ここだけシド君に人間性をブレンドした世界線   作:読者その1

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第4話 陰の秘宝

 さて、どうした物か。

 無事予選を突破した翌日、僕はオイボレーノ・クソジージの姿で王都を散策しながら、今後の方針について考えた。

 

 本戦までは1週間程時間がある。その期間無駄に過ごすのは勿体ない──とはいえ、やることがない。

 

 予選では見た目は弱いけど、本当は強い爺さんムーブはできた。その点に不満はない。

 

 けど、もう1つやりたかった弟子を鍛える師匠ムーブが出来ていない。

 できれば、地味で弱い少年を鍛えて、今大会最大のダークホースを育て上げたかったけど、今となってはそれは難しい──と言うよりも良さげな人物が居ない。

 僕と同じように予選から勝ち上がった人間や本戦に出場する選手は一通り調べたが、元から強いと評判の魔剣士ばかりだ。

 

 これじゃ僕がしたい弱い主人公を育て、ブシン祭を勝ち進む王道展開は難しい。

 

 だけど、このままじゃわざわざ変装先としてオイボレーノ・クソジージを選択した意義が半分くらい失われる。

 

 もう、弟子の選り好みはしないから、適当に後方師匠面がしたい。

 どこかに、今を思い悩んでいる少年少女は居ないだろうか?

 

 そんな考えを巡らせていると、ピアノの音が耳に入ってきた。

 

「このメロディは月光。僕の他にも転生者が、あるいは──」

 

 リンドブルムでのベータ盗作事件(出来事)が僕の脳裏に過ぎる。

 

「そう言えば、イプシロンにピアノ教えたっけな……」

 

 まだ確定した訳ではないが、憂鬱だ。

 とは言え、この月光の奏者を確かめない訳にも行かない。

 僕は演奏が聴こえる方へと歩き出す。

 

 そして辿り着いたのは、王都でも有名な超一流ホテル。

 その扉の前で僕と同じ魔剣士学園の制服を来た、見覚えのある男子生徒達が居た。

 

「何故だ。何故入れない!このガリ家の紋章が目に映らぬか!!」

「目には映っております。ですが、ここを通るのに必要なのは家紋ではなく、このホテルへの入館証です」

「お、お願いします!是非とも、是非とも新鋭気鋭の天才ピアニストシロンさんの姿を一目見せて下さい!この日の為にわざわざ仮びょ──じゃなくて、実家を言い包めて王都に残ったんですよ!」

「そうですか、なら入館証のご提示をお願いします。汚客様」

「なんかお客様のニュアンス違くなかった?」

 

 流石、僕の見込んだモブ。

 モブムーブに余念が無い。

 本来ならあのモブムーブに僕も混ざっても良かったのだけど、生憎と今は遊びに付き合ってられる程暇じゃない。

 

 僕は一度路地裏に行くと、そこでオイボレーノ・クソジージの姿に変身して、ホテルの扉へと向かう。

 

「失礼。入館証はお持ちですか?」

 

 そして強行突破しようとしていたモブを足踏みにしているダークピンク髪のエルフのお姉さんに呼び止められる。

 着ている服はミツゴシ商会の制服だ。

 これはもう決まりかな。

 

「……入館証をお持ちでしょうか?」

「ん、ああ、悪いね。これで良いかい?」

「こ、これは……!」

 

 僕はガンマに渡されたバッチを提示する。

 世界でたった1つしかない、僕だけの専用フリーパスだ。

 バッチを見たお姉さんは驚愕した様子で僕の顔を見ると、直ぐに頭を下げた。

 

「し、失礼しました。まさか、貴方様とは思わず、とんだ無礼を」

「良いよ。キミはキミの仕事をしただけさ。それより、通って大丈夫?」

「はっ!貴方様の歩みを止める障害は全て私が排除致します!」

「そ、そうかい?ありがとう」

 

 仰々しい態度で扉が開かれ、僕は一言礼を述べてホテルへと入る。

 うんうん。こういう小道具(アイテム)で本来通れない場所を通る。実に陰の実力者らしい展開だ。

 ミツゴシ商会関連の施設でしか使えないけど、中々に僕の心を満たしてくれる。

 

「なら、俺達も!」

「入っていいでしょうか!?」

「あ?まだいたのか蛆虫。貴様らは疾く消え失せろ。目障りだ」

「「酷い!」」

「囀るな、耳障りだ。呼吸もするな、貴様ら如きがあの方と同じ空気を吸っていると考えるだけで虫唾が走る」

「扱いの落差に泣けるぜぇ」

「でも何故でしょう、これはこれで悪くない!」

「黙れ、不愉快だ」

「「ぎぁぁぁぁ!」」

 

 モブの悲鳴を背に、僕はエントランスへ足を踏み入れる。

 そして僕に視線が向いていない一瞬の隙にオイボレーノ・クソジージの姿からシド・カゲノーの姿へと戻り、服装は超一流ホテルに相応しい豪華なスーツへと変える。

 

 完璧!こういう誰も見ていない時にさり気なく行われる超高速変身術!いかにも陰の実力者って感じだ!

