【完結】"無敵のデク"   作:大海

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出久が神野にいた理由……ちと無理あるかも。



第6話【 Last Stage 】

 

「マジ、かよ……」

「ち、くしょ……」

 

 幸いというべきなのか……東京卍會に、死者は一人もいない。

 だが、AFOの攻撃に吹き飛ばされた者たち全員、動けない様子でいた。

 まだ残っていた出来損ない脳無は、一体残らず動作を停止。

 バイクは無事な物もあるだろうが、目に見えて破壊されたものもある。

 メンバーは全員倒れ。彼らチームを象徴するバイクも破壊され。

 

 崩壊……

 逃げることさえ難しい様子な彼らの姿に、テレビを見ていた者たちは、一つのチームの終結を感じさせられた。

 

 

「これが、身の振り方も知らず、ヒーローごっこを続けてきた末路だ。若い芽を摘むのは心苦しいが、これも全ては自業自得だ」

 

「AFO!!」

 

 AFOの蛮行に、オールマイトが叫ぶ。

 だが、AFOは『転送』を発動。ヒーロー”グラントリノ”を盾に使った。

 

「す、すいません!」

 

 

「……おい、お前ら」

 

 オールマイトが戦っているその前で、変身が解除され全裸になった被身子に自身の特服を着せ、抱き上げているドラケンが声を上げた。

 

「死んでもここから離れろ……このままじゃ、オールマイトの邪魔になっちまう」

 

 ドラケンの言葉は、誰もが理解していた。

 相手は強敵であり、敵。動けない自分たちを的にすることなど、普通に考えつくだろう。

 そしてそれは、オールマイトにとって、爆豪とかいう少年以上の足かせになる……

 

 それを理解して、全員、フラつきながらも立ち上がった。

 動けない者には肩を貸し。ケガ人は背負い、抱え、とにかく、次の攻撃が来るより早く、この場から離れるために……

 

 

「けな気な子たちだなぁ」

 

 そんな少年らの姿に、AFOはあざけりを浮かべる。

 

「自分たちが如何に場違いな存在か、やっと理解したか」

「その場違いな存在が、お前たちの計画を潰し、爆豪少年を奪還したんだぜ?」

 

 注意を自身に向けるため、オールマイトは挑発を送る。

 だが、AFOには届かない。

 

「そうだな……悪いことをした子供には、お仕置きをしなきゃ――」

「よせ!!」

 

 逃げる東京卍會に、再び手を向ける。

 同じ攻撃が来る――それを理解したオールマイトが、AFOの前に出た。

 

「せいぜい守ってやり――」

 

 

 ドォォオオオオオオオオ――

 

 

 全てを言い切る前に、AFOの身は倒された。

 AFOが繰り出そうとした攻撃は、あらぬ方向……空中目掛け放たれた。

 

「おやおや……爆豪君と一緒に逃げたんじゃなかったのかい?」

 

「大切な隊員置き去りにして、逃げる総長がいるわけねーだろ?」

 

「無敵のデク少年!?」

 

 仰向けに蹴り倒したAFOに、追撃の蹴りを見舞おうとする。が、AFOが黙って受けるはずもなく、空中へ回避した。

 

「ウリャア!!」

 

 そこに、黄色の影が飛んでいく。

 グラントリノの蹴りが、空中で不安定だったAFOにぶつかる。

 

「デトロイト・スマァアアアッシュ!!」

 

 空から降ってきた黒マスクに、オールマイトの一撃。

 当然吹っ飛び、地面に倒れ伏した。

 

 

「デク少年、君はもう行きなさい! こいつは私が押さえる!!」

「押さえられてねーから戦ってんだろーが!!?」

 

 かつては憧れていた、No1ヒーローからの言葉にも、デクは動じず、同意もしない。

 

「それに、勘違いすんな、オールマイト」

「勘違い……?」

「俺たちは死ぬ覚悟くらい、とっくにしてる」

 

 オールマイトの思いを、全否定する言葉を、デクは語った。

 

「確かに、俺たちはガキだ。ヒーロー免許も持ってねぇガキどものヒーローごっこの延長にいる、どうしようもねぇ不良の集まりだ。それでも、そんなヒーローごっこに命を懸けて、仲間のために戦う。それが東卍だ。命を懸けられるのが、プロヒーローだけだと思うな!!」

「デク少年……」

 

 

 CLAP CLAP

 

 CLAP CLAP……

 

 

 無敵のデクの叫びの直後、手を叩く音。

 

「そうだね……命を懸けるのは、なにもプロヒーローだけじゃない。確かに、死ぬ覚悟が無ければ、わざわざこんな危険地帯にまで足を運ぶことは無い、か……いやはや、子供のヴィジランテだと見くびっていたよ、東京卍會」

 

 オールマイトの拳にさえ、こたえた様子はない。

 ヌーっと起き上がったAFOは、再び腕を構えた。

 

「なら、敢えて彼らは狙わない……死ぬ覚悟ができているからね。ならば、それができていない者なら、どうかな?」

 

 AFOが手を向けた先。そこには、瓦解したビルが倒れ、その下には――

 

 

