砂糖堕ちハナエちゃんのお話   作:砂糖堕ちハナエちゃんの人

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とりあえず投稿のため、文章の校正や整理が出来ていません。
telegra.ph公開版の方を読むことをお勧めします。
なおtelegra.phの容量の都合上、前後編に分割しています。

https://telegra.ph/%E7%AC%AC%E5%85%AD%E8%A9%B1%E6%88%A6%E4%BA%89%E5%89%8D%E5%A4%9C14-%E5%8B%87%E8%80%85%E9%81%94%E3%81%AE%E6%97%85%E7%AB%8B%E3%81%A1-03-31

https://telegra.ph/%E7%AC%AC%E5%85%AD%E8%A9%B1%E6%88%A6%E4%BA%89%E5%89%8D%E5%A4%9C14-%E5%8B%87%E8%80%85%E9%81%94%E3%81%AE%E6%97%85%E7%AB%8B%E3%81%A1-%E5%BE%8C%E7%B7%A8-03-31


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この物語はヤク墜ち先生の人(仮)の作品「“ヒーラー”アリスの旅立ち」をベースに作っており、該当作品から台詞・設定・情景描写等を多数引用しています。

引用元作品リンク
https://telegra.ph/%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%97%85%E7%AB%8B%E3%81%A1-09-20


第六話「戦争前夜」(14) 『勇者達の旅立ち』

 

 

「師匠!しっかりしてくださいっ!師匠ぉっ!!!」

 

「ううぁあああ……許してハナエぇぇ……助けてハナエぇぇ………あっ……??」

 

薄明るい照明を逆光に浮かび上がるアリスの顔がミネの視界に広がる。

ゆっくりと起き上がれば、味気ないむき出しのコンクリートの壁と床。

バラバラに飛び散ったハナエの残骸もむせ返るような血肉の匂いも無い。

 

「ハナエは……?ハナエはどこ……??」

 

震えながら辺りを見回すミネをそっとアリスが抱きしめる。

 

「大丈夫です。まだハナエは生きてます。バッドエンドには入ってないです」

 

「アリス……」

 

ぎゅっとミネを抱きしめるアリスの腕に力が籠る。

 

「アリスがモモイ達のことで苦しみ、魘されていた時、師匠はこうやってくれました。アリスが泣き止み落ち着くまで何時間でも抱きしめてくれました」

「今度はアリスの番です。師匠、アリスが居ます。ここに居ます。だから胸の中の物を全部吐き出してください。アリスが全て受け止めますから……」

 

「うぅぅううう……アリスぅ……」

 

アリスの胸に顔を埋め、ミネの慟哭が漏れる。そんな声を漏らさないように強く優しく抱きしめ「大丈夫、師匠なら大丈夫です。必ずハナエを救えます」と言い聞かせながら背中を何度も撫で続ける。

 

そんな状態がしばらく続いたのだった。

 

 

 

「ぐすっ……ひっく……ありがとう、私は大丈夫ですよアリス」

 

ゆっくりと顔を上げたミネ。そこには絶望の色はすでに消えている。

 

「師匠、アリスは師匠の傷を癒せましたか?師匠を救護(救え)ませたか?」

 

「ええ、ありがとうアリス。あなたはもう一人前の救護騎士団員よ」

 

「!!パンパカパーン!!アリスは遂に称号:救護騎士を獲得しました!ヒーラー勇者へクラスチェンジですっ!!」

 

嬉しそうに飛び跳ねるアリスに思わす微笑みがこぼれるミネだったが、直ぐに違和感に気づく。

 

「ところでアリス。その首と両手首と足首に装着してる機械は何ですか?まるで――」

 

枷みたいじゃないですか、と聞きかけたところでミネも自身の違和感に覚える。手を動かし視線を巡らせば、己の首と両手両足にも同じような機械が取り付けられている事に気づいたからだ。

 

ミネの指摘に笑顔溢れていたアリスの表情が一気に曇る。

 

「これは……ミレニアムで重犯罪人を収容するのに使う拘束具です。アリス達は……学園を転覆させるテロリストとして捕まりここに収監されました。外観誘致罪で……処刑されるそうです。

 

アリスの眼から涙がこぼれ始める。

 

「うわーーん!!せっかく師匠を癒せて救え、念願のヒーラー勇者に成れたのに、アリス達の冒険はここで終わってしまうんですぅぅぅ!!!」

 

泣きじゃくるアリスを見てミネの心には怒りの炎が一気に広がる。

 

「何が外観誘致罪ですかっっ!!こんな事絶対に認められません!!こんな腕輪ごときにっっ!!」

 

首のリングを引きちぎろうとミネが手をかけ力任せに引きちぎろうとしたときだった

 

「ああっ!!駄目ですっ!!師匠ぉぉっっ!!」

 

アリスの悲鳴が聞こえると同時に凄まじい電撃がミネを襲う。

 

バチバチバチバチッッ!!!!

