俺と邪神のクラシック五冠道   作:カニ漁船

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サクサクと進むレース。


俺と新馬戦後とレース模様

 新馬戦後、厩舎にて。

 

「あんま疲れてへんな」

 

 カミノライザンの調子を見てそう判断する猛田。

 新馬戦で見事に勝利を収めたカミノライザン。3馬身差勝利のデビューである。

 しかも全く疲れた様子をみせていない。むしろ元気が有り余っている、といった様子である。

 

「これやったら連闘もええかもしれませんけど……登録してませんよね?」

「さすがにね。()()()()()連闘も経験しておきたいところだけど、してなかったよ」

 

 猛田の言葉にそう返す保茂。

 猛田は一瞬疑問符を浮かべたものの、あまり触れないことにした。

 

「それにしても……あれほどどっしりとしてレース見れるんはホンマに凄いですわ」

「まさに横綱相撲って感じの勝ち方だったね~」

 

 カミノライザンのレースをそう評価する2人。

 抜群のスタートを決めて逃げ、そのまま悠々と逃げ切って勝利。しかも無駄な力を一切使わず、レースが終わればすぐに走るのを止めた。

 馬がレースというものを理解しているのだろう。猛田はそう感じた。

 

「ひとまず、次はどこを使いましょう?なでしこ賞なんかええと思いますけど」

「なでしこ賞か~……」

 

 なでしこ賞は2週間後の土曜日。日程的にも問題はないと判断し猛田は提案する。

 特に異論はないようで、保茂もその提案を承諾した。

 

「分かった!じゃあライザンちゃんの次走はなでしこ賞で行こう!」

「分かりました。それやったらなでしこ賞に向けて調整を進めますんで」

「うん、よろしく頼んだよ」

 

 保茂は帰る前にライザンへと近づく。

 

「次も頑張るんだよ~ライザンちゃん」

 

 カミノライザンを撫でる保茂。鬱陶しそうにしているものの、カミノライザンは保茂が撫でるのを拒みはしなかった。

 ひとしきり撫でた後、保茂は足取り軽く去っていった。

 

 

 なでしこ賞に出走登録をしてレースに向けた調整をするカミノライザン。

 新馬戦と同様に少しばかり体調を崩したものの、新馬戦の時よりは軽めですんだ。レース前日にはすっかり良くなるほどである。

 

「新馬戦で自信がついたかもしれんな」

「かもしれませんね」

 

 猛田もこれには満足げな表情を浮かべる。カミノライザンの担当厩務員である萩野も満面の笑顔だ。

 カミノライザンもリラックスしている。

 

(新馬戦も無事勝てたし、前よりはマシだな。うん)

 

 精神的にも。

 良い調子で迎えたなでしこ賞。カミノライザンはまたも1番人気である。

 

「今日も勝てよー!カミノライザーン!」

「いてこましたれ~!」

 

 カミノライザンの枠番は5枠。

 今回の競争は21頭立て*1。カミノライザンは丁度真ん中に位置していた。

 カミノライザンも知識こそあれど、圧倒されていた。

 

(マジでこんなことあるんだな~。こりゃ圧巻だ)

 

 カミノライザンはそんなことを思っていた。

 鞍上は新馬戦に続いて富永紘一。富永はリラックスしているカミノライザンを見て自信を深めていた。

 しかし不安要素がある。今回の馬場は新馬戦の時とは違い不良馬場であるということだ。

 

(雨の影響で馬場の状態が良くない。これがどれだけ影響するかだな)

 

 富永はそう分析していた。

 カミノライザンは不良馬場でも同じような強さを発揮できるか?それが一番の不安要素だろう。

 

 

 結果として、カミノライザンは()()()()()()()()()()

 今回も抜群のスタートを決めると道中は5番手で追走。先頭は2馬身程離れて逃げていたが、カミノライザンは動じることなくレースを展開していた。

 そして迎える最後の直線。カミノライザンは進出を開始する。

 

《最後の直線に入ります、先頭はスマノタカラ。スマノタカラであります。しかしこれは厳しいか?徐々に後続が迫りますスマノタカラこれは追いつかれるか?そしてここで控えていたカミノライザンが進出開始!カミノライザンが馬群からスルスルと抜け出します!これは上手い位置取りだカミノライザン!》

 

 カミノライザンは固まった馬群から難なく抜けだす。そのまま先頭を走るスマノタカラを捉えんとスパートをかけた。

 逃げるスマノタカラ。しかしここはカミノライザンが強かった。

 スマノタカラをあっという間に躱し先頭に立つ。後続も続々とスパートをかけてカミノライザンとの差を詰め始める。

 

