ここだけシド君に人間性をブレンドした世界線   作:読者その1

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(゜_゜)
(つд⊂)ゴシゴシ
(゜_゜)
ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。

まさか、ここまで好評とは思わなかった。
超嬉しい。 


第3話 これはきっと、気の迷い

あれから2年が経過した。

僕は15歳になった。

 

貴族は15歳になると3年間王都の学園に通う事になる為、僕は大陸最高峰のミドガル魔剣士学園に入学した。

この学園には、ミドガル王国の王族や有力貴族は勿論、国内外から将来有望視される魔剣士達が集う。

物語の舞台としては、これ以上に無い場所だ。

僕はこの学園で陰の実力者となる足掛かりを作る。可能であれば本格的に活動するつもりだ。

 

差し当たっては、僕は主人公。または重要ポジションに居そうな人物を探していた。

この世界が物語の中の世界とは思っていないが、今後、陰の実力者として暗躍する中でコミュニティを築いて置いた方が良い人間は多い。

今の所は王族であるアイリス王女。王国随一の頭脳と名高いシェリー・バーネット辺りとは関係を持っておきたい所だ。

だが、どちらとも接触は難しい。

アイリス王女は既にこの学園を卒業しているし、仮に在学中でも王族である為に接触は困難だっただろう。

シェリー・バーネットは隣接する学術学園に在籍はしているが、魔剣士学園の生徒と学術学園の生徒が接触する機会は少ない。

そもそも何処にいるかが分からない。

探せば、見つかるかもだけど、それよりも気軽に接触出来る人物がいるので、今回はそちらを優先する。

対象はアレクシア・ミドガル。この国の第二王女だ。

本来ならアイリス王女同様、安易に接触出来る様な存在ではないが、今の僕にはアレクシア王女に接触する大義名分が存在する。

 

「おいシド。約束覚えているよな?」

「罰ゲームの約束は絶対ですからね」

「分かってるよ」

 

彼らの名前はヒョロとジャガ。

偶々入学式で隣の席に座っただけの関係だったが、中々愉快な性格をしていたので友人関係を構築している。

だが、今は2人と友人関係を結んで良かったと思っている。

彼等とは数日前、テストで最下位だった奴がアレクシア王女に告るという罰ゲームで勝負をした。

その結果が僕が最下位。

…………勿論わざとだ。本気を出せばヒョロとジャガどころか、学年トップの成績を収める事も出来る。

 

「今更、怖気づいたなんてつまんない事言うなよ?」

「この罰ゲームを回避する為に、徹夜で勉強したんですからね」

「分かってる。分かってる」

 

何はともあれ、アレクシア王女に接触する大義名分を探していた僕にとっては、渡りに船だ。

 

「アレクシア王女。僕と付き合って下さい!」

 

まあ、彼女は入学してから2ヶ月の間、既に100人を超える人間が彼女に交際を申し込み散っているそうだ。

告白をしたところで、振ったその他大勢の一人にカウントされるのがオチだろう。

僕としても、本命はシェリー・バーネットとの接触だ。アレクシア王女への告白は失敗前提、顔を覚えて貰えたら儲けもの、その程度の気持ちでしかなかったのだが……。

 

「そう、宜しくね」

「…………え?」

 

僕は何故か、アレクシア王女と付き合える事になった。

 

 

--------------------

 

 

何故、こうなった?

アレクシア王女との交際を開始してから凡そ1週間。

 

「嘘、あれが?」

「何かの間違いじゃないのか?」

「何でも、弱みを握って脅したらしいぜ?」

「マジかよ、王族を脅すとか、命知らずにも程があるだろ」

 

僕は好奇の視線に晒されていた。

何かの間違いだろうと思った。

下級貴族と第二王女。

身分が違い過ぎる2人。

これで僕とアレクシア王女が小さい頃からの顔馴染みで、仲が良かったとかなら、まだ納得は出来る。

けれど、僕はあの日の告白で初めてアレクシア王女と話した。

恋愛にまで発展するなにかなんて、生じる筈も無かった。

きっと、何か裏があるに違いない。

僕はそう思った。

 

「それが、君の答えという訳かい?」

「ええ、彼と付き合う事にしたの」

「やれやれ、まるで子供だな」

「オホホホ、子供ですもの。大人の事情なんざ知りませんわ」

 

