八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第八話「八木雪花と戦闘訓練withトップ3」

 

 

 

「爆豪ごらぁぁあああ!!何しとんじゃおどれはああああ!!!」

「お、落ち着け、峰田」ガクガク

「だ、大胆過ぎへん、雪花ちゃん」ガクガク

 

 モニタールームまで届く程の冷気に震える中、峰田少年の絶叫が反響する。

 最初は、轟少年の圧倒的な力に驚いていた皆だが、ヴィラン側の爆豪少年と雪花がどうなったか見た瞬間、文字通り言葉を失っていた。かくいう私も、訓練の事など忘れて今すぐ飛び出して行きたい衝動が沸き上がった程だ。

 

「爆豪少年の個性の特性を考えれば、あの状況では最適ではあるが···」

「そ、そうなんすか」ガクガク

「うむ、せっゴホン、八木少女のヒーロースーツは耐寒に優れており、特にインナーは自身の体温が低くなりすぎない様、カイロに似た機能を持っているんだ」

「そ、それであのような」ガクガク

(だからといって、お父さんはとても複雑だよ)

 

 モニターの向こうに映るのは、目標を設置した部屋の真ん中で、浮遊する雪の絨毯の上で寄り添い合う二人の姿。雪花の上着を羽織り、自身の足の間に座る雪花を後ろから抱き締める様に腕を回す爆豪少年。雪花は雪花で、爆豪少年の手を脇に挟み、上着の襟を掴んで少しでも熱が逃げないよう縮こまっている。

 これ、冬花さんが見たらどう思うだろうか。

 

「今すぐそこを代わりやがれぇぇええええ!!!」

「峰田ちゃんだと、長さが足りないと思うわ」

 

 この訓練、どうなるんだろ。自分で仕組んだ事だけど、私は猛烈に後悔している。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「結局来なかったな、爆豪」

「う、うん。ここが最後の部屋だけど、かっちゃんが大人しく待ち構えてるなんて考えられない、多分何かあると思う」

「まぁ、雪花が無策でいる訳ねぇしな。だけど、触れさえすれば俺達の勝ちだ。俺がサポートするから、緑谷は核に向かって駆け抜ければいいだろ」

「うん、分かったよ」

 

 かっちゃんがいつ襲ってくるのか警戒して、一部屋一部屋確認していたけど、結局何事もなく最上階中央の部屋を残すだけになった。

 

「じゃあ、開けるよ」

「ああ」

 

 轟君に指で秒数を示して、0になった瞬間部屋の中へ突入する。

 

「わぷっ!」

 

 入った瞬間、顔全体を布の様な物が覆って視界が真っ白になった。次いで、とてつもない衝撃で体が後ろに飛ぶ。背中に二度の衝撃。布がズレ落ちて開けた視界には、眼前に翳された掌と、今まで何度も見てきたかっちゃんの凶悪な笑み。

 熱と衝撃と浮遊感に眩しい日差しと雪をあしらった服。あぁ、顔を覆ってたのは、八木さんのヒーロースーツだったのか。そういえば、何か良い匂いしてたなぁ。

 って、そんな事考えてる暇は無い。姿勢を整え、追随してくるかっちゃんに拳を構える。もう僕は、君に虐められるだけの存在じゃない。

 

「僕は、頑張れって感じのデクだ!!」

「死ねや、クソデクぅぅうう!!」

 

 

「すげぇな、俺のジェットバーン並の威力か」

「アイテム要るし、連発出来ないし、使えるまで時間掛かるし、焦凍みたいに気軽に使えないけどね」

 

 向かいの部屋に空いた大穴からBON!BON!という爆破音をBGMに向かい合う私と焦凍。

 取り敢えず、作戦の第一段階は成功。後は、爆豪君が緑谷君やっつけて戻ってくるまで、焦凍に目標を確保されないよう耐久あるのみ。コイツ相手に、別に倒してしまっても構わんのだろうとか言ってみたいけど無理!だから、早く戻ってきてよ、爆豪君。

 

「あの二人、何かあるのか?もしかして、お前の親父関係?昨日、緑谷拉致ってたし、始まる前ワンフォーオールってアイツが呟いてたが」

「ん~、また今度話すよ。私も昨日の今日でドタバタしてたからさ。ま、焦凍の思ってる通りだと思うよ」

「そうか、手ぇ抜いた方がいいか?」

「いんや、寝言は寝て死ね!!」

 

 私は、背中に隠して生成していた雪玉を焦凍に向けて連続で撃ち出す。それらは、焦凍が前方に出した氷壁にぶつかって、氷を少し削りながら砕ける。

 

「それ、当たったら骨折じゃすまねぇだろ」

「焦凍なら防ぐっていう信頼の証だって危ね!」

 

 氷壁を貫通して、足元に放たれた熱線を飛んで避ける。

 

「この珠のお肌に火傷負わす気か!つか、火傷所か貫通するわ!!」

「避けると思ったからな。赫灼熱拳ヘルスパイダー」

「女の子にはもちっと優しくしろー!!」

 

