砂糖堕ちハナエちゃんのお話   作:砂糖堕ちハナエちゃんの人

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第四話「トリニティ襲撃勧誘作戦」 その5

 

 

蛇がその僅かな異変に気付く事が出来たのは己の依り代の少女がこの学園にばら撒いた砂糖中毒者と言う無数のセンサー網からだった。

目を掛けている小娘の精神が揺れているのを感知した、あの砂糖の力の暴力に屈しない謎の力を秘めた小娘が己の撒きその身体に根深く植え付けたはずの砂糖の誘惑を振り切ろうとしているのだ。

 

蛇は目下の依り代に意識を向ける。依り代の少女はそんな異常事態に気づく素振りすら見せず、かつての仲間達と青臭い茶番劇を繰り広げてるではないか。

呆れつつも蛇は依り代の少女に命じる。言葉など必要ない。そんなものを態々下級生物如きに使う必要などないと蛇は考える。言葉など要らぬ、ほんの少し意識を向け依り代の少女の深層心理下に圧力を加えるだけで良い。

 

"我が糧の一部が奪われようとしている。くだらない茶番劇なぞ興じてる場合などではない。さっさと向かい確保せよ"

 

少女の精神に軽く圧力を加えれば、たったそれだけで依り代の少女は面白いくらいの反応を見せ、撓る弓の様に弾かれ、空を舞う。窓を破り壁を打ち壊し飛んでいく。あの糧を守らんがために――。

 

 

 

 

 

 

「うふふふ…♡」

 

空中に浮かびこちらを見下ろすハナコさん。

 

「現れましたね。すべての事件の黒幕……浦和ハナコ……」

 

ミネ団長が睨み続けますが、ハナコさんは全く意に介していないようでした。

 

「人気の無い深夜……学園の敷地の奥深く……誰も決して近づかない取り壊し予定の廃講堂へ先輩達を連れ込むなんて♡……ハナエちゃん、とってもえっちになりましたね♡。私嬉しくて興奮しちゃいます♡」

 

嬉しそうに頬を赤らめて身体をくねらすハナコさん。ふとその如何わしい仕草を止めると目を細めて私達を……ハナエちゃんを見据えます。

 

「さて、ハナエちゃん。私のお願い憶えてますか?ミネさんとセリナちゃんにこの砂漠の砂糖の素晴らしさを伝道し、理解して仲間になっていただけると言う約束を。もうお二人をお砂糖の魅力の虜にしちゃいましたか?」

 

「何をふざけた事を言っているのですか!!ハナエは、あなたのくだらない誘惑に惑わされる様な子ではありません。私達の大切な仲間なのですよ!!」

 

「ふふふっ♡……何を寝ぼけているんですかミネさん?ハナエちゃんはとっくの昔に砂漠の砂糖に堕ち、私の忠実で大切な仲間なんですよ。ふふっ、ミネさんは知らないでしょう?"ハナコ様"と私を慕い、私のために全てを捧げてくれるハナエちゃんの本当の姿を。くすくす、毎夜私の部屋に来て一緒に寝てくれるハナエちゃんとても可愛いですよ。一糸纏わぬ姿を――、その無垢で無防備な心と身体をすべて私にさらけ出し、私に抱かれ、私の腕の中で震えて鳴くハナエちゃんのあられのない姿を……。可愛いお口から洩れ奏でる色気の帯びた喘ぎ声を……私の指を受け入れ、その形を覚えただらしなく広がった下のお口が絶頂ともに吹き上げる濃密な甘い香りと味の愛液を――」

 

 

ズドンッ!!

 

 

ハナコさんの口から飛び出る卑猥な言葉は講堂に響き渡った一発の銃声でかき消されました。

 

「黙れ淫売。ハナエをこれ以上汚し愚弄するな」

 

銃口から一筋の煙を立ち昇らせるショットガンをクルリと素早く回転させてリロードを終え再び構えるミネ団長。

 

「あら、これから盛り上がるところだったのに♡ミネさんはせっかちさんですね♡」

 

このむっつりドスケベ女騎士が――、とハナコさんはミネ団長を愚弄しつづけます。

 

「ハ、ハナエちゃんはそんな子じゃありません!!どんなときにも決して救護騎士団の信条忘れない強い子なんです。お砂糖に何て負けません!!」

 

