すみません。
カウントゼロを書いていて少し遅れました
この世界において、僧侶とは(究極的には)、勇者という機構を、最大限に使い切るための存在である。
体力回復により、勇者は本来の体力分の何倍も活動することができる。あれ、いま一瞬何かを思いついたような?
私たちの旅程は、聖書に記されたものである。魔王の生誕とともに、聖書に新たな断片が形成される。
つまり、もとの旅程では、この街くらいで余所と合流できるのだ。
他のパーティーの魔女さん。私の昔からの友達で、普段は大人しいけれど、惚れ薬だといって強酸を嗅がせてきたことがある。あれは、しばらく臭いが鼻に残って不快だった。
しかし、どうやら街に勇者パーティーはいないようだった。
念のため、彼らの通る街道を見に行くと、魔物に襲われている馬車を発見!私をあっという間に追い越して、勇者が参戦のために抜刀する。
「加勢します!」
「お嬢さん、無茶だ。相手は気が高ぶっているミノタウロス、しかも複数だ!首を捻切られるぞ、早く逃げなさい」
「いえ、問題ないです!」
勇者は、問題にならない、と言っても良かったと思う。
知性も低く、魔法も使わない魔物ならば、容易く切り伏せられる。勇者の体は魔物の群れの中に吸い込まれていく。
「ありゃ、もう駄目だ!もう助からない!」
「いえ、目を逸らさないで、おじ様」
私も勇者の方を見る。間もなく魔物の巨軀が内臓を溢して倒れ伏し、群れの中から勇者がぬるりと姿を見せる。
うちの勇者の二つ名『無垢』は、別に性格だけでついたものじゃない。
「終わったよー!」
返り血を浴びないからだ。
速さだけじゃこうはいかない。彼女の戦闘センスがずば抜けて優れているから。そう、剣の取り回しが巧いのだ。彼女は、(性格からは思いもよらないことだが、)実は手先もとても器用。そして、先を読むのもうまい。
その器用さが、戦いにも生かされているのだろう。
この世界では、神が幼い子の性格を照覧し、それを反映した
彼女は、勇者に適した人格を持っていたので、クラス『勇者』を与えられたのだ。このクラスは、正義感または殺意の強い者が選ばれる、そう巷では推測されている。
▼▼▼
夕食を食べた私たちは、この街で一度、入浴しておくことにした。
私は風呂が好きだ。
今までは洗いあったりはしてなかったが、これからは、勇者に頼ることになりそう。私は綺麗好きだし、入浴中は無防備になるから、洗浄は丁寧かつ素早く行いたい。渋々ながらお願いする。
「今日から、勇者に洗ってもらうけど、いいよね」
「え!体を?」
「そうよ。何か?理由だってあるわ」
「いやー、喜んでー!」
勇者の手は、丁寧で優しかったけれど、どうもぎこちなかった。
「あなた、器用なんだからもっとササッと洗いなさい。なに緊張してるのよ。これじゃ、私が洗った方が早いと思わない?」
「待って、待って、あたしがやります!この勇者に任せてよ」
あれ、後ろから勇者の視線を感じる。特に鎖骨に対して。それに気づいてしまったせいで、私は洗ってもらっている最中も、なんだか気まずく感じた。色気とかにとことん疎い勇者だから、これは単純に好みの問題なんだろう。
長い時間をかけて、勇者は私の体をやっと洗い終えた。
「じゃあ、次は僧侶ちゃんがあたしを洗う番だね!」
「え、嫌よ」
「…なんでなの?」
「だって、あなたが自分で洗う方が、早いじゃない」
言ってから、しまったと思った。私の今の言葉には、勇者を責めるようなニュアンスが含まれていなかった?私に(ある意味)腕を失わせた勇者を責めるような要素が。
「…冗談よ。洗ってあげるわ」
「いいの、自分でやります。僧侶ちゃんがいうとおり、今にも魔族の襲撃があるかもしれないし」
これは私が悪い。悲しそうな勇者に、かける言葉もなく、気まずかった。
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その晩、勇者はいつもよりも強く私にしがみついてきた。
「ちょっと…」
「ごめんね…僧侶ちゃんの…足引っ張っちゃった…」
寝言に、叩き起こそうとしたのを止める。
「あたしが…もっと…庇ってもらわなくたって…」
しかし、少し考えると、私にはそれが随分とはっきりした寝言に思えた。つい苦言を呈してしまう。
「寝たふりして謝ろうっていうの?もしそうなら、それは卑怯よ」
「ごめんね…ごめん…」
寝巻きが湿っている気がする。鼻水なら勘弁して…。しかし、勇者の涙と苦しそうな顔がうっすら見えて、毒気を抜かれる。そう、この子がそんなに卑怯な訳がない。彼女は眠っているに違いない。そんな勇者に、私は、とても冷たい言葉をかけてしまった。
「そ、そんな顔することないじゃない…」
いや、して当然か。立場が逆なら、私だって否応なしに苦しんだだろう。
「そんなに苦しまないでよ…私こそ、ごめんなさいね…」
私も、勇者の顔を眺めながら、いつの間にか眠っていた。
次回11.23迄