砂糖堕ちハナエちゃんのお話   作:砂糖堕ちハナエちゃんの人

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無能の司祭A氏の砂漠の砂糖SS「ゲヘナ編 5話 フウカ回」「番外編 荒天の霹靂」を参考に作っており、両作品の作中での台詞や描写や設定を一部引用参考にしております。


ゲヘナ編 5話 フウカ回
https://telegra.ph/%E3%82%B2%E3%83%98%E3%83%8A%E7%B7%A8-%EF%BC%95%E8%A9%B1-10-31

番外編 荒天の霹靂
https://telegra.ph/%E8%8D%92%E5%A4%A9%E3%81%AE%E9%9C%B9%E9%9D%82-03-02



幕間 -ハナエとハルナ-

 

 

「ハルナさん、お忙しい所お呼びだてしてすみません」

 

「いえ構いませんわ。ところでハナエさん、大事なお話とは何でしょうか」

 

ある日の事、私は黒舘ハルナさんを執務室にお呼びしました。

 

「はい。大事な話というのはハルナさんにプレゼントがあるんです!!」

 

「プレゼント…?私にですか?」

 

不思議そうに首をかしげるハルナさんに私は執務机の上に置いていた紙袋を差し出します。

 

「これです!どうぞ!!」

 

「は、はぁ……」

 

私が差し出した紙袋を戸惑いながら受け取るハルナさん。

しかし、中身を見た途端表情が一気に強張ります。

 

「どうされましたか?」

 

「……ハナエさん。申し訳ありません。これは……受け取れませんわ」

 

「……どうしてですか?」

 

紙袋を私に突き返すハルナさん。受け取った私は紙袋からお弁当箱とスープジャーを取り出します。

机の上にお弁当箱を開き、スープジャーに入っていたお味噌汁を用意したお椀に注ぐとハルナさんが表情を歪め顔をそらします。

 

「ハナコ様達と一緒にお弁当作ってみたんです。どうですか?少し形は悪いかもしれませんが食べませんか?美味しいですよ?お勧めはこのだし巻き卵!シズコさんが教えてくださった百鬼夜行に古くから伝わる伝統的な出汁と調味料を使ってて濃厚な味とふんわりとした食感で食べ応えがありますよ。くんくんくん……うん!とてもいい匂いがして食欲がそそられ――」

 

「いい加減にしてくださいっっ!!!」

 

ハルナさんが怒りの表情を浮かべ椅子から立ち上がると私を睨み怒鳴ってきます。

 

「ハナエさんは私たちの身体の健診をしてるので私が味覚も嗅覚もすべて失っているのをご存じでしょう!私はもう大好きだったたいやきも一汁三菜な食事も食べても匂いも味も何も感じず生きがいだった美食の道も絶たれたんです。それなのに……それを知っていて態々見せ付けてくるなんてハナエさん最低ですわっ!!!」

 

「…………」

 

「ハナエさん、申し訳ありませんがこの事はホシノ様及びハナコ様に報告させて頂きます。私はハナエさんに嫌がらせを受けたと――」

 

「待ってください」

 

執務室を出て行こうとするハルナさんを私は呼び止めます。

 

「なんですか?ハナコ様の名前を出されて慌てられてるのですか?すみませんがいくらハナエさんでもやってはいけない事がありますわ。ハナコ様よりしっかりとお叱りを頂き反省を――」

 

「違います。まずは私の説明不足とハルナさんを揶揄うような行動してしまったのは謝ります。申し訳ございませんでした。でも私はハルナさんのトラウマや心の傷を抉る為にここに呼んだのではないです」

 

「では一体何のために私を呼んだのですか!?」

 

「ハルナさん……単刀直入に聞きます。貴女が失った味覚と嗅覚――もし取り戻せるとしたらどうしますか?」

 

「そんなの……取り戻せるなら取り戻したいのに決まってますわ!!私は砂漠の砂糖を愛しホシノ様達に忠誠を誓った者ですが……それでも……例え嗅覚と味覚を失い料理が判らなくなった今でもゲヘナ美食研究会会長の矜持は大切にしています。美食の道は私の命で私のすべてだからです。それを取り戻せるなら何でも……いえ、そうですね、ホシノ様やこのアビドスに危害や脅威を与えない範囲で出来る事は何でもしますわ」

