仮面に涙を隠すのは間違っているだろうか──ダンまち×仮面ライダー── 作:シギュ
【──我等、絶望を忘れず。】
──とある結社の理念より抜粋。
風が吹いていた。
暴風が吹き寄せていた。
荒れ狂う竜巻が幾本も天に喰らい付いていた。
南方・デダインの風向きは過去最悪。
吹き荒れる強風が大地を根こそぎ抉り取り吹き飛ばして行く。
木々も岩も紙屑のように吹き飛び──、──
風が通り過ぎる大地はどす黒い『猛毒』に犯され、ひび割れては一塊の断片を生み出し、砕け散っては抱えていた土壌・なけなしの植生の全てを手放して、溶ける程の毒に塵より小さく分解される。
デダインの風向きが過去最悪ならば、デダインの天候も過去最悪であった。
並みの災害が裸足で逃げ出す程の『毒の嵐』。
生物が生存出来る余地など欠片も無かった。
「…………」
──猛毒にも屈しない強き生物以外は。
陽光遮られ薄暗い天地の下、二本の足で人が立つ。
「変、身!」
暴風にも負けぬ力強き声と共に
生体改造によって体中に張り巡らされた第二循環系の隅々に空気が行き渡り、過剰流入した酸素がその身を変え『仮面』を呼び起こす。
──その姿を異形の物へと変えてゆく。
「はあぁぁぁァァァァァ……!』
手足は筋張り、角質の棘と外骨格で覆われる。
のけ反り、俯き、胴体の
顔から複眼と砕顎、触角を備えた硬質な『仮面』が浮かび上がり、やがて頭部全てを覆った。
『フゥウウウ……』
そうして出来上がった姿は、まさしく『人型の
『
複眼貫く視線の先に
『ハァアアアアアアァア!』
吹き荒ぶ風よりなお速く、大地を蹴り付け黒緑の影となって驀進す。
山にも劣らない巨体をその細部まで捉えられる距離まで瞬く間に詰め寄った異形は──、──『
『アアアアアァァァァァ!』
巨体の上空、
咄嗟の振り向きすら間に合わない速度と回転で突っ込み、巨体の後頭部へと轟音と共に蹴りを叩き込んだ。
『オオオオオォォォ……!』
『フゥーッ……』
頭上から殴られ、崩れ落ちる巨体を尻目に異形は大地へと降り立った。
周囲には巨体と対峙していた戦士達──否、『冒険者』達が進み出る。
「機を逃すな、畳み掛けろ!」
「「「「「応!」」」」」
彼ら彼女らは
崩れ落ちた巨体に猛烈な速度で取り付き、凄まじいまでの攻撃を叩き込む。
大斬閃が刻まれる。驟雨の如き槍撃が襲い掛かる。ただの拳が巨鱗を砕き、巨体を揺るがす。
そうして
大炎嘯が、雷霆が、轟音が、容赦なく巨体に突き刺さり苛ます。
『すまない、遅くなった!』
「これから『
当然、異形も立ち尽くしている訳が無い。
重鎧に身を包み、大剣を携えた戦士と共に更なる追撃を見舞うべく巨体に向けて発走していた。
ここにその姿形を気にする者など居ない。
居るのはただ目前の大災厄──古に
「『オオオオオオォォォォォ!』」
今、この時ばかりは『因縁』の無い戦いの為に──。
溢れんばかりの戦意の中、
●
『なんでお前がそこに居る、ザルド!』
炎に飲まれる街の中、聞き覚えのある叫び声に重鎧の戦士は立ち止まった。
此処は『迷宮都市オラリオ』。
地上を蹂躙した
地上の
「…………お前か、ルリ」
『質問に答えろザルド!』
──
さにあらん、重鎧に身を包み大剣を携えしその戦士も
それも並みの冒険者が千人束になっても敵わない最上位の
どこからか届いた昔馴染みの声の出所を探ろうとしなければ、足を止める事すらなかっただろう。
「……その姿、復帰は成功したか。Lv.5……、いやLv.6は有るか」
『
そして焼け崩れた建物の影から声の主が姿を現す。
その姿はかつて重鎧の戦士やその仲間と共に戦った
棘や角質など生物的な要素が強かった外骨格は、滑らかな表面を見せる人造の
細長い印象を見せた手足も、緩く前傾していた胴体もヒューマンと変わらない体型に。
頭部の『仮面』もかつての異形よりは整えられた形となり──、──悲痛・動揺・憤怒のいずれをも含んだ
『……お前が
「…………」
そして、啜り泣くような声を漏らした。