「たすけて……オールマイト……」

 

 

「逃げ遅れ……!」

「やめろ……!」

 

 デク、グラントリノ、オールマイトが一斉に走り出し――

 

 

 ドォォオオオオオオオオ――

 

 

 さっきと同じ攻撃が、逃げ遅れた女性目掛けて、放たれた――

 

 

 

「……え?」

「俊則……」

 

 後ろにいた女性は無事だ。オールマイトが、AFOの攻撃を受け止めていた。

 デクとグラントリノは、衝撃に吹き飛ばされた。

 そして、二人よりも速く飛び出し、攻撃を受け止めた、オールマイトは……

 

「惨めな姿を世間にさらせ……平和の象徴」

 

 骸骨……それが、適切な形容だろう。

 筋骨隆々の巨人が立っていた場所で、左手を構えて立っている男が正にそれ。

 頬はこけ、目は窪み、手足は枯れ枝のように細く、ヒーロースーツのサイズが全く合っていない身体は、今にも折れてしまいそうなほど細長く……

 

 

「身体が朽ち衰えようとも……この姿をさらされようとも……私の心は、依然、平和の象徴! 一欠片とて奪えるものじゃない!!」

 

「素晴らしい!」

 

 

 呆然とするばかりの、デクや東卍を尻目に、AFOは、更に話を続けた。

 

「あのね……死柄木弔は、志村菜々の孫だよ」

 

「……ッ」

 

 やり取りは続く。AFOが言葉を紡ぎ、オールマイトは、叫んでいた。

 

 

「……今、良いところなんだがね?」

「悪いな。大人の長話に飽きて、つい足が出ちまった」

「そうか……辛抱できない子にはお仕置きが必要だね」

 

「デク少年!!」

 

 デクの蹴りを平然と頭で受け、逆に個性で吹き飛ばす。羽織っていた特服が飛んでいき、それでもすぐさま立ち上がり、AFOへ向かう。

 

「君が強いことは認めよう。『無個性』でありながら努力したんだろうね? 才能にも恵まれている……だが、これ以上の横槍はみっともないだけだよ?」

「はぁ? みっともねぇのはどっちだよ? 今にもぶっ倒れそうな体調を変なマスクでごまかして、たかがおっさん一人への嫌がらせのために全力尽くす人生の何が楽しいんだか?」

「言ってくれる――」

 

 デクの攻撃、全てを受け止め、吹き飛ばす。

 地面に叩きつけられ、転がり引き擦られ……

 それでも立ち上がり、走り出す。

 

「いい加減、しつこいなぁ……無個性である君には興味が無い。見逃してあげるから帰ってくれないか?」

「信用できるか! どうせ帰ろうと思った途端、背中からグサリだろうがよ」

「では、正面からなら、いいのかな?」

 

 AFOの五指から、黒い針が伸びた。

 デクは咄嗟に回避し――手足の複数個所をかすった。

 

「反応も素晴らしい……まったく、これで『無個性』なのだから、世の中不平等なものだ」

「そうだな……その無個性一人を、そんだけ強ぇ個性かき集めておいて、未だに殺せねーんだから、本当、世の中不平等だよなー?」

「……」

「それとも、やっぱ老いぼれなだけか?」

「……」

 

 デクが繰り返し行った、突撃と煽り。

 それにとうとう、AFOは視線を下げる。

 

「君との会話は中々に楽しかったが……さすがに、飽きた!」

「――」

 

 手をかざし、個性を向けられる。

 

 

「小僧!」

「デク少年!?」

 

「デク!?」

「デク!!」

 

 

「オールマイトォオオオオオオ!!」

 

 

 デクではなく、オールマイトを呼ぶ絶叫。

 炎が、AFO目掛けて飛んできた。AFOは、簡単に振り払ってしまった。

 

「なんだその情けない姿はぁああああああ!?」

 

「応援に来ただけなら……観客らしく大人しくしててくれ」

 

 叫ぶNo2ヒーロー”エンデヴァー”に対して、個性を発動させようとする。

 だがそれは、空を行くNo5ヒーロー”エッジショット”によって阻まれた。

 

 その後には、”虎”、”シンリンカムイ”、”ネイティブ”、”ウォーターホース”等、集結したプロヒーローたちが、ビルにいる女性、東卍メンバーらを救けだしていった。

 

「我々には、これくらいのことしかできぬ!」

「アナタの背負うものを少しでも……」

 

「あの邪悪な輩を止めてくれ!」

「皆、アナタの勝利を願っている!」

 

 

 

「煩わしい!!」

 

 

 

 空中を闊歩するAFOの全身から、個性が放たれる。

 加勢していたエンデヴァーらヒーロー、グラントリノ、デクらを、一気に吹き飛ばした。

 

「精神論は止して、現実の話をしよう。『筋骨発条化』、『瞬発力』×4、『膂力増強』×3……」

 

 AFOの持つ数々の個性、それらが彼の右腕一か所に集結する。

 彼の右腕は肥大、硬化、変容していき……

 

「今の僕が持ち合わせる、最高・最適の『個性』たちで――君を殴る」

 

