ここだけシド君に人間性をブレンドした世界線   作:読者その1

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皆様、沢山の高評価と感想ありがとうございます。
大変励みになります。

アンケートの結果、前章を王都動乱編。
本章を学園編と名前付けすることにしました。


第2章 学園編
第1話 一度はおいでよ、ミツゴシ商会


ミツゴシ商会。

それはここ数年で突如として頭角を現し、瞬く間に大商会にまで成長した新興商会だ。

取り扱う商品は衣服から飲食まで様々。

幅広い分野に事業を展開しておきながら、その全てで成功を収めている。

これまでに無かった画期的な商品を数多く世に出し、あっと言う間に民衆を虜にした驚異の商会。

それは近い将来に、経済覇権を握ると様々な報道機関が報じている。

間違いなく、ミツゴシ商会は今最も話題の商会だ。

 

「ここが今話題のミツゴシ商会」

「話題になるのも頷けるわね」

 

そんな商会に今、ミドガル王国の第一王女アイリス・ミドガルと第二王女アレクシア・ミドガルは訪れていた。

本来なら入店までに1時間以上の待ち時間があるが、2人はこの国でも最上級の身分を持つ為、VIP専用口からセレブ専用売り場に通された。

その洗練された接客から、専用売り場までの誘導に至る対応まで、王室育ちの2人をして満足の行く物だった。

 

「王城の使用人に迎えたいぐらいだわ」

「ええ、そうね」

 

アレクシアの呟きに、アイリスは同意した。

それから暫くしない内に、2人のもとには腰まで届く美しい紫の髪が特徴なエルフの女性が現れた。

 

「お待たせ致しました。アイリス殿下。アレクシア殿下。私、ミツゴシ商会の会長を務めさせて頂いております。ルーナと申します」

 

ルーナはお近付の印と言ってはなんですが。と、1つの箱を取り出し2人の前に差し出した。

 

「今巷で話題となっているチョコレート。その新商品トリュフでございます。良ければ召し上がってみて下さい」

「へぇ、これが」

「見た目はあまり美味しそうじゃありませんが、香りはいいですね」

 

2人は差し出されたチョコレートを掴み、口にする。

直後、2人は目を見開き、口元を抑える。

 

「「美味しい!」」

 

2人はゆっくりとチョコレートを味わい。ごくりと喉を鳴らす。

 

「気に入ったわ。買うわ」

「ありがとうございます」

「あと、他のチョコレートも一通り試食出来ないかしら?」

「ええ、ご用意させて頂きます」

 

ルーナはパンパンと手を鳴らすと、ドアが開き、従業員らしきエルフの少女が現れた。

その手には既にチョコレートが積まれたトレーが握られていた。

 

「準備が良いわね」

 

その後、2人は一通りチョコレートを堪能し、その全てを買い上げた。

値は張ったが、それでも尚、買いたいと思える程、チョコレートは魅力的だった。

 

「もし宜しければ、他の商品をご覧になっては如何でしょうか。当商会は飲食物以外にも様々な衣服をご用意しております。富裕層から人気の高いドレスなどもご用意しておりますよ」

「それは興味深いわね。良いわ見せて頂戴」

「私も、少し興味があります」

「では、ご用意させて頂きます」

 

ルーナは従業員に手早く指示を出すと、従業員は無駄のない動きで手早く様々な衣服を用意した。

パーティで着飾れる煌びやかなドレスから、普段着としても使えるおしゃれな服まで、そのどれもが今までにない目新しい商品だった。

そんな中で、アレクシアはとある商品に目が付いた。

 

「……これは、下着?」

 

それは下着と呼ぶには面積が少なかった。秘部を最低限しか隠せない様な面積しかなく、それでいてうっすらと透けている下着だった。

 

「あ、あの、これ、……下着なんですか?」

「ええ、ティーバックという女性用下着になります。男性からの人気も高い商品になっております」

「男性!?まさかアレクシア!」

「…………」

 

アイリスが顔を赤らめ、アレクシアを見る。

アレクシアは真剣な表情でティーバックを握りしめていた。

 

「アレクシア!?」

「…………これなら、シドも喜ぶかしら?」

「…………」

 

ルーナが笑顔のまま固まる。

 

(主様に寄生する害虫。今すぐにでも駆除してしまおうかしら)

 

待機していた従業員の顔から血の気が引いていく。

 

「これ、買うわ」

「アレクシア!?」

「…………ふふふ、お買い上げありがとうございます」

「あれ、なんだか寒気が。夏風邪かしら?」

 

 

--------------------

 

 

僕は今、王都で話題のミツゴシ商会に訪れていた。

 

