翔真が倒れてから十数時間……医療班の手による必死の止血作業では止血出来なかったのに時間経過によりピタリと、出血が止まった。
それに加え、数十㍑もの異常な程に大量の血を流したにも関わらず出血が止まってから少しして、流れ出た血そのものが元々無かったかの様に消滅していた。
「翔真君……早く目覚めてくれ」
弦十郎が医務室に入れば入院着を着て意識の無い状態でベッドで横になっている翔真を心配そうに見ていた。
治療を担当した医師や看護師達は一目見てわかる程、体力も精神力も疲弊していた。
「やあ、弦十郎?君は何時までそんな顔をしているんだい?」
「なっ!?翔真君!?君はそこのベッドで横になっていたはず!」
ほんの一瞬だった。ほんの一瞬、医務室に居る全員が翔真の姿を視界から外した瞬間、その姿は砂へと変化し崩れ落ちる。
そして、当の本人は治療の為に着替えさせられた入院着から私服に変わった姿で出入口の扉に寄り掛かるように立っていた。
「やっだなぁ……奇跡を創り出すのと奇術は俺の十八番なんだぜ?まあ、流石に死にかけたけど…アレがまた出て来たら流石に、次は死人が出るから気を付けてくれよ?」
「だとしても、心臓に悪いからやめてくれ。……君が大量に出血したのはアレが原因なのか?」
「そいつぁ……無理かな?ド派手かつ、奇跡的に演出するのが道化としての俺の矜持なんで…それに、これでも今のは控えめなんだぜ?
ああ、アレが原因だ。だからこそ次、出たら確実に抑え込めるかなんて、わからないからな」
「頼むから、これ以上は皆との波風を立てないようにしてくれよ。君が何をするつもりで、何を成そうとしているかを聞こうとしたりはしないから
……響君や未来君が目の前に居たとしてもか?」
医務室に居た医師や看護師達はいつの間にかに医務室から出て行っており、翔真と弦十郎の二人だけが残されていた。
ベッドで寝ていた筈なのに突然後ろに現れた事や、体が砂になった事以外にも色々な事に対して苦言を呈しつつも、無事な翔真の姿を見て安堵していた。
「今後は控えるさ……この前までは
2人が居たとしても、だ。……アレは己の使命を淡々と執行する死の王だ…」
「なら、君が道を外した時は俺達が力尽くで引き戻すとしよう
その事は…言っても君の条件には当てはまらないのか?」
「アンタと響の力尽くは身の危険しか感じないんだが……
俺の口から言うに関しては、条件に当てはまらないのは検証済みだから問題無い」
「そう思うならば道を外さないようにするんだな!
そう言うものなのか…」
何時もの様に己を道化と言い、振る舞いながらも弦十郎は悪役を演じて人の道を外すならば自分達が力尽くで引き戻す宣言に、翔真は苦笑いを浮かべていた。
「善処するとだけ、言っておこう。そんじゃ、俺は一旦帰らせてもらうわ」
「ああ。気を付けて帰るんだぞ」
「あと、雪音クリスの所に行くならその時は俺にも連絡くれよな〜」
「ちょっと待て!何故君が雪音クリス君の事を知っ!……君は何を何処まで知っているんだ…」
道を外さないかどうかは善処すると言ってはぐらかしつつ、先程まで寝ていた砂の山を乗せたベッドへと移動して自身の端末の番号が書かれた紙を投げ渡す。
去り際にクリスの件で彼女の所に向かうならば連絡をする様に伝えた瞬間、砂の山が巻き上がって翔真を隠せば巻き上がった砂がフッと、消えると共に翔真の姿も消えたのだった。
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「あれ?なんで二課内部の廊下に……自宅に戻るようにした筈なんだが…………まださっきの後遺症が残っているのか?」
「あ、翔兄だ!昨日、私と未来と奏さんからのお説教中に逃げたの、許さないんだからね!」
自宅に戻る筈だったのだが気付くと二課内の長く広い廊下の中止に立っていた。
どうやらアレの後遺症が残っているらしい。もう一度、今度はテレポートジェムを使おうとした矢先、どうやら弦十郎達に会いに行こうとして歩いていた響達に見つかってしまった。
「う゛ぇ゛っ!響!?待て待て!なんでクラウチングスタートの姿勢を取ってんだ!響、今すぐやめなさい!未来!頼むから響にこれを止める様に言ってくれて!」
「イ、ヤ、です♪私達とのOHANASIから逃げた翔真さんには、響からの愛情たーーーーーっぷりの抱擁を受け取ってくださいね?」
