【完結】"無敵のデク"   作:大海

8 / 10
本編後の日常編集。書きたいこと全部書いた結果、長くなっちゃったんで二つに分けます。


番外編【 The Final 】A-part

 

・昼休み

 

 昼休み――

 

 おそらくは、大半の企業、学校等に設けられた、そこに通う者たちの休憩時間。

 何なら、時間帯はどうあれ設けることは法律でも決められているし、それが守られていなければ企業は法律違反となり、罰則を喰らうことにさえなる。

 

 目的は主に昼食だろうが、食べる・食べないは自由。

 それ以外にも、基本的にどう過ごすかは各々の自由。

 友人知人と会話するも自由。睡眠を取るも自由。

 特に学校なら、遊びに興じるも自由。

 

 そして、読書に耽るもまた、自由。

 

「「「うっひょ~~~~~~♡」」」

 

 それがたとえ、あまり健全とは言い難い内容の書物であろうとも……

 

 

「これこれ! 新発売プロヒーロー”マウントレディ”のグラビア写真集!」

「特注の個性対応ビキニと個性の『巨大化』をフルに使ったダイナマイトセクシーショット祭!」

 

 

雄英高校 ヒーロー科1-A

 峰田 実(コードネーム:”グレープジュース”)

 上鳴 電気(コードネーム:”チャージズマ”)

 

 

 場所は、日本屈指のヒーロー養成進学校、雄英高校。

 そこに通う一年生生徒。その中でも、特に性的な物事への興味関心が高く、加えて性欲も強い二人の生徒が、校内の人気のない中庭にて、セクシーな写真集を手に声を上げ、鼻を伸ばし、目じりを下げ、よだれを垂らしている。

 まあ、ここまでなら、よくある青春の一ページと言える、微笑ましい光景に違いないのだが……

 

「おぉー!! なんじゃこりゃ!? ただでさえダイナマイトなのが巨大化で更にダイナマイトとか反則だ反則!!」

 

 そこに更に、大の成人男性の声が混ざっているのは、よくある、とは言い難いかもしれない。

 

 

雄英高校 ヒーロー科1-M 担任

 鬼塚 英吉(プロヒーロー:”オニバク”)

 

 

 彼らと同じ一年生の担任ながら、この男は夏休み明けに配属された新米教師。彼らとは関わりも、その時間も少ない。

 なのだが、他の教師にはない親しみやすさというか、気安い雰囲気から、感覚や距離感はどうあれアッサリ生徒たちと親交を深めてしまった。

 特に、性に関しても奔放な性格だった結果、一年、どころか在校生徒の中でも特にそういう関心が強いこの二人とは意気投合。

 タマに、お互いの秘蔵のコレクションを持ち寄っては、こうして見せ合うという間柄になったというわけだ。

 

 

「なあ、鬼塚先生さぁ、前のモデルのDVDもすげーよかったんだけどさぁ、18禁も貸してくれよぉ……」

「おぉ! 俺も俺も!! 俺が持ってるのも貸すからさぁ!」

 

 話しながら、二人は教師に対して、自分たちでは年齢的に手に入らない物品に対する交換条件を提示してきたが……

 

「あぁー、ダメダメ。お前らまだ高1だろう? 卒業するまではガマンしろ?」

 

 と、直前まで目をガン開きしながら話していた表情をすぐさま元に戻して、冷静に対応した。

 

「ちぇー、そういうところは先生してるんだもんなぁ……」

「だったらよぉ、鬼塚先生……今やプレミア付いたミッドナイト先生の若かりし頃のセクシー写真集ならどうよ?」

「なに……?」

 

 と、峰田の言葉に、どうやらその写真集の存在を知っていたらしい鬼塚は、瞬時に反応。

 直後、峰田はスマホを取り出して、画面を表示させた。

 

「こいつは、その写真集のページのごく一部だぜ……」

「ほぉーッ! これは、また……!」

「いいなぁー、これ……」

 

 三人でスマホをガン見し、再び鼻の下を伸ばす。

 

