イキったウマ娘がトレーナーに返り討ちにされるもトレーナーは最初から担当バにゾッコンなので最終的にドローに落ち着く話   作:ゆーりふり

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セイちゃんを書くにあたってキャラスト読み返してたら3話時点ですでにトレーナーに負けかけてて笑っちゃうんですよね。
意図せず釣り上げた魚(トレーナー)に尾ヒレで往復ビンタされてるセイちゃんは可愛い。


セイウンスカイ

 策を仕掛けよう。

 セイウンスカイはそう決めた。

 

 誰に?

 ――私のトレーナーにだ。

 なぜ?

 ――最近、私への態度が舐め腐っている気がするからだ。

 

 私はセイウンスカイ。

 グータラで気分屋でサボって釣りと昼寝をするのが大好きなウマ娘なのだ。

 熱血とか根性とか似合わない。使うのは、頭脳。

 断じて誰かに嵌められる側ではない。嵌める側なのだ。

 それを一番よく知っているはずのトレーナーさんが私を『チョロい』扱いするなど、あってはならない。

 

 だから、策を仕掛けて嵌める。

 一切気付かせず完璧に手のひらの上で踊らせる。

 そうして全ての事が終わった後、嵌められたと知って茫然とするトレーナーさんをニヤけ面で見下ろしてセイウンスカイは油断ならない策士だということを思い出させるのだ。

 

「そうと決まれば、策を練らなきゃね~」

 

 トレーナーさんを策に嵌める難易度は『普通』だ。

 キングやスぺちゃんほど単純でもなければ、エルほどノリや勢いで誤魔化せない。かと言ってグラスのように常在戦場みたいな鋭さもない。そして他者を最初から疑って掛るようなこともしない。あまりにも突拍子のないことを言ったり、わざとらしく大袈裟に振舞えば気付かれるだろうが、例えば風邪をひいたと仮病を使ったなら、まずは信じて対応してくれる。そんな相手だ。

 

「学園内の話やレース関連はボロが出やすいかな」

 

 女子学生である生徒間の情報に詳しいとは思わないが、ふとした拍子に情報を得る機会は多いだろう。レースについては言わずもがなだ。何かしら嘘をつくにしても敢えてバレやすい内容にする必要はない。

 理想はセイウンスカイの身に起こり得そうでありながらトレーナーさんが得意としてなさそうな分野。

 

「うん、これでいこうかな」

 

 何かないかとしばらく考えて――名案を閃いた。

 

――――――――――

 

「トレーナーさん、セイちゃん今日はもう疲れちゃって全然動けなくてェ……」

 

 策の決行を決めた私はトレーナー室でトレーニングに関する打ち合わせをしている最中に切欠となる話題を投じた。もしもこれでトレーナーさんが『そうか無理をさせて悪かった。今日は昼寝か釣りでもして英気を養うとしよう』と言ってくれたなら、私も振り上げた拳を振り下ろさずに済むのだが。

 

「スペシャルウィークはグランプリへの出走を表明か。お、キングヘイローも短距離GⅠで結果を出して絶好調みたいだ。みんな前を向いて全速前進って感じだな」

「ぐぬぬ……」

 

 これである。

 セイウンスカイの扱いは心得ているとでも言いたげにわざとらしく同期の活躍を述べる。

 えー、えーそりゃセイちゃんだって勝ちたいと思ってますよ。けどね、私はトレーナーさんにも負けたくなかったりするんですよね。

 

「分かりましたよ。ちゃーんとトレーニングしますよー」

 

 やはり力を以って分からせねばならないようだ。残念ですよトレーナーさん。まさか私というウマ娘を一番理解してくれているはずの人が扱いやすいウマ娘と勘違いしているだなんて。

 

「あ、そうだ。トレーニングは真面目にやるんですけど、その前に一ついいですか? 今後のトレーニングやレースに関わることなので」

「ん、なにかあったのか?」

 

 ふんっ、いまさらこっちを心配したような顔で見ても遅いんですよ。セイちゃんが満足するまでおちょくらせてもらいますからね。

 

「実はですね、私ことセイウンスカイは最近ある男性から交際の申し出を受けまして、この度めでたくお付き合いをすることになったんですよ」

 

 年頃の娘の色恋沙汰。全然あり得る話である。だが、ウマ娘の育成を生業としている立場からすれば、はいそうですかと受け入れることは難しい。

 ふふっ、トレーナーさんがなんと返事するか見物ですな~。

 セイちゃんに彼氏ができたことに嫉妬しちゃったりとか?