「HAHAHA!響、話しをしよう。これには色々と大人の事情があ「私、そんなの知らないもん!翔兄、動いたら嫌いになるからねっ!」ちょっ!待て!ステイ!響、ステイ!」
「待たないもんっ!!」
どうやら昨日の件で逃げた事に対してご立腹な響は翔真を見つけるなり、クラウチングスタートの構えをして脚に力を目一杯、込めていた。
未来に助けを求めようとするも清々しい程の笑顔で拒否し、響からの抱擁を受けろと言われ捕まる前になんとか説得しようと試みたが無駄であった。
「これが!私のっ!全力だぁぁぁ!!!」
「あ、ちょっ!まっ!ひびっ!ぐ゛ぇ゛っ!!」
脚に込めていた力を一気に解き放ち床を蹴ると、翔真の胴体目掛けて一直線に突っ込んでいく。
動けば嫌いになると言われたのもあるが、この勢いで突っ込んでいく響を避け、自分以外の誰かに突っ込んでしまえば絶対にその誰かが犠牲者になるだろう。
そんな事を考えながら突っ込んで来た響が自身の胴体に触れた瞬間、響を受け止めると同時に右足を軸にして突っ込んで来た勢いを利用し体を回転させ、勢いを殺しつつ体へのダメージを軽減させようとするも如何せん勢いが強過ぎる……あまりにも強過ぎるのだ。
受け止めた瞬間に肋骨が何本か逝ったりしているし、逝った肋骨が肺とかにぶっ刺さっていた。
「今日は!絶対に!離れないからっ!」
「あだだだだっ!響!おまっ!弦十郎に鍛えてもらいやがったな!馬鹿力がパワーアップしてんじゃねぇか!!」
「私、馬鹿力じゃないもんっ!なんで意地悪言うのっ!なんで…なんで全部1人でやろうとするの………翔兄…」
ギチギチと力一杯に胴体を締め上げられる中、お腹に顔を埋めているので表情を確認出来ないのだがお腹辺りが微妙に湿っぽい。
ああ…どうやらまた、泣かせてしまったようだ。成長したから泣き虫は卒業したかと思ったが、まだまだ卒業していなかったようだな………うん。未来の笑顔がさっきより怖いな…響が抱き着いているからか、泣いているからのどち……あの笑顔は両方だな…後で未来は久々に沢山甘やかしてあげよう。
「……そりゃあ響や未来より大人で、それを可能にする事が出来る力を持っているからだよ、響」
「じゃあ…じゃあ私も翔兄と同じくらい力を手に入れるもん!翔兄を1人になんかさせないもん……」
「響さんや、過ぎたる力は身を滅ぼすって言うだろ?今の響は成長途中なんだから焦らず、ゆっくりと力をつけなさい…………あと、そろそろ離してくれるとこれ以上、骨が折れずに済むから有り難いんだが…」
「やだ…翔兄と一緒に居たい……でも、今日は未来に譲る…何時も私ばっかり翔兄に甘えてるから……」
これは…洗濯しなければダメなパターンだな。泣き止んでるみたいだが服の一部分がびしょ濡れだ。
おや?今日は離れないと言った響が珍しく未来に甘える機会を譲るとは……これは響がご飯をおかわりしないレベルでのレアなパターンだな。
「ひ、響?私は大丈夫だから、響が翔真さんに甘えていいんだよ?」
「未来、どうやら今日の響はワガママ響さんだからいつも以上に言った事を訂正しないぞ……響、本当に今日は未来に甘える機会を譲るんだな?」
「うん………私も心配してたけど未来も私と同じくらい翔兄の事、心配してたから……だから未来、今日は私の分も翔兄に甘えて…」
「響がそこまで言うなら…今日は私が翔真さんを独り占めするからね?」
「……うん」
あー…かなり我慢してるな。腕にさっきより、力が込められてるせいで骨がミシミシって音させてるし……響、このままだと俺の体が二つ折りになってしまうんだが…
「でも…後でちゃんと響も来てね?私だって独り占め出来るなら、本当はそうしてみたいけど……響と一緒に甘える方がもっと嬉しいし、幸せになれるんだから」
「未来、それって本当?翔兄もそれで良いの?」
「うんっ。本当だよ響」
「俺は……響と未来がそれで良いなら、何も言わないよ。最後に決めるのは2人なんだから」
「じゃ、じゃあ……後で翔兄のお家に行く…ね?いっぱいいっぱいいーーーーーーっっっぱい!私と未来が満足するまで甘やかしてね?」
おぉ…犬耳と尻尾が見える、見えるぞっ!響……どんだけ独り占めされるのが嫌だったんだ?俺と別れたら…え?それは人類が絶滅したとしても有り得ないって?
