砂糖堕ちハナエちゃんのお話   作:砂糖堕ちハナエちゃんの人

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※このお話は大石リトリーさんの「脳内シュガーハック」を原作に、作中の設定や台詞を多数引用しています。砂糖堕ちハナエちゃんSS世界線で「脳内シュガーハック」の出来事と同じことが起きたら……?と言う設定です。
 このお話を読む前もしくは読んだ後に「脳内シュガーハック」を読むことをお勧めします。

また無能の司祭A氏の「鬼哭啾啾たる砂漠」シリーズの設定・描写を一部お借りしています。

残酷な表現が作中にあります。暴力流血人肉嗜食表現あり注意。


幕間 -ハナエとハレ(1)- シュガーハック(前編)

#ハナエ視点

 

 

「えっ!?また砂糖の純度を下げるのですか?」

 

「うん……まだ結構キツくてさ……。ねぇ、お願いだよハナエちゃん……」

 

「…………」

 

 お昼下がりのアビドス救護部の執務室、私はアビドス警備室の室長である小鈎ハレさんの診察をしていました。

 小鈎ハレさんは砂漠の砂糖を必要以上に摂取してしまうOD(オーバードーズ)と呼ばれる症状があるため、私が砂糖の量や純度を管理しその定期的に検診や服薬指導を行う特別患者さんの一人です。

 ……いえ、正確には"特別患者だった"…でしょうか。実は数日前からハレさんの過剰摂取行為がピタリと止んだのです。それまで何度も注意して聞いてもらえず、のらりくらりと躱されOD行為を止めてくれなかったのに……。

 

「とりあえずさ……もう2%純度下げて欲しいんだ」

 

「あの……2%も下げると純度10%になるのですが……」

 

「いいよ、いいよ。私なら平気だからさ……ねぇ頼むよハナエちゃん……」

 

 純度20%の砂糖を摂取していたハレさんですが、ODが治った途端今度は摂取量が極端に減り始めてさらには純度を下げ欲しいと願いだし今は純度12%の砂糖を処方しています。

 

「………分かりました。ハレさんのご希望通り、純度2%ダウンの純度10%の砂糖を処方しますね」

 

「う、うん……ありがとうハナエちゃん」

 

 何故かホッとした表情を浮かべるハレさんにどこか違和感を抱きながらも私は純度10%の砂糖を用意します。

 

「お待たせしました。ご希望の純度10%の砂糖です。三日分用意しましたので摂取量守ってくださいね。摂り過ぎはもちろん摂らないのも駄目ですからね!」

 

「うん、わかってるよ」

 

「三日分摂取されたらもう一度来ていただけますか?経過観察したいので忘れず必ず受診しに来てくださいねっ!」

 

「うるさいな……もう、わかってるってばっ!!」

 

 私から砂糖の入った袋を受け取るとそそくさとハレさんは執務室を出て行きました。まるで私から逃げるように――。

 

 

 


 

#ハレ視点

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 ハナエちゃんから乱暴に砂糖が入った袋を受け取って、私はアビドス救護部棟から逃げるように飛び出て自分の執務室に戻った。

 部下達に部屋に絶対に近づくなと念を押し、厳重にドアを施錠する。

 

「うううっ……」

 

 手元の紙袋から香る砂糖の香りに我慢の限界を超えていた私は紙袋を破り、中に入ってる小袋を全部破ると中の白い結晶を次々に口へと流し込み飲み込んでいく。

 

 

パチ…パチ…パチパチ……

 

 

「あっ、うっ、くぅぅぅぅぅ~~~~」

 

 待ち望んでいた刺激と幸福感が私の脳を染め上げて行く。体中の細胞達が砂糖を求め必死に吸収しようと暴れ回っているのが解かる。

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……全然っ…足りないっっ……」

 

 当たり前だ。私が今まで摂取していた砂糖の半分の純度、量は五分の一しか無い。

 私の身体が足りない、砂糖が足りないと悲鳴を上げている。

 

「………っ!?何やってるんだ私っ!!砂糖食べちゃ駄目だろっ!!もうなにやってるんだよぉっ!!」

 

 ふと急に冷静になって自分がした事に気が付く。そうだ、私は砂糖を絶とうとしていたんだ。この処方された砂糖だって飲むフリして手を付けず捨てる予定だったのに……。

 でも、もう遅い。折角砂糖を絶ちずっと押さえつけていた飢餓感が復活して私の理性を苛む。

 

 

 もっと砂糖を食べろ!純度を戻せっ!!量を増やせっ!!諦めろ、お前はもう戻れないんだぞ!!

