ネオユニヴァースの娘。   作:宮川 宗介

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登場人物:レイ
※オリウマ娘注意です。

こんな感じの娘です。

【挿絵表示】

よろしければ皆様の読書の一助にしてくださいね。

誕生日:5月10日
体重:地球の七不思議の一つ。
身長:159センチ
スリーサイズ:82・56・83

レイのヒミツ1・実は、家事全般が得意。


第一話

短い中山の直線を、私は先頭で迎えた。

 

ジュニア級の中距離路線王者決定戦・ホープフルステークスも、いよいよクライマックスだ。

今まで体感したことのないスタンドからの熱狂と大歓声が、私を、そして18人の若き戦士たちを歓迎する。

 

これが、G1レースというものなのか。

 

最後の直線を先頭で立ち上がったのはよいが、後続の足音もまだまだ健在でセーフティリードとは言いがたいようだ。

でも、私の脚にももう少しばかり、余裕があった。

 

「ふっ……!」

 

私は脚に気合を入れ、もう一段階ギアを引き上げて冬枯れの中山レース場の芝を強く踏み抜く。

自慢の末脚にギアが入り、トップスピードに乗った。

 

少しずつ、後ろの娘たちの気配が遠ざかっていくのを感じる。

 

ここまで、私の成績は3戦3勝。

1800Mのメイクデビュー・2000Mのプレオープン、そして同じく2000Mの重賞・京都ジュニアステークスを勝ってこのG1の舞台に駒を進めてきた。

 

自分で言うのもなんであるが、中距離では同世代の中でもトップクラスの実績を持ってホープフルステークスという大舞台に臨んだという自負がある。

 

例年なら、私が圧倒的一番人気に推されていてもおかしくなかったはずだ。

それなのに今日、二番人気に甘んじることになったのは……。

 

「来た!やっぱり、マリアが来た!!」

 

そう叫んだのは、スタンドにいる熱狂的な彼女――今日の一番人気、マリアージュローズ――のファンだろうか。

 

遠ざかっていたはずの後方集団からひとり、ものすごいプレッシャーで大外から私に襲いかかってくるウマ娘の気配。

 

「くっ……!」

 

彼女が強いのは、よく知っていた。

彼女もここまで3戦3勝。

 

デビューの時期は同時期の違う開催地で、レースのローテーションも彼女とは少しずれていたせいもあって、今まで彼女と対戦することがなかったのだ。

 

それでも勝ちタイムは彼女とほとんど変わらないものだったし、2000Mという距離だけでいうなら、2回その舞台で戦った私に利があるくらいの考えていたのだが……。

 

残り100Mの時点で彼女は長く美しい黒髪をなびかせてあっさりと私をかわし、先頭を奪い取ってしまった。

私もトップスピードを維持しているにもかかわらず、その差が半バ身、一バ身と開いてゆく。

 

(これは、追いつけないな……)

 

母・ネオユニヴァース譲りの、多少は回る脳ミソがそう判断した瞬間、私は自分の闘争心が静まっていくのを感じていた。

 

後続ははるか後方だし、勝てる見込みがないなら本気で走ってこれ以上無駄に脚を消耗する必要もあるまい。

ウマ娘の脚は野球の投手の肩と同じで、消耗品なのだ。

 

このレースでは2着を確保すれば、十分だろう。

G1での2着なら出走ポイントを獲得することができ、クラシックレースへの道は大きく開ける。

 

脚に入っていた力を少しばかり緩め、減速を感じたところがゴールだった。

 

私の初のG1挑戦は、2番人気で2着という決して悪くない結果に終わった。

 

 

*

 

レースファンならご存じのことと思うが、レースのあとにはウイニングライブという恒例行事がある。

しかし……負けたあとのウイニングライブがこれほど憂鬱に感じるものだとは、私はこれまで思いもしなかった。

 

「レイ。そうはいっても、出ないわけにはいかないからね。この悔しさをバネに、次がんばりなさい」

「そうだね……」

 

お色直しのために控室に戻ってきた私を、トレーナーが励ましてくれる。

レイ、というのはもちろん私の名前だ。

自己紹介をすると母・ネオユニヴァースのご高名のせいか、よく『フルネームはレイユニヴァースさんですか?』と聞き返されるが、URAにルール上登録できるこの最短の二文字が、私のまごうことなきフルネームである。