 それを見た、オールマイトもまた……萎んだ身体に力を込めて、右腕一本を、いつもの姿――マッスルフォームに変形。

 

 

 飛んできた、AFOの拳――

 

 迎え撃つ、オールマイトの拳――

 

「ここで僕が倒れても、死柄木弔が後を継ぐ。君は後継者さえ見つけられていない――先生としても、君の負けだ」

 

「それは私とて同じさ。ここで私が倒れても、頼もしいヒーローたち、そして、勇気ある若者たちが、私の後に続く!!」

 

 ぶつかり合った右腕。その右腕を、オールマイトは引っ込めて、左腕に力を籠める。

 その拳が、AFOにぶつかる。

 

「……浅い」

 

「くぅ……ッ!!」

 

 そんな渾身の左拳の一撃さえも通じず。

 AFOは続けて左腕を肥大化させ、振るおうと――

 

 

「オォラアアア!!」

 

 その振りかぶられた巨大な左拳に、走ってきていたデクの右拳がぶつけられた。

 

「また君か!? いい加減この場にいることが不相応であると――」

 

「東卍は負けねぇ……総長(オレ)がいるかぎり、東卍は負けねえ!」

 

「なにを言って――」

 

 

平和の象徴(オールマイト)がいるかぎり!! ヒーローは負けねえええええ!!」

 

 

「サンキューな、無敵のデク少年――」

 

 

 AFOの動きと攻撃を止めた時間は、ほんの数秒……

 

 そのほんの数秒が。

 オールマイトにとっては渾身の――

 AFOにとっては最悪の――

 

 決着の瞬間(壊れた右拳の一撃)――

 

 

 

 ――ユナイテッド・ステイツ・オブ・スマァアアアアアアアッシュ!!

 

 

 

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 

 

 

 

 一瞬のうちに起きた、いくつもの攻防。

 それを最後に制し、勝利したのは、オールマイト。

 

 決して敗けない……

 決して折れない……

 

 左の拳を天に掲げ――勝利のスタンディング!

 

「今は無理をせず……!」

「させてやってくれ……仕事中だ」

 

 平和の象徴……

 No1ヒーローとしての、最後の……

 

 

 誰もが、オールマイトの勝利に酔いしれた。

 誰もが、オールマイトの姿に見入っていた。

 誰もが、戦いの集結への安堵に満たされた。

 

 

「……」

 

 デクは、二人から数メートル離れた場所に倒れていた。

 

「デク!!」

「デク!?」

 

 全身ボロボロ。特に、右腕がひどい状態なのは、遠目からでも分かる。

 ドラケンと三ツ谷が、すぐにでも走ろうと立ち上がったものの……

 それに気づいたデクは、首を横に振り――

 

 

「……! デク、お前……!」

 

 三ツ谷は、デクの口の動きを見て、理解した。

 

「ドラケン、ヒミコも、今のうちに逃げるぞ」

「ああん?!」

「そんな! デクくんがまだ……」

「そのデクが逃げろって言ってんだよ! ヒーロー、警察、テレビ、全部の目がオールマイトに向いてる今のうちに……!」

「なぁ……!」

 

 総長の思い。覚悟。それらを知った、副総長は……

 

「……お前ら立て! 東卍全員、今のうちに逃げる! 総長命令だ!!」

 

 副総長の号令に、驚愕と戸惑いを見せつつも、立ち上がる東卍メンバー。

 今の光景を前に、たかだか子供のヴィジランテ集団の逃亡に、気にする人間はほとんどいない。

 

「――おい! お前たち、どこへ行く気だ!?」

 

 だが当然、中には気づく者もいる。

 プロヒーロー”シンリンカムイ”が、自身の個性である『樹木』の枝を伸ばした。

 

「うお……!」

 

 が、その枝を阻むものがあった。

 

 

東京卍會 壱番隊隊員

 “荼毘”

個性:『蒼炎』

 

 

「荼毘!」

「トウヤくん!?」

 

「お前らは行け……俺は、デクと残る」

 

「……そうか、分かった」

「そんな、トウヤくんまで……!」

「ヒミコ……お前も分かってるだろ? あの人のやりてーこと」

「……」

 

 涙を流しうなだれる、ヒミコの手を引くドラケンと、逃げる隊員らの前で……

 

 

 蒼い炎を燃えたぎらせて、シンリンカムイや、プロヒーローたちの行く手を阻む。

 

「やめろおおおおお!!」

 

 そんな炎を突破できる、唯一のプロヒーロー。

 炎熱を操りし、No2ヒーロー”エンデヴァー”が、荼毘を捕らえた。

 

「中々の火力だ。ヴィジランテにしておくにはもったいないな」

「エンデヴァーに褒められるとは、炎熱系冥利に尽きるぜ……」

「……む? 貴様の個性、己の身を焼くのか?」

「お母さんの体質を受け継いじまってなぁ……せっかくの父親譲りの個性も、ちっとも活かせねぇ、お父さんは末っ子の弟ばかり構って、俺のことを見てくれねぇで。本当、人生に絶望したもんだ」

「なんだと……?」

 