 

 

 身体の中の悪魔たちが私を揺さぶり始め、私はその悪魔の囁きに必死に抵抗をする。

 

「嫌だっ!!もう砂糖なんて取るもんかっ!!私は、あんな……あんな悪魔どもにはならないっ!!」

 

 

ハレ、諦めなさい。ミレニアムを裏切り罪を犯したあなたはもう私達の元へ帰る事なんで出来ないのよ。

 

ハレ、無理は身体に毒ですよ。ほら砂糖をもっと食べなさい。

 

ハレ先輩、砂糖美味しいですよ。我慢なんて先輩らしくないですよ?

 

 

「止めろっ!やめろっ!!やめろっっ!!!先輩たちの姿や声を使うなぁあああっ!!!」

 

 砂糖の悪魔達が私を揺さぶろうとヴェリタスの仲間達の姿や声を利用する。

 副部長がそんなこと言うわけない。コタマ先輩がそんなこと言うわけない。マキがそんなこと言うわけない。ヴェリタスの皆がそんなこと言うわけない!!

 徐々に大きくなる幻聴と輪郭を帯び始める幻影に向かって私は床に散らばるエナジードリンクの空き缶を投げつけ叫ぶ。

 私が蹴り飛ばし、投げつける空き缶が響かせる甲高い金属音で聞こえてくる幻聴をかき消し始める。いつしかソレらは聞こえなくなっていた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……うぅぅうぅぅぅううぅうぅ……」

 

 私は床に蹲って私は泣きじゃくった。気が付けば私は壊れ砂糖に汚され悪魔へと堕ちようとしていた。

 

「嫌だ……私はなりたくない……あんなバケモノなんかに堕ちたくない……ハナエちゃんみたいになりたくない……」

 

 脳裏に浮かぶのは一人の少女の姿。元トリニティの生徒でアビドス救護部の部長をしている朝顔ハナエちゃんだ。

 私の一つ下でマキと同い年の彼女。優しくて真面目な子で――砂糖に溺れてしまった子。私がこのままだと行きつく果てに一足先に進んでしまった少女。

 

 

数日前、私は見てしまったんだ――。ハナエちゃんの悍ましい姿を――。

 

 

 


 

 

 

数日前(ハレ回想)

 

 

「あれ?あの後ろ姿……もしかしてハナエちゃん?」

 

 アビドス高校の校舎内監視セキュリティシステムのワンオペ更新作業を無事終えて一人打ち上げで特製エナジードリンクを乾杯してる時だった。

 監視カメラのモニターの一つに見知ったツインテールの後ろ姿が写っているのに私は気が付いた。

 すぐさまメインモニターに切り替え、さらに同フロアの別角度のカメラも起動してみれば確かに朝顔ハナエちゃんその人だった。

 振り返り時計を見れば既に日付が変わった真夜中である。

 

「何やってるんだろう。こんな真夜中に……?」

 

 ふらふらとまるで夢遊病者のような足取りで校舎内を歩く彼女の姿に違和感を覚える。そもそもこの区画エリアは彼女の管轄外だ。

 

「へへっ、天下の救護部部長様がこんな時間帯に夜更かし夜遊びなんて、い~けないんだ♪」

 

 皆の健康管理を一任され食生活や睡眠時間について口酸っぱく言う彼女。私も日々の生活サイクルやエナジードリンク飲料量について何度もお小言を言われてきていた。

 そんな彼女が自らはそれらを破り不健康な深夜徘徊をしている。物珍しい光景と次に何か文句言われた時の反撃材料になればと私は彼女の行動を監視追跡することにした。

 

 やがて彼女は地下2階の留置場エリアにやってきた。ここは風紀委員会や生徒会直属部隊が捕らえた捕虜やスパイ容疑者を閉じ込めておくエリアだ。

 

「ハナエちゃん何でこんな時間帯にこんな場所に来てるんだろう?」

 

 捕虜の健康診断なら日中にするはずだ。こんな真夜中にふらりと訪れてやるはずがない。

 しかもここは厳重にセキュリティが施されている。気になりシステムの監視ログを開けばどうやら風紀委員長権限のIDとパス使って侵入している。いくらヒナさんと親しいからと言ってハナエちゃんが使って良いはずがない。立派な犯罪だ。