 

ちなみに、この名前はお母さんが名付けてくれたらしい。

 

「でも、ごめんねお父さん。久しぶりのG1タイトルを、お父さんにプレゼントしたかったのに」

 

私の敗北は仕方ないが、普段の生活面でもレースのことでも、私の面倒を見てくれているお父さんにG1を勝たせてあげられなかったことは、本当に悔しかった。

 

そう。

私の専属トレーナーは、私のお父さんだ。

 

お父さんはトレーナーとしてルーキーの頃にお母さんのネオユニヴァースを担当して、それが縁になって交際・結婚したらしい。

妻がウマ娘という夫婦はこういうパターンでの結婚も結構多いらしく、その二人の間にウマ娘が産まれたら、父親が娘を担当する、というのも決して珍しいことじゃない。

 

「そんなことはどうでいいんだ。だた……」

「ただ?」

「いや、なんでもない。早く準備して、ライブに向かいなさい。ファンのみんなが楽しみにして待っているよ」

 

お父さんは曖昧な笑みでごまかしたけど、私にはお父さんが何を言いたかったか、察することができてしまった。

 

私は昔から、明らかに勝敗が決したレースは最後まで全力で走らない、というクセがあった。

きっとそのことを注意したかったのだろう。

 

【クセ】とは言ったが、私はこれを決して悪いことだとは思っていない。

 

お父さんには小さい頃から『どんなレースでも最後まで全力で走るように』と何度も言われているけど、私にも【ウマ娘の脚は消耗品】という持論があって、それを譲るつもりはなかった。

 

あと、さすがに面と向かっては言わないけれど『1着が取れなかったら、2着も最下位も大差ない』とも私は思っている。

 

レースを始めた幼少期からそう思ってる分、勝ち負けがはっきりしたレースで力をセーブする理由としては、後者のほうがウエイトが大きいかもしれない。

 

どちらの持論も普通のトレーナーにそんなことを言おうものなら、怒鳴り散らかしてもおかしくないと思う。

 

しかし、自分が納得できない、理解できない思想とぶつかった程度で怒りを撒き散らしていては、あのネオユニヴァースの伴侶は務まらないだろう。

 

そんなこともあって、最近はお父さんもそのことを注意しなくなっていた。

 

私は何も気づかなったふりをしてお父さんにうなずき、ブラシを手にとってレース中に乱れた母親譲りの長い金髪を整え始めた。

 

*

 

自宅に戻るころにはすっかり陽も落ち、夜の帳が冬の冷たい空気を支配していた。

冬の夜に吹くからっ風が、敗戦の身にやたらと沁みる。

ウマ娘をやっていればレースの勝った負けたは日常茶飯事なのだが、トゥインクルでの初めての負けは、少しばかりいつもより辛く感じられた。

 

「ただいま……」

 

レースに負けた悔しさを押し殺しながら帰宅を告げて靴を脱いでいると、二階からトントン、と規則正しい足音が聞こえてくる。

 

「レイ。おかえりなさい」

 

声をした方を振り返ると、お母さん……皐月賞・ダービーと二冠を制した偉大なるウマ娘、ネオユニヴァースだ……がわざわざ出迎えてくれていた。

 

お母さんの、特徴的な長い金髪に色素の薄い碧眼は若い頃から変わっていないらしく、そのせいもあってかお母さんは実年齢より若く見られることが多い。

 

さすがに世辞混じりだと思うが、お母さんと並んで歩いていて『ご姉妹ですか?』と聞かれたことは一度や二度じゃない。

……私が実年齢よりかなり上に見えるという可能性は、あまり考えないようにしていた。

 

「レース、見てたよ。いいレースだったけど、『REGR』だったね……」

 

……こういう言い回しは、この人独特のものだ。

えーと、多分regretの略かな。

今日の結果は残念だったね、とお母さんは言いたいのだろう。

 

「……うん、まぁ。相手も強かったし、仕方ないよ」

 

お母さんの慰め?に、私は肩をすくめた。

 