 話しながら、視線を向けた先。

 警察、プロヒーローらに捕らえられ、左手に手錠をハメられ、歩かされていく。

 そんな義弟(出久)と、目が合った。

 

 

「ありがとな……出久」

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 のちに『神野の悪夢』と呼ばれた事件にて、その場に居合わせた東京卍會構成員総勢約100名。

 うち、捕縛されたのは、総長である”無敵のデク”を含む2名のみ。

 現場にいたヒーローは全員、現地での救助活動を優先したことで、彼らの追跡に回せる人間が一人もおらず、残りの構成員全員、逃走を許す結果となった。

 

 

 連行されたデクには当然、厳しい取り調べが待っていた。

 

 罪状は、大勢の未成年らへの個性使用教唆、公務執行妨害、暴走族としての迷惑行為等。

 デク自身は『無個性』と言っても、隊員らを先導し、個性使用を誘発させていたことは明白。加えて今回は、逮捕されたうえ、映像証拠もリアルタイムで全国に流され、もはや言い訳も言い逃れも通じない。

 

 誰もが東京卍會を……

 そして、「オールマイトと共に巨悪に立ち向かった勇気ある『無個性』の少年、”無敵のデク”」の存在を認めることとなった。

 

 

 

「お前の存在は、今や下手なプロヒーロー以上に英雄扱いだ。大抵はオールマイトの活躍にばかり目が行ってるが……一部の、『没個性』やら『無個性』の人間は、お前に勇気をもらったってよ。偶然、アソコに居合わせただけの、ケンカだけが自慢のクソガキによぉ」

 

 留置場の中で、ギブスと包帯を巻かれた右腕を吊ってジッとしている緑谷出久に対して、担当している警官は、大いに見下し、憐れみ、あざける感情を声にこめていた。

 

「どうだ? ヒーロー志望ですらねぇガキのくせに、オールマイトの戦いに出しゃばったってだけで、一躍ヒーローに成り上がった気分は?」

 

 たとえ、やったことが友達の救出と、オールマイトとの巨悪への共闘という、一見すれば英雄的行動だとしても、所詮は、それまで散々法律違反を犯してきた不良少年だということには変わりない。

 そのことを忘れないように。自覚させるように。

 なにより――

 

「ムカつくよなぁ――俺ぁなぁ、お前らみてーな不良ってのが大っ嫌いなんだよ!!」

 

 たまたま担当に付けられた警官の、憂さと鬱憤を晴らすために。

 絶叫のもと投げられた、昼メシであるカップラーメンのカップがデクの顔にぶつかる。

 まだ残っていたスープが、デクの髪と顔を汚した。

 

 

 今に限ったことじゃない。

 担当警官として、取り調べを行った時から、この男の不良嫌いは全面に出ていた。

 取り調べの内容も、名前に住所、東卍のこと等、必要事項やお定まりのことももちろん聞いてはいた。だが、それ以外の質問は……

 

「巷で出回ってる東卍やら”無敵のデク”の噂、あれ全部ウソだろ?」

「本当はヒーローたちの戦いに割って入って、美味しい所取りしてただけなんだろ?」

「お前ら不良は、ウソと暴力と美味しい所取りだけは異常に上手い生き物だものなぁ?」

 そんな、”無敵のデク”や東卍に限らず、『不良』そのものを否定してやりたいがための、一方的な意味の無い文言ばかり。

 

 

「悪事やルール破りが格好いいって勘違いしてる、生まれてくる価値も無ぇ役立たずのゴミどもがよぉ、たかだかあの場に居合わせたってだけのことでよぉ……なぁ、本当は狙ってアソコにいたんじゃねぇのかぁ? 友達がさらわれたの、お前のせいじゃねーのかぁ? お前、本当は連合の仲間じゃねーのかぁ? こうなるのが目的でよぉ?」

 

 もはや、言っていることは支離滅裂な陰謀論だが……

 そんな警官の言動に対して、ただジッと座っているデクは、無言を貫くばかり。

 相手にするだけ無駄なことも、下手にキレては損だということも誰もが分かることながら……

 

 デクの考えることは、このうるさい警官のことでも、ボロボロになった右腕のことでもない。

 東卍の、仲間たちのこと。

 

(みんな、どうしてるかな……俺たち二人以外、全員逃げたって話だけど……)

 

 そして、自分とは別の、もう一人……

 

(あの場に残って、隊員たちを逃がすために『個性』を使った……分かってたんだろうな。あの場でアイツを捕まえられるの、”エンデヴァー”だけだってこと……帰るのかな? 家に……)

 

 義兄(荼毘)のことをずっと、考えていた。

 

(凍矢……)

 

 

「あーあ!! つまんねークソガキだなぁ!! ここでひと暴れでもしてくれりゃあ楽できるのによぉ!?」

 

 昼メシも平らげ。尋問(あそび)にも飽きて。やることも無いこの部屋で、この男にできることなど、しゃべること以外にない。その唯一のしゃべり相手は、返事も反応もまるで無い。

 

「はー……もういいわ、お前。とりあえず上には、テメーに関する噂の全部、ウソだったって言っとくわ。で、謝罪も反省もねーんで、特別少年院行き決定。そこでやることやった後は即刻刑務所行きだ。右腕の治療もさせねーし、俺の目の黒い内は、絶対ぇシャバには出さねーから。不良(クズ)は一生、牢屋の中で過ごして、そのまま死ね」