 ほんと、スライムスーツ様様だね!

 

 僕は僕の超高速変身術の出来に満足すると、そのままピアノの音がするカフェテラスの方へと向かい、音源へと辿り着いた。

 

 流れる月光のメロディを奏でるのは黒いドレスに身を包んだ銀髪のエルフ。

 彼女の周りには豪華なスーツやドレスに身を包んだお金持ちそうな人達が立ち並び、ある者は目を瞑り彼女の演奏に集中し、ある者はその踊る様にピアノを奏でる彼女の姿を目に焼き付け、ある者はその際に揺れる大きなお山に目を奪われていた。

 

 ──最後の彼からは金目の物を全て奪おう。見物料だ。

 

 月光を奏で終えた彼女は観客に向かって一礼し、僕を見て微笑んだ。

 直後、彼女の演奏を称える拍手喝采が鳴り響く。

 

「なんと素晴らしい!」

「流石は天才ピアニストのシロンだ!」

「素晴らしい素晴らしい。ローズとの結婚式では是非彼女に演奏を頼もう!」

 

 …………やはりと言うか、月光を奏でる天才ピアニストシロン──その正体はイプシロンだった。

 

「お客様。宜しければ個室へご案内致します」

 

 声を掛けられた方を向く、そこには先程門番をしていたダークピンクのお姉さんが立っていた。

 顔と衣服には血が付いていた。

 

「…………怪我してるの?」

「返り血です」

「あ、そう……」

 

 誰の?と聞くのはちょっと怖かったので、僕はそのままダークピンクのお姉さんの案内されて、豪華な個室でランチを楽しんだ。

 暫くするとコンコンとドアがノックされた。

 

「良いよ」

 

 僕の返事を聞き、ドアが開かれ、イプシロンが入って来た。

 

「主様。遅くなり申し訳ありません」

「良いよ良いよ。アポなしで来たのは僕の方だしね」

「お心遣い感謝致します」

 

 うむ。相変わらず見事なスライム偽装(スタイル)だ。本物と大差ない。

 

「見事な演奏だったよ。イプシロン」

「光栄です。ですが私の演奏なんて主様とくらべればまだまだ未熟です」

 

 そんな事はないと思うけどなぁ。

 

「そう言えば、シロンってなに?」

「主様からお教え頂いた数多の曲を利用させて頂き、ピアニストとして、作曲家として活動する為の表舞台での名前でございます」

「さ、作曲家……?」

 

 なんてこった。

 ピアニストとしてなら兎も角、作曲家としても活動しているとは。

 万が一、ベートーヴェンやショパンがこの世界に転生してきたのなら、土下座して謝ろう。

 

「ま、まあ、立ったままってのもあれだし、座りなよ」

「はい。失礼します」

 

 そういってイプシロンは座った──僕の隣に。

 

「えっと、イプシロンさん?」

「なぁんですか~」

 

 止めろ、耳元で色っぽい声を出すな。

 興奮しちゃうでしょ。

 

「何故隣に?」

「駄目、ですか?」

「駄目じゃないさ」

 

 上目遣いで甘えてくるイプシロンに親指を立てた。

 すると、イプシロンは僕の首に抱き着き、そのまま熱いベーゼを交わした。

 細かく描写すると、色々と規制にひっかりそうなので割愛する。

 

「ぷはっ……あるじしゃまぁ……」

 

 僕とイプシロンの間に透明な糸が垂れた。

 イプシロンはとろんとした表情で僕の手を握り、スライム率100%の胸に押し当てた。

 

「……来て」

 

 ……据え膳食わねばなんとやら、

 僕は性剣エクスカリバーを真名解放させる行為へと移ろうと──

 

「あー!!やっぱり居た!!」

「「ッ!?」」

 

 ──したタイミングで扉が勢いよく開かれた。

 思わず、扉の方を向くと、そこには白毛の猫獣人の子供と、黒毛の犬獣人の子供が居た。

 

「だ、駄目だよ。リリム。お父さん達の邪魔しちゃ」

「サラ邪魔!おとーさん遊ぼーーーー!!」

 

