スケット団の幽霊担当   作:ギンティア

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前回の続きとなってます


ペンキ仮面(後編)

 

『ぎゃゃゃぁぁぁ!!血まみれぇぇ!!』

 

「杉原!?何があった!?……ん?」

 

ボッスンとヒメコの耳が痛くなる程の絶叫を聴きながら杉原に近づいた時、血液とは違う鼻を刺激するような匂いが漂ってきた。

 

「ち……違います!これはペンキです!」

 

それを聞いてボッスンたちは一度安心するもペンキを掛けられたという異常事態に気付き何があったかを杉原に質問し、杉原は自分がされた事の顛末を話し始めた。

 

杉原によると、裏庭に居る池の鯉を眺めている時に突然体育館の2階からペンキをかけられ、振り返り上を見ると仮面を被った男が立ち去って行った……とのことだ。

 

「仮面!?そんなもん被っとったんか!」

 

「仮面を被ってペンキをかけて逃げる……ペンキ仮面か」

 

「仮面被ってたんだったら誰が犯人か見つけるのは難しいな」

 

「ちょお待っとき!そのペンキ仮面シバいてくるわ」

 

ヒメコが鬼の形相でホッケースティックを持って部室から出ようとしていた。

 

「うん……話聞いてた!?」

 

「落ち着けヒメコ、闇雲に探しても仕方ない」

 

[しかし転校してきたばかりの彼が恨みを買うとも思えん。もし無差別の犯行なら今後も被害者が出る可能性も考えられる]

 

「ボクもそう思って裏庭の警戒をした方が良いんじゃないかって……こういう時こそスケット団に依頼するべきだと思って」

 

「おっ!よく分かってんな!転校生!」

 

「なら明日から聞き込み開始だな。早いとこ解決しないと」

 

「その前にひとつお願いが!」

 

「何だ?」

 

「ボクがペンキをかけられたのは伏せて下さい。転校初日にこんなことがあったなんて知られたくないんです」

 

まぁそりゃそうだな。スケット団に来た理由はそれもあるだろう。先生に相談するにしても、そこまで配慮してくれないだろうし時間も掛かる。

 

「極秘捜査か……それは俺達の十八番だ。ペンキのことは伏せて探し出してやるよ。任せとけ!よしっお前ら!明日からしょうしゃきゃ……捜査開始だ!」

 

「初っぱなから噛み噛みじゃねぇか」

 

今日はもう活動時間が遅くなるため、明日からペンキ仮面事件の捜査を行うこととなった。

 

 

次の日の放課後、杉原も同行しての聞き込み調査を開始した。

 

「俺達は裏庭周辺を聞き込みしてくる」

 

「じゃあオレは体育館で活動してたと思われるやつから話聞いてくる」

 

「ほな、何かあったら連絡しぃや。アタシがブッチブチにしたるから」

 

「了解……って怖っ!?ブッチブチって何!?」

 

ヒメコ程では無いがこれでも毎日鍛えてるし、余程のことがない限り大丈夫のはずだ。

 

 

そんじゃ予定通り体育館に居るやつらに聞き込みするか。

 

そこにちょうど休憩に入ったと思われるバスケ部が出てきて、話を聞くことにした。

 

「昨日の放課後?ずっとバスケの練習してたからなぁ」

 

「何でも良いんです。気になったことはありませんでした?」

 

「ん?今、何でもってゲフンゲフン……う~ん……あ、そういや男子生徒が3人話してたな」

 

「男子生徒?名前は分かりますか?」

 

何か言おうとしてたみたいだが無視だ、無視。

 

「確か……城ヶ崎だったかな。後ろ姿だったけど、ガタイ良いのとTシャツで分かった。よく裏庭で見かけるからな」

 

城ヶ崎って葉鶏頭事件の犯人だったな。あいつは落書きをペンキで消すように言われていた。確かに体育館の裏の落書きはペンキで上から塗られていた。

恐らく一方のもう一人はその共犯者だろう。だが、あと1人は誰だ?

