加茂に生まれました。禪院よりマシかと思ってたら全然そんな訳なかった 作:トレセン暮らしのデュエリスト
一歩踏み出せばパシャリと軽い水音が響くくせして波紋なんて一切広がらない。アクションを一つ行うたびにここはまともな世界ではない事を認識させられる。
「(生得領域……の類でもなさそうな感じなんだよね、ここ。本当に三途の川渡る一歩手前説が現実味を帯びてきた感じするなぁ〜)」
というかここ、呪力が異常に濃いなぁ。なんというか……この世界全てに呪力を生み出す負の感情が込められたみたいなレベルでどろっどろに濃い。綺麗な景色だとは思うけどその異常さに私は警戒と……
行く当ても無いからパシャリパシャリと水音を響かせながら何処までも続く緋の大地を真っ直ぐ歩き続ける。わんちゃん三途の川見つけられないかな〜、なんて思いながらだけど。
◇◇◇◇
「いや、どんだけ歩かせるの?というか三途の川くらい自動的に着かせてよ馬鹿なの?」
体感3時間くらい歩いたよ?はっきり言って不親切設計すぎない?これが賽の河原ですってか?……あ、私転生してて精神年齢20代後半の癖に肉体は12歳だわ、えっ。賽の河原説に信憑性が……!!?
「いやだーーーーーーーーーッ!普通に死ぬ分には全然構わないんだけどその前に苦行を叩きつけんなーーーーーーーーッ!せめて変化をくれーーーーーーーーーッ!なんでもい……い?」
目の前の風景が変わった。緋と碧の世界はあっという間にドス黒い緋が支配する世界に早変わりして――――中央に黒い塊がある。
いやこの見覚えのある色味は違うな?これは……呪血……?呪血の塊……?思わず近づいて触ってみると――――。
“――――殺してやる。――――殺してやる。――――殺してやる。――――殺してやる。”
「ーーーーーーーーーッ!?」
凄まじい量の負の感情が私に叩きつけられる。呪血から抽出できる呪力の根源なんだ。不用意に触っちゃいけなかった……!
呪詛が延々と頭の中に響き渡る。殺意がフルコーラスで全身に爆音となって叩きつけられる、そのくせ何言ってるか聞き取れるのは本当にタチが悪いんだけど!?
「ゔっ"……ぉ"…ぇ"え」
吐き気と眩暈がするし、力も抜けてきた。というか平衡感覚さえ無くなって今自分が立っているのかどうかすらも良くわかっていない。変化が欲しいとは言ったけど違うよこうじゃないんだぁ……。
「(…………罰ってところかなぁ)」
呪血なんて人の汚い部分を詰めに詰め込みまくったものをホイホイ使って、体を治して、祓って、詰めて、使って、治して、祓って……。そんなこと繰り返してたんだしそりゃこんなことにもなるか。いっそ私も呪いを吐けば楽になるだろうか?あぁ、こんなに頭の中に響き渡る呪詛に便乗して一言くらい言ってもいいんじゃないか、叩きつけられる爆音の恨み辛みに載せて私も叫べばいいんじゃないだろうか。
じゅぷ、じゅぷ。と。
私の体を何かが覆う。もうそれすらもどうでもいい、所詮呪いの血に塗れた体なんだもの。目を閉じて、全てから目を背けて、私も呪いを吐こう。そう思った瞬間……視界の端っこで何かが光るのが見えた。
「(なんだろ、あれ……)」
ほんの少し手を伸ばす。光の正体、それを知りたい一心で。
「…………あったかい。それに……吐き気と眩暈が消えた?」
光に触れると、何かが流れ込んでくる。
《殺したくない、人を傷つけたくない。僕を―――誰か、助けて。僕に誰か――――“愛”を教えてください》
たったそれだけ、たったそれだけの言葉はさっきまで響いてたどんな呪詛よりも切実な思いを私に感じさせた。
唐突に私が触れたものがなんだったのかを理解する。これはきっと緋解の呪力の塊……一つの意思を纏めてごった煮にしたもの。そしてこれは……恐らく、私の呪力と呪血の呪力がぶつかり合って生まれた正の呪力。本来であればこちらが意識として表に出てくるはずだったのだろうか、それを膨大な呪力が押し潰してあの凶暴な緋解が出てきたんだ。