 

「よく言いました!!」

 

私は立ち上がりハルナさんに握手します。

 

「ハルナさん。ホシノ様とアビドスに危害を加えない範囲でなら何でもすると言うその決意……本当ですか?」

 

「え、ええ…本気ですわ」

 

「それならハルナさんに味覚と嗅覚を取り戻す方法を知っています。私なら出来ます!どうですか?試してみませんか?」

 

「ほ、本当なんですの?本当にハナエさんが私の失った味覚と嗅覚を取り戻してくださるのですか?」

 

「はい!!本当です」

 

「それなら……ハナエさんお願いします!!私に…この私にもう一度…美食の道を……」

 

「では早速しましょう。今日はそのためにハルナさんを呼んだんです!」

 

「あ、ありがとうございますハナエさん……。では私は何をすればよいのでしょうか?」

 

「簡単です。目をつぶって舌を出していただけますか?ちょっとチクッとしますが大丈夫それだけです!!」

 

「ほ、本当にそれだけなんですか?本当にそれだけで味覚と嗅覚が戻るのですか……?」

 

「はい!本当にそうですよ!!」

 

「で…では……」

 

目をつぶりおずおずと舌を口の外へと出すハルナさん。私はそっと口を近づけて――。

 

 

んっちゅ……

 

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

ハルナさんがびっくりして飛び跳ねるように物凄く後ろに下がりました。

 

「んっ……もう……いきなり後ろに飛ぶなんて危ないですよハルナさん。舌を噛み千切ってしまったらどうするんですか?大事故になりますよ!」

 

「ハハハハハハハハハハハハハナエさんんんんんんん!?!?!?ななななななな何をしてるんですか――――――!!!」

 

「何をってハルナさんの舌を噛むために唇を寄せていただけなんですが……」

 

「どどどどどどう見てもキキキキキキキスしたじゃないですかぁああああ今ッ!!」

 

「まぁどうしても唇同士は引っ付いてしまいますからね。これは仕方がない事です」

 

「ししししし仕方がない事ですって!?!?!?ハナエさんはデリカシーが無いのですか!?」

 

「デリカシーくらいは持ち歩いてますよ」

 

「そう言う問題じゃないんです。ううううううう……先生の為にとっていた……私のハジメテ……ファーストキスだったのに……」

 

グスグスと泣き始めるハルナさんをあやします。

 

「ハルナさん、大丈夫ですよ。女の子同士ですし、そこに恋愛感情も何もありません。だからノーカンですよ!」

 

「そう言う問題ではありませんわっ!!」

 

「ハルナさん良いですか?唇の純白は誰にも証明できないんですよ?■■■の純白性は■■膜の存在が証明してくれますが唇には■■膜なんて存在しないですよね?本当に今のはハルナさんにとって初めての唇同士のキスだったんでしょうか?もしかしたらハルナさんが幼い頃にご両親とかからキスをされたりしてるんでは無いですか?」

 

「それは関係ないですわ!!」

 

「そう!まさにそうなんです!!ファーストキスとは愛する人に愛を込めてする最初キスの事を言うんです!!今のは恋愛感情も籠って無いですし私とハルナさんは恋人関係ではありません。だからキスをしてもこれはファーストキスでは無い!ノーカウント!つまり全く問題ないのです!!」

 

「ううう…それは詭弁の様な気がしますが……」

 

「ではハルナさんは味覚と嗅覚は要らないんですか?私とキスをするのが嫌でしたくないのならもう二度と美食を楽しめなくても良いんですか?」

 

「そ、それは嫌ですわっっ!!」

 

「では、続きをしましょう!!」

 

「うううっ……何だか騙されてる気がしますわ……」

 

泣きそうな顔をハルナさんの両肩に手を置いて顔を近づけます。

 

 

んっちゅ……くちゅ……

 

 

ハルナさんの唇に私の唇を重ねます。しかし、ハルナさんは舌を引っ込めてしまいました。

 

『ハルナさん、舌出してください。これではただのキスになってしまいますよ?』

 

『ハナエさんっ!?どうやって喋ってますの?私の頭の中にハナエさんの声が直接響いて……??』

 

