「それと、主様が来訪された理由は察しております。最近王都を騒がせているシャドウガーデンを名乗る人斬りの件ですね」
ガンマがそう尋ねた直後、玉座に座するシドから強い重圧が放たれた。
「「「ッ!?」」」
思わぬ事態に固まるシャドウガーデンのメンバー。
ただ跪いているだけなのに、体が鉛の様に動かない。
指一本を動かす事すら困難だった。
「申し訳ございません主様!」
そんな中、腐っても七陰と言うべきか、ガンマだけは声を上げる事ができた。
普段はドジで突然転んでは鼻血を流す。尊厳も威厳も無いガンマだったが、シャドウから放たれる重圧の中で声を上げるガンマの姿に、その場にいたメンバーは尊敬の念を抱いた。
だが、そんな周りの評価など知らず、ガンマは必死だった。
何を間違えたのか、何が主を不快にさせたのか、ガンマの中で思考が巡る。
真っ先に浮かんだのは、シャドウガーデンを名乗る不届き者の存在だった。
きっと主様は、未だ不届き者を始末出来ていない自分達の不甲斐なさにお怒りなのだと。
そう考え付いた。
「シャドウガーデンを名乗る不届き者は、必ずや、このガンマが始末致します」
ガンマにとって、シャドウは希望だった。
悪魔憑きとなり、親しき者や家族から見放され、腐り果てる肉体を眺めながら死を待つ運命から救い出してくれたシャドウ。
それは新たに得た第二の人生に於いて、希望となる存在だった。
彼の役に立つ事こそが、生きがいなのだと、そう思い生きてきた。
だからこそ、シャドウから失望される。見放される。その事はガンマにとっては死も同義だった。
「すまん。取り乱した。お前達は何も悪くない」
シャドウから放たれていた重圧が無くなった。
「シャドウガーデンの名を騙る愚者の誅伐には俺も動こう」
「なんと、シャドウ様が直々にですか!」
シャドウが動く事は滅多にない。
先の王都動乱の件は別として、大きな作戦であっても、シャドウが作戦に参加する事は稀だ。
彼には、彼の目的がある。
私達では解決できない事案を、彼は陰ながら解決している。
それは七陰の中で共通した認識であった。
そのシャドウが直々に動く。その事にガンマは驚きながらも、事の重大さは自分が思っていた以上に大きい物なのだと認識を改めた。
「畏まりました。では、微力ながらサポートさせて頂きます。来なさい」
ガンマに呼ばれ、3人の少女がシャドウの前に現れる。
「カイです」
片目を隠した金髪ショートのエルフ。
「オメガです」
右目が銀で、左目が金のオッドアイが特徴のダークエルフ。
「ニューです」
シャドウをここまで案内したダークブラウンの美女。彼女はシャドウガーデンの中では珍しく人間であった。
「3人共、ナンバーズです。確かな実力と実績を兼ね備えております。好きにお使い下さい。……ただ」
ガンマは少し顔を赤らめながら呟いた。
「夜伽の際には、できれば私を…………」
「ぶっ!…………近い内に呼ぼう」
「はい!」
満面の笑みを浮かべるガンマ。
そんなガンマを、何人かの美女が羨ましそうな表情で見つめた。
「さて、僕はそろそろ帰るよ。お土産にチョコレート買いたいんだけど。3人分」
「最高級のチョコレートをご用意致します。10割引きで」
「10割!本当に良いの?」
「勿論でございます」
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ミツゴシ商会を出たのは夕陽が沈み、王都が夜の街明かりに照らされ始める頃だった。
「やあ、お待たせ」
「遅いぞシド!」
「そうですよシド君!門限ギリギリじゃないですか」
「ごめんって、アンケートが思いの外長引いてさ。はいこれ、アンケートのお礼に貰って来たよ」
僕はそう言って、ガンマから貰った高級チョコが入った箱を手渡した。
「こ、これはミツゴシ商会の高級チョコレート!?」
「マジか、どんなアンケート取ってたんだ?」
「それは秘密」
「はは、これがあれば、どんな女も一発で落ちるぜ、良い物を手に入れてくれたなシド」
チョコの箱を見て、悪い笑みを浮かべるヒョロ。
「ぐへへへ、これがあれば、あの子も僕の意のままにできますね」
……あの、ガンマからのプレゼントを悪い薬みたいに例えるの止めて。
僕は少し、この2人にチョコを渡した事を後悔した。
「まあ良い。目的の物は手に入れた。さっさとずらかるぞ」
「ええ、長居は無用ですね」
取引を終えた悪者かな?
