ここだけシド君に人間性をブレンドした世界線   作:読者その1

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第8話 遅い申し出

 いやー良かった良かった。

 当初の目的であった今にも死にそうな老人が、実はとんでもない強者だったって、陰の実力者の王道的な展開は達成できたんじゃないかな。

 

 僕はやりたい事ができてルンルン気分でスキップ……はオイボレーノ・クソジージ的にはできないので、逸る気持ちを抑えて杖を突きながら廊下を歩いた。

 

「待って、オイボレーノ殿!」

 

 僕の背後から声を掛けて、駆け寄ってくる青髪の少女ことアンネローゼ。

 さっき、僕に死ぬ思いをさせられたのに、もう声を掛けてくるとは、中々肝の太い娘だな。

 そんな事を考えていると、アンネローゼは膝を突き、頭を下げてこう言った。

 

「オイボレーノ・クソジージ殿、いえ、師匠!──私を弟子にしてください!!」

「…………………………………………」

 

 おっそーーーーーい!!

 え、そう言うのブシン祭始まる前に言って欲しかったんですけど?

 ローズ先輩といい、この子といい、遅いよ。

 

 もうブシン祭終盤で終わりそうなんですけど?

 なんで今言うかなぁ……。

 正直、今更弟子を取る魅力は感じない。

 

「ほっほっほっ、生憎じゃが、儂は弟子を取る気は無いぞ」

 

 なんで、それぽい事言って断る事にした。

 

「そこを何とかお願いします!」

 

 うーん。困った。

 これアレだ。弟子にしてくれるまで梃子でも動かないとか、そんな感じなアレだ。

 どうしようか……あ、そうだ。

 

「儂の剣は全てを捨て、凡人がその生涯を剣のみに捧げて到達した極致……お主には才能がある。儂と同じ道を辿ればもしかすれば儂と同じ極致に辿り着くかもしれん。……だが、生涯を剣に捧げると決めるにはまだ若い。剣だけが世界の全てではない。愛する者と結ばれ、子を産み、慈しみ育むというありふれた幸せもある。……故に世界を知り、己を知れ、生涯を剣に捧げるのかを決めるのは、それからでも遅くない」

「は、はい……!」

 

 僕はそれだけ言い残すと、その場を去った。

 うん。決まったね。

 

 人生の先輩として若者を導くお爺ちゃん系陰の実力者的な事はできたので、僕はもう満足だよ。

 

 さて、やりたい事はあらかたやり終えたし、後はどう締めるかだね。

 

 今考えているパターンだと、

 ブシン祭で優勝して表彰台で「ああ、儂の人生は無駄ではなかった……」と言い残して寿命を使い果たして天国へ旅立つパターン。

 勿論本当に死ぬんじゃなくて、モブ式奥義を使った死んだフリだけど……あ、いや、オイボレーノ・クソジージの姿になっただけでガンマ達涙ぐんでたしこれは却下かな。

 演技とはいえ、極力彼女達を悲しませる事は避けたい。

 

 そうなると、次の対戦相手──順当に勝ち進めばアイリス王女と戦う事になりそうだし、そこで何かするかな。

 

 そんな事を考えながら、僕はあの堅苦しいVIPルームではなく、見晴らしの良い観客席でアイリスさんの戦いを観戦した。

 ……なんか、とんでもないチャンスを逃した気がするけど、気の所為だよね?きっと。

 

『勝者──アイリス・ミドガル!!』

 

 対戦相手は巨大なクレータの中心で白目を向いて倒れていた。

 アレ、人間に向けて放つ技じゃないよね?

 

 大丈夫かな。対戦相手死んでないかな?

 

 ーーーーーーーーー

 ーーーーーー

 ーーー

 

 翌日、僕は昨日のVIPルームでモーニングティー(カフェオレ)を楽しんでいた。

 昨日と違って、僕はこの場に相応しい、けれど下級貴族が頑張って入手できる程度の高級スーツとアクセサリーを纏いVIPルームに溶け込んでいた。

 

 ガンマに頼んだら一晩で用意してくれた。

 流石は困った時のガンマ様だ。

 今回の件では色々とお世話になってる。

 何かお礼考えとかないとな。

 そんな風に思っていると、アイリスさん登場。

 

「おはようございますシド君」

「おはようございますアイリス様、今日もこの席なんですね」

「ええ、本来なら第一王女として来賓を接待する必要がありますが、試合がありますので、今は公職からは外させてもらってます」

「そうなんですねぇ」

 

 特に興味も無かったので、僕はカフェオレを啜る。

 

「コーヒーですか?」

「それを僕流にアレンジした物ですね」

 