「な? 鬼塚先生、どうよ?」

 

 と、鬼塚はガン見したスマホを握ろうとするが……

 

「……いや、やっぱダメだ。お前ら、立派なヒーローになりたきゃ最低限のルールは守らなきゃだ。一教師が、その邪魔するようなことできるかよ?」

 

 再び冷静な表情と声になって、そう注意喚起と拒否を示してしまう。

 一見、この二人とは同類のようで、軽薄に見えて大人として、教師としての線引きはわきまえ、遵守している。緩さはあるが、全てを許容するわけじゃない。

 あまり、大人として尊敬できると言えた人物ではないのだが……

 

 二人とも、そんな教師の姿に諦めと感心を覚えて、峰田は、今度タダでプレミア写真集を貸してやろうと決めた。

 

 

 そして、再び手元の写真集で、男三人盛り上がる――

 

「ゲフン……」

 

 はずだった……

 聞き覚えの、ありすぎる声。

 見覚えの、ありすぎるシルエット。

 三人が、ゆっくり顔を上げた、その先には……

 

 

雄英高校 1-A 担任

 相澤 消太(プロヒーロー:”イレイザーヘッド”)

 

 

「あ……ど、どうも、相澤ちゃん――いや、相澤先生」

 

 鬼塚が気まずそうに呼びかけ、生徒二人は固まっていた。

 

「……没収」

 

 相澤は、それだけ言って写真集を取り上げた。

 

「ああー! そんな殺生な!」

「買ったばっかのやつ!?」

「ちょ、いいじゃねーか、相澤ちゃん。アオハル男子の数少ない楽しみを……」

 

「……減給」

 

 生徒二人は嘆き、鬼塚は何とかなだめようとするも、すぐさま鬼塚に対する罰も声に出した。

 

「あー!! ちょ、そんな、相澤ちゃん!?」

「鬼塚先生……俺は、アナタの教育係でもあるってこと、忘れんでくださいよ? 生徒の持ち物を、注意もしないで一緒に喜んで眺めるっていうのは、教師としてどうなんですかね?」

「そ、それはほら……教師と生徒の交流の一環で……」

「本来なら、この二人にも反省文を書かせるところですが……まあ、今回は鬼塚先生が責任を取るってことらしいので、大目に見ておきましょう」

 

「ありがとうございます!! 鬼塚先生!!」

「ありがとうございます!! 鬼塚先生!!」

 

「おめぇらー!!?」

 

 生徒二人が速攻で鬼塚に頭を下げた結果、今回の件はおとがめなしとなった。

 

 

 

 後日、この二人が学生寮に持ち込んでいたらしい『コレクション』は全て学校に没収されるのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

・職員室にて

 

 昼休み中の、職員室にて……

 

「ちぇー。厳しすぎだぜ、相澤ちゃん……これで、二度目の減給だよ。このままじゃあ給料出ても飢え死に待ったなしってやつだ……」

 

 自身の机に突っ伏して、目に見えて落ち込んでいる鬼塚。

 そんな鬼塚に、隣に座る教師が声をかけていた。

 

「元気出してください、鬼塚先生。先輩も、何だかんだ鬼塚先生のことを期待してる証拠ですよ」

 

 

雄英高校 教師

 “13号”

 

 

 分厚い宇宙服を思わせるヒーローコスチュームに、顔を含む全身を隠しているプロヒーロー、13号が優しく語り掛けた。

 

「……そう言えば、鬼塚先生って、なんでヒーロー活動停止処分になっちゃったんですか?」

 

 会話の流れで、以前から気になっていたことを質問する13号。

 免許を必要とする仕事である以上、活動の停止を受ける場合もあれば、最悪、許可の取り消しや免許のはく奪、返納命令等を受けることもあり得る。

 だがそれも、よほどの失態か、ヒーローにあるまじき不正や不法行為でも犯さない限り、どれもあり得ないことだ。

 彼が実質無期限の活動停止処分を受けた原因は13号も聞いて知っているが、それもせいぜい、謹慎か、事務所のクビ程度で済む話だろうに……

 

