八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第百五話「~White Day~鳥と蛙と温水プール」

 

 

 

 

「砂藤君、生地はこれでいいだろうか?」

「おう、いいぜ。後は、型抜きで抜いてってくれ。抜いた奴は、こっちに並べて、オーブンに書いてある通りに設定して、スイッチを押してくれ」

「分かったよ、砂藤君」

 

「さぁ、B組男子諸君!A組よりも素晴らしいクッキーを作ろうじゃないか!!」

「···砂藤監修だから、どっちも大差ないと思うけど」

「だな、変にアレンジ入れて、女子に変な物食わす訳にはいかねぇし」

 

 僕達は今、八百万さんの家を借りて、砂藤君監修の下、ホワイトデーに女子皆に渡すクッキーを作成中です。かっちゃんも、"雪花の奴も食うんだ、変なもん出来ねぇ様に見張ったるわ!"って参加してる。

 

「よし、袋詰めをしていこう。一袋五枚だ、割れない様に丁寧にやるように」

「A組が五枚ならB組は六枚だ!」

「いや、数足らないから、物間」

 

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ふむ、姉上へのプレゼントですか、常闇兄上」

「ああ、チョコのお返しにゼリーを、とは決まっているのだが、手編みのマフラーのお返しに迷っていてな。己で決めるべきなのだが、どうかアドバイスを頼みたい」

「因みに、候補は?」

「既製品だが、こちらもマフラーが第一候補。次点で、手袋やニット帽といった物を。しかし、時期的に貰ってもすぐしまってしまう事になるだろう。それは、なんだ···少し寂しい」

「確かに、常闇兄上の言う通りですね。常闇兄上は、失せ物より残る物とお考えですか?」

「いや、拘りはない。此方も、普段使い出来る物が良いのではないか、位の考えだ」

「···でしたら、一つ提案があります。最近、とある施設が開業したのをご存知でしょうか」

「とある施設?」

「はい、その施設とは···」

 

 

 

「凄いわね、常闇ちゃん」

「···ああ、凄いな」

 

 私達は今、先月開業したばかりの大型室内温水プール"トロピカルランド"に来ているの。流れるプールやウォータースライダー、波打つプール等、多種多様なプールがある巨大施設よ。

 

 

『···梅雨、来週の土曜は空いていると言っていたな?』

『ええ、そう言ったわ、常闇ちゃん』

『···では、ここに行ってみないか?共に』

『ケロッ!!ここは!!!』

『···駄目か?』

『いいえ!行くわ、行かせて貰うわ、行かせて頂戴!!!』ダキッ

『承知した、承知したから、は、離れてくれ!!』

 

 

 あの時は、少しはしたなかったわね。感激の余り、常闇ちゃんに抱きついてしまうなんて。

 

「では、まず何から行く?」

「そうね、普通のプールで、水に慣れながら体を動かしましょう」

「うむ···梅雨」

「何かしら?常闇ちゃん」

「その···はぐれてはなんだ······手を」

「っ!···ケロッ、そうね、人が多いものね」

 

 恥ずかしそうに差し出された手。顔色は変わっていないけど、首下が真っ赤よ、常闇ちゃん。その様子を、微笑ましく思いながら、己の手を重ねる。

 

「では、楽しむとしよう、梅雨」

「ええ、常闇ちゃん」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「おい、バイト!ちゃんとやっとけよ!!」

「もう蓮君、そんな怒鳴っちゃ可哀想よ」

「へ、良いんだよ。それより、早く行こうぜ」

「あんっ!もう、焦らないの」

 

「······くそっ、イチャイチャしやがって!ふざけんじゃねぇよ!!俺だって本当は今頃···くそっ!!!」ガンッ   バチッ

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「うおおお!!」「ケローー!!!」

 

 ザバーン!!

 

「ケロケロ!!」「ぷはぁっ!!」

 

 施設のイチオシである、巨大ウォータースライダー。ジェットコースターとは、また別のスリルがある。梅雨も、とても満足そうだ。

 

「もう一度行くか?」

「いえ、少し休憩しましょ。まだ、時間はあるのだもの」

「ああ、分かった」

 

 キャー! ウワー!! ダレカー!アノコヲタスケテー!!

 

「「!!」」

 

 プールから上がり、ベンチのある方向へ向かおうとした時、遠くから叫び声や悲鳴が耳に届いた。

 その方向に目をやると、物凄い早さの流れるプール、物凄い高さの波打つプール、そして、それに巻き込まれ溺れている一般客の姿が目に入った。

 

「フロッピー!」

「ツクヨミは波打つプールに!ダークシャドウちゃんで救助を!私は、流れるプールに行くわ!そっちが終わったら、応援に来てちょうだい!!」

「了解した、ダークシャドウ!!」

『アイヨ!!』

 

 監視員やライフセイバーも動いてはいるが、ここで何もしないのは、ヒーローの名が廃る。水辺での救助には、梅雨に一日の長があるので指示を仰ぎ、指示された通りに動く。

 