 

「あとの2人は誰でした?」

 

「城ヶ崎の隣と正面に居たんだけど、誰かは分からないな。正面に居た人は見たことなかったな。メガネを掛けてたってことくらいしか……」

 

「眼鏡か……協力ありがとうございました」

 

なるほど……今のところ情報は『城ヶ崎たちが関係していること』と『近くにメガネを掛けたやつが居ること』位で正直これだけの情報じゃ不充分だ。

 

1番怪しいのはペンキを持っていた城ヶ崎だが、もし城ヶ崎だったとしても今の情報だけだと白を切られる。もっと絞り込める情報が必要だな。

 

「ん?……何やってんだ。あいつら」

 

バスケ部員から聞き込みを終え、移動しようとした時少し離れた所に城ヶ崎たち……とその後ろにアフロを被ったボッスンとヒメコが隠れていた。

 

何考えてるのか知らんが、少し城ヶ崎から話を聞いてみるか。

 

「よう、城ヶ崎」

 

「おめぇスケット団の……何の用だよ」

 

城ヶ崎は明らかに不機嫌な様子だった。まぁそれも仕方ないだろう。オレたちのせいで落書きのことがバレて罰を受けたんだから。

 

「ここら辺で妙な噂が立ってるらしいが、何か知らないか?」

 

「妙な噂だぁ?そんなやつ知らねぇよ」

 

「……そうか、ところで体育館の裏の落書きはちゃんと消したみたいだな」

 

「あぁ……ったく面倒なことさせやがって」

 

「やったことがやったことだから仕方ない」

 

「もう用がないなら行くからな」

 

「おう、足止めして悪かった」

 

よし、城ヶ崎と話してほぼこっちの情報は固まったな。そろそろボッスンたちと合流するか。さっきの所に居るだろう。

 

ボッスンたちが隠れていた場所に行くと、ボッスンの近くに地面にペンキが広がっていた。

幸いボッスンはペンキに掛かっていないようだ。

 

「この地面のペンキ……まさかペンキ仮面か?」

 

「あぁさっきペンキ仮面が出てきた」

 

「やっぱここが出没地点なんだな」

 

「浮気性のアホのせいで逃がしてもうたけどな」

 

「それでゼロの方は何か分かったか?」

 

「まぁな、そういや杉原は?」

 

ボッスンたちと一緒に居たはずの杉原が見当たらなかった。

 

「城ヶ崎の尾行しようとした時に足手まといになりそうっつって部室に戻った。せっかく尾行術を伝授してやろうと思ったのによ」

 

「アンタの尾行技術とか伝授されん方がええやろ。茂みにアフロで隠れるとか自分から見つけてくださいって言うとるもんや」

 

「まぁそんなことよりこっちで分かったことだが、城ヶ崎が関わってることは確定だな」

 

「確定なんか」

 

「あぁさっき城ヶ崎と話した時ペンキ仮面のことを伏せて話したのにやつは『そんなやつ』と人と断定していた」

 

「確かに城ヶ崎が関わってる証拠のはそれで十分だな」

 

「肝心のペンキ仮面は誰なんや。さっき城ヶ崎と話したんやったら城ヶ崎はペンキ仮面とちゃうやろ」

 

「問題はそこなんだよな。城ヶ崎がペンキ仮面じゃないとしたら城ヶ崎の関係者か?」

 

「城ヶ崎についてはスイッチに調べさせてるからそれ次第だ」

 

「ほな1回部室に戻ろか」

 

「そうだな」

 

 

部室に戻る途中でスイッチと合流し、杉原を加えた5人で報告会をすることにした。

 

「じゃ報告会すっか。まずゼロから」

 

「あいよ。体育館のバスケ部員からの証言だ。まずこれに城ヶ崎が関係している可能性が高い。やつは昨日落書きを消すように言われていた。次に、これは城ヶ崎が犯人という前提だが、仲間は3人で1人は城ヶ崎と落書きしたやつだと思うが、もう1人はメガネを掛けているらしいが誰か分かっていない。情報はこれくらいだ」

 

「そうか、俺たちの所にペンキ仮面が出てきた。逃げられたから捕まえられなかったけどな。スイッチの方はどうだ?」

 

[うむ、城ヶ崎についてだが小学生の頃、標的にいたずらを仕掛けて逃げるという遊びが流行ったことが問題になっていたらしい]

 

小学生にありがちな一線を超えた悪ふざけだな。標的にいたずらを仕掛けて逃げる……か。今回のペンキ仮面のやっていることとかなり似てるな。

 

「そうか。ご苦労スイッチ」

 

「どうや?何か分かったか」

 

「いや……もうちょっとで繋がりそうだ。それを繋げる」

 

ボッスンはそう言って、頭のゴーグルに手をかけた。来たな、ボッスンの伝家の宝刀。

 

「繋げるって……」

 

[今は話し掛けない方が良い]

 

「集中モード、ボッスンはゴーグル付けると集中ごっつ上がんねん。めっちゃ疲れるらしいけど、こうなった時のボッスンはいつもよりスゴいで」

 

ボッスンはゴーグルを装着し集中モードに入った。この空気……神経がピリッとしてくる感覚が伝わってくる。

 

 

「…………ぶはぁっ!!ごほっ!あ"ぁ"~疲れた!」

 

「大丈夫かいな!毎回心配なるんやけど!」

 

終わったか……相変わらず反動がスゴいな。さて、ボッスンはどんな推理したんだ?