「うふふ、セリナちゃんまでそんなこと言って……ハナエちゃんの事何も知らないくせにこういう時だけ先輩風吹かすなんて身勝手な悪い子♡」

 

ハナコさんに痛いところを突かれてしまい私は黙り込んでしまいします。

 

「ここはハナエちゃん本人に聞きましょう……ハナエちゃん……?」

 

「は、はいっ!!」

 

ハナコさんに呼ばれてハナエちゃんがビクッと震えます。俯いたまま顔を上げようとはしません。私はハナエちゃんの手をそっと力強く握ります。大丈夫、ずっとそばに居るよ、ハナエちゃんを守るよ、と。

 

「ハナエちゃんは誰の物ですか?……物ですかは失礼でしたね。私とミネさんどちらか選んでください。どちらに付いて行きたいですか?」

 

「わ、私は………」

 

ハナエちゃんは言葉を振り絞り、2,3度口を動かした後、ゆっくりと前を向き顔を上げました。そして……・

 

 

「ハナコ様……いえ、ハナコ"先輩"……ごめんなさいっっ!!!」

 

 

大きく頭を下げて謝罪の言葉を口にしたのです。

 

 

「ハナエちゃん………?」

 

 

唖然とした表情を浮かべるハナコさん。さきほどまで余裕たっぷりだった表情はもうどこにもありません。

 

「わ、私は……救護騎士団、朝顔ハナエです。蒼森ミネ団長の指揮の元、鷲見セリナ先輩とともに救護の道をこれからも進んで行きたいです。もうお砂糖は要りません。頂いたお砂糖と注射器はすべてお返しします。禁断症状も頑張って絶対に克服してみます。だから……だから……私の大切な仲間の、救護騎士団とミネ団長とセリナ先輩に、どうか、どうかこれ以上手を出さないでください、ハナコ先輩、お願いします!!!」

 

ハナエちゃんが毅然とした態度ではっきりとお砂糖を拒否してくれました。私は嬉しくて泣きそうになりました。横を見ればミネ団長も嬉しそうに微笑んでます。

 

「………そうですか。わかりました……とてもとても……ええ、とても残念です。これはさすがにハナエちゃんの意志を尊重しないといけないようですね」

 

ハナコさんも納得してくださったのか残念そうな顔をします。ミネ団長は改めてハナコさんの方を向くと投降を呼びかけします。

 

「浦和ハナコ、貴方の味方はもうどこにも居ません。悪い事は言いません。今すぐすべての犯罪行為を止めて大人しく投降し、罪を受け入れなさい」

 

 

 

 

「……なんて私が言うと思いましたか?」

 

 

 

 

残念そうな顔を浮かべたままハナコさんが言葉を発した瞬間、彼女の背中から何かが飛んできて私達の足に絡みつきました。

 

「あぐっ!?きゃぁああああああ!!」

 

「うぐっ!?……こ、これは……!?」

 

私達の片方の足だけに絡みついた何かに勢いよく引っ張られて床に強く叩きつけられたあと、空中に持ち上げられ逆さまに釣られてしまいました。よく見ると足には緑色の水道のホース……によく似た表面がぬめりまるで蛇のような生き物のような脈動を感じる触手に絡めとられていたのです。

それはハナコさんの背中から生えてきているのです。

 

「ひぃっ!?な、なにこれぇ……」

 

「異形に成り果てるまで堕ちましたか……浦和ハナコ……」

 

「うふふ……私の可愛いホースちゃんです。いう事を聞いてくれるとても頼もしい子達なんですよ♡」

 

背中から何本も生えたホースの一本に頬ずりしなから嬉しそうに話すハナコさんに異様な恐怖感を感じます。

 

「いやあああ離してぇぇぇぇええ~~」

 

「ハナエちゃん!?」「ハナエっ!!」

 

そして私達と違い、ホースで身体をグルグル巻きに縛られたハナエちゃんが捕らえられてゆっくりとハナコさんのそばへと連れて行かれます。

 

「ハナエちゃん♡お久しぶりですね♡お久しぶり過ぎてお砂糖の味をもう忘れてしまいましたか?」

 

「ひぃっ!?」

 

「もう……、そんな悪魔を見たような顔をされたらさすがの私も傷ついてしまいますよ♡私の大好きなハナエちゃん♡」

 

「ひっうっ!?」

 

「さぁ、ハナエちゃん。改めて聞きますね♡ 私とミネさんどちらを選んでくれますか?」

 

「…………」

 