 

 堂々と、職権濫用を宣言し、痰を吐き捨てる。

 それにさえ反応しないデクのいる牢屋に、苛立たしげに蹴りを入れたところで……

 

 

「お疲れ様です!!」

 

 担当警官の上司か先輩か。いずれにせよ、立場が上らしい男が、入ってきた。

 

「鍵を開けろ。面会だ」

「ハッ! いえ、しかし、コイツは危険な男です。現に、全く反省も見られず、牢屋から出せば、暴れ出す危険があります……」

「それを対処するのも俺たちの仕事だろう? いいからさっさと開けろ」

「し、しかし、こんなクズに面会なんて、甘やかすことなど――」

 

「開けろ」

 

 この期に及んで、立場に物を言わせてデクを貶めようとする担当警官に、入ってきた男は毅然と指示を出す。

 担当はややふて腐れながら、言われた通り鍵を開け、座っているデクを、ケガも無視して乱暴に立ち上がらせた。

 

「……おい、臭いぞ? お前、一体なにした?」

「ハッ! この男が、私が食べていた昼食のカップラーメンをよこせと、もみ合いになった際にスープをかぶって……」

「この牢屋と、その椅子との距離でか?」

「そ、それは……そう! 格子にもたれかかって食べていたもので。自分も油断していました!」

「……風呂へ入れる。こんなニオイでは、あの人には会わせられん」

「あの人?」

 

 デクの腕を優しく引く男の言葉に、担当警官は、目を丸くすることになった。

 

「オールマイトだ」

 

 

 

 

「私が面会に来た!!」

 

「オールマイト……そんなナリでも元気だな」

 

 風呂に入れられ、服も着替えさせられて、座らされたデクは、穴開き窓の向こうにいる痩せこけた男にそう感想を述べた。

 

 ちなみに、面会相手がオールマイトだと聞いた担当警官は、なお更こんなクズを会わせるわけにはいかないと、力づくでデクと上司を止めようとしたのが問題となり、謹慎となった。

 あげく、デクを貶めるための適当かつデタラメな調書と取り調べが明るみとなり、懲戒解雇となるのは、デクの知ったことじゃない話である。

 

 

「かっちゃん……爆豪勝己は、大丈夫か?」

「ああ。無事に家に帰ることができた……そういう君は、傷は大丈夫かい?」

「大丈夫……じゃ、ねーかもな。医者が言うには、右腕が残ってるのが奇跡なくらい酷ぇ有様だったらしい。普通に治りこそするけど、もしまた似たような大ケガしたら、一生右腕が使えなくなるかも、だってさ」

「ふむ……”リカバリーガール”が診てくれれば、完治自体はすぐにできるのだが」

「逮捕された不良が、そんな贅沢な治療受けられるかよ。で、何の用だ?」

 

 ケガのことは、すでに受け入れている。逮捕されたことも。このまま年少か、少年刑務所に……いっそ、タルタロスに入ることさえも。

 ヴィジランテとして動いている時点で、全て覚悟していたことだ。

 

 

 そんな、覚悟も胆も据わった少年に対して、オールマイトは、本題を切り出すことにした。

 

「まずは……ありがとう。あの時、私と一緒に戦ってくれて。君の加勢と鼓舞が無ければ、私は間違いなく負けていた。本当に、ありがとう」

 

 立ち上がり、頭を下げる。

 

「やめろよ……No1ヒーローが、俺みたいなクズに頭下げるんじゃねぇ」

「私はすでにNo1ヒーローではない」

 

 オールマイトの行為を咎めたデクに、オールマイトは、自身の服をめくりあげ……

 痛々しい傷跡が残る、腹を見せながら話を続けた。

 

「ヤツとは、六年ほど前にも戦った。その時も勝利はしたが、この通り深い傷を負った。呼吸器半壊、胃袋全摘……この傷が元で、年々体力が無くなっていってね。そして、神野での戦いで、とうとう出し切ってしまった……事実上の引退だよ。もはや私に、戦う力は残されていない」

「そんな身体で戦うとか……バカかよ、アンタ」

「無個性の身で戦った君がそれを言うかい?」

「……」

 

 オールマイトからの問いかけに、言葉を失うデク。

 

 

「それにしても……警察にもヒーローにも、緘口令が敷かれていたのに、どうやって場所が神野区だと突き止めた? 報道があったのは、大規模な破壊が起きた後のはずだ」

「そいつは言えねぇ……ただ、かなり汚ぇ方法使ったってことだけは言っとく」

 

 その言葉の通り、デク自身も、その方法と行為に嫌悪と後悔をにじませているらしい。

 そんなデクの様子に、オールマイトはこれ以上の追及を止め、代わりに紙袋を置いた。

 

「お礼と質問の次に、届け物がある。コレだ」

 

 袋から取り出されたのは、デクが神野での決戦で落としていたもの。

 綺麗に洗濯され、折り畳まれた、黒地に金文字の刺繍の入った、ロング丈の特攻服。

 

