八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第百三話「八木雪花と仮免心操と柳ソワソワ」

 

 

 

 

「着いたぞ、心操。心の準備は出来ているな」

「···はい、相澤先生」

「よし、これがお前のヒーロースーツだ。ここで合格して、さっさと追い付いてこい、いいな」

「はい!!」

 

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「······(ソワソワ)」ケータイチラッ

 

 

「ふむ、アレは重症ですな、一佳殿」

「雪花もそう思うでしょ。朝からあんな感じなのよ、レイ子」

「ん」

「心操君を私ら皆で、どんな相手だろうと大丈夫になるように、ボッコボコに鍛えてあげたけど、試験は何が起こるか分かんないからね~」

 

 

『約束、覚えてるよね?俺、絶対合格してくるから』

「······(言いたい事って···多分、アレよね、ご、合格して欲しいけど、もしそうだったら私はどうすれば。いや、別に心操君の事嫌いって訳じゃないし、どっちかというと、良いなぁと思わない事も無いけど、いやいや、まだアレと決まった訳じゃないし、からかってるだけで、本当は全然別の事かもしれないし、ああもう早く試験終わらせて報告しなさいよ!!)」ケータイチラッ

 

 

「ププッ!ヤバい、レイ子の百面相面白すぎ!」

「何か、心操がレイ子からかう理由がよく分かるわ」

「ん」

「君達!手が止まっているぞ!!お喋りも良いが、手は動かすんだ!!」

「天哉さーん!ちょっとお手伝いをお願いします!!」

「む、今行くぞー!!明くーん!!」

「···やろっか」

「「うん/ん」」

 

 因みに、私達が今何をしているかというと、先日行われた、雄英高校一般入試の実技試験会場の後片付けである。

 ロボットにやらせれば?そのロボは今、卒業式の準備に駆り出されてるのですよ。なので、自分達が使う運動場等を自分達で使えるようにしろとのお達しなのである。

 

「さて、私が集めて纏めるから、唯に小さくして貰って、一佳の大きな手で運搬!ちゃちゃっと終わらせて、心操君を出迎える準備するぞー!!」

「「おー」」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「うわあああ!!!!」

「くっ!なんて一年だ!!」

「何で、この人数で囲んでるのに、あんな冷静なのよ」

「悪いな。ヒーロー科全員を相手にするよりは楽だから。それに、合格しなきゃいけないんだよ、待たせてる子が居るんだからな」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「モグモグ···」ケータイジー

「···レイ子、行儀悪いよ~」

「そんな画面凝視しても、会場出るまで携帯使えないんだから」

「ん」

「······」パタン

 

 お昼、サンドイッチ片手に携帯の画面から目を離さないレイ子。画面に映るは、メッセージアプリの心操君とのトーク画面。『終わったら報告する』『頑張って』のやり取り以降、当然メッセージはまだ無い。

 

「モグモグ···」

「時間的に、そろそろ二次試験かな」

「内容、どんなのだろうね」

「まぁ、私らの時とそんな変わらないんじゃない?」

「ん」

「スズー···」ウズウズ

「上級生と一緒だから、フォローして貰えるだろうけど、個性をどう生かせるか···」

「実際、対ヴィラン以外での活用法に難ありだもんね」

「ん~」

「モグモグ···」ソワソワ

「だからこその捕縛布何だけど、それも救助活動に最適って訳じゃないから」

「心操、何か試験内容に恵まれない星の下に産まれたのかなぁ」

「んっ!」

「だね、それでも何とかするのが心操君だからね」

「ズズー(bbb)っ!!ゴホッ!ゴホッ!」ケータイトリダシ

「「「落ち着け!レイ子!!」」」

 

 結局、心操君からの連絡は来なかった。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ここは俺が食い止めます!救助者の避難を優先してください!!」

「くっ、スマナイ。すぐに戻ってくるから!!」

「急げ!一年坊主だけに良い格好させんな!!先輩の意地見せっぞ!!」

「ふっ、一人で俺ら全員を相手にするって?勇気と無謀を履き違えんなよ、若造」

「アンタらより、オールマイトとアイスメイカーとルミナイネンのトリオを相手にする方が怖かったよ」

「···その人らと比べんでくれ」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ねぇ、ブラド先生。あれから連絡無いんですか?(小声)」

「無い。"無事試験終了、これより戻る"だけだ(小声)」

「「「······」」」

「···」ケータイポチポチ

 

