今に続く偉大なる血族、【神の一族】。その血が日本で続いているのはノヴァスターダストの功績が大きいが、この馬──ノヴァトップスターもまた外せないだろう。
ノヴァトップスター。名牝ノヴァスターダストの初仔であり、三冠馬ミスターシービーを父に持つ牝馬である。完全にオーナーの趣味で実現した交配ではあるが、シービーはスターダストのことをいたく気に入っていたため遅いか早いかの問題だっただろう。種付けから引き離すのに苦労したエピソードがあるくらいなのだから。
トップスターにかけられる期待は大きい。カミノライザンを母に持つノヴァスターダストはその血が続くことをファンに望まれ、ミスターシービーもシンザン以来の三冠馬*1。そんな2頭の血を受け継ぐノヴァトップスターはやはりというか期待された。
彼女はカミノライザンとノヴァスターダストの馬主である保茂元春が購入。その時の言葉が。
「この子で海外のクラシックを取りたいね~」
相も変わらず、よく分からないことを企む馬主である。それはそれとして栗東に入厩。競走馬としての道を歩むことになる。
気性の激しいノヴァスターダストの初仔。こちらも激しい気性を見せるだろう……と思われていたが。待っていたのは真逆の現実だった。
「大人しくて良い子だけど、大人しすぎるな」
「なんか、ボーっとしていることが多いですよね。無駄な力を使わない、というか」
大人しい気性で滅多に逆らわない。というか、逆らうことをめんどくさそうにしていると感じさせるほどに緩い性格。とてもノヴァスターダストの子とは思えないほどだった。馴致はスムーズに済んだものの、この闘争心の薄さで大丈夫か?と不安視されるノヴァトップスター。幸いにも能力は非凡なものがあり、厩舎で一番の期待をかけられるほどだった。
レースとしては王道の先行策。気性の問題から逃げ以外はできなかったスターダストとは違い、騎手の言うことに従順かつ切れる末脚があるので基本どこでも競馬ができた。名ジョッキーでカミノライザンの主戦騎手だった富永紘一も認めるほどである。
「良いね、スターダストの初仔!動きも悪くないし、切れる脚もある。これはG1も取れるな!」
トップスターの主戦騎手にはならなかったものの、才能に太鼓判。ノヴァトップスターの騎手はシンボリルドルフの主戦騎手だった岡戸が務めることになる。岡戸もまたノヴァトップスターの才能を認めており、自分から売り込みに来るほど。かけられる期待は重かったものの、トップスター自身は相変わらずのんびりとしていた。
さてそんなノヴァトップスター。9月に開催されたメイクデビューで早々に勝ちあがると続くオープン戦も連勝。朝日杯で重賞初挑戦、しかも牡馬が相手になったが王道の先行策で早々に抜け出し、2着に3馬身差をつけて勝利した。この活躍で最優秀3歳牝馬に選ばれる。
レース後もケロッとしており、母や母母から受け継いだスタミナがあることを証明。ここで馬主の保茂は思い切った決断をする。
「トップスターちゃんは今後欧州のレースに向かうよ。次は英国の1000ギニーかな」
なんと日本のクラシックに向かわず、そのまま欧州競馬へ殴り込みをかけると宣言した。向こうに適応するかも不明、しかも海外挑戦はまだまだ浅い日本。それでも挑むと宣言。さすがはカミノライザンで訳の分からない偉業を達成した男、常人には理解できない発想をする、とファンは呆れていた。もっとも、この突拍子のなさが長年彼が愛される理由でもあったのだが。
遠征自体は問題なくできた。なにせカミノライザン時代からの伝手があり、なにより海外にはカミノライザンの子であるワイルドハントが種牡馬として活動中。むしろ引く手あまただったと当時の調教師は証言している。ここはカミノライザンの血というべきか、遠征にとにかく強い。体調面の不安もなく、調教も問題なくこなして英国のクラシック挑戦の準備を整える。
クラシックの初戦1000ギニー。欧州の芝初挑戦ながら3着に滑り込む大健闘をみせるがここで敗戦。今後に期待が持てる内容だった……が、問題はレース後である。
「あれ?トップスター……よ~しよし、落ち着けトップスター。この雪辱は、次で果たそうな」
ノヴァトップスターは勝ち馬を睨みつけていたのだ。悔しそうに、不機嫌そうに耳を絞りながら。緩い性格かと思っていたが、ここで激しい闘争心を内に秘めていることが発覚。負けはしたものの、嬉しい収穫があった。
次の舞台は英オークス。ノヴァトップスターは勿論出走だ。ラビットは使わず、陣営からは1頭のみの出走。前走が前走だけに期待を寄せられていたが……その期待に見事応えた。