 そう言って飛び込んできた白毛の猫獣人(リリム)を僕は受け止めた。

 

「むー」

 

 イプシロンは行為を邪魔されてむくれているが、こうなっては性杯戦争どころじゃない。

 僕は高ぶったエクスカリバーを収め、オドオドした様子でこちらを伺っている黒毛の犬獣人(サラ)を手招きした。

 

「おいでサラ。折角だし、みんなで遊ぼうか」

「う、うん!お父さん!!」

 

 あ、もう察しているかもしれないけど、2人は僕の娘だ。

 

「そう言えば、なんでリリムとサラがここに?2人はアレクサンドリアにいる認識だったんだけど」

「えーとね、えーとね。ぶんしんさいがあるから来た!」

「ブシン祭があるから来たんだね」

「うん!そう!」

 

 天真爛漫を絵に描いた様な白毛の猫獣人のリリムは特徴から分かる様にゼータと僕の子だ。

 僕の面影はあんまし感じないし、冷静沈着なゼータとは似ても似つかない性格してるけど。

 どちらかと言うと性格はデルタに似ている。

 

「…………」

 

 一方、デルタと僕の子である黒毛の犬獣人のサラは顔は僕に似ているけど、性格はデルタとは似ても似つかない大人しい、というよりかは臆病な性格だ。

 

 スライムで作った猫じゃらし擬きで遊ぶリリムに対して、サラは僕の膝の上で撫でられるのが好きだ。

 

 毛色といい、性格といい、何かと対照的な2人だ。

 

「サラサラ!サラも遊ぼうよ!」

「えー、僕動くの好きじゃない」

「そんなんじゃ、おかーさんみたいに強くなれないよ」

「うへぇ……」

 

 けど、不思議と仲は悪くない。

 その点は母親達とは大違いだ。

 活発的な姉と、それに引っ張られる妹という感じで、バランスが取れてる。

 

 嫌々僕の膝から引き下ろされたサラだったけれど、リリムがスライムボールを投げると、本能なのか、それをキャッチしてリリムの方へ戻って尻尾を振っている。

 姉妹仲が良いのは良い事だ。

 

「……シャドウ様は子供好き。なら、変に体型を弄るよりも、幼児体型(ありのままの私)で居たほうがシャドウ様好み?」

 

 聞こえているぞイプシロン。

 確かに子供好きだが、別にロリコンという訳ではないぞ。

 それは兎も角として、

 

「んで?結局2人を連れて来た理由は何なのさ?」

「あ、すいません。アルファ様がずっとアレクサンドリアで引き籠っているよりも、外の世界を体験させた方が良いだろうって事で王都に連れてきました。……駄目、でしたでしょうか?」

「いいや、駄目じゃないさ。もとより2人の教育はアルファ達(七陰)に一任している。好きにしていい」

 

 もとより、僕は父親らしい事は何もできていない。

 2人の教育に関して僕が口出しする権利はない。

 我ながらクズだとは思う。

 

「この後、2人の予定は?」

「特にありません」

「そうか、ならみんなで何処か遊びに行こうか」

「ほんと!?」

「お、お父さん、遊んで、くれる、の……?」

「ああ、折角のブシン祭だしね」

「「や、やったー!!」」

 

 うん。偶にはこういうのも悪くない。

 幸いにも先程イプシロンに色目を使っていた男から巻き上げた、もとい軍資金はたっぷりある。

 

「イプシロンもどうだい?」

「もち──いえ、大変ありがたい申し出ですが今回は辞退させて頂きます。是非、親子水入らずで楽しんできて下さい」

「そう、気を遣わせてごめんね。今度埋め合わせするから」

 

 僕がそう言うと、イプシロンはポッと顔を赤らめた。

 

「やだ、主様ったら、子供の前なのに埋め合わせだなんて……」

 

 うん。埋め合わせでナニを想像した?

 ナニの穴をナニで埋める想像をした?言ってみ?

 

「おとーさん。はやくはやく!」

「ん、はやく、いこ?」

「あ、分かった分かったから、そんなに引っ張らないで」

 

 イプシロンを揶揄いたい所だったけど、娘達が我慢の限界だったのか、僕はリリムとサラに引っ張られて部屋を出た。

 

 その日は陰の実力者ムーブとか色々忘れて、純粋に娘達とブシン祭で出店されてる屋台を巡って楽しんだ。




まあ、ヤる事やってるんでそりゃデキる。

今のところ、シドの娘はゼータとの娘(リリム)デルタとの娘(サラ)だけです。
エルフ組ともヤる事やってますが、まだ子供デキてないです。

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