 

「うがぁああああああああああ~~~~!!」

 

首のリングだけではない、両手足に装着されたリングを連動して高電圧をミネの身体に容赦なく流す

 

「うぐぐぐっ……これくらいの事で、私を止めれると思わないでくださぃぃぃ!!!」

 

それでも引きちぎろうとするミネに拘束具のリングは容赦なく電撃を加え、電圧と電流量を上げていく

 

バチバチバチバチッッ!!!!

 

「ああああああああああ~~~!!まけ、ま……せん……」

 

バチバチバチバチバチバチッッ!!!!

 

 

「いぎぎぎぎぎ……わたし……は……」

 

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッッ!!!!

 

「ぎゃああああああああああああああああああああ~~~~!!!」

 

「駄目ですっ!!もうやめてください師匠っ!!このままだと本当に師匠が死んでしまいますっっ!!」

 

アリスが止めに入り、ようやく電撃が止まる。ミネの身体のあちこちが焼け爛れ、煙と肉が焼ける匂いが充満する。

 

「うぅぅぅ……私はこんなところで朽ち果てるわけにはいかないの……はやく、はやくあの子を助けに行かないといけないの……」

 

必死に己を奮い立たせようとするミネ。しかし、心とは裏腹に身体は完全に屈服してしまいもう指一本すら動かせずにいた。

 

「うぅぅぅ……助けて……誰か……助けて………おねがい………ハナエぇぇぇ……」

 

ミネの心が再び陰り折れようとしていた時だった。

 

 

ガシャーン!!ガラン!ガラン!ガラン!

 

 

「「!!!!」」

 

 

突然大きく甲高い金属音が響き渡り、思わず二人は抱き合い驚く。

 

音のした方、牢屋の鉄格子の向こう側の通路上を見ると、鉄格子の入った金属製の換気口の蓋が転がり止まる。音の正体はこの鉄製の換気口の蓋が落ちてきた音だったようだ。

二人がゆっくりと換気口の蓋が落ちてきた方向――、通路の天井に視線を向けると――。

 

 

「団長!アリスちゃん!ご無事ですか!?」

 

 

「セリナッ!?」「セリナ先輩っ!?」

 

 

小さな通風孔からセリナが顔を出していたのだ。

 

「今、そちらに向かいますねっっ!!」

 

そういうとセリナは器用に人一人分もなさそうな通風孔から身体を出すとそのまま通路へと着地する。

 

「団長!アリスちゃんっ!!」

 

鉄格子の前までセリナが駆け寄る。

 

「凄いですっ!!まるで伝説の潜入スパイ傭兵みたいですセリナ先輩!!」

 

驚きの登場に目を輝かせるアリス。

 

「危ないです。二人とも下がってっ!!」

 

セリナが懐から四角い少し柔らかめな個体物を取り出し鉄格子の扉にくっつける。小さなリモコンと細く長いコードを取り付けると離れてスイッチを押す。どうやらC4プラスチック爆弾らしく、発破音にとともに鉄格子の扉が吹き飛ぶ。

煙がまだ残っているのにも関わらずセリナが牢屋の中へ入って来た。

 

「セリナ、あなたどうしてここに……?」

 

セリナがなぜこんなところに、しかも換気口から侵入し、鍵を使わず鉄格子を爆破するなど非合法的な手段をとったのか不審に思うミネ。

 

「団長!大変なんです。団長が……アビドスのスパイでミレニアムを転覆させるテロを計画しているって言われてるんです!!」

 

「そんな──!!」

 

「団長がハナエちゃんと繋がっていてミレニアムに砂糖をばら撒いて皆を狂わせようとしてるって言われて!!他のトリニティの生徒もアビドスの工作員だって言われて……治療もすべて打ち切られてホール建物に押し込められて軟禁されてしまったんです!!」

 

「何て馬鹿馬鹿しい事をッッ!!」

 

「私も団長はけっしてそんなことはしないって!!ナギサ様を始めとするティーパーティーの方々も抗議されたのですが聞き入られずに銃撃を浴びせられてしまって……」

 

