片隅の英雄譚   作:浅葱 沼

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頑張って毎日投稿したい!(願望)


プロローグ

 

 幼い頃の俺は、冒険譚や英雄譚に魅せられた。

 見たこともないような未開の地。

 人間の何倍何十倍もの大きさの魔物達との戦い。

 

 そんなとても現実にあるとは思えない、しかし、確かに実在する夢のような話に夢中になった俺は、古今東西ありとあらゆる本を読み漁った。

 

 そんな未来に希望しか持っていない少年が、自分も冒険者になりたいと考えるのは最早必然で、俺は冒険者になるべく鍛錬を始めた。

 

 

 

 最初に始めたのは剣術だった。

 

 どの英雄譚や冒険譚にも出てくる英雄豪傑達は積み重ねてきた剣技で強敵達と渡り歩いていた。

 

 やはり覚えるなら剣術だろう。

 

 そう考えた俺は、幸い住んでいた村の中に剣術道場があったので早速通う事にした。

 

 

「なんていうかね〜。ここまで剣の才能のない子は初めて見たよ。すまないが諦めた方がいい」

 

 剣術道場に通い始めて1年、やっと基本的な型が身に付いてきた頃、師範が半笑いで放った言葉は今でも忘れていない。

 師範の言葉であの物語の人達のように活躍できないと悟った俺は1週間寝込んだ。

 

 

 

 

 しかし、子供というのは恐ろしいもので、1週間後にはすっかり元気になっていた。それというのも剣術がダメだっただけで自分にはまだ見ぬ才能があるのではないかという希望がそこにはあったからである。

 

 

 次に手をつけたのは魔術だった。

 

 人間の体に流れる魔力を操り、あらゆる事象を引き起こす術。

 時には仲間を助ける支援魔術。またある時には敵に強烈な一撃を放つ。そんな魔術師もまた、英雄譚などに必ず出てくる存在である。

 

 期待を胸に魔術を習得するべく、俺は近所に住む魔術師のお姉さんに毎日のように頭を下げた。最初こそ断られていたものの、連日の訪問で根負けしたお姉さんは魔術の基本程度なら、と重い腰を上げてくれた。

 

 

 

「うーん。今まで一生懸命頑張ってたみたいだから言い辛かったんだけど…、魔術って才覚が最も物を言う世界なのね?だから、はっきり言っちゃうと君、才能がないからその努力を他の事に向けた方がいいと思うよ?」

 

 

 魔術を習い始めて1年半、基本的な魔法をやっとのことで覚えた頃、お姉さんが申し訳なさそうに言ったその言葉で俺は2週間寝込んだ。

 

 後に気付いたが、多分この時に俺は女性が申し訳なさそうにしているところに興奮する性癖に目覚めたのだと思う。

 

 

 

 そんなどうでもいい話は置いておいて。

 

 

 2週間寝込んだ後、まだ冒険者になることを諦めきれなかった俺は今度は神聖魔術を習得する事にした。

 

 神聖魔術は体内の魔力を使い行使する通常の魔術と異なり、大気中に漂う魔力に神の言葉とされる聖書の言葉を介して干渉し、行使する魔術である。

 

 神聖魔術を扱う神官職は、英雄譚では主役ほど目立った活躍はしないものの、味方を癒し、魔を祓う事で仲間をサポートする縁の下の力持ちである。

 

 目立たずとも仲間達と共に冒険をして未知なる世界に立ち向かっていく事に変わりはない。

 そう思い立った俺は、神聖魔術を習得すべく村の教会へと向かった。

 

 教会の神父様は優しく、神聖魔術を覚えたいと話したら理由を深く聞くことはなく、

「最近の子にしては熱心だね。もちろんいいとも。歓迎するよ」

 と言って快く了承してくれたことで、その日から神聖魔術を覚えるべく教会に通う日が続いた。

 

 

 

「これだけ毎日祈りを捧げて鍛錬を積めば中級までの神聖魔術くらい覚えられるはずなんだが...。君、神のこと冒涜してたりする?」

 

 

 教会に通い始めて2年が経ったある日、基本的な治癒魔法と祓魔術(ふつまじゅつ)は覚えられたものの、そこから先がなかなか習得できないでいたある日、優しい笑顔の裏に苛立ちが見え隠れする神父様に言われた一言で俺は三週間寝込んだ。

 

 毎日祈りだって捧げていたし、神を冒涜なんてしたことは一度たりとも無い。毎日できる限りの努力はしてきたのにちっとも上達しなかっただけだ......。

 

 

 

 以来、俺は神を信じるのをやめた。

 

 

 

 それから、どうにか自分に得意なものはないかと模索し続ける日々が続き、もう新しく覚えるものも無くなってきた16歳になる年、もういっそ都市に行って冒険者になってしまおうという考えに至った。この数年間でどれも基本的な事しか習得できず才能がないと言われてきたが、それなりの技術は身に付けてきたつもりだ。

 都市に出て冒険者になれば、お話のような劇的な冒険はできないかもしれないが、まだ見ぬ仲間達と共に楽しい冒険が俺を待っている。

 

 

 

 そんな期待を胸に生まれ育った故郷を離れ、冒険者になるべく都市に出てから十数年、もう自分の誕生日に歳を数えることすらしなくなった今━━━、

 

 

 

 

 

「ディアントさーん。この間のグランさん達が達成した依頼の書類ってどこにありますっけ?」

 

「ああ、それならB-2の棚に置いてあると思うけど」

 

「了解です!ありがとうございまーす!」

 

「ディアント!すまんがこっち手伝ってくれ!」

 

「はーい!今行くからちょっと待て!」

 

 

 

 ━━━俺、ディアント・ワーカーは冒険者ギルドキャンテラ支部の職員として働いていた。

 

 

 

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