 

「ふぅ……じゃ作戦を指示する……全員帰ってよし!」

 

「…………?どういうことだ?ボッスン」

 

「囮調査だ。人数が多いとペンキ仮面の標的になれねぇ。だから犯人が行動を起こしてきたら俺が捕まえる」

 

「一人で大丈夫なん?」

 

「あぁ任せとけ」

 

 

放課後、オレは塀の茂みから見下ろしていた。ここからならボッスンの位置がよく見える。

 

あの後本当の指示とボッスンの推理がメールで送られてきた。まぁ犯人もボッスンの推理でほぼ確定だろう。さて、あっちはまかせてオレはオレの仕事をするかね。

 

ボッスンからの指示は、近くで隠れてるであろう今回の事件を指示した城ヶ崎たちを探すことだった。

裏庭を見渡せる場所は限られる。塀の上の茂みや倉庫とかだ。

 

茂みにはオレが居るから選択肢から消えることから実質1択に絞られたな。

 

塀から降りると倉庫から物音が聞こえてきた。

 

……あそこか。潜伏する時は物音を立てるなど『私はここに居る』と言ってるようなものだ。

 

裏庭の倉庫に近付いて壁に耳を当て、中の様子を伺った。すると中から声が聞こえてきた。

 

「杉原のやろう、失敗しないだろうな」

 

「どうだろうね。でも、転校してきたのがあの杉原とはね」

 

ボッスンに城ヶ崎の居場所をメールで伝え『その場で待機。突入はこっちから合図する』と返ってきた。

 

「まったくだ。あの時とは違って自分の立場が分かったようだがな。お、仕掛けた……ってあれ?あいつ捕まってんじゃねぇかよ」

 

作戦は無事に成功したみたいだな。ボッスンに仕掛けられた小型の通信機からボッスンの推理がイヤホンを通して聞こえてきた。

 

ボッスンの推理は、ペンキ仮面の正体は杉原、指示したのがここに隠れてる城ヶ崎。杉原は城ヶ崎との関係を誤魔化そうとしたが、スイッチから杉原が杉原と城ヶ崎が小学生の頃の同級生であったことを言われ誤魔化しきれないと思ったのか白状した。

 

杉原は小学生の頃、例のイタズラを城ヶ崎から指示されたがそれを拒否した。しかし、それがきっかけで城ヶ崎からのイジメが始まった。

 

小学校を卒業したことでここから離れたものの、再度この地域に戻り開盟学園へ転校して、心気一転と思った矢先城ヶ崎と再会してしまった。

 

そして城ヶ崎からスケット団の誰かにペンキを掛けろと脅され、イジメを受けていたことから断ることが出来ず、自分からペンキを被ったとのことだった。

 

ペンキを被ったのは被害者になることで容疑者の候補から外れるため。しかし転校生のためか学校の事情に詳しくないのが災いして、もう池に鯉が居ないはずなのに『池の鯉を見ていた時』と来た時の証言に矛盾が生まれてしまった。

 

「何で城ヶ崎の言いなりなんかになったんや?そんなん逆らったったらええねん!」

 

「ダメなんですよ!ボクみたいな平凡な人間が平穏に過ごすには抵抗しちゃダメなんです!立ち向かったちゃ……ダメなんですよ……」

 

確かに杉原はヒメコのように腕っぷしがあるわけじゃない。城ヶ崎のようなやつに抵抗しよう物なら、無事じゃ済まないだろう。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

「うわっ……あの赤帽子のスケット団のやつ自分でペンキ被りやがった」

 

「何やってんだろうね。バカなんじゃない?」

 

ボッスンは杉原からペンキを奪い取り、自分でペンキを頭から被った。それを城ヶ崎たちはバカにするような声で薄笑いながら話していた。

 

「立ち向かえなんてそんなこと言わねぇよ。だからこんなことまでしたんだろ……だったら言えよ」

 

「……え?」

 