 

「い~けないんだ♪いけないんだ~♪ヒ~ナさんに密告(チクッ)ちゃお~♪」

 

 ハナエちゃんの弱みを見つけれたと嬉しさで鼻歌を歌いながらふと監視カメラモニターに視線を戻せば、ハナエちゃんが捕虜の一人を牢屋から連れ出そうとしていた。

 画面の中でハナエちゃんと捕虜の生徒が何か話をしている。私はコタマ先輩直伝の盗聴システムの高性能集音マイクの音量を全開にする。するとハナエちゃんの声が聞こえて来た。

 

 

お前の神秘を徴取する(あなたのお力を少し頂きますね)

 

 

「えっ………?」

 

 意味がわからなかった。あのハナエちゃんが、優しい柔らかい声のハナエちゃんが、ドスの効いた底冷えする低い声で喋る。そして――。

 

 

『ヒィッ!?キャァアアアアアアアア!!!』

 

 捕虜の生徒の悲鳴が聞こえる。ハナエちゃんが腕を掲げるとその細く小さな腕が白い蛇へと変化したのだ。まるで特撮や映画のCGみたいに。

 

『イギィッ!?やだっやだやだやだっ!やめてっ助けてぇええええええええええええ~~~!!!!』

 

 そしてその蛇に変身した腕を捕虜の生徒の胸元に突き刺すとそのまま体内へと沈めて行く。まるで水面にゆっくりと腕を付けるように彼女の腕……いや蛇が捕虜の生徒の身体の中へと飲み込まれて行く。

 

『アガッ…ぎゃああああああああああああああああああああ~~~~!!!』

 

 捕虜の少女の断末魔が響き渡る。やがてハナエちゃんがゆっくりと蛇化した腕を引き抜く。その先の蛇の頭――口には捕虜の生徒のヘイローと同じ色の宝石や水晶のような鉱石が咥えられていた。

 

『ガフッ…グギギ……だめ……かえして……かえして……』

 

 震えながら自分の体内から引き抜かれた鉱石に腕を伸ばして取り返そうとする捕虜の生徒。そんな少女を嘲笑うような黒い微笑を浮かべるとハナエちゃんの腕の蛇は元の持ち主に見せ付けるかの如くその鉱石を噛み砕き飲み込んでいく。

 

ガキン、バキン、ゴリッ、バリッバリッバリッ……

 

 蛇が咀嚼するたびに捕虜の生徒のヘイローが明暗を激しく繰り返しながら砕けて消えて行く。ヘイローが完全に消え捕虜の生徒の身体は力なく床へと倒れ込み動かなくなった。

 

『……足りない。まだこれでは足りないですね』

 

 底冷えする低い声でハナエちゃんが呟く。そして蛇化した腕を再び少女の胸元へ思いっ切り突き刺した。

 さっきの幻想的な雰囲気は無い。今度は文字通り本当に突き刺したのだ。生徒の胸の皮膚が切り裂かれ、真っ赤な血が勢いよく噴き出す。

 

「ヒィッッ!?」

 

 私は思わず悲鳴を上げてしまった。

 そしてハナエちゃんは腕を引き抜く。血と肉片で真っ赤に染まった腕の先には心臓が握られていた。

 

「まさか…まさかまさかまさか」

 

 そしてハナエちゃんは鷲掴みにしたその心臓をまるでハンバーガーを食べるように貪り食い始めたのだった。

 

カブッ、ブチュッ、グチュッ、グチャッ、ベチャッ、ピチャピチャ……

 

 ハナエちゃんが食べている……人を……食べている。心臓を食べ終わると引き裂かれた胸元に腕を再び捻じ込み肉や骨、そしてその他臓器を引っ張り出し咀嚼する。

 

「ウブッ、ウウッ、ウボッ…ガバッ……オエッ、オェェェェェェェェェェェェ~~~~」

 

 もう限界だった。私はヘッドホンを投げ捨てて床に倒れ込むと、胃の中の物をすべて吐き出しブチ撒ける。何度も何度も吐き、胃液すら出なくなるくらい吐いた。

 

「ゴホッ、ガハッ……ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ……ウゥゥゥゥゥゥゥゥウ……」

 

 自分が吐き出した吐瀉物の海に溺れドロドロになりながら私は呻き泣き声を上げた。

 

 何だあれは…一体なんだ。ハナエちゃんが悍ましいバケモノになった。バケモノになって人を喰った。

 

