イキったウマ娘がトレーナーに返り討ちにされるもトレーナーは最初から担当バにゾッコンなので最終的にドローに落ち着く話   作:ゆーりふり

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一瞬だけ日間ランキング一位になってたね。
本当にありがとナス!
みんなウマ娘二次創作に飢えてたんすねー。
私も色々読みたいから皆ももっと書いてどうぞ。

前回のセイちゃんが弱すぎると散々感想に書かれていたので強いウマ娘を用意したぞ。
ダイヤちゃんの年齢設定とクラちゃんのキャラについては気にしないでクレメンス。


サトノダイヤモンド

 サトノクラウンは息を呑んだ。

 瞑想して集中力を高めたサトノダイヤモンドが放つ雰囲気に圧倒されたと言ってもいい。

 

 彼女とは長い付き合いだが、此処まで集中しているのを見るのは初めてかもしれない。

 それこそ菊花賞でサトノのジンクスを打ち破り、悲願であるGⅠ勝利を達成したとき以上だ。

 少なくともサトノクラウンにはそう感じられた。

 

「ふぅっ――」

 

 短い呼気と共にサトノダイヤモンドが目を開く。普段の優し気な眼差しは鳴りを潜め、鋭い眼光は思わず後退りしてしまいそうなほどの迫力だ。

 そんなサトノクラウンの様子を見たサトノダイヤモンドは安心させるようにまなじりを下げ、唇で薄い弧を描いて微笑を浮かべた。

 

「行ってくるね、クラちゃん」

「うん、応援してる」

 

 サトノのジンクスを打破して菊花賞を獲り、キタサンブラックを下して有記念を獲った。

 彼女は『サトノの至宝』という評に違わぬ実績を示してみせたのだ。それでも彼女は立ち止まることなく、新たな夢へと向かって歩みを進めた。

 

 彼女の挑む次なる試練。

 サトノのジンクスのさらに先。

 日本レース界の悲願にして呪い。

 

 凱旋門賞――、ではなく。

 

「今日こそトレーナーさんを口説き落としてサトノの一員にしてみせるから」

 

 サトノダイヤモンド。

 御年十五歳の中学三年生である。

 

 カッコいい決め顔をしたサトノダイヤモンドが己の視界から消えたことを確認して、サトノクラウンは大きく息を吐き背伸びした。

 

「面倒なことになりそうだからこれ以上は関わらないようにしよ」

 

 初恋は実らないというジンクスを破りますと鼻息荒く言ってきた親戚を最初は微笑ましく見ていた。サトノのジンクスを破るためにダイヤのトレーナーが与えた影響は決して小さくない。サトノクラウンもサトノ家に迎え入れること自体は賛成だ。

 

 ――ただ、それでも。

 

「流石に中学生と成人男性はマズいでしょ」

 

 サトノクラウンはサトノダイヤモンドに比べて幾らか常識と良識を兼ね備えていた。

 

 ジンクスとは別のものを破ろうとしている『サトノの至宝』。

 サトノクラウンはそれ以上考えることをやめ、トレーナーの(世間体の)無事を祈った。

 

――――――――――

 

 絶好調だ。

 サトノダイヤモンドは自身の調子を確かめて、そう評価を下した。

 今なら天まで駆け、地の果てまで走ることも可能であろう。 

 

 ――そして、トレーナーさんを落とすことも。

 

「お父様、お母様、ダイヤはサトノのウマ娘としての役目を立派に果たしてみせます」

 

 直感にビビッときて、その場で逆指名したトレーナー。

 彼は見事にサトノのジンクスを破りGⅠ勝利という大功を成してみせた。

 そんな人材を放っておく訳にはいかない。レース界に於いて競争とはターフとダートの上でのみ行われるものではない。人材、技術、情報。欲しいものは誰よりも速く獲りに行くしかないのだ。シンボリやメジロ、URAが出張ってくる前に囲い込むべきだ。

 そう決めたサトノダイヤモンドの行動は早かった。

 

