加茂に生まれました。禪院よりマシかと思ってたら全然そんな訳なかった 作:トレセン暮らしのデュエリスト
あれ、呪術なんだし殺せばよかったんじゃ…
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…………記録
『 』年◯月⬜︎日
五条家所有地にて、御前試合中加茂緋禰に異常事態発生。
突如詳細不明の呪力を放出、続いて豹変。
人格が変わったかの様に周囲数百名の御三家在籍者を無差別に攻撃。これを五条悟、及び“特級指定級式神”式神名『緋解』がこれを鎮圧。
意識が戻った加茂緋禰の嘆願により、完全秘匿死刑が執行されることが決定。それに伴い加茂緋禰を“特級擬似呪霊”に認定。
死刑執行は明後日に決定。
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「は?」
「何度も言わせるな、悟。加茂緋禰の秘匿死刑が決定した。これは本人たっての希望だ、くれぐれも――――余計な事をするなよ?」
意味がわからない。言っていることの意味が、よく理解できない。そこから続く言葉が音にならない、耳にすら入らず俺の頭の上を通り抜けていく。緋禰が?死刑?自分で、それを望んだ?
頭では理解をする。しかし身体が受け付けない。否定の言葉はいくらでも降って湧いてくるというのに、その言葉は口から吐き出すことができない。
「なん、で。なんで秘匿死刑なんだよ、ふざけんなよ」
なんとか絞り出せた言葉はその程度のものだった。それも無情な事実によって叩き伏せられる。
「加茂緋禰曰く、自らの肉体を蝕む呪いと今回の件における償い――――だ、そうだ。どうやら身体の組成が呪霊に近いものになっているらしい。今後暴走する可能性と加茂緋禰自身の意思を
あの最後の微笑み。一度たりとも俺の前では笑うことのなかった、少なくとも狂笑ではない笑いを見せなかったあいつが、最後に普通に笑った。その情景は俺の頭にこびりついて、離れない。「ありがとう」の言葉も何もかも、トーンから何から全てが焼き付いて離れない。居ても立っても居られずに俺は高専の――――危険人物や呪物を封印する忌庫へと向かった。
◇◇◇◇
「緋禰!!!!!!」
「……なんで来たのよ、来ないで」
「――――――っ」
忌庫内部。転がり込むようにして危険な呪詛師や呪物が大量に詰め込まれたその中を進み続ける。その最果てに、緋禰はいた。目には覆いがかけられ、首に大量の、それも凄まじく強力な呪符を何十、何百枚と貼り付けられた注連縄の首輪を嵌められた上に両手両足もまた大量の呪符が縫い込まれているであろう縄で雁字搦めにされた緋禰が。駆け寄ろうとすればたった一言の拒絶。それは俺の無下限の様に強く、下手をすれば無限の距離よりも遠い距離に思えた。
声を絞り出す。もう時間がなく、数十時間後には執行されるであろう死刑をなんとか取り消させるために。
「なぁ、おい。こんな所にいてちゃ気分わりーよ。だからさ、ほら。帰ろうぜ?死刑なら俺がなんとかしてやれる、俺になら、出来る。だからーーーー」
「違うよ、五条。私が望んでるのはそんなことじゃない」
「じゃあ、何なんだよ。緋禰、お前は何がしたいんだ」
一拍置いてから、静かに緋禰はこう言った。
「何もしてはいけない」
そこから更に続ける。己の心の内を静かに、されど強く示していく。
「ただ只管に何もしてはいけない、叶う事ならば死にたい。迷惑をかけた、それ以上に私はもう人ですらない。呪霊に近い、忌むべき存在。私みたいな存在は消えるべきなんだ――――もう身体も大きくならない、何も感じない、歳も取らない、只々呪力を溜め込んで生き続ける
「…………だめだ、違う。お前は――――」
「違わないよ、私が呪霊じみた化け物になったのは事実。だからさ、五条。頼みがあるんだ」
「…………そんなの聞いてやらねぇよ、お前は俺と、また喧嘩するんだ。だから、頼む。お願いだ――――」
本当に俺から出ているのかと半ば信じらないほど弱々しい懇願も、緋禰にとっては聞くに値しないのかどんどん話を進めていく。
――――カイをお願い。
――――私の
――――周りを見てあげて。この言葉はいつか意味がわかると思うから、覚えていてね。
最後の一つはまるで意味がわからなかったが、俺は一字一句全て違わずに覚えた。
「…………ちゃんと覚えた?」
「おぼ、えた。覚えたよ。緋禰」
「ん、なら良し。…………それじゃあ、さよならだね」
嫌だ、嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッッッ!!!
………………あぁ、ごめん緋禰。俺はお前との約束を果たせそうにない。
◇◇◇◇
執行されるはずだった死刑は何故か突然「保留」扱いになった。…………やったな?