「どうしたシド?」
「早く帰らないと、門限に遅れますよ?」
「先に行っててよ。僕はやる事があるから」
「ヤる事があるだと!まさかシド。これからデートなんて言わないよな!?」
「ななな、まさか、アレクシア王女と会うつもりですか!?」
「…………ふっ、内緒」
「「ムキィィィィ!」」
荒ぶるヒョロとジャガ。相変わらず愉快な反応をする。
「ふ、じゃあ僕はこれで」
「待て、何だその余裕。まさか、お前、既に……」
「まさか、嘘だと言ってくださいシド君。シドくぅぅぅぅん!!」
「シドォォォォ!!」
絶叫するヒョロとジャガを背に、僕は夜の王都へと歩き出す。
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さて、どうした物か。
僕は今、街明かりに照らされる夜の王都を一望出来る、時計台に立っていた。勿論シャドウの姿で。
普段なら、このシチュエーションに心躍るが、今の僕の心中にあるのは煮え滾る怒りの感情。
「さて、我等の名を騙る愚か者達。どう落とし前を付けてやろうか」
シャドウガーデンは、元々は成り行きで結成された物だ。
当初は存在しない架空の組織って思っていたディアボロス教団に対抗する為に組織された。僕にとってはごっこ遊びの延長線の出来事でしか無かった。
けれど、ディアボロス教団は実在し、アルファ達がシャドウガーデンを拡大し、拠点を築き、生活基盤を築き、今や王都で話題の商会をフロント企業に持つまでにシャドウガーデンは発展した。
悪魔憑きとなり、全てを失った彼女達が、長年の努力を以て築き上げた新たな居場所なのだ。
そこに至るまでにどんな道のりがあったかは知らないけど、組織をこれだけの規模に発展させるのに要した努力と苦労は想像に難くない。
シャドウガーデンとは、謂わば彼女達の努力の結晶。
そのシャドウガーデンの名を騙り、人斬りを行う。
赦せる筈が無い。
僕が、シャドウの名が貶められる分には構わない。
どれだけの悪名を残そうとも、世界中の罪を押し付けられようと、意に介さない。
どうせ、オマケの様な人生だ。前世では叶えられなかった陰の実力者として生きられるのであれば、行き着く先が断頭台の上でも構わないと思っている。
陰の実力者としての信念が貫けるのであれば、僕が夢に描いた陰の実力者としての最期を迎えられるのであれば、そこに悔いはない。
けれど、それは僕に限った話だ。
彼女達、シャドウガーデンのメンバーは違う。
全てを失い、新たに得た居場所で生きる彼女達の行き着く先は幸せな未来でなくてはならない。僕はそう思っている。
だからこそ、僕はシャドウガーデンの名を貶める行為を決して赦さない。
キンキン。
僕の強化した耳が、その音を捉えた。
ただ金属がぶつかり合う音ではなく、剣と剣がぶつかり合う剣戟の音。
「見つけたぞ」
音源に向かって駆けた。
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王都の繁華街から外れた、人気の無い路地裏。
そこでアレクシアは黒いローブに身を包んだ男と対峙していた。
両者の手には剣が握られていた。既に何度か斬り合っており、刀身には幾つかの傷が出来ていた。
「我らはシャドウガーデン」
戦い始めて数分。男は壊れたラジカセの様に同じ言葉を繰り返す。
我らはシャドウガーデンと。
「……そう」
アレクシアは目を細める。
シャドウガーデン。シャドウを連想させる名を名乗る謎の男。
恐らくは目の前に男は最近巷を騒がせる人斬りの正体に違いない。
「貴方、シャドウと何か関係があるの?」
シャドウは恩人だ。そんな恩人が人斬りに関与しているのか、或いはただ似た名を名乗るだけの人斬りか。