『今はそれを気にしてる時ではありませんよ?さぁ早く舌を……』

 

『…………』

 

『なら私から行きますね……』

 

『ハ…ハナエさんっ!?んっぐっ!?』

 

ハルナさんの両肩に置いていた私の腕の片方をハルナさんの後頭部に回し頭を支えるように抱くと私はハルナさんのの唇に軽く触れ重ねていた自分の唇を思いっきり押し付けます。

 

「んん"ん"!?!?っぐっうううう~~~」

 

暴れるハルナさんを抑え込みながら唇を食むようにキスを続けます。固く閉ざされたハルナさんの唇が少し緩んだ瞬間すかさずわたしの舌を差し込みます。

舌でハルナさんの前歯と歯茎を撫でまわせばあっさりと口は開かれ、口内へと侵入します。逃げ惑うハルナさんの舌へ自分の舌を絡めればあっさりと降伏してしまいました。

 

(ハナコ様とは全然違う……一度攻め込めば面白いくらいあっさりと堕ちますね)

 

かつてハナコ様の激しい舌戦(意味深)をベッドの上で何度も繰り広げハナコ様に教えられ鍛えられた事がこんな時に役立つとは……。私はハナコ様にとても感謝をしながらハルナさんの舌を引き上げて行きます。

 

「んっちゅんっ…ぷはっ……」

 

「んっちゅっ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

舌を引っ張り出して一旦唇を離せば、そこには蕩けた表情のハルナさんが居ます。

 

「ハ、ハナエ……さん……」

 

「ふふふ……良い表情ですねハルナさん。では……行きますね」

 

ハルナさんの口からだらりの垂れ下がった舌を私の下顎に乗せると自分の歯に砂蛇様の牙を出現させそのまま一気に突き刺しました。

 

 

ぷちっ…ブチュッ!!

 

 

「~~~~~~~~!!!!」

 

ハルナさんの身体が大きく震え、逃げようとするのを抑え込みます。

 

「逃げないで。耐えなさい」

 

砂蛇様のお力を少し滲みださせ視線に乗せればハルナさんは一瞬で大人しくなりました。こういうのはあまり良くないのですが仕方が無いですね。

ハルナさんが抵抗の意思を捨てたのを確認して舌に突き刺した牙から彼女の身体と脳髄へと砂蛇様のお力を流し込んでいきます。

抵抗する意思も素振りも消えビクンビクンと大きく身体を震わせ続けるハルナさん。そろそろ良い感じでしょうか、私は刺していた牙を抜きゆっくりと唇を離します。

目の前には蕩けた表情を浮かべ続けるハルナさん。私が何度か呼びかけると視線をゆっくり合わせてくれます。

 

「さぁハルナさん、このお弁当を食べて頂けませんか?」

 

 

 

----------------------------------------------------------

 

 

 

ハナエさんに口づけをされ、舌に突き刺された太い針のような物から流し込まれたナニかが私の全身へと広がっていきます。

ハナエさんのくちから流し込まれ飲み込んでしまった唾液で昂った身体がさらに熱せられたような気がします。

 

「ハルナさん…ハルナさん……起きてくださいハルナさん」

 

ハナエさんの呼びかけにトんでしまった私の意識が戻ってきます。目の前にはニコニコと優しい――先程まで見せていた妖艶な表情が消えていつものハナエさんが居ました。

 

「さぁハルナさん、このお弁当を食べて頂けませんか?」

 

ハナエさんに言われ視線を落とした瞬間でした。

 

「………ああ」

 

私の鼻腔をくすぐる感覚を――。

 

「……あああ」

 

この粘膜を刺激する感覚を私は知っています。

 

「匂いが……香りが……わかりますわ……」

 

甘い香りが……砂漠の砂糖とは違う、食材がそれぞれ持つ甘い香りが私の鼻腔の粘膜と脳髄へと染み渡っていきます。

 

「ハルナさん」

 

ふと気が付くとハナエさんがハンカチを私の口元へ当ててます。

 

「ふふっ……ヨダレが垂れてますよ」

 

私の口元と下顎をゆっくり優しくハンカチで拭ってくれます。

 