「君は!!」

「ヒーロー"ツクヨミ"!助太刀する!!全員を波の中から引っ張り出す、救命措置を頼む!!」

「スマン!頼む!!」

「ダークシャドウ!!」

『ウオオオオ!!』

 

 ダークシャドウの腕を巨大化させ、下から掬うようにして陸にあげる。スタッフ達が、素早く意識や呼吸の有無を確認していく。取り敢えず、無呼吸の者は居ないようだ。

 

「後は任せる!俺は流れるプールの応援に向かう!」

「ありがとう!ツクヨミ!!」

 

 

 

「ケロッ!ケロッ!!ケロォッ!!!」

 

 スタッフの皆さんと、懸命に救助する。足の着かない人、水上に顔を出せていない人、そういった人達を瞬時に見分けて、舌を伸ばす。焦らず、冷静に、迅速に。セルキー船長やリューキュウに教わった事を、今発揮しないでいつする。

 

「おい!早く俺を助けろ!!」

「きゃっ!!蓮君!!」

「ケロッ!?」

 

 男性が一人、伸ばした舌を掴んできた。不味い、あの先に溺れている子供が居るのに!!

 

「離して下さい!後でちゃんと助けます!!でも今は、後の子供を!!」

「うるせぇ!!いいからさっさと助けろ!!」

「くっ!!」

 

 駄目だ、中途半端な所を掴まれた状態で、ぎゅうぎゅうになってる中に居る成人男性は、引っ張りあげられない!他の人達も、目の前の人達を救うので手一杯。どうすれば、

 

「俺に任せろ!ダークシャドウ!!」

『ヤッテヤルゼ!!』

「常闇ちゃん!!!」

 

 ダークシャドウちゃんが水の中に潜り、溺れている子供ごと、人々を抱えあげて陸に運んだ。

 

「もう少しだ!踏ん張るぞ!フロッピー!!」

「っ!ええ、ツクヨミ!!ケロォ!!!」

 

 

 

 

「···はぁはぁ」

「けろぉ···けろぉ···」

「あ、ありがとう。ハァハァ、君達のお陰で、一人も犠牲者を出さずに済んだよ」

「いえ、当然の事をしたまでです」

「ええ、私達もヒーローの端くれですから」

「まだ若いのに、しっかりしてるな」

「何言ってんすか、隊長。この子ら、雄英生ですよ。この前のヒューマライズ事件でも、プロに混じって活躍してたの、テレビで見ましたもん」

「···そうなのか。これは、未来の平和も安心だな」

「ねぇねぇ、後でサイン貰っていい?私、君らがプロになった時に自慢するの。この人達と、一緒に人々を助けたんだよって」

「おいおい、気が早いな」

「「「ハハハ!!!!」」」

 

 

 救急車や、近隣のヒーローも到着し、無事全員を救いだす事に成功した私達。共に協力し、力を尽くしたライフセイバーや監視員の人達と、グータッチやハイタッチをしながら、お互いの健闘を称えあったわ。

 その後、責任者の方からもお礼の言葉を頂き、入場者全員に配られた、プール施設や近隣のホテル·レストランで使えるクーポン券を貰い、施設を後にしたの。

 

「とんだ一日になってしまったわね」

「全くだ。人命が失われなかった、それだけが救いだ」

「ええ、本当に」

 

 助けた人達から言われた、"ありがとう"という言葉は、本当にヒーロー冥利に尽きるというもの。あの言葉だけで、ヒーローを目指して良かったと思えるわ。

 

「梅雨、お前には助けられた」

「こっちこそ、常闇ちゃんには助けられたわ」

『オレモガンバッタゼ!!』

「ええ、ダークシャドウちゃんにも、一杯助けられたわ」

「お前の指示あってこそだ」

「いいえ、私の指示がなくても、常闇ちゃんは同じように救えていたわ」

「いや、お前が居たから、俺は迷わず目の前の人を助ける事に集中できたんだ。···これからも、俺の隣に居てほしい」

 

 思わず足が止まる。振り返る常闇ちゃんと、向き合って見つめ合う様な形になる。

 

「···隣に居るだけでいいのかしら?」

「っ!!いや···それは···」

『フミカゲ、イッチマエヨ!!』

「黙れ、ダークシャドウ!!」

「···」ジー

「···」

「···」ジー

「···スゥ、ハァ~。梅雨」

「何かしら?常闇ちゃん」

「俺と···結婚を前提に交際してくれ」

「ケッ!?···その言葉は、予想外だったわね」

「お前と恋人になるという事は、そういう事だと認識している。お前の弟妹達からな。それで、返事は」

「ケロッ、ここで三つ指はつけないけど、不束者ですが末永くよろしくお願いします」

『ヨウヤクダナ!ヤッタナ!!フミカゲ!!』

「お前はもう少しだけ静かにしていろ、ダークシャドウ」

「ケロケロ♪」

 

 

 




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