「ハナエちゃんだめぇぇぇぇ!!お砂糖の誘惑になんて負けないでぇぇぇ!!!」

 

「ハナエッ!!駄目ですっ!!耐えるのです!!耐えてくださいっ!!」

 

「ああ、五月蠅いですねっ!外野は黙って貰えますかねっ!!」

 

「ぎゃあぁあっ!!」「ガハッッ!!!」

 

私達の足を縛り付けているホースを撓らせると私とミネ団長は空中で強くぶつけ合いをさせられてしまいました。痛みと衝撃で意識が飛びそうになります。

 

「ああっ!ミネ団長ぉっ!!セリナ先輩ぃっ!!」

 

「こら、ハナエちゃんはこっちを見るんですよ!!」

 

ハナエちゃんがハナコさんにむりやり顔を掴まれ振り向かされます。

 

「は、ハナコ先輩……やめて……やめてください……」

 

「"ハナコ様"でしょうハナエちゃん。そこまで洗脳がとけてしまったのですか……ああっ残念です。折角ここまで丹念に調教してきたのに………ミネさんのせいで全部台無しですね」

 

仕方ないですね……とハナコさんが溜息をつくと、

 

「ハナエちゃんには特別スペシャルコースを受けて貰いますね。今度は二度と彼奴等の言葉に惑わされないくらいにしっかりと……」

 

ズルリっとホースが一本現れてハナエちゃんを丹念に品定めするかのように全身を撫でて行きます。

 

「ひぃっ!?……あああっ!あああああああ~~~!!」

 

ゆっくりとハナエちゃんの身体を撫でまわしていたホースは制服のスカートのあたりへ来ると、突然スカートの中へ潜り込み、どんどんホースが中へ入って居るように見えました。まるでハナエちゃんの"身体の中に入って行く"みたいに。

するとハナエちゃんが大きな悲鳴を上げました。悲鳴と言うよりはとても色っぽいまるで――。

 

「うふふ♡あはははははは♡ハナエちゃんお尻大好きですよね♡私にすっかり開発されきったハナエちゃんのえっちな■■■、私の指を四本も咥え込んじゃういやしんぼさんのお口♡ホースさんに解されるのとっても気持ち良いでしょう♡」

 

「ああああっ!!!やだぁ!おしりっおしりやだぁああああ!!!うひぃぃぃいいいい!!!ああん♡お腹っ!!お腹掻き回さないでぇぇええええ!!!」

 

甘い蕩けそうな悲鳴を上げ続けるハナエちゃん。太ももには何本もの液体が流れた筋が付き、スカートの中の足の付け根あたりから激しい水音とともにポタポタと垂れる物が足元の床に染みを作り広げていきます。

 

「これ以上ハナエを弄び汚すなっっ!!!撃ち滅びなさい!!この淫売悪魔めっ!!!」

 

ミネ団長が銃を構えて銃弾を発射しますが……

 

「うふっ♡無駄ですよミネさん♡」

 

「ぎゃあ"あ"あ"っ!!」

 

突然、私の身体に激しい衝撃が走ります。お腹に激痛が走り患部が熱を帯びて来ます。至近距離からミネ団長の銃弾を受けてしまったのです。足を縛るホースに身体の向きを変えられてしまって。

 

「セ、セリナぁぁっ!!」

 

「あはは♡私のホースちゃんは素早く対象の身体の向きを変えることが出来るので銃を撃とうなんて思わない方が良いですよ♡、貴女が打てばセリナちゃんやハナエちゃんが傷つくだけで私には絶対に一発も当たりませんから♡」

 

「お、おのれ……」

 

「うふふ♡ではお二人さん、特等席でしっかりと見ていてください、朝顔ハナエが砂糖に溺れ、狂い咲く様をっっ!!!!!」

 

「いやああああああ、助けてっ!!!助けてっ!!!嫌だぁ!!もうお砂糖に狂わされるの嫌だぁあああ!!!!ミネ団長っ!!!セリナ先輩っ!!!先生ぇぇっっ!!!だれかっ!だれかたすけてぇええええ!!!」

 

「もう♡煩いお口はチャック♡ですよ♡」

 

「うぐっぎゅぅぅぅぅうううううう!!!!」

 

叫びつづけるハナエちゃんのお口にホースが一本深々と刺さります。ハナエちゃんは目を思いっきり大きく見開き、その瞳から大粒の涙が溢れ空中へと舞っていきます。

 

「さぁさぁ!!お待ちかね……朝顔ハナエの砂糖漬けですよっ!!!」

 

 

「んぎゅぅぅぅううううううう~~~~~~~~!!!!!!」

 

ハナエちゃんのくぐもった絶叫と共に身体に刺さったホースから大量の液体がハナエちゃんの小さい身体の中へ容赦なく注ぎ込まれて行きます。

 

 

ゴボゴボゴボゴボゴボ~~~……ボコンッ!ボコンッ!ボコンッ!

