ゴブリン殺すべし   作:庭顔宅

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第二話

「息子が2日間休みたいって言ったんだ!!」

 

父のその言葉で、酒場は静まり返った。相変わらず俺は父の脇に抱えられたままだ。いい加減下ろしてほしい。

 

少しして、母は動き出した。父に、ではなく俺に近づき、おでこに手を当てる。

 

「熱は…無いみたいね」

 

そうつぶやいた後、すぐさま頬をむぎむぎと揉んだりひっぱたりつねったりしている。痛い。だが母は止まることなく、腕や足へと全身を撫でまわす。

 

「チッ、服を脱ぎなさい。その中も確認します」

 

「母さん、落ち着いて。俺、問題ない。それに人の目がある。落ち着いて」

 

「じゃ、裏行くわよ。あんた、早く連れてきなさい」

 

「わ、わかった」

 

母は酒場の裏へ走って向かう。それについていくように父が俺を抱えて早歩きで向かう。この親にしてこの子ありならぬ、この母にしてこの父あり、だ。

 

「母さん、大丈夫だから」

 

「それは私が判断します。黙りなさい」

 

血のつながった子だというのにこの言葉の鋭さ、ひどい。

 

あ~~れ~~と身ぐるみ剥がされて中の中、息子の息子まで確認された。うぅ…これじゃお嫁にいけない!実はこの間も父の脇に抱えられたままなのだ。いい加減下ろせ、父よ。

 

しばらくたって全体的に確認し終わった頃、俺は声をあげる。

 

「母さん、確認は終わった?」

 

「…本当に大丈夫?痛くない?辛くない?体調悪くない?」

 

わざわざ跪き、目と目を合わせ、俺の頬を揉みながら母が言う。

なぜ休んじゃダメ?と聞いただけでここまで心配されないといけないのか。これがわからない。

 

「大丈夫だよ。いつも通り、ぴんぴんしてる」

 

「本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

相変わらず俺は疑われている。今まで一回も嘘もついた事がないというのに……いや、俺の今世は数か月の人生だ。それ以前の記憶はない。赤ちゃんの俺、大丈夫だよな?聖人すぎず、聖人じゃなさすぎず、良い感じの性格の持ち主だよな?頼むよ?

 

「そういえばどうして休みたいの?」

 

「……」

 

どうしよう。考えてなかった。ここで正直魔法を使いたいって言ったら、危険です、やめなさい、禁止です、今後は私と一緒に働きなさい、と疑似監禁生活が始まるかもしれない。いやだ!俺は若くから訓練しておれつぇ~~したいの!

 

うーーん、どうしよう。

 

そう悩んでいると母から声がかかる。

 

「ボレアース、ご飯は食べた?」

 

「食べた」

 

そう言いながらうなずく。

 

「じゃ、豪華に行くわよ。店長!休憩!」

 

そう叫びながら、母は父から俺を奪い取り、脇に抱える。そして酒場に戻っていく。そして空いた席を陣取る。すぐ横の椅子に俺を置く。やっと地面だ。果たしていったい誰から奪……お願いして、繁忙期である昼でありながら満席な酒場から中央付近の席を陣取ったのか。子供が知る事じゃありません!!

 

「とりあえず果汁酒と肉、全種類持ってきて!おつまみもよろしく」

 

うへぇ、初手から豪華だ。過去に類を見ないぐらい豪華だ。

 

「じゃ兄姉呼んでくる」

 

給仕さんに注文する母を横目に、俺は姉者と兄者を呼んでくると、席を立ち上がろうとした。だが、一歩踏み出す前に母に捕まえられる。そして

 

「ボレアースが行かなくていいの。あなた、呼んできて」

 

「わかった」

 

そう言って父は出ていく。そして父が帰ってくる前に果汁酒と肉が席に持ってこられた。

 

「それじゃ乾杯」

 

「乾杯」

 

一足先に母と俺だけで乾杯が始まった。まぁ今日は休みではない。余裕のある時間はそこまでないだろう。

 

そうして俺のお気に入りであるブドウの果汁酒を飲む。それなりにある果汁酒の中で一番ブドウが好き。ちなみにあとはオレンジとリンゴがある。

 

「それでどうしたのよ。ただ休みたいの?」

 

「うん」

 

俺は決めた。原っぱで昼間っから熟睡したい。2日間。ってことにする。……無理あるかな?

 

「別にいいけど、突然どうしたのよ、珍しい。あ、今週分の仕事はできる?可能なら来週から2週間休みなさい」

 

…2週間って、ちょっと増えすぎだよ。

 

「母さん、2週間じゃなくて2日だよ。あと仕事はできるよ。来週から2日休みでいい?」

 

「なによ、ケチ臭い。ぱーーっと休んじゃいなさいよ」

 

ちょっと豪快すぎるよ母。もしかして果汁酒で酔った?おかしい、母は酒に強いはずなのに、果汁酒程度で酔うはずがない!!さては偽物だな!!

 

「別にいいよ、2日で」

 

「もう…ボレアースは働きすぎなのよ。姉兄たちを見習いなさいよ。あんたの年頃は毎日遊び通していたわよ」

 

「うーーん…べつにいいかな」

 

正直、精神が子供じゃないので遊ぶのが楽しいとは思わない。働いている方が楽しい。前世より楽だし、何でも屋としていろんな仕事があるので、職場体験みたいで楽しい。子守りも案外楽しい。慣れること慣れたらめっちゃ楽でもあるし。

 

「ふーーん……で、最後に休んだのいつよ?聞いてるわよ。毎日毎日ひゅらっと現れてお手伝いしているらしいわね。おかげでいつの間にかお金が増える」

 

へぇーー……もしかしてお手伝いがお手伝いじゃない?お手伝いで給料が発生している?…え?…え?

 

どう反応していいのかわからなかった俺は、果汁酒を飲みごまかす。

 

うへぇ~~~…昼間から飲む果汁酒はうめぇ~~~

 

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