「嫌だ……あんなのは嫌だ……あんなバケモノなんかに…私はなりたくない……」

 

 ハナエちゃんは私の様に砂漠の砂糖に溺れ沈んて行った子だ。私なんかよりも遥かに高純度の砂糖を大量に摂取している。ハナコさん達が言うにはハナエちゃんは砂漠の砂糖への適応度が高いので高い純度の砂糖を大量摂取しても平気だそうだ。

 つまり私もこのまま砂糖を大量摂取していれば何れ辿り着く。あのバケモノの姿へと。

 

「嫌だ……もう嫌だ。砂糖なんて欲しくない。砂糖なんてもう要らない……助けて……助けてよ」

 

 あんなに欲しかったのに。あんなに大好きだったのに……ミレニアムを捨てて、皆を裏切って、学校をメチャクチャに壊してまで欲しかったのに。

 今は口には入れたくない。見るのも匂いを嗅ぐのすら嫌だった。

 

「帰りたい……帰りたいよ……みんなの元へ帰りたいよ……」

 

 いつぶりだろうかこんな気持ちになったのは。きっと私は砂漠の砂糖に囚われていて……何もかも見失っていて……やっとやっとその呪縛から解放されたのだ。

 

「助けて……副部長……コタマ先輩……マキ……助けて……みんな……助けてよ……」

 

皆の所へ帰らなきゃ……こんな地獄から脱出して……みんなの元に帰らなきゃ……。

 

 


 

 

(ハレの回想シーンここまで)

 

 

「……………」

 

 漸く発作が治まり、私の頭が落ち着き冷静さと理性を取り戻していく。

 

「そうだ。私はミレニアムに帰るんだ。この世界から抜け出すんだ」

 

 もちろんただ逃げ帰るわけにはいかない。アビドスの砂漠の悪魔どもの中枢に居たんだ。情報を持ち帰らなきゃいけない。

 ミレニアムを、ヴェリタスを、大切な仲間達を裏切り悲しませ、学園の破壊活動に関与した事に対して私は罪悪感を持っていて少しでも罪滅ぼししないといけない。

 砂漠の砂糖がキヴォトス中に蔓延していて満足に対策も立てれず、"仲間のみんな"は苦戦しているはずだ。

 これ以上砂漠の砂糖の犠牲者を出さないためにも、この狂ったアビドスを止めそして滅ぼすためにも私にできる事、それをしないといけない。それが責務であり使命であり贖罪になるのだ。

 

「私は……アビドスじゃない。私は砂糖狂い(シュガー・ジャンキー)何かじゃない……。私はミレニアムのヴェリタス――小鈎ハレだっっ」

 

 ふと執務机の上に置いてある一機のドローンが目に留まる。先日、アビドスに侵入したゲヘナの残党による襲撃事件。

 計画も準備も武器装備も作戦行動もそのあまりにもお粗末な内容だったため、すべての情報や動きがこちらに筒抜けで彼女達の決死の突撃もあっさりと躱され一瞬で鎮圧され事件扱いすらならなかったある夜の出来事。

 そんなも拙策な彼女らだったがひとつだけ、このドローンだけは違った。

 彼女らも使いこなせなかったのかほぼ未使用状態で押収されたこのドローンはミレニアム製の最新世代の特殊な迷彩式ドローンでスパイ活動をメインとして高度な情報収集機能が備わり数々のデータの持ち帰りが出来るよう大容量のストレージを内蔵していたのだ。

 その時このドローンを見た時私は思いついた。

 

(これを転用することが出来ればアビドスの機密情報をドローン経由で外部に流せることが出来るはず!)

 

 私はすぐにこのドローンを持ち込んだ風紀委員に引き取りを提案した。解析すれば反アビドス側の情報が解かるかもしれないともっともらしい理由を添えて。

 元々扱い方がわからず処理に困り持ち込んできたものだったらしく風紀委員の生徒も特に気にすることなく快諾してくれた。

 

 その日から私はそのドローンを修理改造してアビドスの機密情報をドローンのストレージに入るだけ入れるようにした。

 重要な極秘作戦会議があると部下たちに話し、許可あるまで執務室に立ちいらない様に厳命して人払いを徹底して作業を開始した。

 

 

これで少し手も反アビドス連合に貢献できるはずだと信じて――。

ヴェリタスのみんなに顔向けできるはずだと願って――。

 

 

 

(つづく)

 

 

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