「大丈夫だったかお前ら!?」
場所は、雄英高校。
No1ヒーロー”オールマイト”の出身校にして、多くの有名プロヒーローを輩出した日本屈指の名門校。
そのヒーロー科に所属することが許された、40人の生徒たち、うち、二十人の1年A組にて、そこに所属する飯田と轟はクラスメイトたちの心配の声に迎えられた。
「ああ……ケガも完治した。何の問題もない」
「実際、ヒーロー殺しを前に何もできなかったけどな」
ヒーロー殺しという単語が出て、クラスの全員、「それだよ!」という反応を見せる。
実際に現場に居合わせた三人。内二人に対する、彼ら彼女らの聞きたいことが二人には分かっている。
「お前らも、ニュース見て知ってるだろ。オマケに、今回は動画まで残ってる……ヒーロー殺しを倒したのは東京卍會――総長の”無敵のデク”だ」
轟からの発言に、全員、分かってはいたが改めて驚愕の表情を見せていた。
「えっと……マジで、無個性だったのか?」
「ああ……少なくとも、俺たちの前で、仲間に個性を使わせることはあっても、彼自身が個性を発動させる素振りは全く見せなかった。個性ではなく、彼自身の力によるものだ。ヒーロー殺しを倒したのも……脳無を倒したのもな」
「「「「……」」」」
「「「「……」」」」
『東京卍會、保須市に現れる』
『目的はヒーロー殺し。加えて、三体の謎の異形の怪人を撃破』
『ヒーロー殺し、”無敵のデク”によって打倒される』
かの事件の翌日には、そんな類の記事が新聞、週刊誌、ネットを問わず、各媒体に流れることとなった。
警察は当初、彼らの存在は伏せ、ヒーロー殺しはその場に居合わせたエンデヴァーらプロヒーローによって捕縛されたと、報道を規制しようと考えていた。
だが、そうする以前にネットに公開された、どこからか撮影されていたらしい、怪人を蹴りの一撃で沈める少年。彼の発した、「ステインより弱い」という発言。そして、彼の着ていた、東京卍會の特攻服。
これだけ強力な映像証拠が出回っていては、もはや真実の隠蔽など不可能となり、彼らの存在と、大量殺人犯を打倒したというニュースは全国に知れ渡り、ヒーロー科の生徒はもちろん、日本中の誰もが知るところとなった。
「あの映像も、マジだったんだよな?」
「ああ……俺たちも、目の前で見ていた。正真正銘、事実だ」
加えて、ヒーロー殺し以上に彼らに衝撃を与えたのが、脳無のこと。
脳無の存在は、このクラスの全員が知っていた。
彼らの知るものと同一個体であるはずがないし、話と映像を見るに、かつて、彼らの前に現れたソレより、はるかに弱い個体だろう。現地のヒーローや、他の隊員との戦闘で弱っていたのかもしれない。
それでも……No1ヒーローであるオールマイトさえてこずった相手という事実。そして、そんな相手を、自分たちのような、ヒーロー候補でもなく、どころか『個性』さえ持っていない少年が、蹴りの一撃で沈めたという事実が、彼らには受け入れ切れない現実だった。
「それで、どんなヤツだったんだよ? その、総長、”無敵のデク”って……」
男子生徒の一人が、純粋な興味からそう問いかけていた。
尋ねられた二人は、やや逡巡したのち……
「……すまない。現場は暗かったし、ステインとの戦いが激しくて、彼らの顔をじっくり見るヒマが無かった」
「ああ。俺も。炎は使ったが、アイツらの顔は見てねえ。顔をよく見る前に逃げられて、アイツらが誰かは分からねぇ」
飯田は、申し訳なさそうにそう言った。
轟は、未だ制御がおぼつかない、左手に手を添えつつそう返した。
二人からは、これ以上は何も聞き出せそうにない。それを理解した生徒たちは、その後は担任教師が来るまで、いつものように雑談を楽しんだ。
「……」
そんな彼らをよそに……
髪の毛を綺麗な8:2にサッパリ分けた生徒、爆豪勝己は、一人、食い入るようにスマホを――無敵のデクの動画を見ていた。