「我らはシャドウガーデン」
答えになっていない答えに、アレクシアの中で苛立ちが募る。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸をする。
一杯の空気を吸い込み、吐き出す事で熱くなった頭を冷却する。
それを何回か繰り返し、アレクシアが剣を振るう。
「はぁ!」
アレクシアが男の剣を弾いた。
カランと音を立てて、剣が地に落ちる。
「終わりね」
男は確かに強かった。
凄腕と噂されるだけの事はある。騎士団の中でも凄腕の魔剣士か数人係りで対処しなければ死傷者が出ていただろう。
少し前のアレクシアなら負けていただろう。それだけ男は強かった。
だが、シャドウの剣を視て、己が目指すべき道を思いだしたアレクシアの剣は、僅かな期間で驚く程に成長していた。
危なげなく、男を圧倒出来る程度には、アレクシアの剣は成長していた。
「我らはシャドウガーデン」
「それしか言えないのかしら?」
勝敗は決した。
男は武器を失い、体中には無数の切り傷。
命に支障はないが、戦闘が出来ない程度には重症だ。
「捕縛する道具が必要ね。縄か何かがあれば良いのだけど!」
それは一瞬の気の緩み。
勝利を確信し、緩んだほんの僅かな隙。
その隙を突かれる形で、アレクシアは背後から奇襲を受けた。
「レディを背後から襲うなんて、男としてどうかしらね!」
咄嗟に背後を振り向き、応戦する。
襲撃者は2人。同時に襲い掛かって来た。
片方の剣は躱し、もう片方の剣は剣で受け止めた。
だが、そこが限界だった。
隠れ潜んでいた3人目の襲撃者が現れ、アレクシアの腹部を刺した。
「がはっ!」
内臓をやられたのか、アレクシアは込み上げてくる血を吐きだした。
「こんちくしょう!」
己を刺した襲撃者を殴り飛ばし、建物を背にする。
その拍子で剣が引き抜かれ、血が溢れ出る。
「ちょっと、ヤバいかもね……」
形成が逆転した。
新たな襲撃者が3人。最初に対峙していた男も剣を拾い、合流した。
合計4人に囲まれ、自分は腹部を刺されて重傷。
アレクシアの脳裏には死という言葉が過った。
「これは、思わぬ大物だ。この国の第二王女。アレクシア・ミドガル。お前の死は我らの名を広く知らしめる礎となるだろう」
「……あら、あなたは、……喋れるのね」
「当然だ。俺はセカンドだ。出来損ないのサードとは出来が違う」
セカンド、サード。聞きなれない単語だった。
もっと、情報を引き出した所だが、目の前の男は長話をする気はない様子だった。
「我らはシャドウガーデン。去らばだ。アレクシア・ミドガル」
男は剣をアレクシアに向けて振り下ろした。
辺りに血が飛び散った。
「…………は?」
男の血が。
「シャドウガーデンを騙る愚者は貴様等か?」
気が付けば、男とアレクシアの間に一人の男が立っていた。
漆黒のコートに身を纏い。漆黒の剣を手にした者。
顔はフードに隠れて見えないが、その姿、その声をアレクシアは知っている。
それは生涯、決して忘れる事のないであろう人物だった。
「しゃ、どう……」
シャドウは男に背を向け、アレクシアに向き合う。
「久しいな。地下水道以来か?」
アレクシアの傷口にシャドウが手を当てる。
その直後、傷口は青紫の光に包まれた。
「お、俺を無視するな!!」
無防備に背を向けるシャドウに、男は激高し、剣を振り上げようとして気が付いた。
己の両腕が無い事に。
「…………あ?」
そして男は目にした。
シャドウの青紫の光に照らされる路地裏に剣を握ったまま、転がる自分の両腕を。
自分の両腕を見る。そこには肘から先が無かった。
「あ、ああ、……ああああ!!?」
男が絶叫する。
シャドウが放っていた光が収まる。
「応急処置だ。これで死にはしないが、数日は痛むだろう」