「そして、コレもだ」

 

 続けて目の前に置かれたのは、一本の鍵。加えて、取り出されたスマホに表示されているのは、今の痩せこけた姿でピースサインを決めるオールマイトと――

 

「これ……俺のCB250T(バブ)。え? 無事だったの?」

「いや。かなりひどく壊れていた……」

 

 言われてもう一度、スマホを見てみる。

 色、形、そして、車体に塗装した卍のマーク。

 デクが見間違えるはずがない。長年乗ってきた愛機を。

 

「私は乗り物には詳しくなくてね、最初は、助けられたお礼とお詫びに、新車をプレゼントしようかとも思った。だが、あのバイクが証拠品として回収されていた時、回収した作業員が話しているのが聞こえてね。修理してもらった……あのバイク、既製品ではなく、ハンドメイドなんだろう?」

「ああ。そうだ……」

 

 デクは、スマホを見つめつつ、懐かしそうに、表情を緩ませ、目を輝かせた。

 

「まだ中坊だった時、凍矢……兄貴が、瓦礫の中からコイツのエンジン見つけてきたんだ。その後、ネットやらジャンクショップやら回って、コツコツ部品集めて、俺と兄貴で組み上げて、完成させたのがコイツ」

「ほぉ? 中々浪漫ある話だね」

「だろ……本当は、兄貴がコイツに乗るはずだった。けど、兄貴は俺にくれた。火傷がひどくて、運転はできねーからって」

 

 神野でのこと。バイクのこと。そして、兄の話。

 

「兄貴さ、将来は、バイクショップ経営したいって言ってた。炎を出す個性なのに。オイルやガソリン使って危ねーのにな? バイクショップでバイトして、金貯めてた。将来、俺たちが乗るバイクの修理してやるって言って……」

 

 一緒にバイクを組み立てた兄。

 一緒にヴィジランテとして戦ってくれた兄。

 エンデヴァーに捕まった、兄……

 

「凍矢……ヒミコ……」

 

 兄や、妹だけじゃない。こんな自分の周りに集まってきてくれた、仲間……

 

(ケンチン……三ツ谷……場地……パーちん……一虎……ムーチョ……)

 

 捕まることは、とっくの昔から覚悟していた。実際に捕まった時、後悔も不安も感じなかった。むしろ、自分と兄以外、全員が上手いこと逃げられたことが分かってホッとした。

 

 それが、今さらになって思う。

 俺はもう、兄とも、妹とも会えなくなるんだろうか……

 仲間たちと、会うことはできないんだろうか……

 

 

「実は、用件はもう一つある」

 

 冷静に考えれば、未成年なこともあって、死刑や終身刑になるわけでもなし。

 少年院に入ることになっても、数年もすれば出てこられるだろう。

 それでも、頭に過った義兄との別れの予感から、思わず卑屈になってしまった。

 

 そうして嘆いていたデクに対して、オールマイトは、もう一つの要件とやらを切り出した。

 

 

「実は君に、私の勤め先に来てもらいたいと思っている」

「オールマイトの勤め先……それって――」

 

 

「そう! 私の勤め先――雄英高校ヒーロー科に、生徒としてだ!!」

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 日付は変わり……

 東京都某所にある、名も無い神社前にて――

 

 見るからにガラの悪い、不良と分かる少年たちの集団がいた。

 全員、顔やヘアスタイルは様々だが、全員が同じ服を着ていた。

 黒地の特攻服。そして、金文字の刺繍が刻まれていた。

 

 

   『 東

     京

     卍

     會 』

 

 

 彼らがここを集会場所とした理由は、いくつかある。

 まず、繁華街や住宅地といった、人の密集地からはそこそこ離れた場所にあること。

 監視カメラ等、見つかる不安要素がほぼほぼ存在しないこと。

 この神社の神主家族が彼らを受け入れ場所を提供してくれたことも大きい。

 代わりに集会が終わった後は、伊口のような新入りたちを中心に綺麗に掃除をすることがココを使う条件なのだが……

 

 そんな神社には、東京卍會の幹部および隊員らが、二人を除いて全員集まっている。

 加えて、弐番隊隊員の一人、飛田弾柔郎の隣には、今日まで決して集会には出させなかった少女もいた。

 

 

中学生

 相場(あいば) 愛美(まなみ)(通称”ラブラバ”)

 

 

 加えて、落ち込むヒミコと、そんなヒミコに抱きしめられながら浮かない顔の出水洸汰もその場にいる。

 東卍メンバー全員は、不良らしく憮然とした態度と表情ながら……

 その顔にはどこか、力が入っていないと言うか、覇気が抜けているというか……

 

 

「これより!! 東京卍會緊急集会を始める!!」

 

 そんな隊員らに対して、前に立つ副総長、ドラケンが声を上げ。

 全員の表情が、その場の空気が、一気に引き締まった。

 

「「「「……」」」」

「「「「……」」」」

 

 引き締まりはした。だが、それでもいつもこの場で見せていたような、力強さは無い。

 それはひとえに、自分たちの前に立つべき人物が、いないと分かっているからだ。

 

