イキったウマ娘がトレーナーに返り討ちにされるもトレーナーは最初から担当バにゾッコンなので最終的にドローに落ち着く話   作:ゆーりふり

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日間ランキング入りしてました。
誤字報告とか評価とか感想ありがとナス!
私の書く文章に一つも誤字がない確率は距離適性S脚質適正Sサポカ全完走達成するよりも低いからね。本当に感謝してるんだよね。


グラスワンダー

 グラスワンダーは和を愛している。

 和の文化を、和の装いを、和の味を、和の心を。

 なぜかと問われれば、両親の影響を受けていつの間にかとしか言えない。

 アメリカで生まれ、アメリカで育ち、全く異なるが故なのか"和"に心惹かれた。

 

 

 

 グラスワンダーは心の根っこにマグマの如き闘争心を宿してこそいるが、基本的には穏やかで人当たりのよいウマ娘だ。相手が余程の礼儀知らずでもなければ衝突することはない。そんな彼女が信頼するトレーナーに対して不貞腐れているという状況は非常に稀なものであった。

 

「グラス、そんなに頬を膨らませてどうしたんデスかー? まるでお饅頭デース!」

 

 昼休みの食堂。

 昼食を持って席に着いたエルコンドルパサーは友人が見せる珍しい表情に対して疑問をぶつけた。お饅頭云々はウィットに富んだジョークのつもりだったのだが、対するグラスワンダーの反応は絶対零度の視線だった。

 

 あ、これなんか知らんけど本気で機嫌が悪いやつだとエルコンドルパサーは踏み込むことを止めた。

 

「そんな氷のような目で睨み付けられたら折角の食事が冷めちゃいます。此処はこのホットソースで中和して温めるデース!」

「……ホットソース?」

 

 目線を合わせないようにしていたエルコンドルパサーにもはっきりと分かった。ホットソースという単語に反応してグラスワンダーが額に青筋を浮かべていると。

 

「ケッ!? 今日はグラスの食事にソースが掛かったりしてないデスよ!」

 

 悪気はなかったものの過去に刺身へソースが掛かってしまった時は、それはもう長い説教をされた。しかし、今日の彼女の機嫌の悪さはそれを凌駕しているように思う。説教ではなく切腹させられるかもしれないと恐怖したエルコンドルパサーは必死に無罪を主張した。

 

「エル、一ついいですか?」

「な、なんデスか?」

 

 答えを間違えれば終わる。そんな予感があった。

 

「和食……美味しいですよね?」

 

 しかし、予想に反してグラスワンダーから発せられたのは力のない声。どこか不安そうに問いかける様子は彼女らしからぬものだ。

 エルコンドルパサーはなんと答えたものか迷った。個人的には洋食の方を好んでいるが、和食は普通に美味しいと思うし嫌いではない。だが、そもそも和食という広すぎる範囲を嫌いと断じる者はそうは居ない。何かしらの意図があっての質問であろうが、エルコンドルパサーには皆目見当が付かなかった。

 

「ま、まあ美味しいと思いますデスよ?」

 

 結果、語尾に疑問符が付く曖昧な答えになってしまった。

 

「そ、そうですよね! やはり日本人であれば和食を基本とすべきですよね!」

 

 別にそんなことは言っていない。

 そもそも、グラスワンダーの言う日本人とは誰のことなのか。彼女自身は一見すると清楚な大和撫子だが、生い立ちだけで言うならエルコンドルパサーやタイキシャトルなどと同じく生粋のアメリカウマ娘である。

 

「なにかあったんデスか?」

「……トレーナーさんが昼食にハンバーガーを食べに行くと言っていたんです」

 

 クソどうでもいい話だなとエルコンドルパサーは思った。

 

「別に日本人がハンバーガーを食べるだなんてこと当たり前にあるんでは?」

 

 忙しいサラリーマンなら牛丼屋と並んでハンバーガー屋の世話になっていたとしてもおかしくない。

 

「週に一食程度なら私もこんなこと言いません! けれど、トレーナーさんは昨日はステーキ、一昨日はホットドッグを食べていたんです。これは明らかにおかしいです!」

 

 おかしいのはグラスの思考デースとエルコンドルパサーは思ったが藪蛇になりそうだったので口を噤んだ。というか週に一食しか洋食を食べない日本人はかなりの少数派じゃなかろうか。

 

「好きなものを食べさせてあげればいいじゃないデスか」

「いいえ、いま私はトレーナーさんに喧嘩を売られています。この前なんて美味しい和菓子のお店を教えてくれたお礼だと言ってアップルパイのお店に案内されたんですよ!」

 

 それの何がダメなのか本気でエルコンドルパサーは分からなかった。

 

「アップルパイはアメリカ発祥です。和菓子の礼で敢えて私にアメリカのものを教えてくるだなんて意趣返しに決まっています!」

「あんまり"和"ばかり連呼するから煩いと思われてるんじゃないデスか?」

「……えっ?」

 

 何気ないエルコンドルパサーの指摘にグラスワンダーは本気でショックを受けていた。

 

「人間、禁止されると逆にやりたくなってしまうものデース。グラスが和ばかり推してくるからトレーナーさんはアメリカンな食事をしたくなってしまってるんデスよ」

 

 あのトレーナーがグラスワンダーに対して意地悪なんてする訳ないとエルコンドルパサーは思っていたが、和に対する押しの強さに多少辟易している可能性はある。別段なんの確証もありはしなかったが。

 

「心を以て心に伝う……」

「ケ?」

 

 エルコンドルパサーとの会話の何かが琴線に触れたのか、グラスワンダーは顔を俯かせてワナワナと体を震えさせていた。

 