「うわ、凄い行列」

「寮の門限に間に合うか微妙ですね」

 

側にはヒョロとジャガ。

今日は2人の付き添いでミツゴシにやって来た。

何でも、今話題のチョコレートを女子にプレゼントして告白するのだか、なんだか。

僕は曲がりなりにもアレクシアとの交際が続いているので、2人の作戦には参加してないけど、暇なら付き合えとのことで無理矢理連れて来られた。ダルい。

 

「大丈夫ですかね、最近は人斬りが出るって噂ですし」

「人斬り?」

「馬鹿野郎。こっちには魔剣士が3人も居るんだぜ、んなもん返り討ちにしてやらぁ」

「そ、そうですね。人斬りくらいちょちょいのちょいですよね!」

「ねえ、人斬りって何さ?」

「シド君知らないのですか?」

「最近王都を騒がせている事件だよ。なんでも、夜になると現れて、次々と人を斬って回るらしい」

「とてつもない腕前で、騎士団が本格的に動くのだとか」

「へぇ……」

 

凄腕の人斬り。

僕の脳裏にはふと、アレクシアの顔が浮かんだ。

いやいや、確かに笑顔で人を斬りそうな雰囲気は感じるけど、流石にないって。

……ない、よね?

念の為、王都に現れる人斬りについて、調べてみよう。

表立って活動しない教団がこんな目立つ事するとは思えないけど。教団が関与している可能性もゼロではないし。

 

「お客様。もし宜しければアンケートにご協力頂けませんか?」

 

プラカードを手にしたダークブラウンのお姉さんが僕達の前に現れた。

わお、凄い美人さん。こんな美女に声を掛けられるなんて、相手は幸せ者だな。

そんな幸せ者はどんな面をしているのだろうと、僕はお姉さんの視線の先を探る。

お姉さんの瞳に映っているのは僕だった。

 

「ん?……僕?」

「はい♪」

 

隣のヒョロとジャガが身を乗り出した。

 

「お、お姉さん。こんな冴えない男より、俺が協力しますよ!」

「ぼ、僕もです!」

「いえ、お2人は結構です」

 

お姉さんの笑顔に敢え無く撃沈するヒョロとジャガ。流石は僕が見込んだモブ。お手本の様な流れだ。

 

「では、行きましょう」

 

僕はお姉さんに腕を組まれて、店内に入って行った。

お姉さん。胸当たってますよ。

あと、僕行くとは言ってない。

 

「ふふっ……」

 

お姉さんは笑顔で微笑んだ。

怖い。僕、この後高い壺とか、買わされないよね?

 

「ここです」

 

お姉さんに連れて来られたのは、ミツゴシ商会の屋上。

けれど普通の屋上ではなかった。豪邸があった。

建物の上に建物があった。

 

「……不思議な構造だね」

「お褒めに預かり光栄です」

 

いや、中々面白い構造だとは思うよ。

ミツゴシ商会の建物が豪邸の周りを囲い、外からは見え難くなってる。

より高い場所から見ればこの不思議構造は一目瞭然だけど、この周りにはミツゴシ商会より高い建築物は無い。

空でも飛ばない限りは、この不思議構造を目にする事は無いだろう。

秘密基地って感じがして僕好みだ。

 

「どうぞ中へ」

 

僕はお姉さんの誘導に従い、豪華な扉の前に立つ。

扉の前には美しい女性が両脇に立っており、2人は一礼すると扉を開いた。

中は前世の中世時代に建築された大聖堂や玉座の間を連想させる様な作りだった。

辺り一面には無数の窓が取り付けられ、そこから差し込む夕陽が建物内をオレンジ色に染めていた。

床にはレッドカーペットの道が続き、それは辺りを一望出来る高さの階段、その先に鎮座する玉座にまで続いていた。

その道の左右には、美しい女性達がズラリと整列していた。

 

「……そういう事ね」

 

僕はレッドカーペットを歩き、玉座の横に佇む腰まで届く美しい紫の髪が特徴なエルフの女性を見た。

 

「この店、君の店だったんだ。ガンマ」

「ええ、ご来店をお待ちしておりました。主様」

 

そう、彼女こそが、シャドウガーデンの頭脳ガンマ。

大きな作戦では彼女が作戦立案を行い、アルファの補佐を行う。謂わば参謀役。

普段はシャドウガーデンの戦略を練り、資金繰りも彼女が行っている。

数年前に商会を立ち上げた事は知っていたけど、まさかミツゴシ商会がそうだとは思わなかった。

 

ガンマはコツコツと、ハイヒールを鳴らしながら階段を降る。

その様は非常に優雅で、ファッションモデルを連想させる姿だった。

彼女は非常に頭が良く、多才だ。けれど重大な欠点を抱えている。

 