『トレーナーさん、サトノのウマ娘はGⅠで勝てないというジンクスはご存知ですね?』

『まあ俺たちも散々悩まされたからな』

『私はジンクスが嫌いです。打ち破れた今でも。耳に入ったら必ず破りたくなるほど嫌いです』

『よく奇行に走ってるもんな』

『もはやジンクスの打破は私の人生と言っても過言ではありません』

『過言てことにしておいた方がいいんじゃないかな』

『ですので、トレーナーさん』

『なに?』

『初恋は実らないというジンクスを破りたいので結婚しましょう。好きですトレーナーさん』

『ダイヤ、君いま何歳だっけ?』

『はい、もうすぐ十五歳になります!』

『はは、ワロス。ジンクスのついでに法律も破ろうとしてんじゃねーよ法治国家舐めんな』

『やだそんな十六歳になったら可愛がってやるぜだなんて積極的ですね!』

『残念だが成人年齢が十八歳に変更されたことで女性の結婚年齢も引き上げられたぞ』

『押すなよ絶対に押すなよ!ってやつですね。分かりましたそのジンクスも破ります』

『法律だって言ってんだろ』

 

 まどろっこしいことは言いっこなしだ。自分の気持ちを火の玉ストレートで伝えて、さっさと籍を入れてサトノに永久就職させる。

 兵は拙速を尊ぶとばかりに速攻で勝負を決めにいったサトノダイヤモンドだったが、トレーナーが誇る難攻不落の『鋼の意思』の前に撃沈した。

 

 だが、そこで諦めるような女がサトノのジンクスを破れる訳もなし。

 なにせGⅠレースと違って開催時期やら出走できる回数に制限などないのだ。無限の残機を利用して落ちるまでゴリ押しすればいいと、ソシャゲのデイリークエストの如くアタックを続けた。 

 

 そうして早一年が経とうとしている。

 未だトレーナーの牙城が崩れる兆候はない。

 

「カレンチャンさんやスカーレットさんも中々落とせないから外堀から埋めるか既成事実を作って逃げられなくするのが良いと言ってはいましたが……」

 

 さすがはトレセン学園のトレーナー陣。それも担当ウマ娘にGⅠを獲らせられる腕利きとなれば一筋縄ではいかないらしい。同性であるサトノダイヤモンドから見ても魅力的なカレンチャンやダイワスカーレットですら成功には漕ぎ着けられていない難関である。

 

「破り甲斐のあるジンクスですね」

 

 無論、トレーナーたちが抗っているのはジンクスではなく法律を遵守するためである。それを彼女たちが理解していない訳ではないが、若い衝動を止めるには至らない。なにせ早いもの勝ちというのは事実だ。万が一にでも他のウマ娘に搔っ攫われでもしたら、学園の外でどこのウマの骨とも知れない女とくっ付いてしまったら。

 腸が煮えくり返るでは済まない。日本ダービーの落鉄よりも腹が立つ。

 サトノダイヤモンドはそう考えていた。

 

 故に何もせず座して成人を待つなど絶対にしてやるつもりはなかった。

 

「トレーナーさん、こんにちは! サトノに丁度良い()が空いているので座ってみませんか!」

「今日も元気だなダイヤ。悪いがこの椅子の座り心地を気に入っていてな。しばらく降りるつもりはないんだ」

「私の専属トレーナーの席を気に入っていて降りるつもりがないだなんて、愛の告白ですか!」

「急にこの椅子を蹴っ飛ばしたくなってきたわ」

「蹴っ飛ばしましょう。次の()はサトノで用意してありますので!」

「無敵か?」

 

 まずは先制攻撃。

 トレーナー室へ突撃するや否やサトノへの勧誘を行った。

 しかし相対するトレーナーも慣れたもの。動じることなくサトノダイヤモンドの連撃をいなす。

 

「往生際が悪いです。彼女が出来たことがないから好き好きアピールしてくる女の子に気後れしてるんですか!」

「お前、言って良いことと悪いことがあるだろ。俺は彼女が作れなかったんじゃなくて作らなかっただけだから」

「彼女いない人はみんなそう言うんです!」

「犯人みたいに言うな。彼女いないのは断じて犯罪じゃねーからな」

 

 やはり手強い。

 だが、負ける気はしない。

 

「トレーナーさん、私はサトノダイヤモンドです」

「知ってるけど」

「最高硬度の宝石である金剛石の名を持つ私が削り合いで負ける道理がありません。根負けするまで続けますから潔く敗北を認めてサトノになってください」

「もうこれ『至宝』じゃなくて『暴君』だろ」

「いいえ『司法』です。私が法律です。結婚を許可します」

「うまいこと言えとは言っていない」

 