「別に……話すほどのことでもねーけど?」

「気になります。参考までに、僕だって明日は我が身なんですから」

「そうか? なら――」

 

 そして鬼塚は、語りだした。

 

 

「その日も上司と一緒にプロヒーローとしてパトロールしてたんだがよ、途中で敵が人を襲ってたから、そいつノしてとっ捕まえたわけだ。そこまでは良かったんだがなぁ」

「はい……」

 

「助けた後、被害者のケアもヒーローの仕事の一つじゃん?」

「まあ、そうですね? 中には嫌がるヒーローや被害者もいますけど……」

「だよな? その上司のヒーローもよ、若くて美人な女にはデレデレ近づくけどよ、相手が男だったり年寄りだったりしたら、助けはするけど、その後は放っておくっていうヤツだったんだわ」

「サイテーですね」

 

「ああ……それで、その時も無視するのかと思ったらよぉ、襲われた直後の被害者だぜ? 高校生男子二人組を、説教しだしたんだわ」

「え? 説教?」

「まあ、見るからに不良って感じの見た目してたのがソイツの鼻に着いたのかもな。俺のことも、人手不足だったから仕方なく雇ったって感じだったし……それで、大勢が見てる前だってのに、お前らがそんなバカな格好してるから狙われただの、健全な格好しとけば俺の仕事が増えずに済んだだの……」

「え? ひどい……」

 

「不良二人が逃げねーよう、正座までさせてな。そんで、格好とか不良批判とかならまだ分かったけど、途中で自慢話までしだして、そんな自分に比べて、二人がどんだけクズでクソで社会のゴミか……そんなことを、二人がとうとう泣きだすまで続けてさぁ」

「なんですか、それ……!?」

「で、黙って聞いてた俺も頭にきたもんで、ついその上司にジャーマン仕掛けちまってなぁ」

「ジャーマン、ですか……!」

 

「ああ……で、どうにもその上司の親、政治家のお偉いさんだったらしくてなぁ。その事件のことももみ消して、気がついたら、俺一人が全部悪いってことにされてて、プロヒーローとしてはかなり重い、活動停止処分ってことになっちまったわけだ。無期限のな」

「……」

「免許が剥奪されるよりはマシだが、停止が無期限なら持ってねーのと変わらねーし……それに、その時には俺ももう、プロヒーローなんか辞めるつもりだったからな。被害者に言葉の暴力浴びせるのが許される仕事なら、プロヒーローなんか願い下げだってよ」

 

「違う……ヒーローは、そんな仕事じゃない!!」

 

 黙って聞いていた13号だったが、とうとう大声を上げた。

 

「……ああ。13号ちゃんや相澤ちゃんとか、オールマイトなんか見てたらそれも分かるよ。でもまあ、もう辞めてもいいって思ってた俺に、校長が声かけてきて、働きによっちゃあ、停止処分の取り下げを申請してもいいって条件つけてくれて、で、今に至るってわけだ」

「……」

 

 彼ほどの人が、活動停止処分なんて重すぎる罰を受けた原因がずっと気になっていた。

 それを知った結果、そんな理不尽が許せないと感じた。

 そして……

 

 

「……ヒーローです」

「え?」

「鬼塚先生は、立派なプロヒーローです! だから、ヒーローを辞めるなんて、言わないで下さい!!」

 

 叫びながら、ヒーロースーツの分厚いスーツに包まれた手で、鬼塚の手を握った。

 

「あー……ありがとう。13号ちゃん」

「……は! ご、ごめんなさい……」

 

 お礼を言われ、慌てて飛びのいて。

 急いで自身の席に座り、小さくなった。

 

 

「えっと、その……そうだ! 金欠なら、また飲みに行きませんか? ビール代くらいならおごりますよ?」

「マジ!? ……あ、いやぁ、遠慮しとくよ。この前もおごってもらったばっかりだしさ」

 

 13号からのありがたい誘いに対して、鬼塚は意外にも、拒否を示した。

 

 

