加茂に生まれました。禪院よりマシかと思ってたら全然そんな訳なかった   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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日常、崩壊、スタンバイ。


Are you ready?


緋き血は平穏を望み、蒼き瞳は闘争を望む

「あ〜、平和っていいねぇ」

 

ほう、と緑茶を飲んで息をついたあと私はぽつりとそんな事を言った。縁側でカイを可愛がりながら飲む緑茶、最高だよ!

 

謹慎明けから2ヶ月ほどだろうか、私は未だ任務やら何やらを受けていない。というか恐らくジジイどもが私に仕事を与えていないんだと思う、私からしたら願ったり叶ったりだ。

 

そんな訳で今はこうしてゆったりとした日常を噛み締めているんだ、よくよく考えれば私は働きすぎだったね。まだ11〜12歳くらいの子ども、ましてや女の子が血と呪いと死体と……もうなんか思い出したくもない様な形容し難い何かをほぼ毎日見ているような生活をしている時点で本来はおかしいんだよ!

いくら私が特別一級術師だとしてもやり過ぎだろう、何より自分の家で抱え込んでるからどんだけ無茶な任務でもさせられるとか考えてそうなクソジジイどもが一番頭おかしいと思う。

 

 

はっきり言って、この世界はクソだと思う。いや、クソだ。七海さんが呪術師を一度辞めた理由も、夏油が闇堕ちした理由も今ならわかる。

あの人達は優しすぎた、術師としての頭のネジの外れ具合が甘かった。

私はもう何にも感じることがない。「クソだ」という感覚はあれどそれ以上には至らない……多分、もうネジが外れきったんだろう。呪いと、血と、死と。ありとあらゆる穢れに触れた私はもう真っ当な人としては生きていけない。死ぬまで呪術師なんだと思う。

 

「…………はっ、暗い考え方になりすぎてた」

 

いけないいけない、こんなドス黒い思考に陥ってはダメだよね!こんな時にはカイを愛でるに限る!

 

「ほら、カイ?ちょっと遊ぼっか!」

 

「クンッ!」

 

何を言っているのか理解したのか喜ぶ様子を見せるカイを撫でながら【刈祓】の要領でフリスビーを作る。そしてそれを……

 

「ほーーーらとってこーい!」

 

「ク――――ンッ!」

 

投げる!カイが取る、投げる!カイが取る、を繰り返す。案外楽しいものでかれこれ数十分ほど投げては取って投げては取ってを繰り返していると、そりゃ当然ミスも起こる訳で。

 

「あっやばっ」

 

思わず声が出てしまうくらいには遠くに吹っ飛ばしてしまった。まぁ私の血で作ったフリスビーだし別にいいや、なんて思ってたら。

 

「ーーーーークンッ」

 

バチュンッ、何かが撃墜されたみたいな音が響く。…………えっ?

 

パカっと開けた口からカイがなんか出した。えっ、それ穿血?えっ何で??

 

「クーーーン!」

 

どっやぁぁあとした顔をしているカイを慌てて触ってみる。…………良かった、取り敢えず何処も切ったとか血が流れているみたいな事はないらしい。というか今のってもしかしなくても緋解の時も扱ってた赤血操術……?術式まで残ってるのは驚いたなぁ。

 

「…………いやまぁ、一応は式神なんだし戦闘能力くらいあって当然なのか。それより凄いじゃんカイ!偉いねぇ!」

 

「クン、クーーーンッ!」

 

わしゃわしゃとカイの顔をもふもふしてあげる。あんまり気にしないことにした。今はこの平穏を楽しむべしってね!

 

 

…………そういえば最近女中さんが話してる所を聞いた噂話の中に「夜中に何かが吠えてる」ってのがあったなぁ。何でも凄い遠吠え?みたいなのがするんだとか。最近は夜襲もなくぐっすり寝てるから私は聞いたことないんだけどね!

