長編のようで短編だと思います。
ストックはなく、行き当たりばったり投稿なので、未来はわかりません。
温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
恐らく転生した。
いや、絶対転生した。
記憶では黒髪黒目なのだが、今は少しだけ薄い緑髪に更に薄い黄緑色の目だ。ついでに肉体化が子供まで退化している。精神は大人なのに。これでは天才的な名探偵の対極的な存在ではないか。ついでに頭も良くないので、IQ面でも完全一致だと言える。かなしい。
なんだこれ、よくわかんね…と一度思考停止して日々をただひたすらに生きていた。
俺たちの一家が過ごしているのは森の中にポツンとある人口100人ほどの小さな村だ。前世のような超高度情報社会などなく、機械もなく、木造建築に鉄器器具などなど。文明が恋しい。
そんな村が営む職は鉱山業?まぁ穴掘って鉱石売ってをしている村だ。そんな中で俺たちの一家は何でも屋をしていた。家を補強したり、直したり。たまには穴掘りの手伝いをしたり、宴だとお手伝いさんしたり、料理をしたり、子守りしたり色々だ。毎日が忙しい。
村のみんなもいい人達でウハハと明日の事を考えない楽しい楽しい日々を過ごす。今世でもお酒が飲めぬとじゃっかん不貞腐れながらも日々を楽しんでいた。もはや明日の心配なんて毛頭になかったし、転生のことなども頭になかった。
俺たちの一家は毎日馬車馬のように働いているし、母が完全に財布の口を締めているので資金面では大丈夫だと思う。特別本気の喧嘩が起こることはなく、家族の仲は素晴らしく仲睦まじい。最近では俺が親戚のおじいちゃんsだと思うようになるレベルで仲が良い。
村の全員と顔見知り程度には仲良くなった頃、事件は起こった。それは酒場で皿洗いのお手伝いをしていると聞こえてきた。
「おい、聞いたか?森にゴブリンが現れたらしいぞ」
「は?嘘だろ。いったい何か月ぶりだよ。はぁ……」
つい、唐突な異世界用語が耳に入り、洗っていた皿を落としパリンッと割ってしまった。「すみませんすみません」と店主に謝りながら、「一枚ぐらい大丈夫さ。だけど次は気を付けてくれよ」とありがたいお言葉をもらった。まぁこれはお手伝い、つまりタダ働きなので当然だ。これで弁償しろと言われたらさすがの俺もキレる。今まで積み上げてきた関係を捨て去って喧嘩へと発展させる。おばちゃん、俺、負ける気はあらへんで?
そう思いながら皿洗いの手を再び動かし始める。ちゃんと頭では別の事を考える。転生のこととか、前世の記憶とかを思い出す。だいたいは思い浮かべた所で、唐突な異世界用語について考える。
ゴブリン。ゴブリン目ゴブリン科ゴブリン属ゴブリン種(多分)。RPGでは序盤の雑魚、そのタイプは登場作品によって変わる。だが基本的には知能を持った邪悪な子供。人類悪。絶対悪。基本的に滅んで全く構わない種類の敵。
そんな存在が森に現れたらしい。いったい何か月ぶり、というセリフから定期的に滅ぼしているのか、攻めてくるのを押し返しているのだろうか。皿洗いの間に入手した話によると、村長の家で対策が話されるらしい。
だがそんなことはどうでもいい。
ゴブリン。すなわちモンスター。つまりレベルアップだ。やっと俺の異世界ライフが始まる!
そう思った俺は、魔法を使う練習から始めていた。流石にナイフを持って突撃はしたりしない。武器持って突撃するのは聖剣とかすごい魔剣を手に入れてからだ。そんな話どころか伝説も聞いた事がないのでそういうのではないだろう。
俺はいままでのお手伝いに費やしていた時間を特訓に費やす。ウーン、スーンと頑張る。とりあえずステータスボードなる何かがないことは確認している。少なくとも自分の力では確認できないと思う。
そうして数日。俺は魔法を得た。
風の魔法だ。他は使えなかった。衝撃波のように飛ばせば木を倒し、体の一部に纏わせれば、一時的に超人的な脚力や拳が使える。だがわかったのはその程度だ。魔法自体は一日目で使えた。ちょこっと中二的な詠唱をしてイメージをしたら使えた。イメージだけでは魔法は使えなかったし、詠唱も毎回変えても大まかな意味が、神への願い的であれば使えた。やはりよくわからない。
わかったのはこの程度だ。
この魔法とやらは一度に3度しか使えなかった。どんだけ頑張っても3度しか使えない。時間経過で回復するようで、頑張れは一日に6度ほど使えた。
クソ、なんだこれ。MP制にしては回数少なすぎじゃないのか?回数制だった?でも体力的に消耗したって感じがしない。いや、毎日毎日働いて、体力を消耗しすぎているから感じられない可能性がある。2日ぐらい休めないかな?両親にお願いしてみようか。
即断即決。しっかりと午前の仕事を終わらせ、昼食休憩の時に父に会いに行く。確か父は薪割りをしていたはずだ。母は…わすれた。たぶんどっかで料理しいるんだろうけども、場所がわからない。
そう思いながらお弁当を歩き食いしながら父の居場所へ向かう。しばらくして父が見えた。切り株に座って母が作った愛妻弁当を食べていた。それに近づいていき喋りだす。
「父さん。2日ぐらい休みたいんだけど、無理そ?」
そう言うと、父は動かしていた木のスプーンを落とし、口を半開きにしながらスープをこぼした。しばらくの間時間が止まったように、固まっていると突然動き出す。
弁当を切り株に置き、素早くこちらに向かってくる。そして俺を脇に抱きかかえ走り出す。その間、俺はまるで荷物のように揺れていた。俺は知っている、こうなった父は一度止まるまで止まらない。そのおかげで何度も母に怒られたことか。
なんで懲りないんだろうと思いながら揺られる。
そうしていたら父が突然、何処かの建物の扉を開けた。走って息が絶え絶えになった父が息を整えているのを、見つけた母が声を上げる。
「あら、お父さん。こんな時間に珍しいわね。弁当空だったかしら?」
そこは酒場だった。酒場で給仕をしていた。今日は酒場だったのか。その間、脇に抱えられた俺は、酒場の皆に手を振っておく。みんなの注目を浴びながらも、激しい呼吸をしていた父は、なんの前兆もなく叫ぶ。
「母さん!!息子が!!息子が!!ゲッホゲッホ」
「あんた…一旦落ち着きなさい。別にボレアースはどこもケガしていないでしょう?」
ちなみにボレアースとは俺の名前だ。
「息子が2日間休みたいって言ったんだ!!」
その父の言葉を聞くと、母はお盆を地面に落とした。目を大きく見引かれており、大変驚かれている。それは母だけではなく、周囲で酒を飲んで頬が真っ赤になったジジイ達も動きを止め、幾つかコップが落ち、酒がこぼれる音が聞こえる。がわがわと騒がしかった酒場が珍しく静かになった。