 嘘はいってない。

 カフェオレの作り方は人それぞれだしね。

 

 僕は空になった容器にコーヒーを半分、ミルクを半分を加えてベージュ色のカフェオレを作って飲む……うん。良い出来だ。

 

 アイリスさんは不思議そうな表情を浮かべるとメイドさんを呼んで、コーヒーとミルクを用意させると、カフェオレを真似して作る。

 

「あ、美味しい……」

 

 どうやらお気に召した様子だ。

 それから僕とアイリスさんは他愛ない会話をして、朝食を楽しんだ。

 

 王族も訪れるVIPルームで王女様と優雅な朝食なう。

 SNSがあればバズりそうだな。

 モブの行動じゃないからやらないけど。

 

「恐れ入りますお客様。剣の持ち込みはご遠慮願います」

「どうしても、……ダメか?」

 

 何やら入口が騒がしい。

 ふと視線を向けてみると、色褪せたローブに身を包んだエルフ──ベアトリクスが居た。

 

「申し訳ございませんが……」

「構いません。その方は私が招待しました」

 

 隣のアイリスさんがベアトリクスに声を掛けた。

 この2人知り合いだったんだ。

 

「どうぞこちらへ」

 

 アイリスさんは僕の反対側の隣席へベアトリクスを誘導する。

 一瞬ベアトリクスと視線が合う。互いに軽い会釈をしてすれ違う。

 

「アイリス様、その方はどなたなのでしょう……?」

「武神ベアトリクス様です。昨日偶々出会ったので招待しました」

 

 アイリスがそう答えると、周囲の人間がどよめいた。

 武神と言われるからには、かなり凄いのかな?

 

「なっ、彼女があの伝説の!?」

「エルフの剣聖」

「おお、噂には聞いていたが、何と美しい」

 

 説明ありがとうモブの諸君。

 できれば、僕もモブとしてこのザワザワに加わりたいところだけど、生憎僕は彼女を食いしん坊のエルフと言う事くらいしか知らない。

 

「いやはや、ベアトリクス様がこうして表舞台に姿を現すのは何時振りでしょうなぁ」

「なにか目的がおありで?」

「──うん。人を探しているんだ。私と似た顔のエルフを知らないか?」

 

 如何にも私偉いんですって恰好の人達に平然とタメ口。

 そしてそれを気にも留めず、爽やかな笑みを浮かべるお偉いさん達。

 このやり取りだけで、ベアトリクスが凄い人なんだと分かる。

 

「残念ながら……」

「ベアトリクス様程の美しいエルフであれば、一度見たら忘れないとは思うのですが……」

「そうか、最近この国ではよくエルフを見かけると聞く」

「ああ、それは恐らくミツゴシ商会が理由でしょうな」

「ミツゴシ商会?」

「ええ、最近王都で最も勢いのある商会です。商品も従業員もとても素晴らしいものばかりです」

「エルフも良く目にしますね」

「そうか……ありがとう。参考になった」

「いえいえ、滅相もございません。ベアトリクス様の一助になれたのであれば、幸いです」

 

 流れ的に、この後ミツゴシ商会に顔を出しそうだな。

 念の為、ガンマに知らせとくかな。

 

「ところで、この度のブシン祭。ベアトリクス様は注目の選手はいらっしゃいますか?」

「シド」

 

 …………場の雰囲気が静まり返る。

 

「シドは強い。是非、戦ってみたい」

 

 そう言って、ベアトリクスは僕を指差した。

 視線が僕に集まる。

 口止めしとくべきだったな。

 

「いえいえ、僕なんかがベアトリクス様に敵う訳ないじゃないですかー」

 

 あははは、と笑って誤魔化す。

 

「そ、そうですよ。彼は僕の後輩ですが、剣の素質はあまり……」

「お姉さんのクレア・カゲノーさんは確かに強いですが……」

 

 おっ、ナイスアシスト学園の先輩方!

 周りの貴族達は先輩方の言葉をあっさりと信じ、ベアトリクスに懐疑的な視線を向けた。

 どうやら本物か疑っている様子だ。

 

 ただ、1人、アイリスさんは僕の方を見て訝しんだ様子だった。

 僕はそんな視線に気付かないふりしながら、モーニングティーを楽しんだ。




カゲマスの周年イベントはやりました?
シドとデルタが「君の名は」して面白かったです。

シドinデルタのガチャとかやらないかな?

まだイベントやってないなら是非やって下さい!
カゲマス自体やってないなら、この周年イベントの期間に是非プレイして沢山課金してカゲマス運営に貢ぎましょう!

きっと、フルボイスだから、他のソシャゲと比べて運営費掛かるでしょうし。

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