実際、裏があった。

彼女はこの国きっての剣術指南役であり、婚約者候補のゼノンとの結婚を躱す為の当て馬として、僕との交際を受け入れたらしい。

どういう訳か、彼女はあの日、僕が罰ゲームでアレクシア王女に告白する情報を事前に仕入れていた様子だ。

成程、罰ゲームの告白である為にアレクシアに対する恋愛感情は無し、家は下級貴族で滅多な事がない限りは結婚までは行かない程度には身分に差がある。

当て馬にはぴったしな訳だ。

 

「あまり、厄介事には巻き込まれたくないんだけどなぁ……」

「ずっととは言わないわ。時間が稼げれば良いの」

「僕にメリットが無いね。この国の剣術指南役を敵に回して、無事で済むとは思えないし」

「ごちゃごちゃ煩いわね。駄賃なら出すわよ」

 

そう言って、アレクシアはジャラジャラと音を立てた袋を投げ渡して来た。

僕はそれを受け取り、中身を確認する。

金貨だ。1枚10万ゼニーの金貨が少なくとも10枚。

つまり100万ゼニーは下らない額がこの袋の中には詰まっている。

 

「…………それで?僕は何をすれば良い?」

「話が早くて助かるわ♪」

 

お金には勝てなかったよ……。

 

 

--------------------

 

 

それから幾ばくかの日が過ぎた。

僕とアレクシアは仲睦まじい恋人を演じていた。

 

「ほら、ここはこうして問題を解くのよ」

「成程、マイハニーの教え方はわかりやすいなー」

 

図書室で勉強を教わったり。

 

「ダーリン。あーん」

「あーん。うん、君に食べさせて貰う料理は格段に美味しいよ。マイハニー。麺類じゃなければ尚良いよ」

 

学食であーんをしたり。

……普通、あーんをするのって、一口サイズで食べられる肉とかサンドイッチとかだと思うの。

少なくとも、熱々のラーメンはあーんには向いてないと思うの。

まだ舌がジンジンする。

 

「ほらほら、そんなんじゃ、鍛錬にならないわよ♪」

「うわぁー、ハニーは強いなーー」

 

鍛錬場で婚約者候補のゼノンにラブラブ?な所を見せつけたりした。

 

「ふっ……」

 

だが、ゼノン先生は余裕な笑みを浮かべるだけだった。

僕とアレクシアが偽の恋人になってから、特に動きはない。

 

「カァ〜〜~ムカつく。何よ、あの男、少し剣が上手いだけの癖に」

 

計画が上手く行っていない事に、アレクシア王女はご立腹だ。

 

「あの胡散臭い顔、アンタも見たでしょ?」

「ああ、うん」

 

事を荒げない為にも、僕は適当に頷いておく。

 

「君は、ゼノン先生の何が嫌なの?結婚相手としては悪くないと思うよ」

 

イケメンで、国を代表する剣術指南役で、地位と名誉も申し分ない。

女子からの人気は高いが、女癖が悪いという噂は聞かない。

 

「全部よ全部。欠点の無い人間なんて存在しない。きっと上辺を取り繕っているに違いないわ」

「君が言うと説得力が違うね」

 

アレクシアも人前では人当たりの良い王女様を演じているが、人気が無くなれば他人に対して罵詈雑言を吐き散らす王女様だ。

豚の国、或いは夜の国の女王様の素質を持っているのだと思う。

 

「ふん!」

 

足を踏まれた。痛い。

 

「痛いよ、マイハニー」

「その気持ち悪い呼び方止めなさい」

「酷いや。君の恋人役を演じる為の呼び方なのに」

「そう、今日の駄賃よ。受け取りなさい」

 

アレクシアが金貨を投げる。僕が拾う。

アレクシアが豚を視る様な視線を向ける。

何時もの光景だ。

 

「私は上辺だけで人を判断しないわ」

「なら君は、結婚相手が醜い豚顔で加齢臭を漂わせる中年男でも良いの?」

「外見という目に見える欠点が見える点で、胡散臭いゼノンより幾分かマシね」

「マジか……」

「マジよ」

 