 

 

ハナエちゃんの細い喉が大きく脈動してうねり、ハナエちゃんの小さなお腹が不気味な音を立ててまるで妊婦さんのお腹の様に膨らんでいきます。

 

 

ビリビリビリビリブチブチブチブチ~~~~、メリメリメリ……ボキッ!ゴキンッ!!メリッ!!ボキンッ!グギギギギ……

 

 

制服を引き裂き、人間の身体から聞こえてはいけないような音を立てながらハナエちゃんのお腹はまるで巨大な風船のようなサイズまで膨らんでいました。

 

「やめてっ!!やめてやめてやめてやめてぇぇぇぇええええええ!!!ハナエちゃんがっ!!ハナエちゃんが死んじゃうっ!!!だめぇええええ!!!」

 

私は必死にハナエちゃんへと両手を伸ばします。たとえ届かないのが分かっていても必死に両腕を伸ばしハナコさんへ叫び懇願します!!

 

「あはははははははは、醜い…非常に醜いですねっ♡ハナエちゃん♡ハナエちゃんがいけないんですよ♡砂糖の禁断症状で苦しんで居た時、私が手を差し伸べ助けてあげたのに、その恩を忘れ、あろうことか仇で返そうとするんですから。でももう大丈夫、ハナエちゃんはもう二度と私を捨てたりしません。私だけを敬い私だけを見てくれる私だけの私だけの私だけのハナエちゃん♡はい完成♡」

 

ハナコさんが狂ったような笑顔を浮かべ、ハナエちゃんの身体に突き刺していた2本のホースを乱暴に引き抜きました。

 

 

ボブっ!?ゴフッ!?ボシュゥゥウウウウウウウウウ~~~ブババババババババババババババ~~~~!!!

 

 

お尻と口から凄まじい勢いで砂糖水を噴き出すハナエちゃんの身体。その強い濁流の勢いに手足を激しくばたつかせます。白目を剥き衝撃で仰け反り上を向いたハナエちゃんの顔、その口から噴き出した大量の砂糖水は講堂の天井を突き破り空へと舞い上がり、そのまま重力に沿って落ちてきてハナエちゃんの身体を包み込み覆い隠すように降り注ぎました。

 

 

ブババババババ……ドボボボボボボ~~ドボッドボッドボッ……じょろろろろろろろろ~~~ちょろろろろろろ……チョロッチョロロロッ……チョロッ、チョロッ……。

 

 

数分続いた噴流が収まるとそこには全身砂糖水でずぶ濡れで力なくホースにぶら下がっているヘイローの消えたハナエちゃんの身体がありました。

 

「そんな……嘘……ハナエ……ちゃん……ハナエちゃん!!ハナエちゃん!!」

 

ズルリと拘束していたホースが緩みと、ハナエちゃんの身体はそのまま床へと落下します。ベシャッ、と酷い水音を立てて床に座り込むように落下したハナエちゃんはピクリとも動きません。

 

「うふふ…どうですか、浦和ハナコ謹製、朝顔ハナエの砂糖漬けスペシャル。とても美しいでしょう♡」

 

ハナエちゃんを抱きしめて頬ずりをするハナコさん。まるでハナエちゃんを玩具の様に弄んでいるようで悔しくて仕方がありません。

 

「あらまだこんなものが残っていたんですね。こんなものが付いてるからハナエちゃんが惑わされてしまうんですよ」

 

そう言うとハナコさんはハナエちゃんの両手首に残っていたリストバントを摘まみ乱暴に引き千切ると後ろへと放り投げ捨てました。

 

「ああっ、駄目っ…やめてぇ……」

 

目の前でハナエちゃんとの大切な証を捨てられて悔しさで涙がこぼれそうになりました。すると突然私達の足を拘束していたホースが緩み、私達は床へと落ちてしまいました。

 