「じゃぁ……セリナ先輩はどうやってここまで来たのですか?」

 

アリスはふと疑問に思ったことを口にする。

 

「実は───」

 

 

 

---------------------------------------------------------------------------

 

・ミカ様に助けていただいたんです。

 

・ナギサ様に助けていただいたんです。

 

・セイア様に助けていただいたんです。

 

・補習授業部の皆さんに助けていただいたんです

 

・カズサさんとレイサさんに助けていただいたんです

 

・アリウスの人たちに助けていただいたんです

 

・ちくわ大明神

 

--------------------------------------------------------------------------

 

「実は───ミカ様に助けていただいたんです」

 

「ミカ様が……?」

 

「はい………」

 

 

 

(セリナ回想シーン)

 

 

「さぁ!!セリナちゃん、早く逃げて!!ここは私が抑えるからっ!!」

 

「嫌です!!私も、一緒に戦いますっ!!」

 

「駄目だよっ!!この状況を解決するにはミネ団長を救出するしかないの!それにはセリナちゃんが行かないといけないんだよ!!」

 

「ミカ様……」

 

「ミネ団長にはセリナちゃんがついていてあげないといけないのっ!!さぁ!早く行って!!」

 

「~~~~~~~!!!!」

 

言葉ににならない声を発し、その場から走りだすセリナを庇いように翼と両腕を広げ仁王立ちするミカ。その彼女の翼と身体を無数の鉛玉が容赦なく突き破り貫通する鈍い音が耳にこびりつきいつまでも酷く残っていた――。

 

 

(セリナ回想シーンここまで)

 

 

「そんな事が……」

 

「はい……。だから、はやくここから脱出しましょう団長!」

 

ミネの腕を掴み、鉄格子の外へ連れ出そうするセリナ。

 

「だ、駄目ですっっ!!師匠を鉄格子の向こうへ出しちゃ駄目ですセリナ先輩っっ!!」

 

そんなセリナにアリスが慌てて制止する。

 

「アリスと師匠の身体に取り付けられた拘束具に爆薬が仕込まれてて正規の手順を踏まずに牢屋から出ると脱獄したと見なされて自爆するようになってます!!アリスは耐えられるかもしれませんが、師匠は確実に死んでしまいますっ!!」

 

「そんな……ここまで来れたのに……」

 

「セリナ……私達には構わず、直ぐにミカ様の元へ戻り、皆の救護をしなさい」

 

「嫌ですっっ!!団長とアリスちゃんを見捨てるなんてできません!!諦めません、きっと何か他に方法が……」

 

 

 

「ここは私にお任せください」

 

 

 

「「「!!!」」」

 

 

響き渡る美しい声に3人が振り向くと同時に通路の入り口のドアが開き、電動車椅子に乗った少女が現れる。

 

 

「「「ヒマリさん(先輩)!!」」」

 

 

「誰もが認めるミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカー、救いの女神、明星ヒマリが参りましたよ」

 

 

#ボツシーンへと飛ぶ

 

#このまま読み進める↓

 

 

そこには特異現象捜査部の部長、明星ヒマリが居たのだった。

 

「ヒマリ先輩!アリスと師匠の拘束具をはずしてください!!」

 

「ええ、構いませんよ。フフッ、ちょちょいのちょい、と♪」

 

空中に浮かび上がったホログラムディスプレイとキーボードを操作すると、ピピッと音がして、ミネとアリスの拘束具が外れ、床へと転がる。

 

「ヒマリ先輩ぃっっ!!」

 

アリスが駆け出してヒマリに飛びつく。後ろではセリナがミネに駆け寄り傷の手当てを始めていた。

 

 

「あらあら、アリスは甘えん坊さんですね。そんなにこの超天才美少女にして特異現象捜査部の憧れる先輩No.1の私が恋しかったですか?」

 

「ヒマリ先輩、お願いです!!ノア達の暴走を止めてください!!トリニティの人達が大変な目に遭ってるんです!!」

 

「………わかりました。トリニティの人達は助けましょう。ですが、ノア達を止めることはこの「全知」の学位を持つ眉目秀麗な乙女であるこの私をもってしても難しいのです」

 

「そんな……」

 

「ですからアリス、あなたにはこの学園を密かに脱出してほしいのです」

 

それから、とヒマリはミネ達の方へ顔を向ける。

 

「ミネさんとセリナさんにはアリスと共にミレニアムを脱出して彼女の護衛をして欲しいのです」

 

「私達がアリスの護衛を……」

 