お母さんが発するアルファベット四文字の言葉は、何らかの単語の略なのである。

今回は英単語の頭四文字から拾ってきたようなので、まだ連想が楽だったけど……。

 

単語のあちこちからアルファベットを拾ってきたり、ぜんぜん意味も言語も違う単語を組み合わせて四文字に略されると、もう多言語クロスワードを解かされているような気分になる。

 

今のように、英単語の略語ならまだマシだ。

英語は私も幾分、素養があるから。

 

ただ、これがフランス語とかドイツ語の単語になってくると、この翻訳がめんどくさくて仕方ない。

お母さんは幼い頃から外国語の論文に触れているらしいから、とっさにそういう単語が思い浮かぶのだろう。

 

このことで小中学生時代は何度もお母さんとはケンカ(というか、一方的に私が意見するだけだった)してるけど、お母さんは『……ごめんね、できるだけ気をつけるようにするよ』というだけで、全然改善してくれない。

 

でも最近は、お母さんの脳はきっとそういう言語体系になっている上に、語学力とか分析力とか計算力にスキルを全振りしているから、ある程度は仕方ないのかな、と思うようになった。

でないとRASAという宇宙開発関連の職場に就職して、RASA史上最年少でCTO(最高技術責任者)になんてなれないだろうから。

 

それでもお父さんいわく、『若い頃に比べたらずいぶんとユニの言葉も分かりやすくなったよ。ゼンノロブロイがいろんな小説勧めてくれた効果が大きかった』らしい。

 

小説読むと、語彙が増えて人の気持ちがわかるようになるとはいうけどね……。

 

マシになってこれなのだから、こんなわかりにくいものの言い方で、この人は一体どうやって今まで生きてきたのだろう?と疑問に思ったことは一度や二度ではない。

 

我が母親ながら、この人はまともに人とコミュニケーションを取ろうという気があるのか、疑いたくもなってくる。

 

「今日はレイがG1に初めて出走した、とっても【AUSP】……『おめでとう』の日だから……一緒になにか美味しいものでも食べに行こう」

 

そう言ってくれるのは嬉しいし、もし勝って帰ってきたら喜んでうん、と言っただろうけどね。

 

「あ~、なにもそんな贅沢する必要ないよ。さっと焼き飯でも作るね。お母さんも晩ごはんまだでしょ」

「そう、だけど……」

「でき上がったら持っていくから、仕事部屋で待ってて。どうせ仕事中なのにわざわざ出迎えてくれたんでしょ?」

 

うちのお母さんは週に3日は自宅でリモートワークして、残る2日は普通に出勤、休みの日は学会や勉強会に出席しているという、超ハードワーカーだ。

 

本当にたまにあるっぽい完全オフの日は、自室で寝ているか、私にはさっぱり理解できない小説やら論文やらを読んだりしている。

 

だから、小さい頃からお母さんがレースを見に来てくれることなんて、一度もなかった。

 

「でも……」

「スープはたまごスープでいいよね?」

 

語気を強めて私がそう確認すると、お母さんは困ったような苦笑いを浮かべる。

 

「……うん。そう、だね。じゃあ、お願いしようかな」

 

そう言ってお母さんは二階の仕事部屋に戻っていった。

 

負けてイライラしていたせいで、身近な人にきつく当たってしまった、というのももちろんある。

けれども普段はほとんど放置のくせに、こういうときだけ母親面してくるお母さんのことを、私は心底面白く思っていなかった。

 

 

>>

 

彼がレース後の事務処理を終えて自宅に帰ると、もう日付が変わる直前の時間になっていた。

我が家で唯一明かりのついていたリビングに足を運ぶと、すでにパジャマ姿の妻がゆったりとワインを楽しんでいるようだった。

 

「ただいま」

「あなた。おかえりなさい。先に、呼ばれているよ」

「ああ。俺もシャワー浴びてきたら、ご相伴に預かるかな」

 

彼がそう言うと、ユニヴァースは嬉しそうにうなずく。

 

ユニヴァースが20歳の誕生日を迎えた日、当時まだ大学生だったにも関わらず、すでに自分のワイフになっていた彼女が少しはみかみながら『ネオユニヴァースはちょっとだけ、お酒を飲んでみたいよ』と言いだしたとき、彼は驚いたものだった。

