「じゃあ、上鳴君。響香の事、よろしくね」
「はい!お任せください、お母さん!!」
「ウチは不安しかないんだけど。いってきま~す」
迎えに来た上鳴と、家を出るウチ。
今日はコイツと二人で、二つ隣の県に遠出して、好きなバンドのライブを見に行く。結構な倍率だったと思うけど、バレンタインのお返しという事で、頑張ってチケットを入手したらしい。
「あ、先に渡しとく。これ、クラスの男子全員からのお返し。砂藤のお墨付きだから、味は保証する」
「ん、ありがと」
「楽しみだなぁ!結構良い席取れたと思うぜ」
「はいはい、はしゃぎ過ぎて、トラブル起こさないでよね」
「やめて!俺、A組の中じゃギャグキャラ寄りだから、フラグ立てないで!!」
「何それ。そん時はウチ、他人のふりするから」
「見捨てないで、耳郎様!!」
「あ、バス来た」
「スルーしないで、耳郎様~~!!」
正直、ウチも大分浮かれていた。
まさか、あんな事になるなんて、思いもしなかった。
▼▼▼
「いや~、凄かったな~。やっぱ、生で聞くと違うわ~」
「だね、ウチもあんな演奏出来るようになりたい」
「耳郎なら出来るって、文化祭ん時だって凄かったじゃん」
「アレは、皆のお陰。ウチだけだったら、あそこまで盛り上がってないよ」
「んなことねぇのにな~」
ライブが終わり、ライブから帰る一団に混じって、感想を言い合いながら駅に向かうウチら。
目当てのグッズも買えたし、何のトラブルもなくライブを満喫出来た。後は、無事に帰るだけ。そう思っていたのに、
『え~、只今○○県全域に大雨·洪水警報が発令されております。それにより、運転を見合わせております』
「···どうする?待つ?」
「···あっち着いても、もう終電過ぎてるんじゃね?」
「···だよね。どっか、泊まれるトコ空いてたらいいけど」
「探すなら、急いだ方がいいだろ。ここら辺、宿泊施設とかそんな多くなさ気だし。俺は、別に野宿でも良いから、取り敢えず、お前の寝床を確保しとこうぜ」
「え、でも···」
「ほら、片っ端から掛けまくっぞ」
「う、うん」
携帯を取り出して、ネットで近辺にある宿泊施設を探し始める上鳴。ウチも、携帯を取り出して探し始める。
「···やっぱ、未成年だけじゃ泊まらしてくんねぇか」
「親の同意書何て、今からじゃ間に合わないし」
「どうすっかなぁ」
「別に、ウチも野宿したっていいよ。訓練で何回かしてるし」
「つってもなぁ···」
「泊まれるトコ無いんなら、仕方な(bbb)···ヤオモモ?はい、もしもし」
『響香さん、今どちらに居られますか?』
「○○駅、運転見合せで上鳴と立往生中。宿も無くて、途方に暮れてる所」
『やはり、そうでしたか。でしたら、家の別荘をお使い下さい』
「へっ?」
『少し歩きますが、家の社員慰労用の別荘地が近くにありますの。丁度、一つ空きが有りますので、そちらをお二人に提供致しますわ』
「いいの?!」
『ええ、両親の許可も頂いておりますわ。ただ、そこはお一人様用ですので、少々手狭かもしれませんが』
「雨風凌げるだけで十分、ありがと、ヤオモモ!あ、でも、お金とかは···」
『私が立て替えておきますので、お二人の出世払いで構いませんわ。では、地図をお送りしますので。別荘地に着きましたら、受付の者に、ヒーロー仮免許をお見せ下さい。それで、鍵を受け取れるようにしておきますわ』
「ホントありがとう!!」
『いえ、ではお気を付けて。それと、頑張って下さいね、響香さん』
「え?ヤオモモ?!···頑張るって何を?」
「雪花さん、上手くいきましたわ」
『さんきゅ、百。フフフ、一つ屋根の下、気にしあう男女が何もしない訳がなく』
「お下品ですわよ、雪花さん」
『百だってノリノリだった癖に』
「あら、そうでしたかしら?」
▼▼▼
「では、此方の建物になります。では、ごゆっくり」
