その日、轟家に新たな家族がやってきた。
「びええええ!!!!」
「お~よしよし、恐かったなぁ~」
「······」チーン
部屋の角で、体育座りしながら灰になるお義父様。
原因は、萌お義姉様の腕の中で、大粒の涙を流しながら泣き叫ぶ赤ちゃん。先日、無事お産まれになった、燈矢お義兄様と萌お義姉様の子供、轟緋衣(トドロキ アカエ)ちゃんですわ。
最初は、お義母様が緋衣ちゃんを抱っこされ、冬美お義姉様、夏雄お義兄様と上機嫌に順々に抱っこされていったのですが、お義父様の腕に抱かれた瞬間、これでもかという程の大号泣。萌お義姉様の腕に戻されたのですわ。
「もう、この人は。自分の子供にも泣かれていたのに、泣かれない訳ないじゃないの」
「まぁ、怖えもんな」
「焦凍、貴方は泣いていないわ。ずっと、キョトンとしてたのよ」
「そうなんですの?」
「ええ、あの人が唯一抱っこ出来たのが焦凍なのよ」
しみじみと語るお義母様。でも、その情景は容易に思い浮かべられますわ。
「顔の感じは、義姉さん似だな」
「でも、目元はお兄ちゃんそっくり」
泣き止んで、寝息を立て始めた緋衣ちゃんを、顔を寄せあって覗き込む夏雄お義兄様と冬美お義姉様。頬をツンツンしたり、腕や足をふにふにしたりと、デレッデレといった感じですわ。
「百、はい、抱いてみな」
「え、あ、はい、萌お義姉様」
「そうそう、そういう感じで優しく」
萌お義姉様から、緋衣ちゃんを受け取り、見様見真似で腕に抱く。暖かくて、柔らかくて、軽いのに重い。この子の生きる未来の為に、私達は頑張らなければならないのですわ。
「キャッ!」
「っ!!」
服の上から、胸に吸い付いてしまわれました。赤ちゃんは、何でも口に入れてしまうと聞いた事がありますが、本当なのですね。
「おっと、お腹が空いたのかな。百、良い?」
「はい、お返ししますわ」
緋衣ちゃんを、萌お義姉様にお返しし、お義母様に付き添われて隣の部屋に移動されました。
「百」
「はい、何ですか?焦凍さん」
「···」
「焦凍さん?」
「···焦凍、さてはお前、赤ん坊に嫉妬してるな?」
「あら、そうなんですの?」
「···んな事ねぇ」
「いや、その顔で言われても説得力無いから。この調子じゃ、自分の子供の時が心配だよ」
「だから、してねぇって」
「百ちゃんの胸は俺のだって、顔に書いてあるよ」
「っ!!だからちげぇって!!」ダッ
「あ、焦凍さん!!」
「逃げた」
「うん、逃げた」
「夏雄お義兄様、冬美お義姉様、焦凍さんをからかうのは程々にして下さいまし。色々と大変なのですから、特に夜が」
「···ごめんね」
「···頑張って」
明日はお休みですから、朝までコースでしょうか。
▼▼▼
「キャー!可愛い!!」
「本当に」
「猿みてぇにちんちくりんだな」
「産まれたばかりは、皆そうよ」
「ちっちゃくて可愛いのです!トガも、赤ちゃん欲しいのです」
「おめでとう、お父さん」
「頑張れよ、大黒柱」
「ちゃんと家族サービスしろよ、お父さん」
「もうちょっと大きくなったら、緋衣ちゃん連れてきなさいよ、お父さん」
「で、次の子はいつのご予定で?」
「当分はねぇよ。つか、テメェらがお父さん言うんじゃねぇ」
荼毘の子供の写真を見て盛り上がる女性陣と、からかい混じりに祝福する野郎共に別れた店内。雄英高校夏合宿の打ち合わせが一段落したと思ったら、話は荼毘の子供に移ってそのままだ。
「これからは、そう頻繁には来れなくなるな」
「···まぁ、流石にな」
「ヒーロー活動はどうするんだ?」
「家には母さんが居るし、仕事終わったらさっさと帰ってこいって言われる位で、多分今までと変わらねぇよ」
「そっか」
「おい、何湿気た面してんだ、クソガキ」
「ドワッ!」
ミルコが、いきなりのし掛かってきた。
「止めろ、この色ボケ兎!」
「兄貴分がちょっと来れなくなる位で、図体でかくても寂しがりかぁ?仕方ねぇ、私が側に居てやるよ」
「寂しくねぇし、頼んでねぇ!!」
「ふっ、素直じゃねぇ弟分を頼むな、ミルコ」
「へっ!テメェこそ、萌とガキンチョ大事にしやがらなかったら、蹴り飛ばしに行くから覚悟しとけよ」
「はっ、上等だ」
「おい!俺を無視すんな!!」
「おっと、僕達はお払い箱かい?」
「馬~鹿Mr.、信頼してんだよ。お前らなら、頼まなくてもやってくれるってな」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない」
「やってやるぜ!嫌だ、面倒臭い!!」
「トムラ君の事は、トガ達に任せるのです!」
「気合い入れんのはいいけど、全員、書類とかは期日までに出してくれよ」
「···だから、俺を無視すんなーー!!!」
▼▼▼
「キャー、フニフニ可愛い!!かっくんも触ってみなよ」
「···興味ねぇよ」
「···もしかして、炎司叔父さんみたく泣かれたら嫌だから~とか思ってる?」
「思ってねぇわ!!」
「ちょっ!声大きい!起きちゃうでしょ!」
「んぐっ···」
「ほら、大丈夫だから」
「······柔けぇな」
「ね、大丈夫でしょ」
「···けっ!」
「···なぁ冷、もう一度」
「駄目よ、あなた」
「···だが」
「もう少し大きくなってからにしなさい」
「···ううむ」
「私が居ない時に、緋衣に接近するのは禁止ですからね」
「·········」
「いいですね!」
「···うむ」
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