 

「スカイと付き合いたい男性……? そんな奴が本当に存在するのか?」

 

 おっとー、これは想像の十倍は腹立つ返事がきましたね。

 

「ちょっとちょっと~、その反応はセイちゃんに対して失礼じゃないですかね。こんなに愛らしさに溢れていてクラシックでも二冠を獲ったそこそこ知名度のあるウマ娘ちゃんなんですよ?」

 

 ウマ娘の容姿は個人の趣味嗜好を除いて評価するなら一様に整っている。よくテレビ中継とかで見掛けるウマ娘に憧れを抱いて恋慕するのは普通にあると思うのだが、トレーナーさんから見て私はそんなにも恋人として『ナシ』なのだろうか。ちょっとショックだ。

 

「いや、悪かった。スカイは表面上の態度や発言で誤解を受けてしまいやすいからさ。安い女だと思って声を掛けて来たナンパ男なんじゃないかと少し不安になっただけだよ。スカイの本質や良いところを見抜いているんだとしたら、その相手はいい人だと思う」

「お、なんだ意外と私のこと高評価じゃないですか」

 

 セイちゃんの好感度が一アップしましたよ。ぴろりろり~ん。まあ上限値まで上がりきってるから特に変化はないんですけどね。

 しかし、なんというか疑われ方が想定外だし、あまり気にされてないような?

 

「トレセン学園に勤めていると当たり前になってしまうけどウマ娘は美人揃いだものな。スカイも多分に漏れずもの凄く可愛いし、彼氏ができても不思議じゃないか」

「へにゃ!?」

 

 も、もの凄くは流石に言い過ぎじゃないですかねえ。

 

「考えてみると性格もさっぱりしていて男性から見ても魅力的だろうし、モテて当然か」

「うにゃ!?」

 

 わ、私の性格ってどっちかと言うと知れば知るほど面倒なタイプだと思うんですけど、爺ちゃんの次によくご存知なトレーナーさんから見るとプラス要素なんだ。

 

「釣りも何歳になっても楽しめる良い趣味だもんな。俺もスカイとのんびり糸を垂らしている時間は好きだよ」

「はうぅ……」

 

 いや、長いお付き合いになるとかそんなの全然分からないっていうか全部嘘なんだけど。

 ……そ、そうなんだトレーナーさんは私と釣りをする時間を楽しいと思ってくれてるんだ。

 

「お幸せにな!」

「いや、待って待って!」

 

 なんで話が終わりそうになってるの。

 おかしいでしょ。違うでしょ。

 自分の担当ウマ娘に彼氏ができちゃったんですよ?

 ちょっとした寂寥感とか、自分は激務に追われて彼女を作る時間もないのに教え子が彼氏だなんてみたいな感情あるでしょ。

 どんな奴か見せろって言われた時のためにネットで適当な男の写真を拾ってきたり、ローレルさんに男物に見えなくもない服を着てもらって腕を組んだ状態で見切れたデート風自撮りとか用意してきたんですからね。

 

「どうした?」

「ほらアスリートが色ボケして調子を崩したりトレーニングをサボりがちになるだなんて話は幾らでもあるじゃないですか。トレーナーという立場からすると気が気じゃないんでは?」

 

 なぜ私の方から問題点を指摘してあげなければいけないのか。

 