ウチらが案内されたのは、一階建ての木造の立派なコテージ。外装も内装も立派で、ウチらみたいな一般庶民が使うのは、少々気後れする。
「···取り敢えず、飯にするか」
「···だね」
何となく、隅っこの方に荷物を置いて、道中で買ったコンビニ弁当をレンチンする。
「「いただきます」」
モグモグ モグモグ
「···風呂、どっちが先に入る?」
「···上鳴が先で良いよ」
「···分かった」
モグモグ モグモグ
「···」
「···」
((気まずい))
ヤオモモから話を貰った時は、藁にもすがる思いだったから気にしてなかったけど、こうして、上鳴と二人っきりになると、変に意識してしまう。
いや、バレンタインの時、父さんに邪魔されなければ告白してたのに、今更何を緊張する。あの時みたいに、自然に、普通に、同じように、再現すればいいだけだから。
「あの···さ、上鳴」
「お、おう、何だよ耳郎」
「えと···その···」
「···」
「ウ、ウチと···ウチと······」
「···」
「ウチと一緒に入る?」
「ひょえっ!!」
何を口走ってるんだろうか、ウチは。
「······」
どうしてこうなっているんだろうか。
湯船に浸かりながら出入口に視線をやると、磨りガラスの向こうで、動く人影と衣擦れの音。そこで、耳郎が服を脱いでいる。
いや、耳郎が提案してきた事だけど、ガチのマジで一緒に風呂入る何て事になると思わないでしょ!
「は、入るよ」
「お、おう···て、ちょっ!!」
「···」
タオルで隠す位はしてると思ってたのに、耳郎は本当に何も身に付けずに入ってきた。謎の湯気とか光に隠れる事無く、もうズバーンである。
此方に背を向けて、髪や体を洗う耳郎。その姿に、視線が離せなかった。
「···見すぎ」
「す、すんません!!」
「ほら、寄って」
泡を流し終えた耳郎が、湯船に入ってくる。スラッとした足、形のいいお尻、白い背中、見慣れた黒髪とうなじ、という順で視線の前を降りていき、俺の胸に耳郎の体が預けられる。
「···」
「···」
「···っ!」
「当たってる」
「ちょっ!じ、耳郎さんっ!!」
「ウチ、ヤオモモとか雪花とかみたいに、スタイル良くないし、これで無反応だったらどうしようかと思ってた」
「···耳郎」
「上鳴、ウチはアンタが好き。こんな恥ずかしい事しちゃう位、上鳴電気が好き」
「···」
「ねぇ、上鳴。ウチを、アンタの女にしてよ」
「俺なんかで、良いのかよ。俺、お調子者だし、バカやるし、ウェイってなるし···」
「そんなアンタが、ウチは大好きなの」
「耳郎···俺も、耳郎が好きだ。耳郎響香が大好きだ!」
真っ赤な顔と潤んだ瞳で振り向く、世界で一番可愛い女の子の唇にキスをする。
なぁ、峰田。貧乳も捨てたもんじゃねぇぜ。
「いでででで!!」
「いま、むねのことかんがえたでしょ」
▼▼▼
「響香、梅雨ちゃん、おめでとう!!」
「お二人とも、おめでとうございます」
「やったね!梅雨ちゃん、響香ちゃん」
「これで、A組女子全員恋人持ち!いやぁ、今度の女子会が楽しみだなぁ」
「ニッシッシッ、根掘り葉掘り聞いちゃうよ~」
「ケロケロ、何か恥ずかしいわね。でも、ありがとう」
「大人の階段登った感想は?響香」
「うっさい!黙れ!誰が言うか!!この、万年発情期!!」
「はぁっ!!盛ってんのはあっち!!私は愛を受け止めてるだけ!!!」
「誰が盛っとるだ、コラァ!!」
「ホワイトデーだから、あれやこれやのリクエストに応えてあげたでしょうが!!」
「おい、お前ら。ここは学校だ、乳繰りあうなら家でやれ」
「あ、13号先生を猫カフェ連れていって、途中から13号先生ほっぽって自分が楽しんだ挙げ句、13号先生を拗ねさせた相澤先生、おはようございます」
「···除籍するぞ」
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