《さぁカミノライザン抜け出した!カミノライザン先頭カミノライザンが先頭であります!不良馬場もなんのその、不良馬場もなんのその!曇天の空を駆け抜けるカミノライザン!後続も追い上げてくる、さぁ逃げ切れるか!?さぁ逃げ切れるかカミノライザン!》

 

 カミノライザンとの差を詰める後続。鞭を使い、必死に押してカミノライザンを追いかける。

 しかし、カミノライザンを追い越すことはできず。カミノライザンは先頭でゴール板を駆け抜けた。

 

《しかしここはカミノライザン!カミノライザンであります!なでしこ賞を制したのはカミノライザン!新馬戦から連勝であります!これは強い!今後のレースが非常に楽しみになる馬でしょう!2着は同じくシンザン産駒のシンザンホマレ、シンザンホマレであります。シンザン産駒が1着と2着を取りました。カミノライザンとシンザンホマレ、ともに次走が楽しみであります》

 

 カミノライザンはゴール板を駆け抜けたことを確認すると、すぐに走るのを止める。

 後続の馬達が次々とカミノライザンを追い越していっても動じることなく。レースはもう終わったとばかりに佇んでいる。

 その様子に観客達は歓声を上げた。

 

「うおおおぉぉぉ!ホンマに強いでこれは!」

「シンザンの子で1着2着を勝ち取ったわ!ええぞー!」

「次も頼んだでカミノライザーン!」

 

 堂々とした佇まいに期待を寄せる観客達。

 なお、カミノライザンはというと。

 

(うおおお……!き、緊張してきたぁ……!期待が、期待がぁ……!)

 

 観客の期待に負けそうになっていた。

 

 

 これに気分を良くした陣営は11月の第3週にレースを組む。3歳馬戦だ。

 カミノライザンはさすがに緊張しなくなった……ということはなく。やはり数日前には体調を少しばかり崩した。

 

「まぁ本番前には整えるやろ」

 

 実際カミノライザンはレース本番には体調を良くしていた。

 京都競馬場3歳馬戦。13頭立てで開催されたこのレース。芝1400mの重馬場開催だ。カミノライザンは──文句なしの1番人気である。

 カミノライザンはまたも抜群のスタートを決めると逃げ馬を見て道中3番手に控える。

 逃げ馬との差は3馬身程。その差をキープしながらレースを展開する。

 

《逃げるカコガワエース、それを追うテッシュウとカミノライザンであります。カミノライザン今回も逃げ馬を見てレースを展開する形。非常に落ち着いていますカミノライザン。第4コーナーを回って最後の直線。さぁ逃げ切れるかカコガワエース。追い詰められるか後続11頭!》

 

 1頭は途中で競走中止。逃げる馬を追うべく後続11頭が進出を開始する。

 最後の直線に入ってカミノライザンが進出を開始する。先頭を走るカコガワエースとの差をグングン詰めていった。

 

「ええぞライザーン!そんまま差せー!」

 

 そんな声援に応えるがごとく、カミノライザンはあっという間にカコガワエースを捉えた。

 粘るカコガワエースをすぐに躱してカミノライザンが先頭に立つ。同時に進出を開始した馬は振り切られていた。

 

《さぁカミノライザン先頭だ!カミノライザンあっという間に先頭だ!これは強い、これは強いぞカミノライザン!後続も詰めてくる、後続も詰めてきますがこれは届かないでしょう。カミノライザンこの強さは文句なし!残り100を切ってカミノライザンと2番手との差は2馬身程であります!》

 

 そのままカミノライザンが先頭でゴール。全く問題はないとばかりに勝利した。

 

《やはりカミノライザン強かった!カミノライザン強かった!これで3戦3勝、この強さは文句なしでしょう!ご覧ください、ゴール板を過ぎて、佇んでおりますカミノライザン。様になっておりますカミノライザン!》

 

 実況も興奮気味だ。無論観客も大興奮である。

 

「こら強いわ!ええぞカミノライザン!」

「ホンマに強いわ!この調子で頼むで!」

 

 カミノライザン3戦3勝。猛田も富永も、保茂も気分を良くしていた。

 カミノライザンの次走は──。

 

「京都3歳ステークス。ここに出走を考えてるんだけど……どうかな?」

「ええと思います。京都3歳ステークスに出走しましょ」

 

 京都3歳ステークス。ここでカミノライザンは、とある馬と邂逅することになる。

*1
この時代は21頭立てが可能。この年の菊花賞も21頭立て




冷静に考えて21頭立てって凄いな……(この年のダービー28頭立て)
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