「はい。トリニティの皆さんはこのミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーの明星ヒマリが全知の名にかけて必ず救いお守りします。ですが、ノア達はミネさんを執拗に狙うでしょう。ですから、アリスと共にミレニアムから脱出してほしいのです」

 

「アリス達がミレニアムから脱出して、それからどうすればいいのですか?」

 

「シャーレの先生と合流してほしいのです」

 

「先生とですか?」

 

「はい。ノア達はアビドスを憎み、滅ぼそうとしています。彼女たちの憎悪は根深くこのミレニアムが誇る天才美少女を以てしても止めるのは至難の業です。しかし、シャーレの先生はどうやら違う方法でこの事態を収拾しようとしているようです

 

「実は先生は数時間前までミレニアムに滞在していました。ノア達は何とか自分達の思想に染め陣営に取り込もうとしていましたがさすがは先生、拒絶されいました。そのため、先生も裏極秘に軟禁されていました。──数時間前までは」

 

「何か、あったのですか?」

 

「──数時間前、七囚人の一人、厄災の狐がミレニアムを襲撃し、同時に正体不明の存在から大規模なサイバー攻撃があり、その隙に慈愛の怪盗が先生を連れ去りました」

 

「しかし、そのサイバー攻撃を華麗に捌きつつ、私の天才的かつ芸術的、未来永劫末代に渡って私と同じ才能は現れないであろう腕前であるハッキングで先生の周囲を盗聴傍受した結果……先生と、七囚人とその黒幕たちは、小鳥遊ホシノたちを処分するのではなく、救う方針で計画を進めていることがわかったのです」

 

「先生が……?」

 

「その中にはこのキヴォトスに眠る神秘について詳しいような人物の姿も見受けられました。もしかすれば、あなたの中に残る箱舟の機能を正しく活性化させられ、この砂漠の砂糖に打ち勝つ大きな力になるかもしれません」

 

「名もなき神々の王女である、アリスの……」

 

「ケイはあなたの中から失われました。しかし、あなたの機能が完全に喪失したわけではありません。先生たちの協力があれば、あなたが死ぬことなくその機能を稼働させられるかもしれません」

 

「もしかしたら誰一人傷つけ命奪うことなく、アビドスのあの砂漠を消失させる事だって出来るかもしれません。あくまで仮定に仮定を重ねた途方の無い与太話に聞こえるでしょう。私ならきっと選ばないかもしれません」

 

「ですが、アリス。あなたなら絶対に選ぶでしょう?ならば可愛い後輩であるアリスに教えないのは、先輩として卑怯です」

 

「ヒマリ先輩……」

 

「きっと大変な旅になるでしょう。仲間になるミレニアムの生徒は誰一人いない。それどころかあなたの命を狙い、敵となって追ってくるでしょう。シャーレに命からがらたどり着いてもそこまでがただの前座で本番はそこからです。とても苦しい旅路になると思います」

 

「さて、アリス。あなたはどうしたいですか?」

 

ヒマリの問いにアリスは答える。

 

「アリスは勇者になります!みんなが死なずに済むような、みんなgは生きて笑えるような、そんなハッピーエンドを目指します!!」

 

その問いに満足そうに頷くとヒマリはミネたちの方を向く。

 

「ミネさん、セリナさん。どうかうちのアリスの旅のお供をしていただけないでしょうか?彼女には味方がだれ一人おらず、たった一人でミレニアムを脱出しなければなりません。無事脱出できたとしても道中危険な目に遭うかもしれません。そんな彼女の心身を支える旅路の仲間になってほしいのです」

 

「わかりました。この青森ミネ、トリニティはヨハネの名のもとにアリスを助け、ともに世界を救護する使命をお受けしましょう」

 

「おまかせください。私もアリスちゃんを助け、この世界を救うお手伝いをしたいんです!!」

 

「お二人とも……本当に感謝いたします」

 

深々と頭を下げるヒマリ。

 

 

「では私について来てください。時間がもうあまりありませんから。それからアリス──」

 

「はい?」

 

「出発前にゲーム開発部のみんなの顔を見ていきますか?」

 

「モモイ達とですか……?」

 

「ここ(ミレニアム)を脱出すれば暫くは会えないのです。最後に顔を見せておかなくても良いですか?」

 

「えっと……」

 

アリスはミネたちの方を見る。

 

「アリスがしたいのなら私は構いませんよ」

 

「アリスちゃん、みんなとお話してきていいよ?」

 

ミネとセリナも首肯している。

 