ベシャッとハナエちゃんから溢れ出でた少し生温い砂糖水で浸水した床に叩きつけられると目の前にて甘い匂いがして、まるでハナエちゃんの――。

 

「セリナっ!!決してそれを口にしてはいけません!!」

 

ミネ団長の叫び声で我に返りました。私は何していたんだろう。頬についた砂糖水を制服の袖でごしごしと拭きます。

 

「さぁ、ハナエちゃん。私だけのハナエちゃん」

 

ハナコさんがハナエちゃんの耳元で囁くとふわりとヘイローが浮かび上がり、ハナエちゃんがまるで人形の様にぎこちなく立ち上がります。

 

「は、ハナエちゃん?」

 

意識が戻ったはずなのにどこか様子がおかしいハナエちゃんにハナコさんは囁き続けます。

 

「目の前の二人を……悪いトリニティに巣食う病原体に身体を乗っ取られている二人を――」

 

 

 

「救護してあげてください♡」

 

 

 

 

"救護"と言う単語にピクリと身体を震わせ反応したハナエちゃんが両腕を前に翳します。

 

「~~~~~。~~~、~~~~~~~~~」

 

ハナエちゃんの小さな唇が僅かに動き、何か祝詞か呪文のような讃美歌のような上手く聞き取れないメロディーを奏でます。

するとハナエちゃんの胸元が大きく輝いて何かの光の塊が現れてきました。

 

(あれは一体……?)

 

美しい二色の輝き、まるでハナエちゃんのヘイローと髪の色が混ざったような不思議な光。それは私達キヴォトスに生きる生徒皆が持っている力の源、決して身体の外に出てはいけない物。よくわかりませんが直感的にそう感じました。

 

「~~~~、~~~~~。~~~~~!!」

 

ハナエちゃんが何かを叫んだ、そんな気がして。次の瞬間、胸元の光の輝きが一層眩しく光を放つと……そこには一台のチェーンソーが浮かんでいました。

 

「…………」

 

チェーンソーを手に取ると勢いよくスターターレバーを引き、チェーンソー独特の甲高いエンジン音が響きます。

 

ハナエちゃんがゆっくりと顔を上げてこちらを見つめます。

 

「ひぃっ!?ハ、ハナエちゃん……?」

 

ハナエちゃんの瞳はまるで廃糖蜜のような真っ黒な底なし沼みたいな瞳をしてて、口の両端が吊り上がり、見た事もない、ハナエちゃんが絶対にしない不気味な笑みを湛えていたのです。

 

 

ニチャァァァァ……

 

 

「セリナッ!!!銃を構えなさいっっ!!!!」

 

ミネ団長の絶叫が響き、それと同時に甲高いエンジン音を唸らせてハナエちゃんがチェーンソーを振りかざして突っ込んできました。

 

 

ドガガガガガガ~~~~!!!

 

 

ミネ団長の盾でふさがれるものの、恐ろしい勢いでミネ団長が後ろへと足をすべらせていきます

 

「ぐぅ、ううっ、このっ……」

 

ミネ団長の顔が苦痛で酷く歪むのが見えました。

 

 

ハナエちゃんの狂ったような攻撃は執拗に続きました。ミネ団長の銃撃を時には躱し、時には身体に受けながらも平然と突っ込んで来るハナエちゃん。団長のシールドバッシュを何度も躱し、シールドで攻撃がはじかれるとその勢いを利用して壁や柱を伝い立体起動で攻めて来ます。

 

(あの動き……パルクールだ)

 

救護現場へといち早く駆け付けるために瓦礫や障害物を超えて往くのに使う高速移動用運動動作。いざという時には自衛用の格闘技や銃撃回避にも役立つとみんなで練習していたのを思い出します。

私は意外とパルクールの才能があったみたいでミネ団長やインストラクターの人に褒められていて、ハナエちゃんは全然できなくてとても悔しがっていて、一緒に遅くまで居残りして練習した懐かしい思い出がよみがえってきます。

 

(ハナエちゃん……)

 

ハナエちゃんとの懐かしい平和だったあの頃の記憶が思い出として蘇り、今目の前の残酷な現実との差に涙が浮かび視界が滲んでしまいます。

 

「何をやってるのですかっ!!セリナッ!!」

 

ミネ団長の叫び声で我に返り正面を見ると私目掛けてハナエちゃんがチェーンソーを振りかざして襲い掛かって来るところでした。

 