「次の日に支障が出ない程度までだからな…」
「ふふっ…響ってば凄く嬉しそう。あの………翔真さん?少しの間ですけど、響や奏さんじゃなくて私だけをその…見てくださいね?」
「確かにな…尻尾をブンブン振ってる犬みたいに喜んでいるな。言われなくてもそうするつもりだよ?普段、響を甘やかす時以上に未来を甘や゛っ!?コラッ!響!いい加減っ!痛いんだから離れなさいっ」
「私、犬じゃないもんっ!嫌っ!翔兄が意地悪ばっかり言うせいでしょ!」
未来も久し振りに響が居ない状態で甘やかして貰えるのが嬉しいらしく、少し頬を赤らめながらも響に抱き付かれ締め上げられた状態の翔真に近付き、服の袖を引っ張りながら上目遣いで見つめていた。
響そっち退けで未来と会話をしていた矢先、今度は本気で折りに行くくらいの力加減で締められると野太い声を上げると同時に響を引き剥がそうとする。
「だからって、背骨を折ろうとするなっ!2人とも弦十郎辺りに用事があって来たんだろ?待たせてるだろうから、離れなさいっ」
「翔兄がこのくらいで駄目にならないの、知ってるからやってるんだよ?最近の翔兄は無理無茶無謀な事ばっかり…私や未来がどのくらい心配してるか分かってない癖に……」
「確信犯かよ……なあ響、もうしばらくしたら落ち着くから…それまでは我慢してくれ。落ち着いたら響や未来が心配していた分だけ、好きにして良いから」
今日は何時もより感情の起伏が激しいみたいだが何かあったのだろうか……この状態になるのはあの日以来だな…そう、俺が響を助けずに見捨て、大怪我を負わせ入院させてしまった事を後悔し尽くした頃、響が退院したあの日以来だ。
「その言葉、忘れないでよ。忘れて、また何も言わずに翔兄が消えたりしたら許さないからね?」
「忘れない。次、消える時は何も言わずに消えないから……ほら、早く用事を済ませてきなさい。で、終わったらこれを床に叩きつけて割るんだぞ」
胴体を締め上げる力が徐々に緩み最後は離れると、涙や鼻水で汚れた響の顔が見えるようになればタオルを取り出し、響の濡れた顔を拭いて綺麗にしつつ2人に自宅直通のテレポートジェムを渡すのだった。
「うん……早く終わらせて翔兄の所に行くから」
「私も用事を済ませ次第、翔真さんの所に向かいますね」
「それじゃあ、俺はシャワーとか浴びて先に待ってるからな」
2人と約束をしてから去り際に響、未来の順番に唇を重ねてから離れるとテレポートジェムを叩き割り、翔真は自宅へとテレポートするのであった。
さて…そろそろ本編に戻る形で舵を切り始めようとしましょう!
ついでに久々の悪役ムーブとかしちゃうかも
オリジナルライダーでの戦闘&暴走
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両方有り
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戦闘のみ有り
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暴走のみ有り
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両方無し
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戦闘のみ無し
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暴走のみ無し