「アリスは──」

 

 

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・「いえ。勇者は、悲しい別れを振り返らないのです。それにまた、今度会えますから」

 

 →ヤク堕ち先生氏準拠ルートへ

 

 

・「………アリスに少しお時間頂けますか?」

 

 →砂糖堕ちハナエちゃんの人オリルートへ

 

 

※一部シーンが入れ替わるのみでお話の大幅な変更はありません

 

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「いえ。勇者は、悲しい別れを振り返らないのです。それにまた、今度会えますから」

 

一瞬、言い淀んだもののすぐにアリスは言葉を紡ぐ。後ろは振り向かない、今は前を見て進む時だからだ。

 

 

 

 

 

 

「どうぞこちらへ」

 

ヒマリの案内で地下牢を脱出したアリス達は特異現象捜査部の部室へと案内される。

 

「これは……!」

 

驚くミネ。そこにはミネ・セリナ・アリスの制服と愛銃と装備品が完全に仕上げれてた状態で置かれていたからだ。

もちろん、ハナエのチェーンソーで真っ二つにされ粉々に砕かれたはずのライオットシールドもまるで新品の様な状態で置いてあったのだ。

 

「ミネさんの盾も回収した残骸とトリニティに残されていた仕様書などの資料を基に一から作りました。ミレニアムの門外不出の最新の特殊強化素材を使用し、オリジナルより30%ほど強化しております」

「ミネさんは盾を武器としても使うようなので大きさ・重さ・重心・透明度など、すべて寸分の狂い無く忠実に再現しておりますのでご安心ください」

 

ヒマリにそう言われてミネは盾を持つと軽く振り回してみたりする。

 

「確かにこれはまごうことなく私の盾です。まるでハナエに壊されたのが嘘のようです」

 

全く違和感を感じさせない盾。しかし持ってみてはっきりと感じる。この盾は今までのとは"全く同じで全く同じでは無い"と。

 

(大丈夫。これなら今度こそあの子の凶刃(チェーンソー)を受け止めることが出来るっっ!!)

 

「ふふっ、ミネさんに喜んでいただけたようでミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカー明利に付きますね」

 

満足げにうなずくミネをヒマリは胸いっぱいの気分で見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁぁ!!」

 

 

セリナの感嘆の声が上がる。

 

制服に着替えて身支度を整えた三人がヒマリの案内でミレニアムの本校舎の一階のロビーにくると目の前には分厚い霧に覆われた世界が広がっていた。

 

 

「ふふっ、ミレニアム中の気象支援装置をハッキングして意図的に濃霧を作り出しています。厄災の狐に破壊され、残った僅かな監視網もこれで眼を晦ませれます。これなら無事誰にも気づかれず脱出できるでしょう」

 

そう言うとヒマリは小さなアンテナの付いたトランシーバーのようなものをミネに差し出す。

 

「無事スタディエリアを脱出できましたらこの発信器を作動させてください。ハイランダー鉄道学園の朝霧スオウと言う眼帯の少女が皆さんを救出のために合流予定です。合流後は彼女の指示と指揮に従いミレニアム自治区外へ脱出してください」

 

それからとヒマリはもう一つ何を取り出しアリスへ渡す。羊皮紙の入ったレトロな四角い封筒にミレニアムの校章を象った封蝋が押されているかなり古風な手紙だ。

 

「ヒマリ先輩、これは何ですか?」

 

「これは親書です。これをゲヘナ学園の万魔殿・羽沼マコト議長へ渡してほしいのです」

 

「ゲヘナ?シャーレに向かうのではないのですか?」

 

アリスは疑問に思う。

 

「実は脱出経路がゲヘナにしか繋がってないのとすぐにシャーレに向かうのは危険と判断したからなのです」

 

「おそらくノア達もアリス達がシャーレに向かう事を予想するでしょう。そうなれば大規模な戦闘は避けられません。それは何としても防ぎたいのです」

 

「ミレニアムはキヴォトスの学園を纏めて反アビドス連合軍を形成しようとしています。ゲヘナはその一番槍になると言われています。なので万魔殿のマコト議長に私からの親書を読んでもらい対アビドス強硬派の態度を軟化させたいのです。そこでゲヘナでの潜伏と説得をアリスにお願いしたいのです」

 

「これはゲームで見かける勇者の使命ですね!わかりました。アリス、ヒマリ先輩からの親書を必ずゲヘナに届けて見せます!」

 

ヒマリからの手紙を受け取るとアリスは大事そうに懐へとします。

 

「ミネさん、セリナさん。どうかうちのアリスをよろしくお願いします」

 

「わかりました。必ずアリスを護って見せます」

 

「お任せくださいヒマリさん!!」

 

そう言うとミネとセリナはアリスの横に並び立つ。

 

 

「さぁ!勇者達よ!お行きなさい!!」

 

 

ヒマリの掛け声とともに3人に少女達は分厚い霧の向こうへと走りだす。

 

 

絶望と言う名の霧の向こうに繋がる、希望と言う名の世界を目指して──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!

