砂糖堕ちハナエちゃんのお話   作:砂糖堕ちハナエちゃんの人

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第四話「トリニティ襲撃勧誘作戦」 その2

 

 

ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!

 

「開けろっ!!」「開けろっ!!」「開けろっ!!」

 

ダァッン!!ダァッン!!ダァッン!!ダァッン!!

 

「ミネ団長っ!!開けてください!!」「団長っ開けろっ!!」「隠れてないでっ!!」「砂糖だせっ!!」

 

ガァアンッ!!ガァアンッ!!ガァアンッ!!ガァアンッ!!

 

「セリナっ開けてっ!!」「セリナさんズルいですよっ、団長と砂糖を隠し持って食べてるんでしょっ」「う"ぁ"ぁ"あ"っ、甘味がぁっ、砂糖が欲しいっ」「苦しいっ助けて、ミネ団長っ、セリナっ…」

 

 

 

厳重に締め切ったドアとそのドアを塞ぐように積み重ねたバリゲートの向こうで悲惨なうめき声や叫び声や、ドアを叩き、殴り、銃弾を浴びせ続けている音が聞こえてきます。

 

(どうしてこんな事に……)

 

締め切ったドアや窓を通り抜け、部屋の換気口から流れ込んできた、今まで嗅いだことのない甘い空気。その甘い香りに気づくと同時くらいに詰め所に居た仲間達が次々と苦しみだして発狂して暴れ始めました。怪我や負傷していて寝ていた子も起きあがり傷口が開き血が噴き出すのも構わず動き始めました。

最初は目の前の物を破壊し、周りの子に暴力を振るうようになっていたのですが、室内でただ一人無事だった私に気づくと一斉に襲い掛かって来たんです。

私は必死に上の階へと逃げ、異変に気付き執務室から飛び出て来たミネ団長と最上階の倉庫へと逃げ込みました。ドアの三重ロックをすべてかけ、室内の戸棚やキャビネットをすべて動かしドアの前に積み重ね、バリゲートを作り上げて籠城する事にしました。しかしそれも長くはもちそうにありません。

 

「やはり、恐れていた事が起きてしまいましたね」

 

ミネ団長がとても苦しそうな表情を浮かべてます。

 

「それで本当にハナエが連れて来たんですね」

 

「はい……ハナエちゃんがティーパーティーの人が差し入れを持って来たって一緒に……」

 

「……………」

 

ミネ団長がとても深く考え込んでいます。眉間に何重にも皺が出来るほど、まるで最悪の予想を浮かべているような表情でした。

 

「ところで、ハナエは今どこに居るんです?」

 

「ハナエちゃんは――、ああっ!!」

 

私は大変な事をしてしまいました。突然暴れ始めた仲間に怯え、思わず逃げてしまったんです。ハナエちゃんを連れずに……。

 

「ハ、ハナエちゃんがまだ下に……わ、私、今すぐ助けに行ってきますっ!!」

 

「待ちなさいっ!!」

 

ハナエちゃんと助けに行こうとバリゲートへよじ登ろうとした私をミネ団長が掴んで止めます。

 

「だ、団長っ!!ハナエちゃんがっ!!まだ下にっ!!早く助けに行かないといけないんですよっ!!」

 

「落ち着きなさいセリナッ!!………ハナエはもう下には居ないでしょう、恐らくは」

 

それはどういうことですか?と振り返りミネ団長に聞こうとしたその時でした。

 

 

ガシャーン!!パリーンッ!!ガシャーン、ガシャーン!!

 

 

突然、部屋の窓ガラスが割れました。それも一か所だけではなく、倉庫の部屋の壁にあるすべての窓がです。よく見ると割れた窓から中にロープのような物の先に鉤爪が付いた物が飛び込み。窓枠や窓枠の下の壁に突き刺さって引っ掛かっています。

 

「居たぞっ!!やっぱり最上階に隠れていた!!」「ミネを逃がすなっ!!必ず捕まえろっ!!」「う"あ"あ"あ"あ"あ"…砂糖……よこせっ……」

 

窓から覗けば何本ものロープぶら下がり梯子が外壁に立て掛けられ、沢山の生徒達がこの最上階を目指してよじ登って来ています。救護騎士団の仲間だけではなく正実やティーパーティの制服を着た子も居て、建物の周りには大勢の生徒が徘徊していてまるでホラー映画の様でした。

 

「ああっ……そんな……」

 

恐怖のあまりに後ずさり腰が抜けそうになり後ろに倒れそうになったところをミネ団長に支えられそのまま抱き抱えられます。

 