 さすがは私のトレーナーさん、隙がありませんねと呟いてサトノダイヤモンドは攻め方を変えるべきか思案した。

 だが、その結論が出る前にトレーナーが動く。

 カウンターを警戒したサトノダイヤモンドは咄嗟に身構えた。

 

「だいたい最高硬度とかダイヤモンドとか言ってるけど、それって本当か?」

「むっ、それのどこに疑う余地があるんですか!」

 

 己の意思が薄弱であると言われたように感じたサトノダイヤモンドはムキになって聞き返す。

 しかし、トレーナーは答えを返すことなくゆっくりと席から立ちあがった。

 

「な、なんですか……?」

 

 そして一歩一歩、サトノダイヤモンドへと近づいていく。

 これまで見た事のない能面のような無表情で無言のまま迫ってくるトレーナーの圧力に押されるようにサトノダイヤモンドは壁際へと追い詰められてしまった。

 

「そんな怖い顔しても私は退きませ――」

「手もすべすべでこんなに柔らかい。これでダイヤモンドを名乗るとか金剛石に失礼でしょ」

 

 いきなり手を取られ指を絡ませるようにして感触を確かめられた。その突然の身体的接触に驚いたサトノダイヤモンドの言葉は途切れ、耳が緊張によって絞られる。

 

「それに身体もこんなに華奢で背だって俺よりずっと低い」

 

 トレーナーはもう片方の手を壁について、サトノダイヤモンドを上から覆うようにして絞られた耳へと囁いた。

 

「は……ひゅ……」

 

 これまでどれだけアタックしても梨の礫だったトレーナーからの急接近にサトノダイヤモンドは呼吸の仕方すら忘れてしまうほど混乱していた。

 こちらをじっと見つめてくるトレーナーの顔から目を逸らすこともできず、為されるがままになってしまう。

 

「わかってくれダイヤ。お前は自分のことをどんなジンクスにも負けない硬くて強い女だと思ってるかもしれない。けれど、俺から見ればちょっと強く抱きしめただけで壊れてしまいそうな女の子なんだ。それこそ宝石のように丁寧に扱いたいのさ」

「へ……あ……?」

 

 有り得ないはずの甘い囁きに脳の処理が追い付かず、サトノダイヤモンドの口からは意味のなさない音が発せられるだけだった。

 

「それでも、どうしてもと言うならこのまま続けるけど?」

「しっ、失礼しましゅ!」

 

 沸騰して茹だった脳で正常な判断ができるはずもなく、サトノダイヤモンドは爆発しそうなほど強い心臓の鼓動に耐えられず尻尾を巻いて撤退した。

 その様子をトレーナーは余裕の笑みで見送る。

 

「ふっ、小娘共が結託して浅知恵を働かせているようだが所詮は子供。大人に敵う訳がない」

 

 トレーナーはこの日のために秘策を練っていた。

 その名も『引いてダメなら押してみろ』である。

 重戦車もびっくりな怒涛の攻めを展開するサトノダイヤモンドに対抗すべく、なんだか女の扱いに手慣れてそうなエイシンフラッシュのトレーナーに教えを請い、歯の浮くような薄ら寒い台詞を伝授してもらったのだ。

 

 結果、作戦は大成功。

 羞恥心か気持ち悪さかは判断が付かないが、場の空気に耐えられなくなったサトノダイヤモンドは敗走したのである。

 

「まあ、恋に恋したい年頃だもんな。しばらくすれば飽きて同年代の彼氏でも作るだろ」

 

 勝利の余韻に浸りながら、同志であるカレンチャンとダイワスカーレットのトレーナーへと勝利報告を送る。

 この作戦は有効だったぞ――と。 

 

 以降、サトノダイヤモンドからトレーナーへのアタックはなくなった。

 その平穏な日々に満足し、油断しているトレーナーはまだ知らない。

 いつの間にか学園内にトレーナーの囁いた内容が知れ渡り、サトノ家入りが内定している扱いになっていることを。

 信頼する同志たちが担当ウマ娘が十八歳になった途端に陥落させられ、約千日後に自分もその後を追うことを。




エイシンフラッシュのところはウマ娘もトレーナーもめちゃ強なイメージがある。
ファル子先輩は雑魚。
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