 

小さな電子音にヒマリの意識が覚醒する。

どうやらアリス達を見送った後いつの間にか少しの間意識を失っていたようだ。

 

 

「……いけませんね。こんな時に寝落ちしてしまうなんて」

 

そう言いながらヒマリは小さな電子音を発していた小型の情報端末を取り出す。非常にレトロで原始的なモノクロの液晶画面には文字が表示されていた

 

 

"希望の雛鳥は鉄籠に収まり混沌へと沈む"

 

 

それは無事アリス達が落ちあえたというメッセージだった。

 

(ありがとうございます。スオウさん……)

 

眼を閉じれば寡黙の眼帯の少女の姿が浮かび上がる。

 

 

 

朝霧スオウ。

 

砂漠の砂糖が蔓延し、砂に飲み込まれ沈みアビドスの軍門に下ったハイランダー鉄道学園でたった一人、砂糖を摂取せず、頑なに抵抗活動を続けていた少女の名前だ。

アビドスはもちろん、仲間であるはずのハイランダーからも激しい迫害と攻撃に遭い孤立状態だった彼女にヒマリは救いの手を差し伸べた。

ヒマリの、ミレニアムの持つ最新技術を動員して最先端の高度かつ鉄壁の防御を持ちすべての干渉・攻撃を受け付けない管制システムを提供し、協力体制をとった。

その見返りに彼女からもたらされたのは地下鉄を含む膨大な秘密の鉄道網だった。

孤立無援と思われていたスオウにはセイント・ネフティスグループがついており、彼女を通じてネフティスグループからミレニアムの反アビドス派には多くの資材と人材が提供された。

それらを活用してミレニアムはホシノらカルテルに気づかれる事なく多くの潜入破壊工作員をアビドスへ送りこむことに成功する。

ほとんどの工作員は捕まったり行方不明になるもののアビドス内部の情報はすべてミレニアムへ筒抜け状態となり、またホシノらはどこからスパイが忍び込んでいるのか侵入経路を見つけられずにいたのであった。

 

しかし、問題もあった。スオウ及びネフティスグループはアビドスに対して憎悪を抱いており、ミレニアムの反アビドス強硬派と結託してアビドスを内部から武力で破壊しようと試みる。

特にネフティスグループのアビドス、しいては小鳥遊ホシノへの憎悪は凄まじく「グループが衰退する原因のアビドスは跡形も無く滅ぼし、グループの希望であったノノミお嬢様を誑かせて狂わせたホシノらと廃校対策委員会は必ず殺さなければならない」と鼻息荒く捲し立てていた。

このままではまずいとヒマリは必死に説得を試み、何とかスオウを説き伏せて考えを改めさせる事に成功する。彼女のアビドスへの憎悪は何者かに無理やり植え付けらた偽物のように感じたからだ。

ヒマリと正気に戻ったスオウの活躍で最悪の事態は避けられたもののネフティスの一部の過激派とミレニアム内の過激派が結託してアビドスへ侵攻し、破壊工作と暗殺を試みるも失敗して全滅させられるという事件も起きたりした。

 

そして今回の事件、アリス達を何とかミレニアムから脱出させられないかと悩むヒマリにスオウからある一つの提案が齎された・

 

 

「ネフティスもミレニアムも誰も知らない秘密の地下鉄線が一つある」と

 

 

それはネフティスからも忘れ去られた未完成の鉄道網で、かろうじてゲヘナに繋がっているとのこと。

 

線路の路盤工事も済んでおらず、いつ崩落してもおかしくない掘削放棄された狭い坑道を工事用の簡易線路を使い工事用の小型のトロッコ電車で進むというもの。

 

落盤の危険と隣り合わせとかなりハイリスクだがヒマリには頼るしかなかった。

 

 

スオウも同意して万が一に備えて自分も同行すると言ってくれたのだった。

 

 

 

 

「さぁ、さて、ぼうっとはしていられませんね」

 

 

 