《ノヴァトップスター先頭、ノヴァトップスターが先頭だ!かつて欧州を沸かせた青毛の女神カミノライザン、今時を超えて!エプソムに女神の後継者が降臨したノヴァトップスター1着ゥゥゥ!日本からの挑戦者が!伝統の一戦を制しました!ノヴァトップスターが英オークス馬として輝きました!》
2着を3馬身、3着以下を10馬身以上引き離す圧倒的勝利を収めて戴冠。日本の馬が欧州のクラシックを制したのである。余談だがノヴァトップスターは勝った時嬉しそうにしていたらしい。また前回負けたシャダイードに対してフフン、とドヤっていたとかいなかったとか。
このニュースは欧州のみならず、日本にも瞬く間に広がった。
「うおおお!やっぱカミノライザンの血はすげぇ!」
「初仔でこれかよ!ノヴァスターダストは名牝だ!」
「これからもガンガン活躍してくれよ!」
口々に賞賛の声を上げるファン。日本ではこの年ノヴァトップスターの弟であるカムイホープがデビューを控えていた。そちらも期待がかけられることになるのはまた別のお話。
英オークスを圧勝したノヴァトップスター。次なる舞台はアイルランドのオークスだ。英オークスの2着馬がリベンジに燃える展開だったものの──ここもノヴァトップスターが圧勝する。
《さぁ突き抜けた、さぁ突き抜けた!これが日本競馬の強さ、女神の血を引く女王の力だ!その差を5馬身、6馬身と広げて今っ、ノヴァトップスターがカラー競馬場を駆け抜けましたゴールイン!なんとなんと両取り!イギリスとアイルランド両方のオークスを取りましたノヴァトップスター!イタリアのオークス馬ポセッシヴダンサーを全く寄せつけなかった!》
6馬身差の圧勝。ノヴァトップスターの強さを再認識する形となる。その後ヨークシャーオークスに進んだもののマグニフィセントスターをとらえきれず2着。凱旋門賞でスアーヴダンサーの4着に入線したのを最後に日本へ帰国。今後は国内で走ることになる。
検疫期間があるため半年近く出走ができなかったノヴァトップスター。阪急杯で日本のレースに復帰するとここで3着。まぁ遠征帰りでよくやった方だろう。その後の高松宮杯で勝利し、秋の天皇賞に向けて調整を進める。
天皇賞からはG1へと連続出走。天皇賞・秋を2着、ジャパンカップを5着、有馬記念を4着といまだに掲示板を逃さない活躍を見せる。素晴らしい活躍だ。
ただ、その後は勝ちに恵まれることはなく。トウカイテイオーが奇跡の復活を遂げた有馬記念で4着に入ったのを最後に引退。今後は五十嵐牧場で繁殖牝馬として過ごすことになった。英国と愛国の両オークスを制した稀代の女傑、繁殖牝馬としてはどうなのだろうか?と期待を集めることになる。
初年度は大ブレイク中だったサンデーサイレンス。ただ、未勝利戦を勝ちあがることができずに引退することになった。
次年度ではトウカイテイオーと交配、カムイストームと名付けられる。こちらの子は1998年クラシックに出走していたが凡走。しかし後にG1を3勝する活躍を見せて種牡馬入り。トウカイテイオーの血を繋いでいる。
ただ、知名度的な意味ではやはりノヴァスタービートが挙げられるだろう。父タイキシャトルの本馬はかのディープインパクトの同期であり、名勝負に必ず彼女の姿有り、とファンから親しまれていた。ラインクラフト達とも死闘を演じており、彼女自身もG1を勝っている。勝ち数でいえばカムイストームの方が多いのになぜかこちらの方が有名なのはなんともいえないところだ。
他にもナリタブライアンの子ノヴァスターライトだったり、キングカメハメハと様々な牡馬と交配。ただ、さすがにノヴァスターダストほどの活躍はなかった。まぁ向こうは半分以上が重賞ウィナーとかいう名牝どころじゃない活躍をしているのでしょうがないが。それにノヴァトップスターも3頭が重賞ウィナーかつその子がトウカイテイオーにナリタブライアンと超有名馬なのもあり、さらには2頭のサイアーラインを繋いでいるのでこちらも規格外の名牝である。
一番活躍したのはトウカイテイオーとの子、カムイストームである。また、2頭の間にはこんな話もあった。
「この2頭凄く仲が良くてですね~。ノヴァトップスターが近くにいるだけで落ち着くんですよ、テイオーは」
「ノヴァトップスターも嫌いじゃないのか拒みませんからね。ベストパートナーなのかも?」
なんて証言もあるほど。後にトウカイテイオーとのツーショット写真がふんだんに掲載された写真集なんかも発売されている。
ノヴァスターダストのラインを繋いだノヴァトップスター。2つの国でオークスを制した彼女もまた、神の一族の繁栄に一役買っているのだ。
覚えてる人いましたかね?短編で変なもん思いついちゃったけど出力するしかなかった。ご覧になる場合は精神的BL要素があるので注意です。