「す…すみません……はしたない所をお見せしてしまいましたわ…」

 

「いえいえ…良い匂いでしょう?どれから食べますか?」

 

「で、では……だし巻き卵から……」

 

「ふふっ、良いですよ」

 

ハナエさんがお箸でお弁当の中心で金色に輝くだし巻き卵を箸で掴んでゆっくり私の口元へと運びます。

 

「…………」

 

ハナエさんのお箸に掴まれただし巻き卵がゆっくりと私の口へ近づいて行きます。

 

 

『……フウカさん、それは……お弁当……ですか…?』

 

『え?……これ?うん、これはアンタ達に作って来た弁当だけど……』

 

『一口、頂けないでしょうか…?出来れば……一番、味の濃いものを……』

 

『いいけど……じゃぁ、これかな?はい、だし巻き卵――』

 

 

あの日、病院でフウカさんのお弁当を食べた時のことが頭を過ぎり身体が強張ります。

 

大丈夫、とてもいい匂いがしているから、大丈夫――。

 

何度も自分に言い聞かせ、口の中へやってきただし巻き卵をゆっくりと咀嚼しました。

 

「ああっ!!!」

 

口に広がる卵の味、歯茎を突き刺すと吹き出すように溢れ出る出汁の味、醤油とみりんと砂糖と仕上げの片栗粉のハーモニーが舌の上で奏でられます。

 

「あああああっ!!!」

 

甘くて蕩けるだし巻き卵に似合わないしょっぱさが加わります。私の涙が――、鼻水が――、だし巻き卵の味に強引に割り込んできます

 

「ううっ…ぐすっ……ひっくっ…ぐしゅっ…うぶっ……」

 

いけません。折角のお料理がこれでは台無しです。ハナエさんが作ってくれただし巻き卵の味が判らなくなってしまいます。

 

「ぐすっ…ううううううっ……ひっくっ…あぅぅぅぅうううう」

 

涙の味も鼻水の味もだし巻き卵の味も全部全部混ざってしまって、でもすべて匂いも味も感じられてて……。

 

「ハルナさん……大丈夫です。料理は逃げませんよ。ゆっくり落ち着いて……食べましょう」

 

「ぐしゅっ……はい…ハナエさん……はい……」

 

「うふふ……」

 

ハナエさんに涙を拭いてもらい鼻をかんでもらった後、私はハナエさんから箸を受け取り、お弁当を食べて行きます。

だし巻き卵の後は塩味が程よく効いた白いご飯を頂き、きんぴらごぼうを頂き、再びご飯を頂きます。

 

(味と匂いが今までよりもはっきりと鮮明に感じ取れますわ……っ)

 

お弁当のおかずを食す度にその素材はもちろん使われた調味料の味まですべて感じる事が出来る事に気が付きました。

それこそ、どのくらいの分量で調理されたものなのかグラム単位まで感じ取れるようになってました。

 

(ああ、私は今までどれだけの味の見落としをしていたのでしょうか)

 

きっと味も匂いも感じ取れなくなり美食の道を全てを失いどん底まで堕ちた影響でしょうか?

 

まるで砂漠の砂糖を摂る前の頃よりも味覚嗅覚が鮮明になった気がします。そして私がどこかで満足していた美食の道もまださらに上がある事を知りました。

 

(ふふふ……これはおちおちしていられませんわね)

 

お弁当をすべて平らげ、お味噌汁を堪能し、食後のお茶を楽しみながら私は湧き上がる想いに昂ぶりが止まりません。

ハナエさんが料理に夢中になって沸かし過ぎてしまったというお茶。少し渋みとえぐみが出ていて、これはハナエさんにお茶の淹れ方指導をしないといけませんわね。と私は鼻息を荒くしてしまいます。

この砂漠の砂糖の満ちた世界でも美食の道を進め広げられていく事が出来る、その喜びに満ち溢れています。

 

 

ハナエさん

 

アビドスの白衣の天使、砂漠の神が遣わした巫女。アビドスへ来て彼女は多くの奇跡を起こしました。誰も手出しが出来なかった暴れる重度の砂糖中毒患者を次々と癒し、私達の身体を定期健診と称して診てくださり、砂糖の効き目がより強く確実に、副作用は小さく弱く無くしていくなどその功績は測りきれません。