ミネとセリナは無関係な身内(ミレニアム)の内輪揉めに手を貸してくれた。

 

アリスは危険な旅路へと進んでくれた。

 

スオウも命を懸けてヒマリを助けてくれる。

 

今度は己の番だ。安楽椅子で胡坐をかいている場合ではない。

 

 

 

「アリス達のためにもこの清楚系病弱天才ハッカーかつ、優しくて万能で「全知」である美少女である私が全力を出すときですね!」

 

そういってヒマリが踵を返そうと車椅子を反転させた時だった。

 

 

「こんなところで何をしてるんです。ヒマリ先輩?」

 

ヒマリの額に銃口が触れる。

 

「……ノア」

 

いつの間にかヒマリの後ろに生塩ノアが立っており、車椅子を反転して後ろを向いたところで銃を突きつけたのであった。

 

 

「おはようございます。朝四時ですね。何をしてるんですヒマリ先輩」

 

「…………」

 

「アリスちゃんとミネさんは脱獄しました。セリナさんは消息不明です。──ヒマリ先輩、あなたの仕業ですね。この謎の濃霧も──」

 

「…………」

 

「黙って時間稼ぎのつもりですか?まぁ、別にかまいませんよ。どうせすぐにわかることになりますから。今、チヒロ副部長はじめとしたヴェリタスの面々に気象支援装置のハッキング解除と自治区全土の監視網の復帰をしてもらってますから」

 

「あなた、まさかちーちゃん達を叩き起こしたというんですか!!」

 

黙って平然としていたヒマリの顔にはっきりと焦りの表情が浮かび、思わず声が上がる。

チヒロ達ヴェリタスの面々には昨日の朝からミネの身体から摘出された砂漠の砂糖の抗体物質について解析研究をずっとやってもらっていた。

作業がようやく一段落して帰ろうとしたところで厄災の狐の襲撃と大規模なサイバー攻撃が始めり、ヒマリを含めてヴェリタス総出で対応に当たっていた。

久しぶりのヴェリタス活動に懐かしさを憶える暇もなくエイミとハレが居なくなったという事態の重さを何度も痛感しながら必死に対応した。

ようやく事態が収まり「もう寝る。絶対に寝る。何が起きても連絡しないで、したら絶交よヒマリ」とチヒロに念を押され電話が切れたのは1時間ほど前である。

 

 

それを叩き起こし、無理やりひっぱりだしたのか……この女は──。

 

 

「普段、セミナーのカウンターだ何とか言ってミレニアムの設備を好き放題に使い倒しホワイトハッカーと称して遊び惚けているんです。こんな時くらい、働いてもらわないと困りますからね」

 

そう言うとノアは楽しそうに鼻で笑う。

 

「そう言っている間に──ふふふっ、ほら見てください。霧が晴れてきましたよ。さぁ、ヒマリ先輩。アリスちゃん達をどこに隠したんですか?」

 

 

「教えるつもりはありません。ノア、今のあなたは異常よ」

 

 

「異常なのはヒマリ先輩の方ですっ!!大切なミレニアムの仲間を傷つけ奪われてどうしてそんなに平然としていられるんですか!!エイミさんがどんな目にあったのかご存じでしょうっ!!」

 

 

「……ッッ!!」

 

 

(#_幕間_『エイミからのビデオレター』へ飛ぶ)

 

 

アビドス潜入工作任務中に消息不明になったエイミ。最終帰投予定日にハイランダーから鉄道郵便でヒマリ宛に届けられた荷物。

 

チェーンソーで真っ二つに叩き折られた血だらけのエイミの愛銃「マルチタクティカル」

 

それに貼り付けらていたメモリーデバイス。収められていたのは一本の動画

 

『たすけて………部長……たすけて……』

 

アビドスにとらわれたボロボロの姿のエイミ

 

『暗いよ……寒いよ……何も見えないよ……』

 

あの暑がりだったエイミが震えている。いつの間にか自室から消えていたエイミとの思い出が詰まった防寒コートを羽織っているにもかかわらず鼻水と垂らし、歯をガチガチと鳴らして震えている。

視力を失っているのか、光の消えた瞳は視線が定まらず虚空をさまようばかり。

 

『やっほー、天才美少女ハッカーちゃん見てるぅ~』

 

そんなエイミを嘲笑うように出てくる魔人:小鳥遊ホシノ

 

『これからハッカーちゃんの大切な後輩ちゃんがお砂糖狂いになるところ見ててね~。ハナエちゃんよろしく~』

 