……
…………
………………
「まぁ、動画は割と荒かったし、デクの高校での日頃の行いもあって、正体がバレちまうリスクはほとんどねぇ。デク以外は後ろ姿だったしな」
場所は変わって、某所。
しゃべっているのは、東京卍會伍番隊隊長、ムーチョ。
「とは言え、今まではせいぜい知る人ぞ知るってレベルだったのが、あの動画と記事のせいで、むしろ東卍を知らねぇ人間の方が少ないレベルになっちまった。今まで、大して興味も持たれなかった東卍の数少ねぇ動画や画像が、今じゃネットで広がりまくってる」
彼の他に集まっているメンバー。
伍番隊の面々に、ドラケン、三ツ谷、そして、デクに、話していった。
「おかげで、中には変な熱に充てられたヤツもいる――こんなふうにな」
ムーチョが視線を向けた先――
大勢の東卍メンバーの中心で、正座させられている四人。
全員、東卍の特攻服を着ているが……
「これ……ドンキで売ってるパチモンじゃねーか」
「生地も薄いし刺繍も雑だな。三ツ谷が作った
「つまりは偽物ってわけ……」
偽物の四人とも、本物の集団に囲まれて、何もできずにいる。
慌てふためく者。震える者。涙目になる者。黙って観念している者。
「こいつらが、俺らの名前騙って、好き勝手に振る舞っていた。だからとっ捕まえたってわけだ」
「ただコスプレして楽しむだけならともかく、本物のフリして悪さするのは、さすがにちげーよな?」
ムーチョの淡々とした説明。そして、ドラケンが彼らの顔を覗き込んでそう言って、彼らはますます萎縮する。
「まあ、俺ら自身、社会的に見りゃあ犯罪者だって自覚はしてるがな、それでもメンバーのやったことの責任は、メンバーで取るって決めてる。けどな、メンバーじゃねー偽物どもがやったことの責任は、誰に取らせるべきなんだろぉなぁ?」
威圧のこもった問いかけで、ドラケンが迫った時……
「すいません!! そいつにやろうって誘われて!!」
四人のうち、右端に座っていた男が、左端に座る人物――緑の皮膚と鱗に覆われた、紫髪の異形型の男を指して叫んだ。
「俺らも本当はイヤだったんですけど、こいつが、何かあっても東卍のせいになるからって、それで――」
「黙れ」
ドラケンが言い、男は口を閉じる。
ずっと静観していたデクが、異形型の男の前に立った。
「今、こいつが言ったこと、本当か?」
「……」
男は、デクと真っすぐ目を見つめて……
「本当だ」
そう、諦めたように、言葉を発した。
「そっか……じゃあ、罰は首謀者一人だけにして、後の三人は許してやるよ」
デクがそう言って、異形型以外の、三人が安堵を浮かべた時――
声を出した右端の男の、隣の男を、蹴り上げた。
「キヨマサ!?」
「え……なん、で――」
「バレバレだ、バーカ」
蹴り上げられ、ふっ飛ばされた先には、伍番隊の面々。
「ムーチョ。適当にボコって捨てとけ」
「おう」
その後、言われた通り、その男一人がムーチョに絞められ、残った三人のうち、二人は、パチモンの特服を脱いで裸になり、絞められた男を支えて逃げていった。
「……お前は逃げねーの?」
「……なんで、ウソだって分かった? アイツ、一言も喋ってなかったろう?」
彼にはそれが不思議でならなかった。
ガラの悪い三人に言いくるめられ、仲間になり、最終的には、身代わりとして切り捨てられる。
そんな惨めな末路を前に、諦め、観念していたというのに……
「まあ、半端なヤツでもずる賢いヤツなら、何かしでかすのに、身代わりくらい用意するってのは定番だし……それに、お前の顔見てたら、そんなヤツじゃねーって分かったからな。じゃあ誰だって言われたら、まず、しゃべってたヤツじゃねぇ。よくしゃべるヤツは頭に向かねぇ」
「あと二人、残ってるだろう……」
「一人ボコって許すって言った時、お前以外の二人、俺を見てた。けどアイツは、しゃべってたヤツを見てた。よくやったって顔でな」
