片隅の英雄譚   作:浅葱 沼

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反省会

 

「じゃあ、今回の戦闘について各自何がだめだったと思うか言ってみようか」

 

 座り込んだままザック達に問いかけたディアントに最初に手を挙げて反応したのはシャベルだ。

 

「今回は自分のせいだと思います。僕が気配察知のスキルを使うのを怠っていたせいでシルバーウルフ達に対処するまでの時間が取れず後手に回ってしまいました」

 

「うん。そうだな。シャベルの盗賊職は斥候としての役割もあるから常に周囲を警戒するべきではある。別に仲間との雑談をやめろという訳じゃないが、それはあくまで最低限の仕事をこなしていることが前提だ」

 

 シルバーウルフ達に囲まれる前、ザック達が雑談に花を咲かせていたことを思い出しながらディアントは注意する。

 

 次に手を挙げたのはザックだ。

 

「普段と違うフォーメーションでの戦闘が疎かなところが明らかになったと思います。それに、俺が一匹でもシルバーウルフを倒せていたならもっと戦況が良くなったはずなので、自分個人での戦力の低さが目立ったと感じました」

 

「確かにザックが前衛として相手の戦力を削ることができればもっと状況は良くなったかもしれないな。でも自分の弱さを認めるのは難しいのにちゃんと言えたことはいいことだぞ」

 

 今度はメリッサが手を挙げた。

 

「敵に囲まれた時、どう対処していいか分からず何もできませんでした。ウチが一番ダメだと思います...」

 

「そんなことはないよ。みんなまだまだ中級になりたてなんだしイレギュラーの対応が遅れるのは仕方ないことだ。でも、メリッサはこのパーティーの頭脳でもある。どんな状況になってもお前だけは冷静にその状況を分析して指示や行動を取れるようになっていけばいい」

 

 ディアントは一通り言い終わるとにこりと笑って一言付け足す。

 

「今回はシルバーウルフ達の動きがメリッサを狙った特殊な動きだったし、お前らじゃなくても対応に困ったはずだ。その後の対処は見事だったし、あの調子なら心配しなくても中級でやっていけるよ」

 

 中級でもやっていけるとディアントに言われたことで三人は嬉しそうに笑った。

 

 その後、再び立ち上がったザック達は気を取り直してゴロン洞窟への歩みを再開した。

 

 

「いつもああやって反省会と言っていたことをしてるんですか?」

 

 ザック達から離れて、ディアントとステラが彼らの後ろを歩き始めて少し経った頃、ステラがディアントに問いかける。

 

「ああ、何か問題があればその都度すぐにそのパーティーと話し合うようにしてるよ。その方がすぐに改善していけるからな」

 

 ディアントの言葉に、ステラは自分が冒険者をしていた頃を思い出す。

 

 冒険者は、良くも悪くも我の強い人が多くパーティー同士とはいえ戦闘については最低限の打ち合わせをする程度で、しっかりと改善策を考えていくことは珍しい。上級の冒険者になれば自分のやるべきことは自分で理解しているのは普通なので、他の人にわざわざああしろこうしろとは言わないというのが暗黙の了解である。

 

(しかし、こうして初級や中級の頃から戦闘や普段の警戒についての理解を深めておけば身につけやすいですね...)

 

 

 明確な指導者がいるわけではない冒険者という職業は、その性質上どんな風に成長していくのは()()ではあるが、それはつまりどうしていいか分からない初級や中級の冒険者にとっては()()()でもある。

 

 

 そんな彼らに、最低限の知識を授けて成長をサポートするディアントのやっていることの重要性をステラは理解した。

 

(やっぱりディアント君はすごいです!こんなことやってる人見たことないし、これなら冒険者の死亡率が下がるのも頷けます。でも...)

 

 ここまで冒険者のことを考えているのに自分は冒険者をやめてしまったのは何故なのか。確かに新人の冒険者達を導いていく行為自体は素晴らしいが、それは冒険者を続けながらでもできたはずである。

 

 そんな考えをディアントに伝える前に、ザック達一行はゴロン洞窟に到着し内部の探索が始まってしまった。

 

 シルバーウルフとの戦闘以降のザック達は、洞窟内での探索も落ち着いて行動し魔物との戦闘も問題なく処理していった。

 

 そんな彼らの後を黙ってついていくだけで、あっさりと洞窟探索を終えたザック達と帰路につきギルドへと帰ってきてしまった。

 

 

 

「今日はありがとうございました!おかげで足りないところが分かりました!」

 

 感謝の言葉を伝えてギルドを出て行くザック達を見送った後、残った書類仕事を処理しようと事務室に戻ってきたディアントは、珍しくハイルドいるのを見かけて声を掛ける。

 

「どうしたんだハイルド?事務室にくるなんて珍しいな」

 

「お、おお。ディアントか。付き添いに行ってたんだったなご苦労様」

 

「元気ないな。もしかして、嫁さんに飲み過ぎだとか言って怒られたのか?」

 

 妙にテンションが低いハイルドを元気づけようかと冗談まじりに肘で小突いていると、

 

「ディアント!ハイルドさんになんだその口の聞き方は?」

 

 背後から聞こえた氷のように冷たい声に、思わず姿勢をただしてしまう。

 

「か、帰ってたんですか?ベーゼさん...」

 

 ディアントが振り向くと、

 

「なんだ?帰っていたら悪かった?貴様は相変わらず礼儀というものを知らんようだな」

 

 そこには、長い朱色の髪を後ろで束ね前髪はピシッととピンで抑えているメガネの女性がこちらを睨むように立っていた。彼女こそ、冒険者ギルドの副ギルドマスターである ベーゼ・フォールである。

 

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