まあ実際、ゼノン先生が胡散臭いってのは同意出来る部分もある。

自身が狙っていた王女をどこの馬かも知れない下級貴族に取られた割には冷静過ぎる。

普通、もっと怒ったり、妬んだりする物だろう。

なのに、そんな素振りは一切見せない。

指導と称して授業でボコボコにするぐらいはしてくると思ったのだけれど、そう言った事もない。

アレクシアに対してもそうだ、授業中は他の生徒と変わらない丁寧な指導を行っている。

人が良い。そう言ってしまえばそれまでなのだけれど、僕は表にこそ出さないけれど、心の中ではゼノンに対する不信感を募らせていた。

 

「君は意外と人を見る目があるのかもね」

「そう、ありがとう」

 

アレクシアが金貨を投げる。僕が拾う。

アレクシアはゴミを視る様な目で見下ろす。

何時もの光景だ。

 

「…………アンタ。本当は強いでしょ」

「なんでそう思うの?」

「姿勢や歩き方を見ていれば分かるわ。アンタ授業では相当手を抜いているでしょ?」

 

驚きはしなかった。

人の強さってのは、歩き方や姿勢を見ればある程度分かる。

表だって目立つ行動はせず、弱いと評判のシド・カゲノーだが、見る人が見れば弱くないと分かる程度には強さを偽装している。

何故かって?その方が陰の実力者ぽいからだ。 

姉さんやゼノン先生なら、僕が強い事くらい見抜いてるかもね。

アレクシアが見抜けるとは思わなかったけど。

やっぱり、人を見る目があるじゃないか。

 

「手を抜いているつもりはないよ。授業でやれと言われた事はしてるでしょ?」

「それだけじゃない。他の生徒との模擬戦だと毎回負けてるじゃない」

「勝ったら、勝ったで面倒じゃん」

 

アレクシアの恋人となり、ゼノン先生にラブラブな所を見せつける為に、半ば強引にアレクシアが所属する1部に引き上げられた。

1部ってのは全9部存在するクラスの中でも最高位のクラスだ。

所属しているのは有力貴族の子女ばかり、下手に実力があってプライドが高い分、下級貴族の僕が勝っては相手のプライドを傷つけて事を荒立てるだけだ。

それは御免被る。

 

「ふーん。まるで、何時でも勝てる様な口ぶりね」

「…………」

 

僕は否定も肯定もしなかった。

 

「やっぱり強いじゃない。本当はどのくらい強いの?」

「多分、世界最強」

「はっ、大した自信ね」

 

この世界の頂点が如何程な物か、僕はまだ知らない。

前世の基準で言えば、核兵器で蒸発しない程度の強さは身に付けたけれど、地球を破壊したり、次元を斬り裂く様な実力者が居たら勝てる気はしない。

けれど、調べた限りでは、そんな存在の確認は出来なかった。

現状、僕の知る範囲で言えば世界最強。

それは誇張でも何でもなく、純然たる事実だと、僕は自信を持って言えた。

 

「君こそ、どうなのさ」

「何それ、私が手を抜いているかって事?」

 

嫌みかしら、っと、アレクシアは僕を睨んだ。

 

「巷で私の剣が何て言われてるか、分かるでしょ?」

「凡人の剣」

「そうよ、私には才能がない。姉さまやゼノンの様な才能が。努力はしてきたつもり。でも、努力だけじゃ絶対に埋められない壁があるのよ」

 

アレクシアは自嘲する様な笑みを浮かべて語った。

姉であるアイリス王女と比べられ続けた事。

そのアイリス王女に追い付きたいが為に、日々努力を続けた事。

だが、直ぐに伸び悩み、周りからは凡人の剣と呼ばれる様になった事。

 

「所詮、世の中才能が全てよ。才能のない人間はどんなに頑張っても、才能ある者には勝てないわ」

「才能ね……、僕は才能ってのは他者より如何に効率良く努力できたか、それに尽きると思うんだよね」

 

アレクシアが睨む。

おっかない。

 

「私の努力が間違っていたとでも?」

「そうとは思わないよ。ただ、お姉さんと君、同じ努力をしていたとしても、方向性は違ったんじゃないかな?」

「方向性?」

「だってそうだろ、君はお姉さんに追い付きたくてお姉さんを目標に努力をしていたと言うけれど、そのお姉さんはお姉さんを目標に努力していた訳じゃないだろう?」

 