「あらぁ……なら私とならどうかしら?」

 

 と、コスチュームの下でうなだれている13号の前で、再び鬼塚にかけられる声。

 

 

雄英高校 教師

 “ミッドナイト”

 

 

「あ……ミッドナイトちゃん♡♡」

 

 13号とは全く違い、分かりやすく表情を緩めている。

 そんな二人のやり取りを目の前に、13号は、コスチュームの下で頬を膨らませていた。

 

 

「……ミッドナイト先生は、鬼塚先生に気があるんですか?」

 

 結局、ミッドナイトからの誘いも遠慮した鬼塚が、職員室を後にしたタイミングで、13号はそんな質問をミッドナイトに投げかけた。

 

「フフフ……そうねぇ。今までにないタイプで、面白いし可愛いとは思うわよ? 恋愛に発展するかどうかは、まあ、お互いの関わり次第ってところかしら」

 

 

 明確に好意があるわけじゃない。が、決してないというわけでもない。

 それを知れた13号は……

 それ以上は聞かず、だが心内では、決してこの二人の動向を見逃すまいと誓うのだった。

 

(まだ、あの日のお礼も言えてないことだし……)

 

 

 

 彼はすでに覚えてはいまい。

 もう何年も前の話だし、当時は今と違ってヒーローコスチュームも着ておらず、どころかヒーローデビューすらしていない高校時代。

 ある凶悪敵を前に、ヒーロー科にも関わらず何もできず、震えて尻もちを着くことしかできなかった。

 そんな自分の前に、颯爽とバイクで現れ、その敵を個性も使わず圧倒してしまった。

 助けてくれた後は、怖がる自分をバイクで家まで送ってくれて。

 今思えば、送り狼される可能性もあったが……

 むしろ当時は、彼とならそうなってもいいと、本気で思いさえしていた。

 実際にはそうならず、お礼を言うヒマもなく去ってしまって……

 

 時間と共に、ほとんど忘れてしまっていた出来事だったけど……

 

 本当はずっと、彼に会いたいと思っていた。

 会って、お礼が言いたかった。

 

 そんな彼が、自分と同じ職場に現れた。

 髪型は初めて会った時のような、目立つリーゼントとは違ったけど、当時と同じ金髪にあの顔は、間違えるわけがない。

 豪快なようで意外と繊細なところも。

 適当に見えて大切な所では真面目な性格も。

 ずっと知れなかったそんな部分も知れて、一緒に働いて、話をするうち、気づけば、彼のことばかり考えるようになって。

 学校終わり。飲みに行って、酒好きな彼はたらふく飲んで。

 酔いつぶれた彼を介抱して。

 そのまま良い雰囲気になった二人は、自宅でなく、ラブのホテルへ……

 

 

 

「……まあ、がんばんなさいな」

 

 押し倒された瞬間聞こえてきた、ミッドナイトの声に、13号はイスから転げ落ち倒れるのだった。

 

 

 

 

 

・校外にて その1

 

 某作業場の、休憩スペースにて……

 

「ぬぅ……むううぅぅぅぅ――」

 

「ダメだ、開かねー!!」

「ああー、醤油の袋か……これ結構開かなかったりするよな?」

「くっそー、こんなギザギザしてんのに、なんで全然開かねーんだ? 俺は全力出してるつもりだぜ?」

「だがよぉ、最近はギザギザがないのに、『こちら側のどこからでも開きます』ってスゲーのもあるよな?」

「あぁー、あるある。あれは不思議だよな? どういう仕組みになってんだ?」

 

「仕組みなんかねーよ」

「え?」

「あれのどこに仕掛けがあるってんだよ? お前らは考えすぎだ。騙されてるだけなんだよ」

「騙されてる?」

「そうだ。お前らは『こちら側のどこからでも開きます』って文字を見てそれを信用してるだけだ。『これは絶対に開く』と思い込んでるから開いてしまう。人間てのは思い込みで予想外の力が発揮できるもんなんだよ……」

