「風の神よ、力を示せ」
ボレアースがそうつぶやくと、腕に目に見えるほど乱れうごめく風が、腕を伸ばしている方向へ吹いていく。木に当たると同時に、まるで木の板が折れるようなボキッとした音と同時に、木が地面に吹き飛ばされた。
うむ、威力は前と変わっていない。
意味もなく安心した俺は家族の方を見る。すると驚いたことに家族たちは口を開けて間抜けな姿だった。しばらくしても動きが無いので不安になってくる。もしかしてこの力は忌的な何かだったのだろうか。うへぇ……どうしよう。…ま、いっか。この魔法があったら、一瞬の隙さえあれば逃げれるだろう。今日は後2度使える。うむ、戦争だ。今までありがとよ家族達。
そう覚悟を決めたところだった。
「す、すげぇ……」
やっと動きがあった。兄者が声を出した。その反応を見た感じ、悪って感じはしない。さすがに騙すってことないだろう。この手の物が嫌われるのって宗教的にじゃなかったっけ?わかんね。
父が近寄ってくる。そして両手で脇を掴み持ち上げる。たかいたかーいだ。
「すごいな!呪文か!?奇跡か!?さっすが俺の息子だぜ!!」
そう一人で盛り上がる。残りの三人は静かに驚いているって感じだ。
「父さん、下ろして」
「お、そうだな。だがなぁ…すごいなぁ」
父は、俺の言葉に大人しく下ろす。だが同時に頭をガシガシと撫ではじめる。正直うざい。
そんな中、母が動く。いつもに増してまじめな顔だった。
「…ボレアース、いったいいつ覚えたの?」
その言葉に父の腕が離れていく。
「13日前かな。使おうと思ったら使えた」
「そう…冒険者になりたいの?」
冒険者。やっぱりあるんだ。それなら答えは一つだ。
「うん」
やっぱりあるならなりたい。いや世界を冒険してみたい。せっかく転生したのだ。こんなろくに娯楽もない世界。前世ではできなかったことができるのだ。もっと前世ではできなかったことをやりたい。
「休みの間、何をするつもりだったの」
「この力でどんなことができるのか調べる」
「他にも何かできるの?」
母が驚きながら言う。
「すごく高く跳んだり、早く動いたりならできる」
「そう。今すぐにでも冒険者になりたい?」
「…別に、かな。いつかなりたいとは思うけど、今すぐって訳ではないかな」
「なら12になるまでここにいる約束しなさい。それ以上は何も言わないわよ」
「わかった。……俺って今何歳?」
「まったく、ボレアースときたら…今は9よ」
え?思ってたより若い。あと3年か?長いとも短いとも言えない絶妙な時間。ま、満足が限界突破するまで職場体験しましょか。
しばらく更新が途絶えます。
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