アイリス王女は長女だ。

上に手本となる兄弟の存在は無い。

アイリス王女は、アイリス王女の目標を立て、それを目指す為に剣技を磨いた筈だ。

アイリス王女を目標に剣技を磨いても、そのアイリス王女が何を目指して剣技を磨いたのか、それを知らなければ辿り着く剣技はただの真似事に過ぎない。

 

「お姉さんを目標にするなら、先ずはお姉さんが何を目標に努力していたのか、お姉さんが努力の原動力にしていた物を知った方が、より効率的な努力が出来るんじゃないかな」

「生意気ね。…………でも、一理あるわね」

「まあ、僕の持論だけどね」

 

身体能力という面ではアレクシアの言う通り、遺伝子の関係上、才能に左右される事はあるのかも知れない。

けれど、技術面で言えば、努力で埋められる。僕はそう思っている。

 

「僕は君の剣が好きだよ。基本に忠実で基礎は押さえてる。地味だけど、美しい剣。僕はそう思うよ」

「…………そう」

 

アレクシアが金貨を投げる。僕が拾う。

アレクシアは顔を背けている。

心なしか、頬が赤くなっている気がする。

 

「今日は一人で帰る」

 

アレクシアはそう言うと、僕の返事も聞かずに学生寮の方へ帰って行った。

 

 

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シド・カゲノー。

彼を簡単に言い表すなら、怠惰で平凡な下級貴族の少年。

普段は怠惰で、何をやるにしても面倒くさそうな表情を浮かべ、やる気無さげな態度で過ごしてる。

必要最低限の事は熟す。言われた事は忠実に熟し、教師からの風当たりも悪くはない。

彼の振るう剣に才能の欠片も感じられなかった。

基礎は出来ているけど、ただそれだけ。

凡人の剣。そんな言葉が似合う剣筋だった。

 

けれど、不思議と目を奪われる。

私は気が付けば、彼の剣を目で追う様になった。

 

彼は私との打ち込み稽古は忠実に熟している。けど、他の生徒との試合稽古では一度も勝った姿を見た事がない。

最初は下級貴族だし、私が強引に1部に引き上げたのだし、当然かと思った。

けど、彼との打ち込み稽古を続けていく内に、彼の動き、歩き方や姿勢に無駄が無い事に気が付いた。

試合稽古では必ず負けるが、怪我を負った姿を見た事が無かった。

私の中で、一つの疑念が生まれた。

 

「…………アンタ。本当は強いでしょ」

 

彼は最終的に勝ったら、勝ったで面倒じゃんと答えた。

私は気になって、本当はどのくらい強いの?と聞くと彼は世界最強と自信有り気な表情で答えた。

大した自信だ。

 

その後、話題は私の話へと変わり、その会話の中で彼は言った。

 

「僕は君の剣が好きだよ」

 

同じ事を姉さまに言われた事がある。

 

『私、アレクシアの剣が好きよ』

 

あれはブシン祭の舞台で無様に負けた後に言われた言葉だ。

惨めだった。悔しかった。私の気持ちなんて分からない癖にと、姉さまを恨みすらした。

あれ以来、私は自分の剣が嫌いになった。姉さまとも口を利いていない。

だけど……

 

『僕は君の剣が好きだよ。基本に忠実で基礎は押さえてる。地味だけど、美しい剣。僕はそう思うよ』

 

悪い気はしなかった。

同じ凡人の剣を使う彼の言葉だったからかも知れない。

 

『僕は君の剣が好きだよ』

 

彼と別れた後も、その言葉は脳裏で何度もリフレインした。

顔が熱い、鼓動が煩い。

 

『僕は君の剣が好きだよ』

 

何故、そんな単純な言葉でこうも翻弄される。

 

『僕は君の剣が好きだよ』

 

ああ、もう!

きっと、気の迷いだ。

私は王族。彼は下級貴族。身分の差は天と地ほどの差がある。

だから…………

 

『僕は君の剣が好きだよ』

 

~~~~~~~消えろ!

 




原作シド君との相違点

1.名もなきモブAではなく、主要キャラに絡む弱キャラポジションを目指してる。

弱キャラと思われていた奴が、本当は強かったのか!
そんなギャップを演出したいと考えてる。

要するに、ジミナで演ったことをシド・カゲノーで行おうとしてる。
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