『いや違う、
「…………」
事実、仮面の者は
かつての戦いで負った毒に蝕まれる友の痛々しさに。
仲間を失って尚、戦場に臨む友の痛々しさに。
『……そのお前がなんでコドクと同じ道に走った!あの言葉は嘘だったのか⁈』
かつて
「……お前の理想は否定しない。ただ
『……!……そうか、ならその性根、叩きのめしてやるだけだ!』
「…………」
『
踏み締める脚、溜められる力の大きさに重鎧の戦士は大鉄塊の如き大剣を構え直す。
『……ハアッ!』
「……!」
連続画の間を抜き去ったかの様に、
「……
『……私はそう柔じゃない、
重鎧の戦士は重量をも利用した押し込みが
「そうだったな……!」
『……!』
押し込む力の緩み、その
並の戦士では
「お前とも長く顔を合わせていなかった……、当然の事さえ忘却する時間としては十分か……!」
『…………
「…………」
戦闘の高揚にその身を滾らせる、
その正体──、──『目の前の男は自分にぶつける
──いかなる状況になろうと素早く対応が出来るように。
数々の戦いで
「……俺も呆けたか。お前の聡ささえ忘れるとはな」
だがしかし、
「だが十分だ、
『…………くあぁっ⁉︎』
不可視の槌のように仮面の者を吹き飛ばしたのは
それは二つと無い筈の
仮面の者を衝撃と驚愕が襲う。
『ぐうっ……⁉︎』
『
巻き上がる粉塵の向こうから現れるその姿は『静寂』の彼女とは似ても似つかない。
布切れですら重いと言った彼女が鎧など身に纏う筈が無い。
自分の足音すら煩わしいと言った彼女にしては歩みが雑過ぎる。
──何より感じる気配は
『コドクっ‼︎』
【特異形質移植型改造人類】。
後に『大抗争』と呼ばれる戦禍の中、裏切り者たる『黒』の
●
炎に巻かれる
『ザルド、目を覚ませ!
『無茶を、言うな、ルリ……。俺が、弱かった、……けの事だ……』
『
『その、心。陰らせる、なよ……?』
『ザルド⁉︎ザルドぉー!』
間に合わなかった
叫び声で目を覚ます。
「……」
開いた視界に映るのは街道臨む木立の緑。
身体に感じるのはハンモックの柔さとそよ風の涼やかさ。
瓦礫が飾る
「……あそこね」
己を目覚めさせた戦闘音は悲鳴を上げた誰かが劣勢である事を示していた。
飛び降りながらハンモックを外し、木陰に止めていた二輪の鉄騎に跨る。
ヘルメットを被りながら荷物を突っ込み、動力を起動させる。
動力とは即ち足回りの装置と接続出来る己の吸気機構である。
活力を吹き込まれた鉄騎はたちまち目覚め、その
「距離二千、方角十、経路に問題無し」
加速、加速、加速、加速。
目的地を冷徹に捉える主人に操られる鉄騎は、獣道とすら認識出来ない稜線を軽々と踏破して行く。
稜線から街道へ、その走りが駆け抜ける時一つの声が上がる!
「変身!」
ベルトのバックルが開き、風を呼び込む。
起動したベルトによって、服装の全てが変わる。
黒緑で現れた
──そして、掛け声はその身に継ぎ合わされし力を呼び覚ます。
力は其処に、心は内に、魂の全てを滾らせて!
最後に光が巡った時、鉄騎に跨るは
その複眼にて彼方を見据える仮面の戦士。
情熱秘めた、戦士の名こそ──
──『仮面ライダー』である!
:ルリ
…遥か古代から続く秘密結社・コドクに改造されバッタの力を組み込まれた『改造人類』。
悪の道に走る他の『改造人類』と戦い続け、かつての『
様々な経験の末、数年前から『仮面ライダー』と名乗っている。
変身すると高揚で口調が勇ましくなってしまう。
人物モデルはもちろんシン・仮面ライダーの緑川ルリ子。
現在の変身した姿はほぼ仮面ライダー一号。
【──我等、彼の絶望を忘れず。】
【──其を討つに如何な手法も厭わず。】
【──唯、
【──我等、絶望を忘れず。】
──秘密結社コドク理念全文。
:『秘密結社コドク』
…神が降臨する以前の古代から続く秘密結社。
人為的手法による人体改造によって『改造人類』を生み出している。
彼らが生み出した改造人類も便宜上『コドク』と呼ばれる。