魔人に呼ばれて出てくるのは砂の小魔女(悪魔)、朝顔ハナエ。

 

『はい!ホシノ様。エイミさーん、お注射の時間ですよ~。今日は純度50%試してみましょうか!』

 

手に握られた注射器をエイミに見せつけるように持ち近づいていく。

 

『い゙や゙ぁ゙!!注射い゙や゙ぁ゙あ゙!!や゙め゙でっ゙!や゙め゙で!』

 

『部長ぉ゙っ!!だずげで部長!!壊ざれ゙る゙っ゙!!わ゙だじごわ゙ざれ゙る゙ぅ゙ぅ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!』

 

エイミの絶叫とともに映像は終わる。あの子がどうなったのか知らない、知りたくも見たくもなかった。

 

 

 

「…………」

 

脂汗を浮かべて肩で息しているヒマリ。その表情に満足そうな笑みをノアは浮かべる。

 

「ふふっ、悔しいですよね、憎いですよね。さぁ、ヒマリ先輩、私達と共にアビドスを滅ぼしましょう」

 

手を差し出すノア。しかし、ひまりはその手を弾き拒絶の意思を示す。

 

 

「それでも!私は悪鬼の道へと堕ちるわけにはいきません。こんなのは間違っています」

 

そのままノアを睨みつけるようにヒマリは見つめる。

 

「ノア、正気に戻るのは貴方の方です。今のあなたは異常です。そんな姿をユウカが見たらきっと──」

 

「黙りなさいっっ!!」

 

ユウカと言う単語を聞いた途端、ノアが一気に逆上する。

 

「ヒマリ先輩にっ!!ユウカちゃんの受けた苦しみがっ!!怒りがっっ!!わかるわけないでしょうっっ!!ユウカちゃんを騙るなぁぁぁっっ!!!」

 

ヒマリの胸倉を掴み乱暴に持ち上げ額の銃口を強く押し付ける。

 

「もう一度聞きます。AL-1S(アリスちゃん)はどこへ行った。どこに隠した!答えなさい明星ヒマリぃぃぃぃっっっ!!!」

 

地の底から沸き上がったマグマのような声を出しヒマリを脅すノア。

しかし、ヒマリは冷静にノアを見つめたまま。ポケットから出したハンカチで口元を覆う。

 

「ノア、あなた、香水変えたのかしら?」

 

「こんな時に何をっ──!!」

 

 

 

 

 

 

「ノア。今のあなた、浄化槽に浮かぶ腐った水の香りがするわ。この下水道女──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──!!!」

 

「アリス?」

 

「アリスちゃんどうしたの?」

 

スオウの指示で地下換気塔へ入ろうとしたところでアリスが動きを止める。

 

 

「……今銃声が聞こえました。アリス達の来た方向からです。きっとヒマリ先輩に何かあったんです。先輩……ヒマリ先輩ッッ!!」

 

青ざめた表情のアリスが引き返そうと向きを変える。

 

「待ちなさいっ!!アリスっっ!!」

 

それをミネが止める。アリスの腕をがっちりと掴んで離そうとしない。

 

「は、離してください師匠ぉっ!!早く戻らないとヒマリ先輩がっっ!!」

 

「なりません!!アリスっっ!!」

 

ミネの大きな強い声がアリスを止める。

 

「良いですか。今戻ればヒマリさんの意思をすべて無駄にするんですよ。ヒマリさんは命を懸けて私達を送り出したのです。それを無駄にする気ですかアリスっっ!!」

 

「でも……」

 

「しっかりしなさいっっ!!勇者アリスッ!!」

 

ミネの叱咤が飛ぶ。その時だった。大きな警報サイレンが響き渡り始め、周囲の濃霧が少しずつ晴れ始めたのだ。

 

「おい!何やってる!気づかれたぞ!!早く中に入れっっ!!」

 

通風孔の中から眼帯の少女──朝霧スオウが顔を出して叫ぶ。

 

「アリス」「アリスちゃん」

 

ふたりの声がアリスに決断を迫る。

 

「~~~~~~!!!」

 

小さな悲鳴なような声を上げて目じりに涙を浮かべながらアリスは通風孔の中へ飛び込んで行く。

 

「団長……ヒマリさんは………」

 

「セリナ……今はそれを考える時ではありません。先を急ぎましょう」

 

「………はい、団長」

 

ミネとセリナも通風孔へと飛び込んで行く。少しずつ霧が消えていき、朝日が差し込み始めていた。

 

 

 

(つづく)

 

 

 

 

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