「待ってくれ。てことはつまり……『こちら側のどこからでも開きません』て書いてあったら開けられねーってことか?」

「ああ、もちろんだ。絶対に開かないだろうな。試してみるか?」

 

 キュ キュ キュ

『こちら側のどこからでも開きません』

 

「開けてみろ」

 

「……」

 

「ぬぅぅ……」

 

「あ、開かねぇ……」

 

「「「「本当かよおい!!?」」」」

 

「まあ、こんなもんだ……いいか? 人間なんてもんは先入観でどーにでもなる。まあ、いわゆる暗示ってやつだな。何事も、まずは疑ってかからねーとダメだ」

「くぅ……今回ばかりは素直に負けを認めるしかねーな」

 

「ちょっと待ってください。皆さん、まだ負けを認めるのは早いんじゃないですか?」

「なんだと?」

「確かに、彼の言う理論は正しいと思います。人間というものはとかく情報に惑わされがちですが、それが全ての人間に当てはまるかどうかは疑問です。そんな情報に惑わされることなく、常に安定したパワーを発揮できる人間がいたとしたら、開けられるのではないでしょうか?」

「情報に惑わされることなく、常に安定したパワーを発揮できる人間……そ、そんなヤツがどこにいるっていうんだよ?」

「例えば彼です」

 

 

作業員

 武藤泰弘(通称:ムーチョ)

個性:『ゴリラ』

 

 

「ゴリラ……個性を使うのはそもそも反則な気はするが、異形型だし、まあ良しとしよう」

「なるほど、そーきたか」

「まさにうってつけだな」

「けどよ、ゴリラのパワーを持ってすれば醤油の袋くらい簡単に開くんじゃねーか?」

「いや、分からんぞ。力の入れ具合でも変わるだろーしな」

「これは見物だな……」

 

 

「よし! 開けてくれ武藤!」

 

「……」

 

 

 ド

   ド

     ド

       ド

        ド

 

 

 チョキン

 

「あ、開けた!!」

「武藤が明けたぞ!!?」

 

 

 

 

「……いや、ハサミはダメって言っとかないと」

「スマン……」

 

 

 

 

 ガシャン ガシャン

「アイツらぁ、平然と個性差別してやがるなぁ……」

 

 パカラ パカラ

「……」

 

「やれやれだぜ」

 

 

 

 

 

・校外にて その2

 

 ビリ……

 

「いいかね? ラブラバ……」

「いいわ……ジェントル――」

 

 

 某アパートの室内に……

 互いに寄り添い合い、互いに触れ合い、互いを感じ合い……

 開いたものから取り出した……

 

「……ダメか。不採用だ」

「もー!! どーしてー!!」

 

 受け取った書面を放って、一人は力が抜け、もう一人は両手をブンブン振り回していた。

 

 

アルバイト

 飛田 弾柔郎

 

中学生

 相場 愛美(通称:ラブラバ)

 

 

「まあ、無理もないな。高校中退、特に資格を取ることもなくこの歳までアルバイト。個性も汎用的とは言い難い……分かっていたことだが、さすがにこうも不採用が続いては、心が折れそうになるな」

「諦めてはダメよ、ジェントル! 必ずジェントルを必要としてくれる場所があるはずだわ!!」

「ありがとう……君がいるから、私も頑張れる。私はめげない。早速、次の求人を探すとしよう。正直、今のレンタルビデオショップのアルバイトも、クビになるか自慢のヒゲを剃るかの二択を迫られ、あまり悠長にはしていられないのでね」

 

 

 

 

「『ジェントル・クリミナルの就職活動記』」

 

「『本日、通算7社目となる企業からの不採用通知を受け取ったジェントル。本人も自身の低学歴と資格なしという現実を受け入れ見つめながらも、それを回数という形で目視されるたび精神の傷はイヤ増すばかり。そんなジェントルに対して、声をかけ励ますことしかできないことが歯がゆくて仕方がない。そんな私に感謝をしてくれて、めげずに挑戦を続けるジェントルのことを私はこれからも見守り続けるわ』……書き込み」

 