「……ええ、ありがとう」
アレクシアは刺された腹部を触る。
チクリとした痛みはあるが、それだけだ。
刺された傷は完全に塞がっていた。
「……さて」
シャドウが、男の方へと振り向く。
「ひっ!」
男は腰を抜かし、後退る。
「こ、殺せ。お前ら、こいつを殺せ!!」
男の命令を聞き、アレクシアと対峙していた男と襲撃者2人が一斉にシャドウに襲い掛かる。
「無駄だ」
シャドウが呟くと、男達はまるで時間が止まったかのように停止した。
「お前達にはまだ聞きたい事がある。誰一人と逃がしはしない」
シャドウが放つ殺気にアレクシアは恐怖した。
それは自分に向けられた物ではないと頭では分かっていても、自分の一挙手一投足がシャドウの機嫌を損ねるのではないかと、鬱陶しいという理由で殺されるんじゃないかと、気が気でなかった。
「貴様らが騙ったシャドウガーデンの名は、俺の配下が長年の苦労と努力で築き上げた物だ。貴様の様な蛆が気軽に口にして良い物ではない!」
「ひいぃぃぃ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。俺、いえ、私は何も知らなかったんです。ただ、組織に命令されてやっただけなんです」
男は情けない声を上げて、泣き叫ぶ。
「そうか、なら、その情報を全て吐いて貰おうか」
「そ、それは……」
「…………」
無言の圧力とは、正しくこの事なのだろう。
ただの沈黙がこれほどまでに恐ろしい事なのかと、アレクシアは身を震わせた。
「ひいぃぃぃ。喋れないんです!喋ったら殺されるんです」
「そうか、それは大変だな」
「は、はい」
「確か、イータが脳の記憶を読み取る機械を作っていたな。その機械の実験台に丁度良いか。なに、死にはしない。廃人になるだけだ」
「ひぃぃぃ。む!?」
悲鳴を上げる男の口をスライムが覆う。
「知りたい事は、直接お前の脳に聞くとしよう」
「む!むーーーー!」
「ニュー」
「は!」
シャドウが名前を呼ぶと、漆黒のボディースーツに身を包んだニューが現れた。
「連れていけ」
「仰せの通りに」
シャドウの指示を受け、近くに待機していたカイとオメガも現れ、拘束された4人の男を手際よく回収した。
彼女等が無事、男達の回収を終えたのを確認して、シャドウもその場を立ち去ろうとする。
「待って、シャドウ。貴方の目的は何?シャドウガーデンとは、何なの?」
アレクシアの言葉に、シャドウは立ち止る。
「我らは世界を裏で牛耳るディアボロス教団と敵対している。シャドウガーデンとは、ディアボロス教団の暗躍により居場所を失った者達の安息の地だ」
背を向けたまま、シャドウは答えた。
「ディアボロス教団。安息の地……」
「これ以上は関わるな。世界の闇に触れるには、貴様はまだ弱い」
シャドウはそう言い残すと、今度こそその場を去った。
原作との相違点。
1.シド君激怒
例えるなら、遊びで始めた絵描きを、アルファ達に教えたら自分より本気になって、その様子を見守っていたら、横から第三者が現れて血で汚れた手でアルファ達が書いた絵画に触って汚した感じ。
真剣に絵を書いていた様子を見ていたシド君は大激怒。
2.アレクシア襲撃にチルドレンセカンド参戦。
アレクシア刺される
オリキャラ紹介
名も無きチルドレンセカンド。
アレクシアを刺した張本人。
両腕を失いイータの実験台送りになる。
今後の登場は多分無い。
実験台1号&2号「「来いよ。こっち来いよ」」
取り敢えず、ここまで。
学園編のプロローグに当たる部分は投稿出来たと思うので、暫く書き溜めに時間を下さい。
次はアニメ放送日の13日23時に投稿します。
12月はアニメ放送日前後を目安に週1投稿を維持するつもりです。