 相澤先生から学校に連絡が入り、出迎える為に公用車専用駐車場に集まるB組と私。

 その中で、おどろおどろしい雰囲気で、一心不乱にケータイをタップするレイ子。チラ見したら、ものっ凄い長文を心操君に送り付けていらっしゃった。皆一歩引いて、その様子を見守ってらっしゃる。

 

「柳は大丈夫なのか?」

「何というか、色々考えすぎて、愛しさ余って憎さ百倍的な感じになってるっぽいです」

「せめて、心操の合否さえ分かってれば、もうちょっと落ち着けたと思うんですけど···」

「何も連絡が無いからなぁ···」

 

 

「···(返事ぐらいしなさいよ。どうせ、戻ってきた時に驚かせたいとか考えてるんでしょ。合否はいいから、"終わった"とか"大変だった"とか、一言でもいいから返しなさいよ。話ってのが告白だったとしても、OKしてあげないわよ···いやいや!!何もう告白されるつもりでいるのよ!!いや、あの流れで告白じゃなかったら何だって言うのよ!!しかも、私ファーストキスだったのよ!!それを奪っておいて···奪っておいて···)」カァァァ

 

 

「急に、顔を手で覆ってしゃがみこんでしまったぞ!」

「説明ども。まぁ、何か思い出したんでしょう、放っておいて大丈夫です」

「そ、そうか」

 

 そうこうしていると、上級生を乗せたバスと相澤先生の運転する公用車が、学校に帰ってきた。

 

「皆、ただいま」

 

 そして、相澤先生が私らの前に車を止め、疲れた表情とかすり傷をこさえた心操君が車から降りてきた。

 

「心操、結果はどうだった?」

「···皆の背中位は、見える位置に来れましたよ」

「···そうか、よく頑張ったな」

 

 ブラド先生の問いに、真新しい仮免許を掲げてみせる心操君。良かった、これで駄目でしただったら、気不味くてアレだったし。

 

「やったな!心操!!」

「おめでとう!心操!!」

「ヒーロー名も考えないとね、心操!!」

 

 皆も近付き、腕やら背中やらをはたいたりしながら、合格を祝う。そして、

 

「···心操君」

「···柳さん」

 

 満を持して、レイ子が心操君の前に立つ。

 

「···俺、やったよ」

「···うん、おめでと」

「······」

「······」

「···場所、変えていい?」

「···ここで始めるつもりなら、ぶん殴ってでも止めてたよ」

「という訳で、俺、柳さんに大事な話があるから」

 

 そう言って、レイ子の手を引いて歩いていく心操君を、生暖かい目で見送る。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「うわ、メッセージの数凄い」

「···アンタが、全然反応しないから」

「試験終了まで、使えないの知ってるでしょ」

「終了したら、使えたでしょ」

「電源入れるの忘れてたから」

「···少しは、心の準備させてよ」

「···何の?」

「···一人で帰っても良いのよ?」

「ごめんごめん。はい、我が家へようこそ」

「まさか、一人暮らししてる男の子の部屋に、足を踏み入れる事になるとは」

「誰にも手羽亀されない場所としては、最適でしょ」

「···お邪魔します」

 

 雄英生専用の学生マンションで、心操人使の借りている部屋に入る柳レイ子。

 

「何か飲む?」

「心操君も疲れてるでしょ、早く済ませてしまいましょ」

「そう?じゃあ、手短に」

 

 ベッドに腰掛ける柳レイ子の横に、ドサッと腰を下ろす心操人使。

 

「柳さん、俺と付き合って」

「···手短過ぎない?」

「色々考えたけど、柳さんが言ったように疲れてるみたいで、頭の回転が悪いっぽくて、長々喋ると訳分からなくなりそうだから」

「そう···いいよ、付き合ってあげる」

「···良かった、断られたらどうしようかと」ボフッ

「ここでいやって言うなら、そもそも部屋に入らないから」

「···そっか、あ~試験より緊張したぁぁ······zzz」

「えっ?ちょっ!?心操君?!?······もう···(prr)あ、お母さん」

 

 

 

「···んん······良い匂い」

「あ、起きた?丁度良かった、今出来た所だから」

「柳···さん?」

「冷蔵庫にあったの、適当に使わせて貰ったよ」

「あ、ありがとう···ございます?」

「···後、今日友達の家に泊まるって親に言ったから」

「···え?」

「···後は心操君次第だから」

 

 

 

 翌朝、晴れ晴れとした顔の心操人使と、彼に手を引かれながら、少しぎこちなく歩く柳レイ子が、部屋から出てきたとか何とか。

 

 

 

 




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