 

◇◇◇◇

物音がする。カイはその事を認識してスッと起き上がった。

 

現在午前3時過ぎ、自らの愛すべきご主人様(緋禰)の安眠を妨害する不届者の駆除の時間だ。グッと力を込める、自らの中に溜め込まれた負の呪力を意識で制御できるラインまで練り上げるとビキビキと音を立てながらカイは『緋解』の時の姿へと変貌した。

 

「G,GUGUGUGUGUGU……」

ゆっくりと息を吐く。気配(血の匂い)は五つほど、よくもまぁ飽きもせずに毎夜毎夜こんな事をするものだと緋解は半ば呆れてしまった。

 

しかしやることは変わりない。自らを救ってくれた主人の役に立つのだと普段抑えている殺戮衝動をほんの少し滲ませながら緋解は自らの体を()に変え、気づかれることなく外へ出る。

 

チャポッ。

 

浸み出した(自ら)の池から自分の頭のみを出して周囲を観察、するとそこには真っ黒い装束を着込んだゴミどもがいる。

 

「いいな、確実に仕留めろ」

 

そんなことを言いながら今まさに主人の寝所の襖を開けようとしたゴミを見つけ、まずはこいつだと血の池から全身を躍動させ体内で圧縮した穿血を肩に放つ。いくら殺したくともその責めが及ぶのは主人だ。その事を理解している緋解は自らの殺戮衝動を抑えつつ次々と声も上げさせず爪や牙を使い素早く仕留めていく。

 

「ひっ!こ、これが例の……!あ"っ」

 

最後の1人はギリギリ認識する事が出来たが時すでに遅し。手早く顔面を切り刻んで戦闘不能に追い込んだ緋解はその爪に付着した血をペロリと一舐めした後、ニヤリと口角を上げて吠えた。

 

全ては救い主たる主人の為。自らは強く、そして護れるようにならねばならない。その決意を強く込めて。

 

緋の獣、殺意と慈愛の2つを備えた(わか)らずの獣。その名を緋解と言う。

そして加茂家の人間はその獣を後に『緋き守護狼』と呼ぶ。

 

 

その正体は――――――――

 

「ん、んぅ…………おはようカイ。昨日もよく眠れたよ……最近襲ってくることがなくて助かるねぇ」

 

「クン?」

 

「あっはは、カイにはまだわかんないか!」

 

素知らぬ顔で主人の横で寝転んでいた小さな小さな可愛らしい子犬である。

 

 

 

◇◇◇◇

五条家にて、白髪の少年が月明かりに照らされる…………蒼く、穢れなど知らない様な美しい瞳を持つ彼の名は五条悟。

 

後において『最強』を名乗る事となる存在。

 

そして今彼の頭に浮かぶのはその最強を揺るがせた、たった1人の少女であった。

 

「俺は…………またお前と闘りたいんだよ。緋禰、だからお前と闘う為の()()も作った。()()()()()()の事だ、どんな理由になったとしても最後には緋禰、お前を出さざるを得なくなる…楽しみだよなぁ、本当に」

 

あの喧嘩の後も、五条悟は幾度となく緋禰に接触を図った。しかし叶う事は無かったのだ、自分にとっては格下で、それこそ価値のない腐った家の者によって。

 

だが今は違うと、端正な顔に付いた口が美しく下弦の弧を描く。今やこの家(五条家)の権限は全て自分にあるのだ、何のしがらみも無く彼女に喧嘩を売りに行ける、そう確信した五条悟に待っていたのは緋禰が重症を負った上に鍛錬をし、三ヶ月ほど昏睡したという報せであった。

 

それを聞いた時思わず呪力を無意識のうちに吹き上がらせ屋敷中のある一定以下……具体的には準一級以下の術師や非術師が気絶するという事件すら起こった。

 

そして今。

 

復帰した緋禰を確実に逃がさないという意味で五条悟は自らの特権をフル活用し本来であれば加茂家、五条家に連なるもう一つの御三家、禪院家と執り行われるはずだったある行事を無理矢理加茂家と行うようにした。

 

五条悟は静かに笑みを深める。

 

――――――――もう逃がさないぞ。と。

 

その笑みは神々しく……そして一種の恐怖を抱く様な笑みだった。

 

五条悟()はどこまでも闘争を望む。己と対等である加茂緋禰()との闘争を。

 




5話からずっと見ねえな五条、と思ったでしょ?こいつ会いたくても会わせてもらえなくて最終的にこうなっちゃったんですよ。何でこうなっちゃったんだろ…(プロットとか何も作らずにやってたから)

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