 東京卍會100人。その頂点に立ってきた、その人が――

 家族として、ずっと被身子と一緒にいたお兄ちゃんが――

 ほんの数日前、洸汰が電話でヒーローや両親のことをお喋りしたデクにーちゃんが――

 

 

「今日集まってもらったのは――総長から話があるからだ!!」

 

 洸汰も被身子も、隊員らも全員、聞き間違えかと思った。

 

「デク! 前に出ろ!!」

 

 続けて叫んだドラケンの言葉の後で……

 

「……え、デク?」

「総長!?」

「ウソ! 荼毘と一緒に、逮捕されたはずじゃ……!!」

 

「デクくん!?」

「デクにーちゃん!?」

 

 彼がいつも立っていた、神社の石段の上。そこに、いつも立ってきた彼……

 “無敵のデク”が立った。

 

 

「……まずは礼を言わせてもらう。誰にも言わず、独断で勝手に動いた俺のことを、全員が命懸けで救けにきてくれたこと。本当に、ありがとう」

 

 重症だったのが、完治した右腕。

 そんな両手を後ろに、ではなく、左右の太ももに着けて、頭を90度下げる。

 そんな、暴走族らしからぬ、綺麗で丁寧なお辞儀を受けて、隊員全員、厳粛な気持ちになった。

 

「荼毘はココにはいねぇが、それでもまた東卍全員、こうして一人も欠けることなく集まることができたことを、本当に嬉しく思う……俺が閉じ込められてる間に起こったことは、大体聞いた。今までも、東卍の名が上がるような事件はいくつもあった。それを、お前たちと一緒に乗り越える度、東卍は段々、隠せない存在になっていった。そして今、この国で東卍の名前を知らねぇ人間はいねぇだろう……俺たちからすりゃあ、あまり嬉しい状況とは言えねぇ。けどこれから先、俺たちは何世代にも渡って語り継がれる時代を創った!」

 

 人として褒められるところが無い自分たちが、決して許されない行為に走る。

 そんな存在でありながら、それでも居場所が欲しくて、何かを変えたくて、生きがいが欲しくて……一言では表せられない様々な気持ちから、このチームで戦った。

 

 一笑に伏す者もいるだろう。呆れ果てる者もいるだろう。

 それでも、自分たちは確かにここにいた。

 それを、総長は言葉にしてくれている……

 

「逮捕された俺がここにいるのは、恩赦を受けることができたからだ。あの戦いで、オールマイトや倒れたプロヒーローを救けたこと、今までやってきた敵退治の功績とか、世論の声なんかで、俺や、お前たちがしてきた罪は帳消しにしてもらえた……けど、もう一つ、恩赦の条件がある」

 

 恩赦の条件……

 皆まで言われるまでも無く、全員が理解する。

 とうとう、来るべき時が来た、と……

 

 

 

「本日をもって――東京卍會は解散する!!」

 

 

 

「「「「……」」」」

「「「「……」」」」

 

 疑問も反論も、誰からも声は上がらない。

 それが一番いいと……

 そうするしかないのだと……

 不良である彼らと言えど、理解することができるから。

 

 

「壱番隊隊長 場地圭介! 前へ!!」

 

 その言葉に従って、場地が、デクの前に立った。

 

「ガキのころからの付き合いだけど、ここまで付き合ってもらって、サンキューな」

「フン……」

 

 

「弐番隊隊長 三ツ谷隆! 前へ!!」

 

 前に立つ、三ツ谷……

 

「お前がいたから、ここまで来れた」

「バーカ……」

 

 

「参番隊隊長 林田春樹! 前へ!!」

 

 パーちん……

 

「今までありがとうな」

「……へッ、とーぜんだ」

 

 

「肆番隊隊長 羽宮一虎! 前へ!!」

 

 一虎……

 

「お前には何度も助けられた」

「デク……」

 

 

「伍番隊隊長 武藤泰弘! 前へ!!」

 

 ムーチョ……

 

「今日まで戦い抜けたのも、お前がいたからだ」

「……」

 

 

「最後に――東京卍會副総長 龍宮寺堅!!」

 

 最後に、ドラケン……

 

「緑谷出久……クソわがまま。天上天下唯我独尊男。けど俺らは、そのカリスマに惹かれてここまでついてきた。ここまで、戦ってこられた――」

 

「今日までお疲れさまでした!! 総長!!」

 

「ありがとう。ケンチン」

 

 

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

 

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

 

 

 誰からともなく、隊員たちが叫び出した。

 涙ながらに、あらんかぎりの力を腹に込め、声に込め……

 

「東卍!! 東卍!!」

「東卍!! 東卍!!」

「東卍!! 東卍!!」

 

 洸汰も、他より小さな体や声ながら、声を上げていた。

 被身子も。ラブラバさえも……

 

 

「東卍は今日で解散する! どんな最高の時にも終わりはある――それが今日ってだけだ! けど忘れんな! 東卍は、いつでもお前らの心ん中にある!!」

 

 

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

 

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

「「「「東卍!! 東卍!!」」」」

 

 

 人は彼らをヴィジランテと呼ぶ。単純に不良とも。犯罪者と呼ぶ者もいる。

 そんな汚名を敢えて誇りとし、ただ仲間のために戦ってきた不良(こども)たち。

 そんな、一つのチームが……

 一つの時代が……

 

 いつ止むとも分からない歓声と共に――

 

 今ここに、幕を下ろした――

 

 

 

 

 

「クゥーッ! 何というか、込み上げるものがありますな!」

「それは同意だが……僕たち、この歓声が止むまで出られないんじゃないかい?」

 

 

 

 

 

 

・オマケ

 

 ~ NGシーン ~

 

 

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 ――オールマイトォオオオオオオオオ!!