ただそれ以上の感情が浮かばない。表情筋が強張ったとかそういう次元じゃない、元からそんなものは存在しないと言わんばかりに、私からは感情が無くなったらしい。
それに気づかされたのは死刑の保留が言い渡された数日後。ふっと現れたカイが教えてくれた。私に会えてよほど嬉しかったのだろう、尻尾をちぎれんばかりに振り散らしているカイを見て苦笑を漏らそうとした瞬間「笑うってどんな感じだっけ?」と思ってしまった。
「クン?」
「っ、あぁ。ごめんねカイ、ほら偉かったぞ〜!」
ギッチギチに手足を縛られているからカイの頭がなんとか届く様な位置に移動してもらってカイを撫でる。わしゃわしゃとカイを撫でてあげると以前までなら「かわいいなぁ」なんても思ったりしたけど、今やそんな感情すらも浮かばない。残っているのは空虚な空回りする感情のバロメーターだけ。
「クーーーン…………?」
私の異変を敏感に感じ取ったのか、不安そうにカイが鳴く。大丈夫だよ、と心を込めて―――もうそんな事も難しいのだけど―――撫でる。
それにしても、私はいつ死ねるのだろうか。いつ自由になれるだろうか。
それとももう。死ぬことは、私にとっての最後の逃げ道に進むことは。
赦されないのだろうか。
一年が経った。カイはずっと側に居てくれる、時折撫でてあげるとひどく喜ぶ。私がまだ私を保てている事を認識できるからだろうか。
時間感覚が無くなってきた。幼少期の頃の監禁によって体内時計はかなり正確だというのに、今が朝なのか昼なのか夜なのかがさっぱり分からない。
記憶が薄れてきた。甚爾君や恵君、伏黒ママの表情や会話、声が思い出せない。唯一有難いのはもう思い出したくもない地獄の様な虐待とクソジジイ共の面を思い出すことがない事だろうか。
だというのに、私の身体はあの頃を忘れたくないとでも言うかの様に成長を止めたままだ。髪も伸びない、背も伸びない、爪も伸びないし手足の大きさも変わらない。呪いは私を永遠に縛り付けるつもりなんだろう、呪いは私を永遠にこの世に繋ぎ止めて私を呪い続けるんだろう。
「ーーーーーーーーでさーーー、俺が傑って呼んでるそいつがさ――――」
時々五条が私のところにやってきた、殆ど聞いてなかったからよく覚えてはいないけど夏油傑の話がここ最近は多かった様な気がする。
もう何年経ったんだろう、3?いや4年か。
もう高専に入学したのだろう、でなければ夏油傑の名前が出てくるわけはない。
家入硝子や七海建人、灰原雄。そして夏油傑――――五条が話す話にはそんな聞き覚えのある名前の人達がいた様な気がする。気がするのはほぼ話を聞き流していたからうろ覚えだからだ。……どうせ無駄な知識だ、私は死ぬ。死なずともこの牢の中で永遠を生きる。それは死ぬのと同じことだろう。
◇◇◇◇
「なぁ、緋禰!!聞いてくれよ、俺反転が使える様になったんだ!!」
ある時五条がウキウキとした様子を隠そうともせずそう言ってきた。…………あぁ、そういえば。何か以前忌庫にも衝撃音が届くほどの戦闘が起こっていた様な気がする。何故?甚爾君はとっくの昔に足を洗っているだろう。確かに裏の仕事は請け負うだろうが「高専関連の仕事だけは絶対やめてね?」と確実に釘を刺していたはずだ。そもそも五条には伏黒家を頼んである、まさか手を出しはしないだろう。
流石に聞き逃せない。
「ぁ"…どぅや…っで…」
「緋禰……!?何だ、何が言いたいんだ??ゆっくりでいいから言ってくれ……!」
あぁ、ヤバいな。何年も喋っていなかったから声が出しづらい。何とかどうやって反転を会得したか聞いてみれば概ね原作通り、天内理子は死んで同化は失敗したらしい。反転は護衛中に遭遇した“珍しい術式”が編み込まれた縄を所持していた謎の外国人(もしかしなくてもミゲル)との戦闘中負傷、死の淵に至った事により習得したらしい。…………これも原作に近い。ひとまず伏黒家には何事もなかったらしい。というか伏黒家、特に恵君は大丈夫だろうか。
「(……まぁ、大丈夫か)」
割ともうどうでも良い。というより私は何故五条に伏黒家を頼んだのか、それすら忘れてしまった。私はあの家族に何を思っていたのか、それすら曖昧なのに聞く権利も意味もないだろう。
ぼんやりとカイを撫でながら、聞く理由のなくなった五条の話を聞き流しながら私はそう思った。
何年かが経った。もう時間の感覚なんて完全にぶっ壊れたし人の名前を思い出せても顔や声は1人を除いて忘れてしまった。前世の記憶なんてもう完全に思い出せない。
