ゴブリン殺すべし   作:庭顔宅

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第三話

果汁酒をごくごくと飲んでいるとあっという間に空になった。だけど喉も渇いていないし、2杯目は兄姉たちが来てから一緒に注文しよう。

 

「まぁ、明日明後日は適当に休んじゃいなさい」

 

「母さん、休むのは一週間後ですよ」

 

「いいじゃない。別に明日でも一週間でも」

 

これは甘いというやつなのか?それとも酔っているのか?わからない。果汁酒うめ……空だった…かなしい。

 

悲しんでいると急に違和感を覚える。なんだ?と周囲を見渡すと、気が付いた。騒がしいはずの酒場が、先ほどのまま静かだということに。

 

だから何だという話だが。

 

俺は口に酒を持っていき、空だということに気が付き悲しむ。そんな時だった。母さんは肉をつまむ。だけどボレアースが肉を食べていないという事実に気が付き、俺の口に肉を突っ込んだ。食べます。自分で食べます。食べれます。食べさせてください。

 

そんな時だった。静かな酒場からこんな声が聞こえてきた。

 

「それにしても休むのか、ボレアースが」

「あのボレアースが?仕事がなくてもお手伝いしにくるのに」

「なんだかんだ毎日働いているあの疲れ知らずのボレアースが?」

「赤ん坊のあやし方が上手すぎてロリジジと噂されてるボレアースが?」

「俺、34歳だって聞いた事あるぞ」

「お前ら…赤ん坊の頃からずっと見守ってきただろ…」

「そういえばここ2週間くらい手伝いに来てくれなかったよな?」

「体調悪いのか?」

「…おい、薬を誰か持っていないか?」

「俺、薬屋行ってくる」

「ちゃんと毒消しも買って来いよ!傷薬も買ってこい!いや全種類買ってこい、私が払ったる」

「あ?お前に払われるほど金に困ってねぇよ、ばぁか!!」

 

そうして酒場の静けさが消え去った。あと薬はいら…いや、母さんにあげてね。薬箱の予備の薬が増える。いぇーい!そう思い母の方を見ると、母の動きが止まっていた。そしてゆっくりと果汁酒が入ったコップを机に置いた。そして

 

「二週間…」

 

そうつぶやいた。少しして更につぶやく。

 

「たしかゴブリンの話が村に広まったのも二週間前だったか…」

 

その言葉に、ぴくッと痺れるように俺の肉を摘まむ動きが止まった。それと同時に酒場がまた静まり返る。今度は先ほど以上に視線を感じた。俺はすぐに肉を摘まむ手を動かした。だが母はそれを見逃さなかった。

 

「ボ レ ア ー ー ス?もしかしてゴブリンとか倒しに行ったりしないよな?」

 

「しないしない」

 

いつもと同じ様子でそういった。

流石の俺もそんな無謀なことしないって。

 

「……嘘は…いってないみたいね。…本当にゴブリンとか関係ないわよね?」

 

「…しないよ。ちょっと木の日陰でお昼寝してみたいなーーーって思っただけで」

 

「嘘はやめなさい。本当の事を話しなさい」

 

うへぇ~~~ばれたぁ~~~

 

母はボレアースの持ち上げ、自分の膝の上に乗せる。そして頬を掴み、至近距離で強制的に目と目を合わせられる。

 

どうしようどうしようと悩むたびに母の目が突き刺すようにこちらを見ている。ボレアースは諦めて話すことにした。

 

「…魔法の練習をしたいんだ」

 

「…魔法?魔法って何かしら?」

 

「え?」

 

ボレアースは目を真ん丸にしながら驚く。そしてその様子に母も驚く。

 

魔法がない?でも奇跡みたいな超常現象を起こせる。…つまり魔術という名前とか?でもそれなら魔繋がりでなんとなくわかりそうだけど。なら奇跡?…わからない。てか魔法が回数制限性なのも意味がわからない。

 

ボレアースは少し考えたが、何もわからないので概念的に話すことにした。

 

「こう、力を籠めたらブフォーーって風が出るやつ?」

 

「力?風?…それ、やって見せてくれないかしら」

 

あ、それわかりやすくていいね。

 

「ここじゃ危ないよ」

 

「じゃ、外行きましょうか」

 

「うん」

 

そうして母に脇に抱えられながら外に行く。…しばらくはこの運搬方法が続くのだろうか?って、俺は荷物かよ。

 

母に運ばれながら酒場の外へ行く。すると酒場を出てからすぐに父たちが戻ってきた。俺は父姉兄たちに手を振っておく。

 

「あれ?母さんどうしたの?」

 

「一つ空いている席があるはずよ、そこで食べなさい」

 

「母さんたちはどこにいくの?」

 

「ボレアースが力を籠めたらブフォーーって風が出るやつ?ができるって言うから、それを見に行くのよ」

 

「なにそれ?僕も見たいな」

 

「私も」

 

「父さんも!」

 

「じゃ行きましょ」

 

そういうことで、なぜか家族そろって俺の魔法を見ることになった。なんか緊張する。

 

そうして先ほど父が薪割りをしていた場所に来た。ボレアースが母から解放され、久しぶりに地面に足をつける。

 

「それじゃあの木にブフォーーってやつ、やってみせてよ」

 

母は適当に一本の木を指定した。

 

「わかった」

 

俺はその気に少し近づく。どうやってブフォーしようかと悩んだが、王道に衝撃波にしようと決めた。ボレアースは落ち着いた様子で片手を前に出す、そして親指と人差し指を伸ばし銃の形にする。そして言う。

 

「風の神よ、力を示せ」

 

そう言うと、腕の方向に目に見えるほど乱れうごめく風が吹いていく。そして木に当たると同時に、まるで木の板が折れるようなボキッとした音と同時に、木が地面に吹き飛ばされた。

 

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