「きゃああああっ!!」

 

「くっ!このぉおおっ!!」

 

ミネ団長に庇われ突き飛ばさばされます。団長もシールドを構えますが……

 

「あ"あ"っっ!!」

 

シールドが僅かに逸れてしまい、チェーンソーがミネ団長の青い翼を大きく引き裂き、大量に舞う血と青い羽がミネ団長の悲鳴とともに広がっていきます。

 

「ミネ団長っ!!!」

 

「うぐっ……私に構わないでっ!!銃を構えなさい!!銃を構えてっ!!ハナエを撃ちなさいっ!!セリナっっ!!」

 

ミネ団長の悲痛な激が飛びます。私は分かってます。わかってて何度も銃を構えようとするのですが……。その度に万が一私の銃の銃弾がハナエちゃんに当たったら……ハナエちゃんの急所に当たり、致命傷を与えてしまったら……そんな事ないはずなのに……そんなことできるわけないのに……私のへっぽこな射撃訓練と戦闘演習訓練の結果を見れば戦闘職の子達みたいに銃弾当ててダメージを与えるなんて無理なのに……。

 

そんな万が一にもない事ばかりが目の前に浮かんでしまい……。

 

「撃てません……私にっ!!ハナエちゃんを撃つなんてっ!!ハナエちゃんに銃を向けて構えるなんてっっ!!!出来ませんっ!!!」

 

私はついにその場にへたり込んで動けなくなってしまいました。

 

「セリナッ……!!」

 

そんな私にも容赦なくハナエちゃんは攻撃してきてそれをミネ団長がシールドで庇ってくれます。

 

「うふふっ♡もうっ♡仕方ないですね♡」

 

ハナコさんの声が聞こえたと思った瞬間、私の身体にホースが纏わりつき縛られるとそのまま上空へと引っ張り持ち上げられてしまいました。

 

「いやぁあああああ!!」

 

「セリナッ!!」

 

そのまま私はハナコさんのすぐ横まで連れられてこられました。

 

「ハナエちゃんを撃てない足手纏いでミネさんのお荷物なセリナちゃんはここで観戦でもしていてくださいね♡」

 

「うぐっ……」

 

「セリナを人質にするつもりですか!?卑怯ですよ浦和ハナコっ!!」

 

足元ではハナエちゃんの攻撃を受け止めながらミネ団長が叫んでいます。

 

「人質なんて卑怯な戦法は取りませんのでご安心を♡むしろミネさんにハンデを与えてるんですよ、感謝して欲しいくらいですよミネさん」

 

「何がハンデだと……」

 

「動けない戦えないセリナちゃんを守りながら戦うのは大変でしょう。現に防戦一方でやられっぱなしじゃないですか♡だからミネさんが心置きなく戦え、ハナエちゃんとの楽しく鬱しい殺し合いが出来るようにセッティングしたんですよ?」

 

「あなたはそこで何もせずに高みの見物ですか……。随分余裕がありますね浦和ハナコ?」

 

「うふふっ、だって私が手を出したら意味が無いんですよ。ハナエちゃんの自身の手で、ハナエちゃん自身の意志で壊さないといけないんです。そうしないとハナエちゃんはいつまでも心のどこかで救護騎士団を拠り所として意思を持ちづづけてしまいますから。自分の手で汚し自分の手で殺し自分の手で破壊し尽くす……もうこうすれば二度とここには戻れない、帰れない。ハナエちゃんは諦め手放すしか無いんです。だって自分が壊したんですからね♡うふふ…」

 

「どこまでハナエを甚振り心を弄べば気が済むんですか、この悪魔め……」

 

「そこは魔女と呼んでくださいな♡サクラコさんとくらべて語彙力が貧相ですね。だからあなたは誰も救えず壊す事しか出来ないんですよ♡零落れヨハネの壊し屋ミネさん♡」

 

「ぐぅっ。この、言わせておけば……!!」

 

「はいはい♡それよりもハナエちゃん放って置いて良いですか?折角ミネさんが戦いやすいようにセッティングしたんですよ?もう少し私を楽しませてくださいな♡」

 

「ちぃぃっ!!」

 

ハナコさんと睨み合いしているミネ団長に容赦なく突っ込んで来るハナエちゃん。ミネ団長はシールドで押し返すとハナエちゃんに銃弾を浴びせながら突っ込んでいくのでした。

 

 

 

 

(つづく)

 

 

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