八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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閑話「あの日、守ると決めた」

 

 

 

 それは、ヒーロー達が対ヒューマライズに動いていた時に起こった、もう一つの事件。

 

「守るさ、子供は、子供の笑顔は守らないと。行くぞ、治崎」

「ああ、壊理を親父に会わせてやる」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

「全く、大晦日だと言うのに」

 

 家でまったりとしていた所に、ヒューマライズの犯行声明である。当然、公安から緊急出動の要請があり、集合場所にバイクを走らせていた。

 

「はっ、はっ、はっ、」

「ん?」

 

 ビルとビルの間の路地裏から、幼い少女が一人。見るからに悲壮な顔で飛び出してきた。その姿を見た瞬間、急ブレーキをかけて、その子の前に止まる。

 

「君、大丈夫かい?」

「ひっ!」

「安心してくれ、私はヒーロー"レディナガン"だ。君の名前は?」

「わ、私、壊理、廻さんが、廻さんが、」

「落ち着いて、壊理ちゃん。私が、「目標発見!確保しろ!!」···私から離れない様に、壊理ちゃん」

 

 少女、壊理ちゃんが来た方向から、ここ半年で良く目にするローブと仮面姿の人間が三人やってきた。

 

「その子を渡してもらおうか」

「···断ると言ったら?」

「力ずくでっ!!」「がっ!!」「ぴっ!!」

 

 よし、言質も取れたので瞬時に制圧。コイツらは、他のヒーローに回収してもらうとして、壊理ちゃんを安全な場所に連れていって事情を、

 

「あ、壊理ちゃん!」

 

 襲撃者達を縛り上げて壊理ちゃんに向き直った所、壊理ちゃんが路地裏に向かって走って行ってしまった。"廻さんが"と言っていたから、この向こうに、彼女の両親か保護者が居るという事なのだろう。バイクに備え付けられた、緊急事態を仲間に知らせるスイッチを押し、少女を追う。

 

「きゃっ!お、お姉さん?!」

「私の方が速い。案内をしてくれるかい?壊理ちゃん」

「う、うん!あっち!!」

「しっかり掴まっていてね」

 

 壊理ちゃんを抱えあげ、指し示す方向へ走る。何個か角を曲がった先に、少し開けた空白地帯に出た。

 

「廻さん!!」

 

 そこには、地面に倒れ伏す、私が制圧したのと同じ格好の奴ら達と、右腕を抑えて建物に寄りかかる男の姿があった。

 壊理ちゃんが、私の腕から離れて男の所に走る。

 

「ぐっ、壊理···何で戻ってきた」

「あのお姉さんが助けてくれたの」

「···アンタは?」

「私の顔を忘れたか?筒美だ。仮免試験のヴィラン役を頼みに行った時に会っただろ、治崎。ああ動くな、傷を見せてみろ」

「個性を抑制する薬を使われた。個性さえ使えれば、こんな傷すぐに治せる。それよりも、今は壊理を安全な場所に」

「動くなと言っている。近くに、私のセーフハウスがある。取り敢えず、そこで詳しい話を聞かせろ」

 

 手持ちの簡易治療キットから、包帯を取り出し巻いてやり、治崎に肩を貸し、壊理ちゃんと手を繋いでセーフハウスに向かう。

 

 

 

「~~っ!!!」

「···すごいな、治癒の個性か」

「オーバーホールだ。物質を分解し、修復や再構築をする」

「そうか。では、詳しい話を聞かせてくれ、治崎。ヒューマライズは何を狙っている」

「奴らは、壊理の個性を狙っている」

 

 セーフハウスに着き、壊理ちゃんは緊張が解けたのか、気絶する様に眠ってしまい、私の一番のお気に入りと一緒にベッドで横にしてあげた。

 リビングに戻ると、治崎が自身の治療をし終えていた。血を失って少し青白いが、大丈夫そうだ。

 

「あの子の個性は」

「···巻き戻し。万物の時間を過去に戻す、特別変異の個性。上手く使えば、擬似的な不老不死さえ可能だ」

「···世の権力者が欲しがりそうな個性だな」

「だからこそ、限られた人間しか知らない。しかし、奴らは明確に壊理の個性を知って、八斎會本部を襲撃してきた。早く、親父達を助けに···くっ!」

「傷は治せても、血が足りていないんだろ。無理をするな、朝まで休め」

「だが!」

「仲間の一人に、さっき八斎會を見に行くよう連絡しておいた。少なくとも、ソイツの連絡が来るまでは大人しくしていろ」

「···ちっ!壊理の様子を見てくる」

「ああ、側に居てやれ」

 

 寝室に向かう治崎を見送り、公安に連絡を入れる。

 

