ここだけシド君に人間性をブレンドした世界線   作:読者その1

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人類はエロでできている。世の中の真理だね!
※アンケート結果見ながら


第11話 天を穿つ原子の光

 王都を包んだ黒い雲からポツポツと雫が落ち、雫はやがて豪雨と言える程の物へと変わる。

 豪雨と雷鳴轟く王都に紛れる様に、王都を稲妻の如く駆ける2つの影と、剣戟の音と微かな火花が駆け巡った。

 

「中々やるな」

「貴方も──ッ!」

 

 王都を駆け巡る2つの影──その正体は今や王都で知らぬ者は居ない大罪人シャドウと、剣を握る者であれば、一度は耳にするエルフの剣聖武神ベアトリクス。

 

 2人の剣戟はブシン祭が幼児の遊びと思える程に速く、鋭く、そして美しい物だった。

 

 そんな戦いを見て、アイリス・ミドガルはオイボレーノ・クソジージが──否、シャドウが自分には全く本気ではなかったと理解した。

 

 戦いの均衡が破れ、ベアトリクスが地面を転がる。

 明確な隙だ。追撃を加えれば致命傷を与えられる。

 その様子を見てアイリスはシャドウの勝ちを確信した。

 地を転がるベアトリクスは死を覚悟した。

 

 ──しかし、シャドウは追撃せず、ただ佇んでいた。

 

「何故、殺さない……?」

「殺す理由がない……まあ、お前が強者との戦いで死を望むタイプの人間なら殺してやるが?」

 

 どうする?とシャドウは視線で問い掛ける。

 ベアトリクスは首を横に振った。

 

「……ううん。生きたい」

 

 そうかと、シャドウは剣を下げる。

 

「……けど、まだ戦いたい」

 

 そう言ってベアトリクスが剣を構え直すと、シャドウは僅かに口角を上げ、剣を構える。

 再び、剣を交えようとしたその直前、

 

「待ってください!」

 

 アイリスは2人の間に割って入った。

 

「私も、混ぜてもらいます……」

 

 そう言って抜き放つのは、王都に伝わるアーティファクト。

 

「ミスリルの刀身に、炎の古代文字か……」

「──ッ!?……博識ですね」

 

 まさか、刀身に刻まれた古代文字が読み解かれるとは思わず、驚愕するアイリス。しかし、直ぐに平静を取り戻し、剣を構える。

 

「卑怯だと思いますか?」

 

 アイリスの問いにシャドウは「いいや」と首を振った。

 

「ここは既に闘技場の外であり、ルール無用の戦いの場、ならばアーティファクトだろうが、毒だろうが、薬物だろうが使った所で問題はあるまい」

 

 シャドウの鋭い眼光がベアトリクスとアイリスを睨む。

 

「「──ッ!!」」

 

 2人はとてつもないプレッシャーに足を引きそうになる衝動を抑え、一歩前に出る。

 

「お前達を殺す理由はない……だが、殺さない理由もない。()の前に立ち、剣を構えた以上、死を覚悟しろ……死にたくなければ抗え」

 

 次の瞬間、シャドウの姿が消える。

 直後、アイリスは己の直観に従い、剣を振り抜く。

 その剣は己の首を斬り刎ねようとしていた漆黒の剣と衝突した。

 

「ほう、よく抗ったな。誉めてやろうか?」

「──ッ!舐めるなぁ!!」

 

 剣に魔力を込め、炎を放つ。

 シャドウはアーティファクトの剣から放たれる炎を除け、飛び退く。

 

「担い手の魔力を炎に変える魔剣。なるほど。魔力量だけは立派な貴様にピッタリな剣だな……」

 

 しかし、至近距離で炎を放った事により、アイリスも己の放った炎で軽い火傷を負った。

 シャドウの背後からベアトリクスが襲い掛かる。

 背後を向かず、気配だけで察知したシャドウはベアトリクスの剣を指2本で掴むと、そのまま剣を引き寄せ、ベアトリクスの胴に拳を打ち込んだ。

 

「がはっ!?」

 

 今まで感じた事のない強い衝撃と痛みに、ベアトリクスは血反吐を吐きながらも、直ぐ様態勢を立て直し剣を構える。

 アイリスとベアトリクスはこの攻防で理解した。

 目の前の男に、己の剣は決して届かないと──

 

「私に気を使う必要はない。私ごと焼き切るつもりで構わない」

「……分かりました」

 

 どちらか片方だけでは相手にならない。

 ならば、2人同時に襲い掛かり、反撃の隙を与えない様に立ち回るしかない。

 アイリスとベアトリクスはそう判断した。

 

「……来い」

 

 その言葉と共に、アイリスとベアトリクスは駆け、シャドウを囲む様に、剣を振るう。

 一歩間違えれば同士討ちの可能性のあるリスクの高い攻防だった。

 ベアトリクスが前に出てシャドウを足止めし、その隙にアイリスがベアトリクスを巻き込む事も厭わず炎の斬撃を放つ。

 シャドウは顔色一つ変えず余裕で躱してた。

 ベアトリクスはギリギリで回避した。

 

(この斬撃は当たればシャドウでもただでは済むまい……!)