であればここは――――緋解の心象風景?どうして私がここに来られたのかは知らない。もしかしたら赤血操術の効果かもしれないが今そんなのはどうだっていい。私がいま為すべきことは一つだ。『緋解に愛を教えてあげる』事。
「うん、待っててね。緋解」
◇◇◇◇
自らが何をしているのか、緋解は理解していない訳ではなかった。何故自らを害したこの
緋解自身は「もっと
そして緋禰は目を覚ます。
黒閃という呪力の核心に触れる機会が幾度となく訪れ、緋解の心象風景というものに触れ、死という呪術における最も成長するトリガーに一度浸かり込み、浮上し。再び片足のみだが入り込んだ緋禰はゆっくりと立ち上がり…印を結ぶ。
それはほんの一握りの呪術師しか扱うことのできない絶技。
ほんの少しのきっかけ、緋禰の場合であれば緋解の心象風景を見る事により目覚めた呪術の極地。
内縛にして二頭指を立て合わせ二大指、二水の側を押す掌印――――不動根本印。
不動明王は剣と縄を持つ。剣は悪意や煩悩を断ち切り、縄は鳥や獣を捕らえる。
即ち、
「領域展開」
危険だ。殺意全てが危険という思考に塗り替えられた緋解が全力を持って緋禰を今度こそ殺そうとし、その大顎を持って噛み砕こうとした瞬間。
「
領域が展開された。
そこはどこまでも続く緋と碧の二色で構築された世界。しかし溟海を謳う割にそこまで水深は深くない。しかしここは領域なのだ、水深などは些事。そして……緋解には十分だった。
《GU…?GU,GYAGYA?GYAGYAGYAGYA!?》
動けない。緋解はもう動く事を赦されない。
緋禰はゆっくりと領域に付与された術式効果を説明し始める。
「この領域は……
あなたは呪血から創られているんだから当然、全てに呪力が介在するよね?そしてこの世界は……呪力を持つ全ての存在が私を除いて崩壊していく。
崩壊する我が身を殺したいという念を込めて緋解は絶叫しようとするもそれすら叶う事なく。緋解は一部のみを残して消え去る他なかった。
◇◇◇◇
「…………つっかれた」
領域展開、呑呪緋溟海――――。正直言って使い勝手がいいかと聞かれたらノータイムで「NO」と答えられる領域だなとは思う。何せあくまで制限されるのは呪力が介在した行動だ、術式とかは勿論使用不可になるし呪霊相手に放てばその瞬間動くことは許されないんだけど……私の術式とか呪力操作も制限されるんだよね、私は
それに私は緋解を完全消滅させたわけじゃない。呪血はほぼすっからかんだったわけであの量じゃ膨大な呪力量と密度を持った緋解は完全消滅出来なかったしするつもりもなかった。
あくまで正の呪力が優位に立てるくらいの消滅――――そう、つまりは。
「ありゃりゃ、随分ちっちゃくなったね?」
目の前に残っているのはちょっと赤味が抜けて、足先だとか尻尾だとかが白っぽくなったふわふわした何か。それを持ち上げて私はふっと笑った後それを優しく撫でてあげる。
「こんにちは、初めまして緋解。私はあなたに愛を教えてあげる」
「クン?」
緋解は私を見て、不思議そうな声を上げて一声鳴いた。
縄の名は羂索だそうです。ちなみにこれはマジでたまたまでした。つくづく縁があるなぁ…()
なんか領域が緋解の心象風景と似ているなぁと思ったそこのあなた、大丈夫です。これは緋禰ちゃんの領域です。
高専はまだか?安心してください。まだです、私的にもいつになるかよくわかっていません。プロットなんてないんだなぁこれが。
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