「ぴぎゃ!」

 

それまでの優雅さが嘘かの様な間抜けな声を上げ、ガンマは階段から転げ落ちる。

 

「ぐじゃ、べじゃ、ばぐぅ……」

 

ガンマは非常に運動神経が悪い。

付けられた二つ名は最弱。

彼女程運動センスの悪い人物を僕は知らない。

 

「どうぞ、こちらへ」

 

何事も無かったかのように立ち上がり、笑顔を浮かべるガンマ。その鼻からは一筋の血が流れていた。

 

「鼻血出てるよ」

 

側に居たお姉さんが手慣れた手付きでガンマの鼻血を拭い、治癒を行う。

相変わらず、彼女の動きは読めない。

何もないところで転ぶし、何かあっても転ぶ。予兆も何もなく転ぶので、助けようにも、助けられない。

 

「改めて、どうぞこちらへ。主様に相応しい玉座をご用意致しました」

 

僕はガンマに案内されるまま、玉座への階段を登り、そこに鎮座している玉座に腰かけた。

そのタイミングでガンマが跪き、その背後にレッドカーペットの横に整列していた美女達が跪いた。

実に壮観だ。天窓から差し込む夕日が良い感じに雰囲気を作り出している。

 

「うむ。中々良い物だな」

 

いいねいいね、最高だね!

僕は今、猛烈に感動している。

今王都で話題のミツゴシ商会。その正体は陰で暗躍するシャドウガーデンが表舞台で活動する為のフロント企業に過ぎない。

一般人が立ち入れない屋上には、盟主シャドウを迎える為の玉座があり、そこに座す僕とその前に跪くシャドウガーデンの構成員達。

正に陰の実力者って感じだ!

僕の望む世界が、今、目の前にある!!

 

「我が僕ガンマ。君は良く働いた。シャドウガーデンは随分と大きくなった」

「嗚呼、何と勿体なきお言葉」

「褒美だ。我の……、こほん。我の魔力をくれてやる」

 

危な!流れで我の子種をくれてやるって言いそうになった。

僕は咳払いをした。右手を掲げ、そこから青紫色の魔力を放出した。

それは天井近くまで打ち上がり、雨の様に跪く彼女達の下に降り注いだ。

 

「わぁぁ……」

「凄い」

「これがシャドウ様の魔力」

「まるで命の雫。これだけで孕んでしまいそう」

 

孕まないからね?

これ子種じゃなくて、魔力。

精々、疲労回復とか軽い治癒能力しかないから!

 

「思い出します。悪魔憑きとなり、死の運命に立たされた絶望。体が腐り果てる苦痛。それを救ってくれた命の光。このガンマ。今日という日を生涯忘れません」

「大げさだな。この程度の光、何時でも見せてやるとも」

「何と慈悲深きお言葉。このガンマ。より一層シャドウ様への忠誠を誓います」

「あ、うん……」

 

ただの魔力放出でここまで喜ばれると、逆に申し訳なくなる。

 

「因みにガンマ。この商会の商品って」

「はい。主様から授けて頂いた陰の叡智を微力ながら再現させて頂きました」

 

ガンマは自慢げな表情で語ると、付き人に指示を出し、様々な商品を持ち出して来た。

スーツ、靴、帽子、口紅、チョコレート、ウィスキー。どれも前世で見覚えのある物達だ。

確かに昔、陰の叡智と称して前世の知識を自慢げに語ったけど、まさかそれを再現するとは、これが頭脳なのか。頭脳の差なのか。

 

「ほう、……因みになんだが、どのぐらい儲かっている?」

「そうですね、即座に動かせる活動資金として10億ゼニー程、ご用意できます」

「10億!?」

「す、少なかったでしょうか?」

「いや、十分だ」

 

ミツゴシ商会は、その商会を率いるガンマは、僕が思ったより、大分凄かったみたいだ。

 

「それと、主様が来訪された理由は察しております。最近王都を騒がせているシャドウガーデンを名乗る人斬りの件ですね」

 

…………なんだって?




原作との相違点

1.アレクシアが原作以上にティーバックに興味深々。

ガンマ(#^ω^)ピキピキ
オメガ&カイ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

Q温厚なガンマがここまで怒ってる理由は?
A敬愛している主がぽっと出の女に取られたら。幾ら温厚なガンマでもキレる。

2.シド君はガンマが数年前から商会を経営している事を知っていた。

シド君「それがミツゴシ商会だとは知らなかったし、思ったよりも大きな商会に成長してて驚いた」

本作シド君の驚き具合は、原作シド君より大きかったかも知れない。
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