 

しかし同時に、普段周りからなにかと【特別な人】と思われがちな彼女は【みんながしている普通のこと】をしてみたいのだろう、とすぐに気がついた。

誕生日のお祝いケーキと一緒にアルコール度の低いチューハイを買って、二人で一緒に飲んだのを思い出す。

 

大切な、二人の思い出の1ページだ。

 

で、総じてウマ娘には、お酒に強い人が多い。

やはりその身体能力と同様に、肝臓もそれなりに強いのだろう。

 

そしてそういう人は自然と酒好きになるものである。

 

ユニヴァースもご多分に漏れず、ジュースのようなチューハイカクテルから飲み始めて、ビール、日本酒、ウイスキーと一通り飲んでみたらしいのだが、彼女が一番気に入ったのはワインだった。

 

種類が豊富で彼女いわく『ワインは美味しいだけじゃなくて、歴史やいわれがあって勉強するのも面白い』らしい。

 

正直、彼にはワインの良し悪しなんて分からなかったが、グラスを傾けながらワインの造詣や今日の出来事を語ってくれるユニヴァースが、好きだった。

 

ほろ酔い加減で、白い頬に朱が差した彼女の笑顔も。

 

シャワーから戻った彼はユニヴァースの正面に腰掛け、すでにワインを注いてくれていたグラスを手に取ると、お互いに「お疲れ様」とそれを掲げて今日の仕事を労い合う。

 

「ホープフルステークスで2着、か。わたしは、ジュニアではそんなに活躍できなかった。レイは、すごいね」

 

二人だけで暮らしていた時は仕事やお互いの趣味について話すことが多かったが、娘を授かってからは夫婦の会話はもっぱらレイのことが中心になった。

これはきっと、どこの夫婦でも同じだろう。

 

「本人は今日の結果に満足していないみたいだけどね」

 

苦笑いしてそう言いながら、彼はグラスに口づける。

 

「いくらか親のひいき目が入ってるかもしれないけど、あの子の素質は素晴らしいよ。きっと、トゥインクルを沸かせるウマ娘になってくれると思う。ただ……」

「ただ?」

 

首を傾げるユニヴァースに、彼は腕を組んで続けた。

 

「頭がいいせいか、勝負を早々に見切ってしまうクセがあるんだ。そのせいで勝った、と思ったら気を抜いてしまうし、もう勝てない、と思ったら粘りを欠いてしまう。中学までの模擬レースや経験の浅いジュニアまでなら、それも素質がカバーしてくれるけど……」

「うん。でも、その【PECU】を直さないと、クラシックは戦っていけないだろうね」

 

クラシック二冠を制したネオユニヴァースが、真剣な顔でそう断言する。

 

「正直、俺もそう考えている。君と同じぐらい、とは言わないけど、もう少しレースに対して執念を見せてくれたら……とは思うよ」

 

高い知性の持ち主だということが知れ渡っていて、儚げなビジュアルをしているせいか、ネオユニヴァースのレースぶりは【計算され尽くされた、知的なレース運び】と評されることが多い。

しかし、彼女のレースの本質はその知性でも冷静さでもなく、【絶対に負けない】という無類の勝負根性にこそあった。

 

ネオユニヴァースというウマ娘は、皐月賞・ダービーとふたつのG1を含め、重賞を5つ制している実力者であるにもかかわらず、派手な大差勝ちはないし、レコード勝ちを記録したこともない。

 

彼女は決して恵まれた知性と素質を活かして計算づくでレースを勝っていたわけではなく、負けていてもおかしくなかったレースを執念でもぎ取っていた、根性のウマ娘だったのである。

 

「いや、ごめん。君とレイを比べることは、本当に良くないな。レイはレイで、あの子なりにがんばってくれていると思うよ」

 

手にしていたグラスをテーブルに置くと、ラップしてある焼き飯が目に入った。

そういえば、昼食を取ってからなにも口にしていない。

 

娘が初めてのG1に挑むということで、少しばかり気が張っていたのだろう。

この時間まで、食欲を感じることがなかったのだ。

しかしきれいな半円形に盛られた焼き飯を見ていると、急に空腹感が襲ってきた。

 