 

 ベアトリクスが再びシャドウに斬り掛かる。

 

(ベアトリクスに集中し過ぎると、アイリスさんの炎の斬撃が来る。かと言ってアイリスさんを気にし過ぎるとベアトリクスを押しきれない……楽しくなってきたな)

 

 シャドウは口角を上げる。

 

「少し本気を出すとしようか」

 

 シャドウはそう言うと、剣を握っていない方の手に黒い液体が集まり、漆黒の剣へと姿を変える。

 

「二刀流!?」

 

 両手に剣を握ったシャドウはこれまで以上に過激で猛烈な剣戟を繰り出した。

 ベアトリクスはシャドウの剣戟を捌ききれず、剣を弾かれた。

 

「ベアトリクス様!」

 

 アイリスがベアトリクスを庇うように立ち、炎の斬撃を放つ。

 

「それはもう見飽きた」

 

 しかし、炎の斬撃はシャドウの一振りによって掻き消された。

 

「なっ!?」

 

 そして続く一撃で剣を弾き飛ばされる。

 いとも簡単に剣を手放すベアトリクスとアイリスの姿を見て、シャドウは落胆した様に息を吐いた。

 

「少し本気を出しただけでこのザマか……」

 

 シャドウは両手の剣を液体へと戻すと、踵を返した。

 戦いはもう終わりだ。興味はないと、その背中が語っていた。

 

「待ちなさい!私はまだ──」

 

 負けていない!そう続けようとしてシャドウの姿が消えた。

 

「──まだ、なんだ?」

「──ッ!!?」

 

 そして背後からシャドウの声がした。

 咄嗟に振り向こうとして、首筋に冷たい刀身が触れた。

 少しでも動けば殺す。そう語っている様だった。

 結果、アイリスはその場に立ちつくすくしかなかった。

 ベアトリクスも動けない。動けばアイリスが殺されると理解した。

 

 殺す理由はないが、殺さない理由もない。

 

 シャドウはそう言った。

 つまり、シャドウにとってアイリスもベアトリクスも死のうが、生きようが、どうでも良い存在なのだと。

 気分ひとつで簡単に殺せる程度の存在なのだと、悟った。

 

「──なぜっ!何故、それ程の力を持ちながら悪に与するッ!?」

 

 そんなプレッシャーの中、アイリスは吠えた。

 アイリス・ミドガルは常人なら膝を折り、助命を乞う程のプレッシャーの中、吠えた。

 それは勇気か、蛮行か、……シャドウにとってはどうでも良い事だった。

 

「我らは陰に潜み、陰を狩る者──我らは我らの道を進む。善だ、悪だのというのは貴様らが勝手に定めた価値観に過ぎない。……まあ、仮に貴様らの価値観で我らを善悪で測るのであれば、我らはどちらかと言うと善に与する者だと思うがな」

 

「ふざっ……けるな!学園を襲い、ルスラン副学園長や学園に通う生徒達を奪ったお前らがッ!善なるものかッ!!?」

 

「その学園を襲った者達はシャドウガーデンを騙る蛆であり、その親玉がルスラン副学園長だと言えば──信じるか?」

 

「なにっ!?」

 

「我らはシャドウガーデンを騙る蛆を一掃し、寧ろ捕らわれた生徒達を助けてやった立場だと言えば──信じるか?」

 

「そんなもの、信じるわけ──ッ!」

 

 ないと答えようとするアイリスの言葉を遮る様に、シャドウは失望混じりの溜息を吐いた。

 

「……情報は多角的に集め、私情を挟まずに分析する物だ。聞けば、アレクシア・ミドガルを誘拐した黒幕は学園の教員だったらしいではないか」

 

「──ッ!」

 

「王国に牙を剥いた人間が学園の教員から出た。なら、他は居ないと……断言できるか?」

 

「それは……」

 

「何故、シャドウガーデンと名乗る者同士で殺し合いをした?何故、学園を襲いながら、捕らわれた生徒達を助けるという矛盾した行動をとった?」

 

「それは……」

 

「疑問を疑問のままで放置するな。常に思考を巡らせろ。でなければお前はあっという間に陰に潜む闇に飲み込まれるぞ」

 

「──ッ!」

 

 アイリスは背を蹴り飛ばされ、地面を転がった。

 

「興が覚めた……次の一撃を以て幕引きとしよう」

 