 左の五指から放たれた熱線が放り下ろされる。後ろに飛ぶ事で何とか回避。目標の核に当たらない様に長さ調節されてなきゃ、縦五分割雪花ちゃんの完成だったぞ、こら。

 

「ち、邪魔だなぁ」

「誰が、閉所で真面にお前とやりあうかって話よ」

 

 今度は、扇状に拡散させて前上左右から雪玉を襲いかからせる。

 

「雪花、お前何狙ってる。こんな馬鹿の一つ覚えみたいな攻撃で、いつまでも時間稼ぎ出来ると思ってんのか?」

「うっせぇ、黙ってやられろ!」

 

 その全てを、右の炎であっさりと消し去りおってからに、憎たらしいったらありゃしないよ、まったく。

 

「なぁ、終わらせちまってもいいんだぞ」

「せっかちだねぇ、私の従兄弟は。そんなに言うなら、後悔しても知らんからね。来い!!スノウマイト!!」

 

 私の声と共に、窓を突き破って一体の雪像が飛び込んでくる。

 

「···よく作ったな」

「どうだ、驚いたか!!口角の角度から筋肉盛り上がりから前髪の鋭さから、全てを忠実に再現した私のスノウマイトは!!」

 

 そこに立つは、白銀に輝くオールマイトそのもの。ビルの裏手でじっくりコツコツ作ってたから、単調な攻撃しか出来なかったんだい。

 

「更に、一体だけだと思うなよ!!」

 

 続いて入ってくる、違う格好のオールマイト雪像三体。

 

「ヤング·ブロンズ·シルバー·ゴールデン各エイジ揃い踏みじゃい!!崇め称えろ!!恐れ戦け!!平伏して拝み倒せ!!」

「···すげぇな」

 

 純粋な少年の様なキラキラした目で、並び立つスノウマイトを見る焦凍。コイツも、大概なオールマイトファンだからな。炎司おじさんが、また泣くぞ。

 

「行けー、スノウマイト!!」

「ちぃっ!後で十分の一サイズの寄越せ!氷で覆って永久保存すっから!!」

「一個五千円から承ろうじゃないの」

 

 緊張感の欠片もないやり取りをしながら、スノウマイトを操って焦凍に襲いかからせる。スピードやパワーは、本物の足元にも及ばないけど、限界まで圧雪したからそんな簡単に溶けはしないし、当たったら痛いよ~。

 

「そらそら、どうしたぁ!!終わらせるんじゃなかったのかなぁあ?!」

 

 流石の焦凍も、四体の圧力に負けて向かいの部屋まで下がった。核を気にして、私を気にしてだと分が悪いって思ったのかな。だが、逃がさん。

 

「···見た目はオールマイトだが、結局はお前の動きだ。数が増えても、一つ一つは見慣れてる」

 

 バレるの早っ!これだから、天才って奴は。しょうがないじゃん、雪に意識なんてないんだから、全部私が自分の意思で動かすんだもん。

 

「大穴開けてくれててありがとな。あれのお陰で、細かい調整をしなくてすむ」

 

 足裏から氷柱を伸ばし、それを使ってスノウマイトを飛び越し背後を取る焦凍の左半身は、朱く燃えていた。

 

「嚇灼熱拳ジェットバーン」

 

 焔が走る。スノウマイトを飲み込み、コンクリートを焦がし、爆豪君が開けた穴を更に広げながら外へと。炎が消えた後に残るのは、さっきよりも見晴らしの良くなった壁と真っ黒になった部屋だけ。私が丹精込めて作ったスノウマイトは、跡形もなく消え去ってしまっていた。

 

「あぁ···私の······スノウマイト···」

「何か、すまん」

「許さない。冷さんにチクってやる、焦凍が百のおっぱいガン見してたって言いふらしてやる、バーニンさんと一緒にからかってやる」

「し、してねぇよ!!変な言いがかりはやめろ!!」

「でも、見たでしょ!集合した時、隣にいた響香と見比べたでしょ!!女子の目を誤魔化せると思うなよ小童!!!」

「ぐっ···」

 

 顔を赤くしてたじろぐ焦凍。

 

「黒髪好きだもんな、ポニテ好きだもんな。夏雄さんが置いてったグラビア雑誌一緒に盗み見た時、とある人が居るページで手が止まるもんな」

「いや···俺は別に······」

 

 

「オイ、何やってんだテメェら」

 

 

 壁の穴の外、私の雪に乗ってちょっと凹んだ右の籠手を構える爆豪君。痣だらけの顔で修羅の表情を浮かべ、何も躊躇う事なくピンを引き抜いた。私の脇まで使って溜め込まれたその力が、今開放される。

 

「こっち向かって撃つなばかぁぁああああ!!!!」

 

 最後に、私は轟音と爆炎に晒されながらも、核兵器を守りきった事をここに記す。

 

 





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