異世界帰りの武器屋ジジイ   作:水色の山葵

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第17話 二組目

 

 セット。

 

 そう巳夜が呟くと同時に石から魔力が放たれる。

 魔力の流れは石より巳夜の身体の中へ移動を始め、収まり切る様に停止した。

 

「これで何らかのアーツを憶えた事になります。まぁ定着して自由に使える様になるには1日程度掛かるらしいですけど」

「定着してみるまで何のアーツかも分からねぇしな」

「うん。赤色の石だったから【アタックアーツ】って事は分かるんだけどね」

「そもそもアーツとはどういった物なのだ?」

 

 儂がそう問うと、アーツを良く使っている迅が説明をしてくれた。

 

「アーツってのは幾つかのダンジョンで得られる異能力だ。この石を使う事で得られるし、得た後は自由にその力を使える。常人なら大体1つから3つ程度までのアーツを同時に保有できるんだが……」

 

 迅の説明は意外にも分かり易かった。

 アーツとは名の通り【技】と呼ぶのが適切な異能の様だ。

 発動から一瞬で効果が終了する物が殆どで、持続的に効果を発揮する物では無いらしい。

 

「それとアーツには『所持限界』と『適性値』が存在して、その人間の才能によって保有できるアーツは変化するんだ『所持限界』はアーツを持てる個数。『適性値』は、その属性のアーツを使う際に発生する疲労量に関係する」

「アーツにも種類があるのか?」

「あぁ、近接攻撃系の【アタックアーツ】移動系の【クイックアーツ】遠距離系の【バレットアーツ】防御系の【ガーディアーツ】の四種類だな」

「因みにアーツ意外の異能は全部【オリジン】という名前に総称されます。これはダンジョン発生以前から存在する異能力やその派生によって誕生した物の事です」

「アーツじゃねぇって事は、爺さんの特殊な武器製作能力も分類上は【オリジン】って事になるな」

 

 そう言えば、儂が倒したあのミスリル級探索者『柳亨』もアーツを使っていたな。

 いや、それ以前にユーマたちも目立っては居らんかったが、常識はずれの動きをしていたタイミングがあった。

 

 あれはアーツによる効果だったのだろう。

 

「しかし、一人で2つや3つもアーツを使えれば相当な戦闘力になるのではないか?」

「適性値によってはだけどな」

「使用に対する疲労度って多分魔力消費の事なんですけど、適性値が高くないと直ぐバテちゃうんです。でも、『アーツストーン』は簡単に手に入る物じゃ無いので、自分に合ったアーツを持てるかは結構運というか」

 

 確かに、巳夜はもう半年以上探索者として活動している。

 しかし、彼女がアーツを使った所は見た事が無い。

 別段アーツストーンを使いたくない訳でも無いらしい所を見ると、それだけその石が希少という事なのだろう。

 

「さて、二人とも武器を出すが良い。先の戦いでそちらも相当に消耗しているのだろう?」

 

 腰に、背中に、携えられたそれらを見れば分かる。

 先日の戦いで相当に無理をしたのだろう。

 その修理は当然、儂の仕事じゃ。

 

「はい。ありがとうございます」

「また明日取りに来させて貰うぜ」

 

 そう言って二人の武器を預かると、彼等は店を後にして行った。

 

 

 

 

 去って行く姿を見ながら店の扉が閉まり。

 そして、1時間もしない間にまた扉が開く。

 

「約束通り来ましたよ久我さん!」

「この前はありがとう」

「この武器も貸して下さった事感謝しています」

「返しに来た」

 

 現れた四人。

 それは『ユーマ』『マリ』『キュレー』『ハイネ』の三人だ。

 

「いやこっちこそ世話になった。確かに、ミスリルシリーズは返して貰う」

 

 四人から、それぞれ剣と盾、大斧、短剣、細剣を回収する。

 儂が工房で造った品に比べれば、粗末な点が幾つもあるこの武器たち。

 それで良くあれだけ頑張ってくれた物だ。

 

「それで久我さん、折り入って相談なんだけど……」

 

 手を摩り合わせながら、ユーマが口を開く。

 

「俺たちの武器を造って欲しいんです……」

「そう言えば、そういう話をしていたな」

「いいんですか!?」

 

 童心の様に目を輝かせてユーマは寄って来る。

 暑苦しい男だ。

 

「勿論じゃ。ここは武器屋、お前さんたちが武器を買う事に問題などある訳がない。しかし、お前さんたちにどのような武器を渡すかは儂が決めるが良いな?」

「はい! あんたの武器が使えるんだったらそれで構わないですよ!」

「私も、正直あの感覚は捨てがたい物があるしね」

「僕もそれで問題ありません。貴方の武器には払うお金以上の価値が必ずあります」

「私も……あの武器は自信がつく」

 

 こうも武器を求められるとは。

 武器屋冥利に尽きる話だ。

 儂も多少は人気になって来たのだろうか。

 

「少し待っておれ、取って来る」

 

 彼等に渡すべき武器は既に決まっていた。

 ダンジョンでユーマが武器を造って欲しいと言った時から、ピンと来ていた物がある。

 

 その品々を彼等の前に差し出した。

 

「これが、お前たちに似合いの武器じゃ。その名も……」

 

 

 通陳(つうれん)陽盾(ひだて)

 極大手裏剣(きょくだいしゅりけん)

 (かげ)(かんむり)

 廻針(まわりばり)

 

 

 陽光色に輝く盾。

 六枚刃の手裏剣。

 闇色の王冠。

 無垢な装いの棘の剣。

 

 そんな形容が可能な儂の武器。

 それを彼等に手渡す。

 

「武器……?」

「しゅりけ……」

「防具…………」

「……」

 

 む。思っとった反応と違うな。

 

「どうした、これがお前さんたちの武器じゃ」

「いやこれ……盾なんですけど……防具なんですけど……!」

「武器とは武力闘争を目的とされて造られた全ての物を言う。お前さんたちに渡した物達は全てが敵を殺せる以上の殺傷能力、破壊力を有して居る」

「一見すれば、この冠に殺傷能力がある様に見えませんが……落雷を操る虎を呼ぶ様な武器を造る職人によって造られた物ですし……」

 

 そう言いながらキュレーという少年が、『影の冠』を手に取った。

 そのまま色々な角度からそれを見ている。

 その様子を見て、他の者達も各々の武器を恐る恐ると言った様子で手に取って行った。

 

「これって、せめて盾とセットの剣とかを作って貰う訳には……」

「駄々を捏ねるでない。儂の武器は原則一人一つじゃ」

 

 でなければ、武器が怒る。

 二対一体の様な例外もあるが、彼等の武器は違う。

 複数の武器を持てば認められ難くなり、『真名』を知る為により多くの時間が掛かる事になる。

 

「剣は別の武器屋で買うが良い」

「そんなぁ……」

「まぁ聞け。お前達に渡した武器たちの解説をさせて貰おう」

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