 落胆した表情でそう呟くと、シャドウは剣を掲げた。

 直後、青紫の魔力が王都を包んだ。

 

「なっ……!?」

「なんて、魔力……!?」

 

 それはアイリスの魔力を優に上回る。否、比べるのも烏滸がましい程に膨大な魔力だった。

 とても人が……生物が有して良い魔力ではない。

 

「僅かばかりでも、我を楽しませた褒美だ。──貴様らでは決して届かない至高の一撃を魅せてやろう」

 

 ベアトリクスとアイリスはその一撃が放たれるのを黙って見る事しか出来なかった。

 所詮は児戯だった。自分達が全力を以て挑んだ相手にとって、自分達は赤子……いや、地を這う虫けらも同然の存在だったのだと。そう理解した。

 

「──アイ・アム」

 

 生物としての格が違う。

 

「──アトミック」

 

 眩い閃光に目を眩ませる。

 閃光が止み、瞼を開くと、そこには雲一つない空が広がっていた。

 

 そこには空を覆っていた黒雲も、王都を覆う膨大な魔力も、シャドウの姿も無かった。

 

「見逃された……」

 

 ベアトリクスが呟く。戦いですら無かった。

 曲がりにも武神と呼ばれている故、自分の強さには自信があった。

 シャドウを格上とは理解しつつも、互角に戦えると、そう思っていた。

 

「……私も、まだまだ未熟」

 

 そう呟くベアトリクスの傍らで、アイリスは雲一つない空を見上げる事しか出来なかった。

 

 ーーーーーーーーー

 ーーーーーー

 ーーー

 

「…………今のは」

 

 同時刻、ローズは天を穿つ光を目撃した。

 その光が自身に力を与えた老人──否、シャドウの魔力である事は直ぐに分かった。

 

 そして、王都を覆う黒雲を晴らすその光景を見て、ローズは自身の心に渦巻く闇が、ほんの僅かだが晴れた気がした。

 神の奇跡とも思える偉業を成した力の一端が、自分にも与えられたと考えると、希望が湧いた。

 

「……往こう」

 

 そして何度目か分からない決意を固め、歩きだそうとした直後、目の前に黒いローブを纏った人影があった。

 

「──ッ!?」

 

 教団員かと一瞬剣に手を掛けたローズだったが、そのローブが教団員とは異なるデザインであり、それはローズに力を与えたシャドウが率いる組織──シャドウガーデンの物である事に気付いた。少なくとも敵ではない。ローズがほんの僅か、緊張が和らいだ頃合いを見計らってか、ローブの人影はローズに声を掛けた。

 

「貴方には2つの選択肢がある」

 

 それは、凛とした女性の声だった。

 そして、その声にローズは聞き覚えがあった。

 聖地リンドブルムで行動を共にした金髪のエルフの声だ。

 

「確か、アルファ……さんでしたか?」

「あら、覚えていたのね」

 

 ローブの人影改めアルファはフードを外し、美しい金色の髪に、青い瞳に、女神像がそのまま動き出したかのような、美しい顔を露わにした。

 

「貴方には2つの選択肢がある」

 

 そして、アルファは同じ言葉を繰り返した。

 

「1人で戦うか、それともシャドウガーデンの一員となり、共に戦うか……」

「共に……?」

 

 ローズもシャドウガーデンも共にディアボロス教団を敵にする。

 共通の敵を相手に手を組むのは、国でも個人でも良くある事だ。

 しかし、それが必ずしも己の利益になるとは限らない。

 

 対等な力関係での協力でなければ、力が弱い者は力の強い者へ強く出られない。

 ましてや、アルファは今、シャドウガーデンの一員となり、共に戦うかと言った。

 

 それはつまり、対等な協力関係を意味しない。

 共通の敵であっても、その過程でオリアナ王国が不利益を被ったり、最悪滅ぶ可能性すらある。

 そして、仮にそうなった場合、組織の一員に過ぎないローズに出来る事は少ない。

 

「私はオリアナ王国の王女です」

「ええ、知っているわ」

「シャドウガーデンはオリアナ王国の為に動きますか?」

「状況次第よ。オリアナ王国が滅びる事で教団が滅びるなら、我々はオリアナ王国を滅ぼす事になる」

「その逆も然り……と言う事ですね」

「そうね。……だから貴方が示しなさい」

「私が……?」

「ええ、貴方の価値を、シャドウガーデンがオリアナ王国の為に動くだけの価値を……」

 

 答えは決まった。

 

「……貴方達と共に戦う事を誓います」

「そう。歓迎するわ」

 

 この日、シャドウガーデンに新たな仲間が加わった。




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シド君のエクスカリバーの射程は?

  • 1、七陰まで
  • 2、シャドウガーデン関係者まで
  • 3、射程?そんな物は存在しないッ!
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