「それで、分かったと?」
「普通だろ?」
男は、言葉を失うばかりだった。
動画で見たこの男……
個人戦闘力はもちろん、頭のキレに観察力も、そうとうなものだと。
「……お前、
「そ、それは……」
デクからの唐突な問いかけに、男は戸惑いを見せたが……
「……ああ、入りたい! 俺は、東卍に入りたい!」
異形型を激しく差別するド田舎。
そこで思い出したくもない日々を生き、あげく引きこもっていた時。
見つけたのが、”無敵のデク”の動画。
心が熱くなった。突き動かされた。
東卍ならもしかしたら……
こいつに会えばもしかしたら……
上手く言葉にはできないが、今まで何の夢も希望も見いだせなかった日々に、火を着けたのが、東卍と、無敵のデクだったから……
「イイよ」
覚悟を決めた、彼の語った言葉を……
デクは、あっさりと了承した。
「え……イイのか?」
「お前、名前は?」
「
「ムーチョ、こいつは伍番隊で面倒見てやれ」
「やれやれだぜ……また異形型か」
あまり納得できていない様子のムーチョだったが、最終的には合意した。
「おいデク、いいのか? 得体の知れねーやつアッサリ入れて……」
「得体が知れねーのは俺らも同じだろ?」
「いや、まあ、そうだけどよ……」
「大丈夫だって、三ツ谷。少なくとも、あの四人の中じゃあ一番見どころあるし」
「そりゃあ、あの四人の中じゃあなぁ……」
こうして東卍に、新たなメンバー、伊口 秀一が加わることになった。
……
…………
………………
「黒霧……コイツら飛ばせ。俺の大嫌いなものがセットできやがった。餓鬼と、礼儀知らず」
場所は変わって、某所にあるビル内のバー。
場所や立地、中の暗さも元々ありはするが、それにも増して、その場所の雰囲気は暗いものだった。
そんな暗さの原因は、間違いなく、その中にいる人物。
顔を、人間の手につかませて表情を隠す青年。
カウンターで、グラスを拭いている、身体が黒い靄でできた男。
来客らしい、眼鏡を掛けた中年の男。
そして、その中年の男が連れてきたらしい、二人組――
「
「通すな。本名だ」
「そのうちな……世の中には、色々と不満はあるけど、とにかく今は、東京卍會を潰したい」
明るく光る髪の少女に対して、『手』の男は呆れたふうに息を吐いた。
カラン カラン……
「
灰髪、褐色肌、両耳に花札のような耳飾りを揺らす、暗い目をした少年が、拳を握りしめてそう言った。
「聞いてないことをベラベラと……どいつもこいつも、東卍、東卍……デク、デクと……」
「いけない、死柄木――」
「駄目だお前ら――」
……
…………
………………
陳腐な言い回しになるが……
明るい光が差す場所があれば、その裏には、暗い影が差す場所もある。
決して日の当たらない、そんな場所に潜んでいる邪悪。
彼らもまた、光差す場所で生きるものたちと同じよう、力を増し、蓄える。
そして、そのどちらでもない……
届かぬ光に憧れ、同時に足もとの影に目を光らせる、そんな者たちもまた――
『伊口 秀一』
ある意味武道枠その2の、伍番隊新入り。
見た目、性格、個性ともに原作そのまま。この小説では出久らと同年代。
ステインが倒され、例の映像も流れなかったことで敵落ちこそしなかったものの、代わりに"無敵のデク"の姿に憧れ、心に火が点く。
田舎を飛び出し、姿だけでもと特服のパチモンを着ていたところを半端者三人組に声を掛けられ、問題行動の片棒を担がされる。
田舎での扱いの経験もあり、捕まった時点で全てに絶望し諦めていたが、デクに本性を見抜かれたことで東卍入りを認められる。
『瓦城 千咒』
敵連合 新入り
見た目、性格ともに元ネタそのまま。個性有り。
原作のヒミコ枠。
『黒川 イザナ』
敵連合 新入り
見た目、性格ともに元ネタそのまま。個性有り。
原作の荼毘枠。
一虎とどっちにしようか迷ったキャラ。