「ふぅー……早速レスがついたわ」

 

『現在はマジもんの不景気。没個性、学歴なし、資格なしを雇ってくれる会社はマジに少ない。それでも働かなければ人は生きていけないという現実。その現実と戦うの、応援しています』

 

『現在大学生の俺も就活中。40社以上受けて未だ内定0。それでもがんばるしかない。ジェントル・クリミナルにも、一緒にがんばろうと伝えてください』

 

「うんうん……ジェントルの就職が決まらないのが許せなくて、気持ちを吐き出すために始めてみたブログ記事だったけど、同じ気持ちでいてくれる人たちがいて、なんだか安心するわね――あら?」

 

 

『どーせネタ記事だろ? そもそも就活なんかして当たり前なんだから、大げさに書くだけバカみたい』

 

 

「まあ、こんな誹謗中傷も、書き始めた時からあったし。こういうのは無視するに限るわね……と、新しい書き込み」

 

 

『てゆーか、毎回ジェントルとかわけ分かんねーヤツ出してるけど、本当はお前が就活失敗してるだけなんじゃねーの? こんな記事書いてる時間があるくらいなら今すぐ履歴書の一枚でも書けっつーの。就活なめすぎワロタwww』

 

 

「むむ~……正直、私の記事や私のことをどう思われたってなんとも思わないけど、ジェントルの存在を無いものにしようとするのは我慢ならないわ!」

 

「『あなたは自分がしていることの自覚はありますか? そんな自分を情けないと思いませんか? もっと自分の行動を顧みて態度を改めた方がよろしいですよ』」

 

「……レスがついたわ?」

 

 

『ラブラバさん。あまり荒らしには反応しない方がいいですよ。荒らしは反応を楽しむ人たちです。あなたが反応してしまえば荒らしに加担してしまうことになります。もし不快であるなら、黙って削除してしまいましょう』

 

 

「あら、いつも書き込みにレスしてくれてる『アッくん』さんだわ……けど、こればっかりは譲れないわ」

 

「『ご指摘ありがとうございます。お言葉ですが、削除してしまうのは簡単です。しかし私ではなくジェントルのことさえ侮辱したことを無視することは私にはできません。たとえ冷やかしと言えど、譲れない部分はキチンと言い返すべきであると私は考えております』……アッくんさんが離れてしまうかも知れないけど、私のブログだし、私なりにやらせてもらうわ」

 

 

『おいおい、お前ら仲間割れかよ。はぁー……就活も知らねーガキはこれだから(失笑)』

 

 

「くぅ……言いたい放題だわね!!」

 

「『あなたはネットマナーという言葉を知っていますか? それともネチケットという言葉の世代でしょうか』――」

 

 

 

 

「ふぅ……面接が終わった。キチンと受け答えはできたと思うが、どの道後は、結果を待つのみだな」

「……」

「どうかしたかね? ラブラバ」

「なんでもないわ、ジェントル」

「そうか……あまり私が言えたことではないが、あまり無理をするものでもない。嫌なことから逃げないことは人間の美徳だが、逃げることが悪ということもないんだ」

「ええ。分かっているわ、ジェントル。私も荒らしから決して逃げたりしない」

「嵐?」

「え……そ、そう、嵐! 嵐が来たって、ジェントルが一緒なら逃げずに戦えるわ!!」

「いや、嵐が来たら真っ先に逃げるべきだと思うが……」

 

 

 

 

「くぅー、私としたことが! ネットと現実をごっちゃにしてはダメ。こんなのはネット社会での大原則――幸い、ジェントルにはごまかせたみたいね」

 

 

『つーか、自作自演で記事盛り上げてるけど、虚しくないの? お前』

 

 

「自作自演!? なにを証拠にそんなことを……『あなたがなにを持ってこのブログを自作自演だと判断しているのか分かりませんが、少なくとも今言えることは』――」

 

 

『お前、ヒッキーだろ?』

 

 

「ヒッ……!?」

 

 

 

 

(ヒッキー……確かに、昔は実際にそうだったし、今も学校とジェントルの家に行く以外は部屋から出ない生活してるけど――ああーッもう! 書き込みの個人IDから住所特定しちゃえば仕返しの方法なんていくらでもあるのにー!!)