 

 

 一瞬のうちに起きた、いくつもの攻防。

 それを最後に制し、勝利したのは、オールマイト。

 

 決して敗けない……

 決して折れない……

 

 左の拳を天に掲げ――勝利のスタンディング!

 

「今は無理をせず……!」

「させてやってくれ……仕事中だ」

 

 平和の象徴……

 No1ヒーローとしての、最後の……

 

 

 誰もが、オールマイトの勝利に酔いしれた。

 誰もが、オールマイトの姿に見入っていた。

 誰もが、戦いの集結への安堵に満たされた。

 

「……ん?」

 

 そんな、平和を与えてみせた、オールマイトに……

 

 

「……え?」

 

 近づき、蹴りを繰り出した、一人の少年。

 

「……」

 

 力を使い果たし、弱り切っていたオールマイトに、その蹴りを避ける力も、耐える力さえも無く、成すすべなく、沈んだ。

 

 

「……な……なッ……!!」

 

「なにしやがんだテメェ!!」

「クソガキ!! オールマイトになんてことを!!」

「このクソヴィジランテ野郎があああああああ!!」

 

 映像を見ていた群衆、集結していたプロヒーロー、テレビクルー、全員の目と怒りが、”無敵のデク”に向けられた。

 

「デ、デク……!」

「なにして……!」

 

 同じように、目を奪われていた三ツ谷とドラケン。

 そんな二人に顔を向け……

 

「……! デク、お前……!」

 

 三ツ谷は、デクの口の動きを見て、理解した。

 

「ドラケン、今のうちに逃げるぞ」

「ああん? だが、デクがまだ……」

「そのデクが逃げろって言ってんだよ! ヒーロー、警察、テレビ、全部の目がアイツ一人に向いてる今のうちに……!」

「なぁ……!」

 

 総長の思い。覚悟。それらを知った、副総長は……

 

「デク……お前ら立て! 東卍全員、今のうちに逃げるぞ!!」

 

 副総長の号令に、驚愕と戸惑いを見せつつも、立ち上がる東卍メンバー。

 今の騒動を前に、たかだか子供のヴィジランテ集団の逃亡に、気にする人間はほとんどいない。

 

「――おい! お前たち、どこへ行く気だ!?」

 

 だが当然、中には気づく者もいる。

 プロヒーロー”シンリンカムイ”が、自身の個性である『樹木』の枝を伸ばした。

 

「うお……!」

 

 が、その枝を阻むものがあった。

 

 

東京卍會 壱番隊隊員

 “荼毘”

個性:『蒼炎』

 

 

「荼毘!」

 

「お前らは行け……俺は、デクと残る」

 

「……そうか、分かった」

 

 蒼い炎を燃えたぎらせて、シンリンカムイや、プロヒーローらの行く手を阻む。

 

「やめろおおおおお!!」

 

 そんな炎を突破できる、唯一のプロヒーロー。

 炎熱を操りし、No2ヒーロー、エンデヴァーが、荼毘を捕らえた。

 

「中々の火力だ。ヴィジランテにしておくにはもったいないな」

「エンデヴァーに褒められるとは、炎熱系冥利に尽きるぜ……」

「……む? 貴様の個性、己の身を焼くのか?」

「お母さんの体質を受け継いじまってなぁ……せっかくの父親譲りの個性も、ちっとも活かせねぇ、お父さんはそんな俺を見てくれねぇで、本当、人生に絶望したもんだ」

「なんだと……?」

 

 話しながら、視線を向けた先。

 警察、プロヒーローらに存分に痛めつけられた様子で、手錠をハメられ、歩かされていく。

 そんな義弟(出久)と、目が合った。

 

「ありがとな……出久」

 

 

 

 




最初はオマケの方向性で書いてたんですけど、以降の東卍への当たりがヤバイことになると気づいてやめました。



『八木 俊則』
 No1ヒーロー"オールマイト"
 言わずと知れた平和の象徴。
 今作では出久に出会っていないため、『個性』はその身に宿したまま。
 ずっと後継者を見つけられずにいた状態でAFOとの決戦に臨み、一度は心が折れかけるも、無個性の身でAFOに挑み続ける"無敵のデク"の姿を見て奮起。
 最後の打ち合いも本当は危なかったが、デクのアシストによってギリギリ勝利をつかむことができた。 
 彼がいなければ負けていたということで、チームの解散という条件付きで恩赦を与えるよう警察に働きかけた。


『????』
 鼠なのか熊なのか……
 何者なんだお前は!?



次回、最終話


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