彼がレンジで温めようとそれを手に取って立ち上がろうとすると、ユニヴァースが焼き飯に視線を向ける。

 

「それ。レイが作ってくれたんだ」

「えっ、レースから帰ってきてからわざわざレイが作ってくれたのかい?」

 

あまりにうまく作ってあるものだから、ハーバーイーツで中華でも注文して、自分のために取り置いてくれてあるものだと思っていたのだ。

 

「そう。その焼き飯、冷めても【DELI】……美味しいようにしてくれているよ」

「そうなのか」

 

妻の一言に彼は座り直すと、皿からラップを外して、チョップスティックホルダーからスプーンを取り出した。

 

スプーンを差し込んだ瞬間にパラパラに仕上がっているとわかる焼き飯をすくい上げて口に運ぶと、香ばしい醤油の香りと、チャーシューの旨味が口いっぱいに広がる。

 

「本当だ。これはうまい」

「そう、だよね。きっと、わたしが仕事中に冷ましてしまっても美味しいように、工夫してくれたんだと思う」

 

普段の食事は、ハードワーカーのユニヴァースに比べればまだ時間の余裕のある彼とレイが、相談しながら交互に作っている。

もちろん事あるごとにユニヴァースも自分も作ると主張しているが、『君の仕事には世界中の人が期待しているんだから』『お母さんは忙しいんだから、やれる人がやればいいんだよ』という夫と娘の言い分を説得できないでいた。

 

「……レイは、わたしなんかよりよっぽど賢くて、いい子だね。きっと、わたしなんて【母親】がいなくても、立派にやっていけるんだろうね」

 

さみしげな微笑みでそんなことをいうユニヴァースを、彼はたしなめる。

 

「なんてことをいうんだ。そんなことはないよ。君はかけがいのない【レイのお母さん】だ。実際、君は精一杯の愛情を持ってレイに接してるじゃないか」

「そう、なのかな。でも……」

 

普段の理路整然としたユニヴァースからは考えられないぐらい、彼女はたどたどしく今日レイが帰ってきたときのことを彼に話した。

 

「そんなことがあったのか……。あの子も難しい年頃だし、今日は初めてのG1、それも初めての敗戦を経験して気が立ってたんだろう。そんなに気にすることはないさ。またレイが機嫌が良さそうなときにでも、食事に誘ってあげるといい」

「そうだね……そうするよ」

 

信愛する夫の言葉に、ユニヴァースはほっとしたような表情を浮かべる。

そんな彼女を見て、彼も少し安心した。

 

今日の焼き飯の味付けからもわかるように、レイとユニヴァースは決して仲の悪い母娘ではない。

ただ、父親の彼が見る限り、レイは少し頭の回転が良い【普通の女の子】である。

 

そんな【普通の女の子】である娘との距離感や接し方を、【ギフテッド】のユニヴァースは測りかねているのだろう。

彼は夫として父親として、そんな二人の【中継所】であらねばならない、考えていた。

 

「それにしても……自分の子供の気持ちを【VERS】、理解してあげるって難しいんだね」

「そうだね。それについては、まったく同感だよ」

「……【人とつながる】という感覚は、レースを一緒に走ったウマ娘たちが教えてくれた。【人を愛する】ということがどういうことなのか、あなたが教えてくれた」

 

そういってユニヴァースは歳を重ねても変わらない澄んだ碧眼に、わずかな困惑をにじませて彼をまっすぐ見つめる。

 

「でも……子供を理解する、子供のことを本当に愛するってことはどういうことなのか。一体誰が教えてくれるんだろうね」

 

愛する妻の問いかけに、彼はうまく答えることができなかった。

 




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

懲りずに【娘】シリーズの第三段を連載させていただくことにしました。

今回はあの【宇宙からの来訪者】こと、ネオユニヴァースの娘です。

彼女は皆様ご存じのように難しい言葉を使う娘ですから
その二次創作はかなりのチャレンジになりそうなのですが、
なんとか読んでくださる方々に違和感なく楽しんでいただけるよう、
がんばりたいと思っています。

それではまた、近いうちにあとがきでお会いしましょう!
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