 

「うわあああああ!?」

 

「な! 信号無視!? 危ない――」

 

 

「ジェントリー・リバウンド!!」

 

 

 道路に尻もちを着いていた男の前まで迫っていたトラックが、突然何かに受け止められたようにゆっくりと停止した。

 やがて、弾性を持った空気に押し返され、ゆっくり後ろへ下がったトラックの前に、スーツ姿の飛田が立った。

 

「とっさの個性使用、失礼。警察に通報してもらっても構わないが、どうか安全運転でお願いしますよ?」

 

「ジェントル!!」

 

 トラック運転手に一礼したタイミングで、ラブラバは飛田に抱き着いた。

 

「ジェン、トル?」

「おっと……これは失礼。おケガはありませんかな?」

「は、はぁ……」

「良かった……では、通報も無いようなので、私はこれで」

「行きましょう♪ ジェントル」

「ああ、行こう。ラブラバ……」

 

 

「……」

 

 助けられた当人は、手をつないで去っていく二人を、ただただ見つめていた。

 

「ジェントル……ラブ、ラバ……?」

 

 

 

 

「あれから、あの悪質な書き込み無くなったわね。ようやく反省したのかしら?」

 

 

 

 




そう言えば、雄英に教頭っていたっけ……?



『峰田 実』
『上鳴 電気』
 ヒーロー科1-A
 別クラスの担任である鬼塚と気が合い、昼休みは一緒に過ごすことが多くなる。
 やることは、主に所有しているそういう雑誌やグッズの見せ合い。
 また、鬼塚が大人であることからR18グッズも度々希望を出しているが、鬼塚には教師として全て断られている。
 そのことに歯がゆさを感じることもあるが、教師としての尊厳と生徒である自身らの立場を重んじる態度には敬意の気持ちを感じている。



『相澤 消太』
 方向性は違うが、元ネタにおける内山田枠。
 校長から鬼塚の教育係を任命され、事あるごとに鬼塚の奇行に振り回されている。


『"13号"』
 元ネタにおける冬月ちゃん枠。
 まだ免許も取得していないヒーロー科時代に、敵を相手になにもできなかったところを鬼塚に救けてもらった。
 名前も聞けず、お礼も言えないまま別れてしまい、記憶の片隅に残っている程度の存在だったが、奇しくも雄英で再会し彼であることを確信。
 鬼塚と接し、その人となりや、ヒーロー活動停止処分となった経緯を知ったことで、憧れの人を超え、完全に恋愛対象として見るようになってしまう。
 鬼塚との蜜月を妄想するのが最近の趣味。


『"ミッドナイト"』
 元ネタにおける保険教師枠。
 何かにつけて鬼塚を誘惑するような言動を取るが、本人としては、分かりやすく反応してくれる鬼塚が面白くてからかっているだけ。
 鬼塚のことは可愛い後輩程度にしか考えておらず、明確な好意は懐いていないが、彼となら恋愛するのも悪くないかなぁ、程度には気になっている。
 一方で、13号の気持ちにも気づいていて、からかいつつも内心では応援している。



作中学力イメージ(独断と偏見)


ヒーロー科1-M

1位 緑谷 出久(秀才)

2位 明司 春千代(超できる)

3位 緑谷 被身子(超できる)

3位 伊口 秀一(超できる)

5位 柴 八戒(できる)

6位 松野 千冬(まあできる)

7位 羽宮 一虎(普通)

8位 河田 ソウヤ(普通)

9位 龍宮寺 堅(苦手)

10位 河田 ナホヤ(苦手)

11位 林 良平(できない)

12位 林田 春樹(超できない)

13位 場地 圭介(絶望)


相場 愛美(天才)

三ツ谷 隆(まあできる)

武藤 泰弘(普通)

飛田 弾柔郎(絶望)

鬼塚 英吉(奈落)


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