「言葉にせずとも通じ合えていると、私は甘えていたのかもしれません」

 

 その震えがピタリと止み、顔を上げたグラスワンダーの目には青い炎が燃えていた。

 そのレース時にも劣らないギラついた眼光を見てエルコンドルパサーは思い出した。グラスワンダーは心底からの負けず嫌いであり、一度決めたことは絶対に譲らず曲げないウマ娘であるということを。

 

「私の成すべき使命……それはトレーナーさんに和食の素晴らしさを一から叩き込むことです!」

 

 気炎を発したグラスワンダーは勢いそのままに食堂を後にした。

 

「オーゥ、トレーナーさんご愁傷様デース」

 

 ああ(・・)なったグラスワンダーはコンドルに匹敵するハンターだ。トレーナーが無事に逃げ切ることは不可能だろう。『いただきます』の挨拶とトレーナーの供養を兼ねて合掌したエルコンドルパサーは自分がターゲットから外れた事に機嫌を良くしながら大量のホットソースが掛かった食事を口に運んだ。

 

「……冷めちゃってるデース」

 

 エルコンドルパサーのやる気が下がった。

 

――――――――――

 

「トレーナーさん、あなたは分かっていません。繊細な味付け、彩りある盛り付け、豊富な栄養。和食こそ最も尊ばれるべき食文化なのです!」

「待ってくれグラス。アメリカのファーストフードだって素晴らしい文化じゃないか。安価かつ圧倒的な提供スピード。アメリカの経済成長にあの食文化が大きく寄与したことは間違いない」

 

 トレーナー室では聖戦が勃発していた。

 まあ、この手の論争は皆違って皆良い以外の結論を出すべきではないので始めた時点で不毛なのだが、二人以上の人間が居れば往々にして起こってしまうものなのだ。

 

「四季折々の食材。味噌や納豆といった発酵食品に餡の甘味への応用。奥ゆかしい味は他の食文化でも簡単に並べるものではありません!」

「奥ゆかしいだけが食の正解ではないさ。トマトケチャップやコーラ飲料なんて長年世界中で愛されている。日本人にだって和か洋かなんて気にされないくらいの浸透ぶりだ」

 

 実際のところ、グラスワンダーはここまで話が拗れるだなんて考えていなかった。エルコンドルパサーと会話していた時はノリと勢いで素晴らしさを一から叩き込むだなんてことを言ってしまったが、そもそも自身の信頼するトレーナーは特定の物事を殊更に否定するような人物ではない。アメリカンフードを連日食べていたからといって、和食が嫌いになっただなんて訳ではないとも分かっていた。

 それはそれとして良い機会だから改めて和食についてトレーナーさんに話してみよう、程度のつもりで話題に出しただけの筈が何故か返す言葉でアメリカンフードの素晴らしさを語られてしまったのだ。

 トレーナー室を訪れた際に目に飛び込んできたある物(・・・)の存在もあってグラスワンダーに退くという選択肢はなくなっていた。

 

「だったら何故アメリカンフードばかり食べるんですか!」

「それは……」

 

 言い淀むトレーナーの姿を見たグラスワンダーはやましい事情があるのだと確信した。その証拠もすでに挙がっている。

 

「食文化だけなら百歩譲って認めます。ですが、衣服までアメリカ文化に染まって。あ、あんな破廉恥な!」

 

 グラスワンダーは怒りと恥ずかしさがない交ぜになったのか、顔を赤くしてトレーナーの犯した罪を指差す。

 そこには一冊のファッション雑誌が置かれていた。開かれているページに写っているのは金髪碧眼のウマ娘。高い身長に長い脚を引き立たせるかのように服装はラフなタンクトップとショートパンツ。

 

 グラスワンダーは激怒した。

 なんだあのアメリカに行ったこともない奴がテレビとネットだけ見て構成したみたいなテンプレアメリカウマ娘は。金髪碧眼がそんなにいいか私だって瞳は青いんだが。私服はタンクトップとショートパンツしか持っていないとでも思っているのかと激怒した。

 

 矯正が必要だ。

 己のトレーナーがあんな誤った認識で性癖を歪められるなど有ってはならない。きっとカウボーイスタイルの露出が多すぎる水着みたいな勝負服をした大型犬ウマ娘やプロレスのマスクを特殊プレイの道具に貶めている自称コンドルウマ娘を見て誤解してしまったのだろう。エルは後で腹を切らせようとグラスワンダーは固く決意した。

 だが、まずは目の前のトレーナーの処遇を決めるのが先だ。

 

「何か釈明はありますかトレーナーさん。辞世の句にならないことを願っていますよ」

「グラスが和の文化を愛してくれているから、俺もグラスの生まれたアメリカの文化をもっと詳しく知りたいと思って……。それでまずは手に入りやすい食事から色々試してみようかなって」

「えっ?」

「それで次は服飾とかも調べてみてたんだけど、開放的な文化だからか露出が多めでさ。やっぱりグラスの好みからは大きく外れてそうだし、不快にさせてしまったのなら本当にごめん」

「あっ、その……一応私も同じような服は持っていますので、もしどうしてもと仰るのであれば試しに着てあげてもいいですよ?」

 

 後日、二人の痴話喧嘩を偶然となりの部屋で聞いていたらしいセイウンスカイにグラスワンダーは散々揶揄われることとなり、エルコンドルパサーが切腹を迫られた。




ヴィブロスの身長バストウエストに対するケツがデカすぎてグラスが完敗したって聞いて泣いた。
あとシュヴァルちゃん可愛い。
……勝負の結果?
誰も損してないからドローでいいでしょ。
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