多分この何年かは起きているより寝ている時間のほうが長い気がする。その短い起きていた時間の中で未だに鮮明に覚えているのは五条の発した「お前の三つ目のお願いの意味、分かった気がするよ」だった。…………お願いなんてしただろうか。
五条の一人称はいつの間にか「僕」になっていたし、サングラスをかけてたのが包帯になったり……コロコロ変わってた。以前より来る頻度は減った。それに関して特に何も思わなかった。ただ一方的に来ては喋っていく五条は半分時折響く雑音の様なものだったから。
…………そういえば、この前少し起きていた時近くの独房が開いて、誰かが閉じ込められた様な音がした。…………まぁ、どうでも良い。私にはどうせ何の関係もないことだし、気にする必要も考える意味もない。
それが私に大いに関係のあることとは、この時まだ知ることすらなかった。
◇◇◇◇
「久しぶりじゃないか乙骨」
「こっちに来ないで……」
「おいおい、寂しいこと言うなよ」
なんて事ない、ただの高校。
その中の一室にて。なんて事はない、最近の日本ではありふれた
「俺がどれだけオマエを殴りたかったか……もっと俺の気持ちを想像してくれ!!」
1人の男子生徒に群がる4人の男子生徒……俗に言えば『いじめ』である。当時のいじめの被害総数、過去最多32万3808件――――その中の一つでしかない、筈だった。
だがしかし。今回の場合において被害者は自らの身体の心配を一切していない。しているのは――――加害者である。
「こんなに焦らされたら――――うっかり、殺しちゃうぞ?」
被害者は一声声を上げる。「来ちゃ駄目だ」と、必死に。だがしかしそれは――――
記録――――2016年11月東京
同級生による執拗な嫌がらせが誘因となり首謀者含む四名の男子生徒が重傷を負う
恐怖、それ以外の何でもない。罪悪感、それ以外の何でもない。男子生徒はひたすらに謝罪を繰り返すのみ。
ごぷり、と。
通常掃除用具入れからはありえない液体が吹き零れる。中には、文字通り
◇◇◇◇
某所にて。
「完全秘匿での死刑執行?あり得ないでしょ」
白髪、双眸を白い包帯で隠した男が一言放つ。脳裏に今も縄で縛られ、獄中でほぼ廃人のような状態のあの時と変わらぬ姿を保ち続ける女を過らせながら。
「しかし本人が了承した」
「未成年……16歳の子供ですよ」
「それを言うならあの娘は何になる」
「――――――、逆に何人呪い殺されるか分かりません」
一瞬回答に詰まる。だが、彼女とは違う。彼にはまだ選択肢がある。それは――――
「ではやはり」
「ええ。乙骨憂太は呪術高専で預かります。…………ああ、それと」
自らの庇護下に置き、力の使い方を学ばせる。そうする事で、まだ護れる。そう信じているから。そして――――
「まだ何かあるのか?」
「緋禰の封印を解きます」
「…………は!?」
◇◇◇◇
目の前に広がる光景があり得なくて。私は、本当に何年ぶりか目を見開いた。
「頼む、緋禰。ここから出てきて――――
あの五条が――――頭を下げている?
「はな"、しだけ、でも"。まずは、ぎがせてぐれ"な"ぃかな」
どうしようもなく興味を唆られる。こいつが?ここまでする?
数年ぶりの感覚はどうしようもなく違和感でしかなかった。
「あの子なら、まだ間に合う。まだ救える。僕がかつて君に出来なかったことは、あの子にならまだしてあげられる。だから――――だから、ここから出てきてくれ」
何を思ったか、私は手を伸ばしてしまった。
もう生きる意味も理由も無いと思っていたのに、その手を取ってしまった。
ここから始まるのは本来前日譚であるべき話。
私にとっては――――実体験である話。
――――――次章
『闇は眩しく、緋は輝きを取り戻さん』
五条悟、頭を下げる。
流石に緋禰ちゃんも見過ごせなかった。
今の緋禰ちゃん
・呪血云々はこれまで通り、ただし一定量を超えると暴走する為『呪血を貯める量を制限する代わりに呪力量を増やす縛り』を結んだ。正の呪力は使えない、半分呪霊みたいなものだから。
・反転術式は使えない。半分呪霊(以下略)ただしある条件下においてはその限りでは無い。
・原作知識は全部忘れた、長い獄中生活は望んでいたとはいえ深い傷を残したのだ。
今の五条先生
・先生にはなった。二度と夏油や緋禰の様な人間を生まないために。
・最強は名乗っていない、対外的に呼ばれるやつも「いや、僕最強じゃないから。ちょっと人より強いだけだから」で返している。脳裏に焼き付くのはあの眩しく、焦がされる様な緋。
・地道な研鑽を重ね続けているし術式の解釈を広げ続けている。原作五条よりも強い。
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