「セリナ立ちなさい。それからしっかりと私にしがみ付くように」

 

「あ、あのミネ団長?何を……」

 

「ここから脱出してハナエを探します。行きますよっ!!!」

 

「へぇっ!?うわあっきゃぁああっ!!!」

 

そのまま、一度部屋の端まで下がるとミネ団長は駆けだし、窓枠を踏み越えて大空へ飛び立ちました。その瞬間、大音響とともに倉庫のドアとバリケードが吹き飛ばされます。誰かが高性能爆薬を使ったのでしょうか、激しい衝撃と熱風を浴びながら私達は空中を滑空していきます。

 

「ミネだっ!!捕まえろ!!」「撃て!!撃て!!」「撃ち落とせっ!!」

 

地上にいる生徒達が空中を飛ぶ私達に容赦なく発砲します。

 

 

パスッ!!パスッ!!パスッ!!

 

 

何か薄い膜に穴が開くような音がして、

 

「あ”ぐぅっ!?」

 

ミネ団長のうめき声が聞こえた瞬間、私達はまるで叩き落されるかのように地面に落ちてしまいました。

 

「うぁっ!?ううっ…」

 

咄嗟に団長が庇ってくれたのか私は鈍い衝撃を受けただけで済みました。しかし、目を開けると

 

「うぐっ……」

 

「み、ミネ団長っ!!」

 

地面に叩きつけられた衝撃で思うように身体が動かず、身を捩る団長。その肩越しに見える空色の美しい羽にはいくつも穴が開き、血がにじんでる部分もありました。地面には千切れた団長の羽がいくつも散乱していて……。

 

「ううっ、セリナ……良いから早く走りなさい」

 

「で、でも……団長がっ!!」

 

「私は良いから走りなさい!!早く!!そのまままっすぐ走るのですっ!!」

 

「……っ、は、はいっ!!」

 

団長の腕の中から這い出て私も走り始めます。少し遅れて団長も何とか立ち上がります。

 

「いたぞっ!!!」「捕まえろっ!!」「羽引ん剥いてやる!!」「むしり取って砂糖漬けにして食ってやるっ!!」

 

そんな団長を袋叩きにしようと生徒達が襲い掛かり始めて、私も戻ろうとすると。

 

「何をしてるんです。私は大丈夫だから走りなさい!!後ろを絶対に振り向くなっ!!」

 

団長の怒声が響き、私は再び前を向いて走り始めます。後ろ方が激しく光り、衝撃音が響き渡ります。ミネ団長が暴徒鎮圧用の閃光弾型グレネードを使用したみたいです。

 

やがて、聴き慣れた足音が近づいてきます。ミネ団長がもう私に追い付き始めたんです。

 

「セリナ、次の角を右に曲がりなさい。曲がって建物を3棟通り過ぎたら細い小道があるのでそこへ入りなさい。あとは道順通りよ」

 

「はい、団長!!」

 

追ってくる生徒を殿を務めてる団長がショットガンで撃ち落としていきます。再び閃光弾グレネード、催涙弾、煙幕弾……轟音と煙が何度も響きました。

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ………」

 

「ふぅ………」

 

ようやく誰も追って来ないのを確認して、建物の影で一休みします。気が付けば学園の敷地のかなり奥の方まで入って居ました。

 

 

「あの、団長……ハナエちゃんはどこに……?どうして詰め所に居ないってわかったんですか?」

 

「あの子の救護騎士団員用の通信端末です。どうやら現在位置情報発信機能をオンにしたままのようですね」

 

ミネ団長の持つ通信端末には多くの団員の位置情報が表示されていて、現在地近辺のマップには「Hanae Asagao」と表示されている赤い点がありました。

 

「団長……この赤丸の位置って……」

 

「ええ、ハナエは恐らくあそこに居るでしょう。さあ行きましょうか……」

 

私達の居場所から方向と距離でハナエちゃんが居るだろうと思われる場所、古い講堂の建物がありました。

解体工事用の黄色い仮設フェンスを乗り越えて敷地へと入ります。建物の窓や扉はすべて木の板で塞がれていましたが、一か所だけ塞がれてない鉄の扉があり私達はそこへと向かいます。

鉄のドアを開けようと手を掛けた瞬間、何か気配を感じました。この鉄の扉の向こうに何か人が居る。そう直感で感じ取ったんです。

 

ミネ団長の方を振り向くと、団長も気づいたのか頷きます。

私はそっと扉の向こう側へ声を掛けました。

 

 

「ハナエちゃん?……そこに居るの?」

 

 

(つづく)

 

 

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