シスターフッドの皆さんが彼女を現人神と崇め、自陣営に引き込もうとハナコ様と銃撃戦寸前まで発展したというのが痛いほど判ります。

私も叶うならハナエさんに今後立ち上げるアビドス美食研究会へ加入して共に砂漠の砂糖と美食の道を究めて行きたいと強く願うほどです。ええ、もしも目の前にフウカさんとハナエさんが居てどちらか一人だけしか取れないと言う状況になった時、とても悩むくらい私はハナエさんが欲しいと強く思うのです。

 

 

「ハルナさん、嗅覚と味覚が戻って以前の様に元気になられましたね」

 

ハナエさんがとても嬉しそうにおっしゃります。

 

「はいっ!!これもすべてハナエさんのおかげですわ。本当にハナエさんには感謝しています。この御恩、どうやってお返しすれば良いのか――」

 

もし、ハナエさんが望む食材と料理があるならば私はどこへでも行きますわ、そう言うとしたら

 

「ああ、それなら簡単ですよ。お礼でしたら――」

 

ハナエさんがにっこりと笑い、片腕を上に掲げます。

 

 

 

「お前の(ハルナさんの)神秘を(お力を)徴取する(少し頂きますね)」

 

 

 

ハナエさんがその優しい笑顔を悍ましい嗤い顔へと変えると掲げた腕がぐにゃりと一匹の白い蛇へと変化させました。

 

「ひぃぃぃっ!?……あがっ!?ぐふっ!?!?」

 

そのまま蛇へと変化した腕を振り下ろすと、私の胸に突き刺したのです。

 

ぐぶっ…ずぶっ…ぐぷぷぷぷぷぷ………

 

「あ"っ!!あ"あ"っ…!!!ハナ"エ"……さ……ん"」

 

まるで私の身体の表面が柔らかい液体になったように波打ち、ハナエさんの蛇化した腕が私の身体のナカ奥深くまで入って行きます。

 

「あ"がっ…や"め"……や"め"て"く"ださ"い"……は"な"え"さ"ん"っ"……」

 

私のナカの奥深くを激しく掻き回され、何か大切なモノが奪われようとするのが解かります。

 

ブチ……ブチブチブチブチ……

 

「がはっ……いぎぃぃぃぃい"い"い"い"い"~~~~~」

 

身体中が悲鳴を上げ、何かを引き千切りながらゆっくりとハナエさんが腕を私のナカから引き抜きます。

引き抜かれた腕、蛇の姿に変化したその先の頭の部分には私のヘイローと同じ色の輝きを放つ美しい水晶のような宝石みたいな物がありました。

私の身体の中にそんな物が存在していたのかと驚くのと同時にそれは奪われてはいけない私の美食と同じくらい大切な物だと何故かそう感じました。

 

 

「ハナ……ハナエさん……返して……かえして……ください……」

 

 

殆ど力が入らなくなってしまった腕を必死にハナエさんへと伸ばし懇願しますが……。

 

ガリッ…バリバリバリッ!!!

 

ハナエさんはその嗤い顔をより暗く濃くすると、まるで私に見せ付けるかのようにその宝石を噛み砕いたのです。

 

ガリッガリッ……バリッバリッバリッ………

 

「ああ……ああああああああ……」

 

私の大切な物が奪われ目の前で噛み砕かれ食べられてゆく。その咀嚼音を聞きながら私の意識は闇の中へと消えて行きました。

 

 

 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

「……んんっ…?……はわっ!?」

 

 

いつの間にか私は気を失って床にへたり込んでいました。

 

「えっと……私は何をしていたんでしたっけ?」

 

頭の中が靄がかっていてよく思い出せません。

 

「えっ……?ハルナさん?……どうして……?」

 

ふと視線を向ければ目の前には黒舘ハルナさんが倒れていて、私はさらに混乱してしまいます。

 

「大丈夫ですか!?ハルナさん!しっかりしてください!ハルナさんっ!!」

 

慌ててふらつきながらハルナさんの傍に寄ると彼女を抱き起して身体を揺すり声をかけます。しかし完全に気を失っているハルナさんはピクリともしません。

 