『何やら、事件に巻き込まれたみたいね』

「はい、会長。狙いは、斎日(サイビ)壊理。彼女の個性を狙っての犯行の様です。会長は、彼女の個性を?」

『知っているわ。ただ、少なくとも日本で、彼女の個性を漏らす人間は居ないわ』

「では、海外?」

『ええ、そっちに内通者が居るのでしょうね。調べるよう依頼をしておくから、貴女は斎日壊理の護衛を』

「はい、分かりました」

『···気を付けなさいね。今回の敵は、中々に強大な様ですから』

「ええ」

 

 電話を切り、私も寝室に向かう。そこには、壊理ちゃんに寄り添うように横になる治崎の姿があった。

 

「···一人でこっそり出ていくのを予想していたが、案外聞き分けが良いんだな」

「壊理の為だ。この子は、自分の個性で父親をこの世から消し去っている。その所為で、身内が居なくなる事にとても敏感なんだ」

「個性事故か」

「ああ。母親は、壊理を怖がって逃げた。壊理の血縁である親父、組長とその養子である俺が、今は親代わりだ」

「そうか、こんな小さいのに、大変な物を背負ってしまったんだな」

 

 壊理ちゃんの髪を、起こさないように優しく鋤く様に撫でる。

 

「···んん、まま···」

「ふっ、男を知らず子供も産めぬ身で、母親と呼ばれるとは」

「······」

「ん?ああ、昔仕事でヘマをしてな。子供を育てる場所がごっそり無いんだ」

「···別に、興味はない。それよりも、仲間からの連絡は」

「まだだ(bbbb)···噂をすれば、だな。私だ」

『固法です。外から見てみましたが、八斎會の方々は地下で健在です。まぁ、ボロボロかつ敵に囲まれていますが。シールドの個性で、何とか耐えてる感じです。因みに、敵の数は残り十八人です』

「分かった。お前は、引き続き監視をしていろ」

『はい、先輩』

 

 電話をポケットに納め、治崎に視線を向ける。

 

「行くのか?レディナガン」

「ああ、ヒーローとして、助けに行かない訳にはいかないから」

「俺も連れていけ。道案内が必要だろ」

「···来るなと言っても、今度こそ勝手に行きそうだな。足手まといにはなるなよ」

「誰に言っている。伊達に、ヤクザの若頭やってはいない」

「30秒で支度しな」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「·········はっ!!廻さん!!お爺ちゃん!!お姉さん!!」

 

 目が覚めたら、目の前に大きな猫の人形があった。私、こんなの持ってたっけ?と思っていると、昨日の出来事がフラッシュバックしてきた。

 周りを見渡しても誰も居なくて、転がるように扉まで走って、勢いよく扉を開ける。

 

「起きたか、壊理」

「···お爺ちゃん?本物?幽霊じゃない?」

「おう、ちゃ~んと、足があるだろ?」

 

 そこには、湯飲みを片手に新聞を読む、お爺ちゃんの姿があった。

 

「壊理、おはよう」

「良く眠れた?壊理ちゃん」

 

 声を掛けられ振り替えると、廻さんとお姉さんが、キッチンでご飯を作っていた。お姉さんが私に近付いてきて、私の目線の高さまでしゃがんだ。

 

「もう、怖い人は居ないわ。皆、やっつけちゃったから。安心して、誰も居なくなってないわよ」

「本当!?」

「ええ、本当」

「う゛う゛、うわあああん!!」

 

 私は、思わずお姉さんに抱きついた。嬉しくて涙が止まらなかった。額の角が、光っている事に気付かず。

 

「きゃっ!!」「「壊理!!」」

 

 お姉さんの体が光に包まれ、光が収まると、さっきよりもシワとか無くなって、腰周りが少し細くなって、髪が凄い伸びたお姉さんがいた。

 

 

 この後、滅茶苦茶叱られた。そして、お姉さんの足と足の間から、血が出てきて皆大慌てしてた。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「あら、本当に若返ってるわね」

「···ご心配をおかけしました、会長」

「ふふ、無事で何よりよ。それと、ヴィラン連合の秘書さんから、うちで何もかも面倒見ますからって連絡が来たわ。良かったわね、永久就職先が見つかって」

「はっ?何を言って···」

「はい、辞令よ。筒美火伊那、貴女に無期限のヴィラン連合出向を命じます。職務は、監査と戦闘指導顧問。そして、斎日壊理がこれ以上個性事故を起こさないように、保護責任者である治崎廻と監視する事。拒否は認めません」

「···ええ~」

 

 

 

 




タイトルは余り気にせず。
因みに、レディナガンは25歳辺りに若返りました。

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