナ(45)  セレス(40)
オルト(30~40)
の想定。延々と眼の前で高度な動きを見せられ続けて、回復薬が必須になるような動きを強化服越しにそれを体感させられる訓練を毎日のように続ければ才能云々以前の問題。
 作者は”姉より優れた系妹キャラ”好きです。多分サポートも受けれず、無意識に手加減しているであろう妹(ルイン)にすらその内置いて行かれる可能性を考慮すると一番悲しい存在?
 身長的にも負けてる設定
(ルイン(上の下)>グレイ(中の上)=ユミナ(漫画版で「ん?デカくね?」ってなった、グレイより上かな?)>シェリル(下の中?)=セレス≒アイリ(かべ)>エル(最年少、中の下))
 他の同年代の奴等はよく分からない。レイナはそこそこ。ルシア(web版のアルナ)は無い。ナーシャは大きい?アリシアは余裕で大きい側。
 お姉さん系のキャラに小さい奴は多分出てこないから除外。例外としてサラとネリアが可変って事ぐらい?

・興味ないねの方
カツヤ>アキラ≒オルト

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