「どうしてこんな事に………ああっ!!」

 

そこで私はようやく思い出しました。味覚と嗅覚を失ったハルナさんを救いたくて砂蛇様にお願いしたら、私の身体を差し出しもっと深く食べて貰う事と、味覚嗅覚復活の際に対価としてハルナさんから"力を貰う"事を条件に砂蛇様のお力を分けて頂いた事。

ハルナさんから"力を貰う"と言う行為がどういう事なのか良く分からずやり方をお聞きしたところ、"我に任せよ"と仰られたので砂蛇様の言う通りに一時的に私の身体を砂蛇様に御貸しした事を。

 

「砂蛇様……どうしてハルナさんが意識を失っているんですか。どうしてハルナさんが涙を流し辛そうな表情を浮かべているんですか……」

 

私の記憶にある最後のハルナさんは味覚と嗅覚が戻りとても幸せそうな顔を浮かべてました。今倒れてるハルナさんはまるで"大切な物を奪われて嘆き悲しんでいる"ように見えてしまいます。

 

 

"-----------------。"

 

 

「わ、私が砂蛇様のお邪魔をしたのですか!?そ、そんな……」

 

砂蛇様が仰るには私の身体を砂蛇様に一時預けた後、眠りについたはずの私の意識が覚醒して砂蛇様の施術を邪魔してしまい、ハルナさんに苦痛を与えてしまったそうです。

 

 

"--------、------------。---------------。"

 

 

「ハルナさんは無事なんですか!?味覚も嗅覚もちゃんと取り戻せてるんですか!?……よかった……ぐすっ……本当に良かった……」

 

幸いなことに砂蛇様が暴れた私の意識を再び沈めて眠らせ、ハルナさんの回復をしてくださったようです。ハルナさんは何処にも異常は無く直に目が覚めるそうです。

砂蛇様のフォローに私は何度も感謝の念を述べ、改めて忠誠を誓うと、ハルナさんを抱えてベッドへと行きました。

 

 

ガチャッン……

 

 

「………?」

 

ハルナさんをベッドへ寝かした後、テーブルの上を片付けようとして足に何かが当たりました。よく見るとハルナさんの愛銃であるゲヘナ製のスナイパーライフルが床に無造作に転がっていました。

私はハルナさんのSRをガンラックへ収めようと手に掴んだ時の事でした。

 

「あれ……?普通に持ててる……?」

 

銃身が長く重たいSR、その中でもとくに分厚くて重たいゲヘナ製の銃なのですが掴んだ瞬間、びっくりするぐらい手に馴染む事に気が付きました。

小柄な私には不釣り合いはずの銃がまるで私の愛銃 -ハッピースマイリー-を持った時にように楽に持つことが出来て重さも大きさも感じません。

試しに構えてみるとまるで私が使うためにセッティングしたのではと思うくらいしっくりきます。

 

窓辺に近づき、銃を構えてスコープを覗くと眼下には無数の生徒さんが見えます。

試しに美食家の小娘から奪った神秘を発動させて銃弾を放てば、真っすぐに飛び、遮蔽物を貫通して障害物の向こうに居た生徒に命中した。

 

「ほぉ……完全に奪えなかったとはいえ中々良い貫通力と火力ですね……。欠点は細長い直線範囲である射線が狭く、少し狙いが外れれば全く当たらない事でしょうか……」

 

この小娘(ハナエ)の身体がまだSRに慣れてないのもあって遠距離射撃はブレが多く使いこなすにはまだ少し時間が掛かるだろう。

 

「そういえば便利屋の小娘も同じ系統の銃をつかっていましたね。射撃訓練の時、少し近づいてみましょうか」

 

この小娘の巨大な器は神秘を複数収納するのはもちろん、同時運用も可能な事がわかった。必要ならあの小娘の神秘も徴取すれば良い。

 

「……あれ?私、何でハルナさんの銃を構えてるんだっけ……??」

 

いつの間にか窓辺でハルナさんの愛銃を構えていた私。どうやら少しぼーっとしていたようです。

私はハルナさんの銃をガンラックへ納めるとハルナさんが目覚めるまで執務室の片づけをしていました。

 

 

(おわり)

 

 

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