「ペンキぐらいなら被ってやるっつってんだ!友達が困ってるならそれを助けるのが友達ってもんだろ!」

 

「ボッスンはホンマにアホやけど、人を助けたいって気持ちはホンマ物なんや」

 

「ボクは……友達になんてことをしたんだ……!」

 

「心気一転するなら泣いてる暇なんかねぇぞ。友達やら部活やら、これから色々新しいもんが待ってんだ」

 

「……はいっ!!」

 

「さてと、そろそろ終いにするか。なぁ城ヶ崎」

 

そのボッスンの言葉で倉庫の扉にストッパーを設置し開けられないようにした。

 

「何でバレてんだよ!くそっ!開かねぇ!」

 

「悪いな。ちょっと細工させてもらった」

 

「おまえの仕業か!おい!開けやがれ!」

 

「城~ヶ~崎~!!」

 

扉の前で話をしている間にヒメコがこっちに全速力で向かってきていた。

 

うわっ!?ヒメコがこっちにもうダッシュして来てるし!やっぱりあいつ猪か何かだろ!

 

そのままヒメコは倉庫の扉を蹴破り、倉庫の中には城ヶ崎とその他生徒1名が居た。

 

「ひぃぃ!鬼姫、何でここに!?」

 

「自分だけ安全なとこに居ると思たら大間違いやぞ!」

 

「ゼロに裏庭周辺を探らせてたんだ。お前らが哲平にやらせようとしてたってのは分かってんだ。観念しやがれ!」

 

「お、おい……こんなのただの冗談だろ?マ、マジになんなよ……」

 

「やる方はいつも冗談……だけど、やられる方はいつも本気だ!」

 

「覚悟しぃや!!」

 

「ク、クソォ!」

 

城ヶ崎は近くにあった棒を構えるが、ヒメコの持つサイクロンの前には歯が立たなかった。しかし、もうひとりの生徒がヒメコにボコられている間に、ヒメコの脇を城ヶ崎がすり抜けた。

 

「待てや!城ヶ崎!」

 

「どぉけぇぇ!!」

 

城ヶ崎は勢いに任せてオレに向かって殴りかかってきた。まるで闘牛のようだ。いや闘牛と言っては闘牛に失礼か。

 

「どわっ!!」

 

冷静さを欠いたやつの動きを読むのは簡単で、横に避けて足を引っ掻けるだけで豪快にスッ転んだ。

 

「どぉりゃぁぁ!!」

 

「ぎゃゃぁぁぁ!!」

 

追い付いたヒメコの追撃により城ヶ崎も撃沈した。これに懲りたらもう悪さをしないだろう。

 

 

「おはよう、ゼロ」

 

「おう、おはよう。杉原」

 

あの騒動の翌日の朝、教室で杉原に会ったが昨日会ったときよりもスッキリしているように見えた。心の痼が取れたんだろう。

 

「そうだ、ゼロ。ボク、バスケ部に入ろうと思うんだ」

 

「バスケ部に?いきなりだな」

 

「前からバスケに興味があったんだ。それに……」

 

「それに?」

 

「好きなことを思いきりやろうって決めたんだ」

 

「そうか。頑張ってな、杉原」

 

2年の途中から入部するのは大変だろうけど、杉原はヤル気満々だし努力次第で実を結ぶだろうな。

 

 

「あぁ~!!待て待てスイッチ!!」

 

放課後、部室に着くと、先に行っていたボッスンたちが騒いでいた。

 

「おぉ!ゼロ!来て早々だが依頼だ!昨日の裏庭に行くぞぉ!」

 

「お、おう」

 

めちゃくちゃ慌ててんな。まぁ良いや、それより依頼だな。

 

 

[悪いが俺は16時半に帰らせてもらう。先約があるのでな]

 

「アニメ観るためやろ!絶対に返さへんからな!!」

 

「あ~俺ちょっと腹痛くなってきたかも……」

 

「嘘の典型過ぎるぞ。さっき饅頭食ってたの知ってるからな」

 

「てか暴れたのお前らだろ。俺ら関係無くね?」

 

「倉庫で暴れたのはヒメコな。オレは細工をしただけだ」

 

「し、仕事やからしゃーないやろ?」

 

ぐだぐだとそんなことをやっていると裏庭倉庫に着いた。

 

「依頼受けた者です」

 

「やぁ悪いね……えぇっと」

 

『スケット団ッス!!』

 

こうしてオレたちは依頼人の依頼解決のため依頼を受け続けている。

 




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