「大丈夫だよ」

「へっ?」

「スカイの中にレースで勝ちたいって想いが残っているのなら、そうはならない。自分で譲っちゃいけないラインをしっかり引けるよ。もちろん、そのためのスケジュール管理に俺の協力が必要って話なら全力で助けるけどね!」

 

 ぐっ、信頼が重い……。

 というか何のために彼氏ができたなんて嘘をついているのか分からなくなってきた。今のところ私が一方的にダメージ受けてるだけじゃん。こんなのおかしいじゃん。

 

 そうだ私は彼氏ができたことにトレーナーとして、あるいは一人の男性として慌てふためく姿を見るためにこんなことをしているんだった。

 このままではダメだ。

 逆転の策、トレーナーさんをギャフンと言わせる策を考えないと。

 

「いやー、スケジュール調整に協力してくれるのは有難いんですけど、彼女いない歴イコール年齢のトレーナーさんにデートが理由で融通利かせてもらうのは悪い気がしますねー」

 

 私が甘かった。

 煽りが足りなかった。

 相手の冷静さを失わせることは策に嵌めるための最重要事項と言ってもいい。だが、この勝負貰った。自分より遥かに年下の小娘に『彼女居たことないんですか~』と煽られて冷静で居られる成人男性など存在しまい。

 

 これでチェックメイトだ。

 

「あはは、手厳しいな。スカイに気を遣わせるのも悪いし、俺も仕事に理解のある彼女でも作ろうかな」

「えっ?」

 

 トレーナーさんが彼女を作ると言った瞬間、胸に穴が開いたような気がした。

 

 トレセン学園のトレーナーはバリバリのエリートだ。給料も相応に高くGⅠウマ娘の担当トレーナーともなれば社会的な評価も高い。しかも、男性トレーナーは思春期の女の子に寄り添って支えることを日常的に熟しているとも言え、女性への理解は深い方だろう。

 つまり、とんでもない好物件で彼女を作るのに窮するような立場では全くない。

 

「と、トレーナー業をやりながらだと彼女さんを放っておく時間が多くなっちゃうんじゃないですかねー」

「もちろん、最優先はスカイがレースに勝てるよう支えることだからな。我慢してもらうことは多いと思う。まあ急いでる訳でもないし、スカイじゃないけどのんびり自分のペースで合う相手を探すさ」

 

 まずいマズい不味い。

 えっ、これもしトレーナーさんに彼女が出来たらセイちゃんどうなるんです?

 下らない嘘ついて、自分は独り身なのに相方が女作るとか冗談ですよね?

 というかトレーナーさんに彼女ができるとか絶対に嫌なんですけど。

 

 ……全部嘘でしたーって言えばまだ間に合うだろうか。

 いやしかし、意味不明な嘘をついて勝手に自爆したとか策謀家の沽券に関わる。

 大体このタイミングで必死こいて嘘ですって言ったらトレーナーさんに彼女作ってほしくないですって宣言してるようなものでは?

 いやいや別にセイちゃんがトレーナーさんに男女のアレ的な好意を抱いているとかそんなことはないんで、彼女云々ってのはトレーニングへの影響的な意味合いしかないんですけどね? 

 

 あ、ヤバい。なんか涙でてきた。

 

「うぅ……ぐす、ごめんなさいトレーナーさん」

「なんで急に泣きだして何を謝っているんだスカイ!?」

「彼氏とか居ないです。セイちゃん、年齢イコール彼氏居ない歴です。だから彼女を作るのだけは勘弁してください」

「いやなんとなく言ってみただけで本気で作ろうとか思ってないよ!? ほら、スカイこっち来て今日はトレーニングは中止して少し休もう!」

「う、うぅ……」 




セイちゃんはトレーナーにデンプシーロールでボコボコにされましたがトレーニングを休むことに成功したという成果があるのでドローでもいいでしょうか。

同室繋がりでローレルとか書いてみたいなって思ってたんだけど、あの子強すぎて私の脳内トレーナーが完敗したから話が作れないんだよね。怖いね。
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