片隅の英雄譚   作:浅葱 沼

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番外編 総務部休憩中

 

「そういえば、クララさんがベーゼさんと話しているところあんまり見たことないんですが、仲が悪かったりするんですか?」

 

 ある日の休憩中、総務部の三人で雑談を交わしているとステラがなんの気もなくそんな話題を振ってきた。

 

「い、いや〜?別に仲...は悪くないですよ?」

 

 明らかに動揺を隠せていない返事をするクララを見て、その答え方だと仲悪く聞こえるだろと思い補足を入れてあげることにする。

 

「ほんとに仲は悪くないぞ。ただ、クララはベーゼさんが怖いだけなんだよ」

 

「こ、怖くなんてないですよ!?」

 

 どうしても事実を認めたくないらしいクララは持っていたコップに入ったコーヒーが溢れんばかりに前のめりに否定してくる。

 相変わらずのオーバーリアクションで騒ぐクララを見ていたステラは楽しそうににくすりと笑って彼女を宥める。

 

「たしかにベーゼさんは少し怖いというか厳しいイメージがありますけど、いつも私たちの事を考えて下さってる優しい方だと思いますが...なんで怖いんですか?」

 

「クララは昔ベーゼさんにそれはもう可哀想になるくらい叱られた事があるんだよ。今じゃみんなから明るくて元気な子って思われてるけど、昔は手がつけられないほどヤンチャだったんだぜ?」

 

「クララさんがですか?」

 

 意外な事実にステラは目を丸くして驚きクララを見た。

 

「遥か彼方昔のことです!ていうかディアントさんも言わないでくださいよ!あの頃のことは忘れたいのに!」

 

 大声で誤魔化しているが、恥ずかしさから耳が赤くなっているクララに謝りながらコーヒーに口をつけてステラを見ると、

 

「ヤンチャだった頃のクララさんのお話もまた聞かせて下さいね?」

 

 と笑顔でクララに笑いかけていた。

 

「勘弁してください〜」

 

 無邪気な問いかけに目尻と口角を下げて許しを乞うクララを見て考える。

 

 

 いつかステラにも話してやらないとな。かつてキャンテラの不良達の間で<夜叉>の二つ名で恐れられていたクララとの出会いを。

 素面で話すと怒られるだろうから酒の席しか駄目だろうけど...。

 

 

「貴様ら追加の仕事だ。いつまでもサボるなよ」

 

 そんなことを考えていると、書類を抱えたベーゼが事務室に入ってきた。

 

「それとクララ!」

 

「はい!」

 

「この書類はなんだ!ここもここも間違いだらけだぞ!」

 

「す、すいません!」

 

 背中に定規でも入っているように伸びた背筋と両手を体の横にぴったりと付けた姿勢で叱られるいつものクララの後ろ姿に、さっきの話を思い出しながらステラと顔を合わせて静かに笑っていると、

 

「ディアント!」

 

「はい!」

 

「それというのも上司である貴様の監督不行き届きだぞ」

 

「俺!?」

 

 なぜか標的が自分に移り、結局クララと二人で同じ綺麗な姿勢のまま怒られる羽目になってしまった。

 

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